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韓国映画「ムサン日記 白い犬」より = 住民登録番号で脱北者だとわかる!?

2012-07-10 19:32:12 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 韓国映画ムサン日記 白い犬の中で「脱北者の住民番号は125で始まる」というセリフがありました。
 私ヌルボ、このことは知りませんでした。しかし、「国があえて差別につながるような住民登録番号を脱北者に与えるか?」という疑問が残りました。
 ところが、たまたま以前コピーしておいた「新東亜」2011年9月号の「脱南する脱北者たち」と題した記事を読んでいて、その答が偶然わかりました。

 記事中に、次のように記されています。
.
 住民登録番号はハナ院(定着支援センター)がある京畿道安城(アンソン)を基準に与えられるため「125」「225」である。
 ・・・ということだったのですね。

 ウィキの「住民登録番号」の項目には、住民登録番号の13個の数字の意味が説明されています。

 それによると、13の数字は次のようにハイフンにより前6つと後7つに分けられ、表記されます。

 yymmdd-snnnnmc

 ハイフンの前の6つは生年月日です。つまり、1987年1月19日生まれなら870119のように、年(yy)・月(mm)・日(dd)が2つずつの数字で示されます。
 ハイフンの後のsの意味は、次のように何年代生まれの男性or女性か、また国内生まれor外国生まれかを示しています。
  [国内生まれ]
   ・1800年代生まれ 男=9  女=0
   ・1900年代生まれ 男=1  女=2
   ・2000年代生まれ 男=3  女=4
  [外国生まれ]
   ・1900年代生まれ 男=5  女=6
   ・2000年代生まれ 男=7  女=8

 次のnnnnは出生地コード。邑・面・洞ごとに固有番号がわりあてられています。
 続くmは一貫番号。その日に提出された出生届のうち何番目であったかを表します。
 最後のcチェックディジットです。

 ・・・ということは、ハイフンのすぐ後の数字が男性の場合は「125」、女性の場合は「225」の3つの数字になっている、ということですね。

 しかし、そうすると脱北者だけではなく、一般の安城市民の住民登録番号にも「125」や「225」という数字が入ることになります。
 それによる混乱や不都合があるのではないか、という疑問は当然起こります。

 そこで韓国サイトをいくつか見てみたら、やっぱりありました。それもかなり大きな問題として。

 コチラの記事(2010年7月)によると、夫婦で夏休みに海南島に旅行しようと旅行代理店に団体ビザを取得するため問い合わせたら、「安城にお住まいでしょ? ビザは難しいですね」との答えが返ってきたとのこと。住民登録番号のせいで中国で脱北者と誤認され、入国•在留過程で不利益を被る事例が続出している、とあります。

※この記事には「1999年安城市内にハナ院ができてから2007年6月まで、ハナ院を修了した脱北者たちに安城市の住民たちの地域コード252が一括して与えられた」、とあります。つまりハイフン以下が男性なら「1252」、女性なら「2252」となるということ。

 また<ノ・テウン記者の足の向くまま>中の2010年7月の記事「住民登録番号‘252’の受難」には、中国の都市で食堂を営んでいる女性は、現地の高校に在学中の娘がビザの期間延長を現地旅行会社に依頼したが、住民登録番号のため許可されず、現地の韓国領事館は「仕方ない」という言葉を繰り返すばかりだった、という事例を紹介しています。
 この記事によると、「住民番号252の問題」は、2007年4月20日、聯合ニュースが「安城出身の住民の脱北者扱い 中国訪問不便」というタイトルで本格的に報道してから注目されるようになったそうです。また同月23日には「韓•中国際フェリーの乗客の中国入国拒否続出」という見出しでも取り上げられたとか。
 このような報道を受けてか、この問題は2007年6月21日から一部が是正されました。
 政府は、脱北者たちがハナ院で定着教育を受けた後、一括して252を付与していた住民登録番号を、新たに割り当てられた居住地を基準に付与することにしたのです。

 しかし、このノ・テウン記者のブログは「これは問題の根本的な解決策ではない」と述べています。
 「住民登録番号252で実際の不利益を受ける者は、脱北者より安城市民が深刻だから」というのがその理由です。
 2007年6月の変更以前に国内に入ってきた脱北者は1万人には達していません。一方252の住民登録番号が付いている国民は、数十万人です。(安城市の人口は17万人。)
 住民登録番号による不利益を被っている脱北者も考慮しなければならないが、より優先すべきは数十万人の不利益の解決である、というのがノ・テウン記者の主張です。
 その後2009年1月21日、統一部は、脱北者のうち、ハナ院の所在地に基づいて住民番号を与えられた人は1回に限り訂正申請をすることができるようになると発表しました。
 2008年5月の「中央日報」の記事によると、その時点で、韓国に住んでいる1万3000人の脱北者のうち7000人が252という番号を持っているとありましたが、その人たちも申請をすれば変更ができることにしたというわけです。
 しかし、それでも252の番号を持っている一般安城市民等の多くの人にはなんら解決になっていない、とノ・テウン記者は批判を続けます。

 するとその翌月(2010年8月)の「中央日報」に「安城 "住民番号252の受難"の解決される」という記事がありました。
 北京で開かれる韓日中領事局長会議に際して、韓国の外交通商部当局者は「中国側との事前協議で(安城市民を)差別しないという約束をとりつけた。これで解決したといってよい」と語ったとのことです。

 しかしこの記事には、「それまで安城市民は中国に入国する際、原籍が安城市であるとの証明書を必ず携帯しなければならず、証明書がない場合は団体ビザの発給も拒否されてきた」とも書かれています。また安城市は「善良な安城市民が善意の被害を被っている」と関係省庁に公文書を送って解決を促したとあります。
 このあたりの文面に、私ヌルボとしてはどうも引っかかるものがあるのですが・・・。脱北者はその証明書をもらえないのですね? 彼らも「善意の被害者」なのですが・・・。そして中国当局が韓国から来た脱北者を厄介者扱いするのも問題だし、それが犯罪の臭いも漂う脱北ブローカーとの関わりもそれなりにあるにしろ、元はといえば中国が脱北者を犯罪者扱いしていることがより根本的な問題でしょう。それをちゃんと批判してほしいものです。もっと根本的な問題は、そんな大量の脱北者を生み出している北朝鮮の体制の問題であることはいうまでもありませんが・・・。

 なお、住民登録番号制度自体についても、いろんな問題が起き、批判もあるようです。
 <OhmyNews!>中の記事「住民登録番号13文字の '恐ろしい真実'」に、いろいろ興味深いことが記されています。
 1968年住民登録番号が始まった時には数字は12桁で、誕生日は書かれていなかった、とか当時の朴正煕大統領の番号は'110101-100001 "だったとか・・・。
 また1975年から13桁に変わって、前の6桁を生年月日としたのは、「軍事独裁政府が国民を容易に監視し、制御するためだった」とか・・・。
 そして「住民登録制廃止が正解だ」と結論づけています。最近政府が代案として提示しているアイピン(I-PIN)も、「基本的に住民登録番号と関連づけられているので解決策にはならない」と批判しています。
 これはこれで大きな問題ですね。 

 冒頭に戻って、「新東亜」2011年9月号の記事の趣旨はというと、タイトルの示す通り「脱南する脱北者たち」でした。
 韓国に必死の思いで、いや、「思い」どころか文字通り命がけの脱出行を経て韓国入りを果たした脱北者たちの相当数がその後韓国を離れてイギリス等に「脱南」している、という実態を伝える記事です。その内容については、(毎度のことながら)いずれ別記事で紹介したいと思います。

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