ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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「韓国が北朝鮮の人権から目をそらすと世界の物笑い」という記事をめぐって

2010-02-22 09:58:29 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 2月17日、韓国紙「中央日報」のサイトに「韓国、北の人権にそむけば世界の物笑い」という記事がありました。(「北の人権から目をそらすと」とすべきところですが・・・。)

 TEDのシニアフェローに選定された在米韓国人2世のエイドリアン・ホンという人と、彼の発言を紹介した記事です。

 それによると、彼はエール大学を出た後、政治活動をしている途中、脱北者を支援し、北朝鮮人権運動を行う非政府機構「リンク」(Liberty in North Korea・北朝鮮に自由を)を設立、2006年には中国で現地公安に逮捕・拘禁され、その後追放された。今はリンク活動をやめて「ペガサスプロジェクト」という別の非政府機構を始めた。
・・・という人です。

 その彼の発言というのが次のようなものです。
 「北朝鮮人権を支援することは政治的動機や統一の念願とは無関係で、人間の基本権利に関わることだ。・・・・米国やヨーロッパなどどの国より韓国民と政府の北朝鮮人権に対する関心が低いという事実に非常にがっかりした。・・・・韓食世界化プロジェクト、韓流広報、平和維持軍派遣など韓国のイメージを上げるための数多くの試みにもかかわらず、北朝鮮人権問題にそっぽを向けたら世界の物笑いになるだけ。・・・・盧武鉉政府では北朝鮮人権運動に対して露骨的な敵対感を感じた。・・・・政府が変わった今も支援や関心が大きく高まらなかった」。

 概ね誠実に生きている私ヌルボよりさらに誠実な人がいるなー、というのが記事を読んでの感想です。彼の発言にはほとんど同感します。

 問題はネチズンの感想。「中央日報」(日本語版)の記事に寄せられた感想は、案の定例によって例のごとし。「朝鮮人は100年以上前にすでに文明人に発見されてから世界の笑いもの」等々、品性のあるはずの日本人とも思えないコメントがいくつも寄せられていていますが、今回ヌルボが関心をもったのが肝心の韓国人の反応。そこで「中央日報」(韓国語版)」の方の<私も一言(나도 한마디)>の欄を読んでみました。

 すると、多かったのが「金大中や盧武鉉の親北政策のせいだ」というもの。また、それに対して「ハンナラ党の政治家だって大勢金剛山観光に行ったりしながら誰も北韓政府批判を口にしていないじゃないか」との反論もあります。
 つまりは、ほとんどが韓国内の政治的対立の構図そのままに言いあっている図式。
 ヌルボは失望しました。
 エイドリアン・ホンさんの「政治的動機や統一の念願とは無関係で、人間の基本権利に関わること」という点が全くといっていいほどスルーされているようです。

 また次のような少数意見もありました。
 「北韓に風船でビラを撒いたり、人権決議案を通過させたりして北韓の人権を向上させようと考えるのはばかげたことだ。本当に北韓住民の人権改善を望むのなら、北韓との関係改善、経済開発支援、開放誘導を順次進めていって、究極的には統一をしなければならない。ビラ撒きや人権法制定などは逆効果だ」。
 日本でも<進歩的・革新的>な<人権派>の人たちが主張している意見ですが、<推薦1>に対し<反対10>とのことで、韓国内でもこの意見は少数派のようです。

 しかし大なり小なり「世界の物笑いになる」のは韓国人だけでもないでしょう。
 生存権に関わる問題を他人事とか、北朝鮮という外国の内政問題としか考えられず、「北朝鮮が崩壊して日本に難民が押し寄せてきたら迷惑だ」というように(北朝鮮に限らず)難民を厄介者としかとらえられないとしたら日本人だって「物笑いになる」資格は十分にありそうです。


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2 コメント

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世界の人権を良くする日韓に (国際人権規約批准する日本に.)
2016-07-12 15:19:11
日本は先進国にもかかわらず民主主義に反する死刑を廃止せず慰安婦問題がある中人身売買が改善されず最も多くの日本人女性被害者を出してる現状です。
日本は民主主義の国として北朝鮮の脱北者やシリア難民中国民主派人権派を受入北朝鮮の人権状況や中国の人権状況を改善するべきだと思います。
下記国際人権規約でも個人通報制度に批准せずジェノサイド禁止条項に批准してない等人権侵害の申し立てを受ける独立機関の設置、「公共の福祉」の厳格な定義.死刑廃止への改善、市民の政治的意思表明権の完全な保障などの点で非常に人権で遅れています。
日本では1979年、社会権規約・自由権規約ともに批准しているが、以下の点については国内法との関係により批准せず留保としていたり、独自の基準を宣言していたりする。

中等教育の無償化(2012年9月11日に受諾[4])
労働者への休日の報酬の支払い
公務員のストライキ権の保障
社会権規約・自由権規約の「警察職員」には消防吏員も含まれると解釈(2012年11月に有識者委員会から「消防吏員については受諾し団結権を容認するのが適切」と答申が発されており地方公務員法改正案も提出されている)
自由権規約の個人通報制度
市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書(第1選択議定書)、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書(第2選択議定書)は批准していない。これは第1選択議定書は司法権の独立が懸念されること、第2選択議定書は死刑廃止を定めていることが主な理由である。これに対し「国連規約人権委員会」からは、第1選択議定書の早期批准、国内法では救済されない場合がある個人による通報制度の整備、人権侵害の申し立てを受ける独立機関の設置、「公共の福祉」の厳格な定義[5]、死刑廃止への改善、市民の政治的意思表明権の完全な保障などが求められている。
なお、自由権規約の個人通報制度を批准していない先進国は日本のみである
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人権関係の条約等と、現実の状況 (ヌルボ)
2016-07-13 15:21:45
 日本は世界的に見て「人権の面でも先進国」と思っている人がほとんどでは、と思います。たしかに総合的にみれば正しいかもしれませんが、個別に見ると遅れている部分もけっこうありますね。中等教育の無償化等は大多数の国民の望むところでしょうが、死刑や公務員 (とくに警察と消防)のスト権否定等については当然と考えている人の方がはるかに多いのは残念なことです。

 世界に目を移すと、アメリカが先進国の中で唯一国際人権規約A規約を批准していない上、女性差別撤廃条約や子どもの権利条約も署名のみで未批准ということは、多くの人にとっては意外なことかもしれませんね。

 一方、権利に関する条約を締結しているからといってその国で権利が守られているとはかぎらない点も大きな問題です。
 北朝鮮の場合、2つの国際人権規約に1981年に加入しているのですが、その実態は周知の通り。子どもの権利条約も韓国(1991年)、日本(1994年)に先立って1990年に批准していますが、教育の権利どころか食料の確保からおぼつかないコッチェビたちが大勢いるようだし、女性差別撤廃条約に加入していても、公的な仕事は「男女平等」の上、家事・育児等は昔ながらのほぼ全面負担・・・。あ、続きは近く記事として書くことにします。
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