デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

河童のコスモロジー

2015-12-31 14:48:04 | 買った本・読んだ本
書名 「河童のコスモロジー 石田英一郎の思想と学問」
著者 山口昌男 出版社 講談社(講談社学術文庫) 出版年 1986

本棚を整理しているときにたまたま発見した本。買った記憶がまったくない。妻の本だと思っていたのだが、自分のものだという。もしそうだとしてもあとから読もうと思ってそのままになっているのだろう。
ネフスキイ展を見てから、おしら様やルサールカのことが気になっていたので、いいタイミングで出てきた。というのも石田は京都大にいたときにネフスキイの教えを受け、とても大きな影響を受けていたのだ。この書は石田の学者としての歩みを追いつつ、学問的になにをめざしていたのかを項目にわけて著者山口がその解説をしたあとで、石田の書いた論文を載せるという形式をとっている。これが非常に効果的だった。マルクス主義から入って、マルクス主義の限界を知る中、柳田国男の影響を受けながら、民俗学さらには人類学へと展開していくその知の営みが重層的に見えるような構成になっている。そしてなにより石田がその学問の魅力を発散させてくれるのが、桃太郎や河童を対象とする研究である。民俗学の枠をはみ出しながら、河童や馬などを通じて世界とつながっていくところは圧巻である。解説者の山口が最初に桃太郎の母を読んだときのこの世界につながっていくところに感動したと書いているが、越境する知の醍醐味がそこから感じられる。
なにより自分にとっては河童駒引考で展開される馬のフォークロアと人類学にしびれてしまった。なぜ馬が水と連関していくのかそれを中国や地中海やコーカサスの文献をひもときながら、解きあかそうというあたりは、まさに。「サーカス学」ともつながっていく、そんな気がした。
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