朝日新聞2023年1月1日朝刊
このところゆるい記事ばかりで、ちょっとヤバイのではないか(特に夕刊の一面)と心配していた朝日の元日号のトップ記事は、アレクシェーヴィチのインタビュー。これは読みごたえがあった。
ウクライナ戦争という現実のなかで、まだショックで打ちのめされたままの彼女がいる。それだけ大きな衝撃だったということだ。
このインタビュー記事のなかで、一番興味深かったのが、「ロシア人を獣にしたのはテレビ」だという指摘。これはかなり的をついているのではないかと思う。最近ロシアに赴任した日本人の友人が、テレビ特にニュースは見ないようにしていると言っていたことを思い出す。インターネットの時代にテレビの脅威というのは、どうかと思うかもしれないが、そうではない。侮ってはいけない。安倍、菅がマスコミを恫喝して、特にNHKを骨抜きにしたことを思い出さなくてはならない。世論とはこうしてつくられるということを身に沁みて考えなければならない。
絶望を救うのは、日常そのものだという言葉の重みを感じる。オデッサから避難してきた和田君が桑野塾の報告の時に、戦争前の別荘での家族の日常の写真をたくさん見せてくれたことを思い出す。あたりまえだったあの日常がいまどれだけ得難いものになっているかをいまかみしめなければならない。
彼女はいまかなり絶望の淵に立っているのではないかと思う、それでもまだ「文学は人間を育み、人々の心を強くしなければならない、残虐な運命に身を置かれた時、人間をのみ込む孤独に打ち勝てるように」となんとかその身を支えようとしている。
いまはほんとうにぎりぎりのところにいる、いまがほんとうに大事な時であることを教えてくれたインタビューであった。