ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [5月27日(金)~5月29日(日)]と人気順位 ►曺国法務部長官はでっち上げで辞任!? ►アン・ソンギ久々の主演作公開 ►米国の注目作「アフター・ヤン」韓国系の2人が共同監督

2022-06-05 23:55:34 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
※日付を確認して下さい。1週間遅れのデータになってしまいました。

▶今回の記事中注目の韓国映画その1は「あなたがチョ・グク」です。文在寅大統領により2019年9月法務部長官に任命され、翌月辞任したチョ・グク[曺国]氏についてのドキュメンタリーです。日本でも娘の進学や夫人の大学教授就任等をめぐる不正が次々に報じられて<タマネギ男>などと呼ばれたりしていましたね。(詳しくは→ウィキペディア。) その彼をどのような観点からドキュメンタリー化するか? 韓国の場合<保守>か<進歩>かの2択のみで<中立>はありません。で、案の定<進歩>の側に立脚した作品でした。作品の宣伝文は下にそのまま記しましたが具体的なものではないので検索したところ<保守>側の代表格・朝鮮日報の「「あなたが曺国」を見て不気味になった」という記事が見つかりました。(→原文.自動翻訳)
 この記事では本作が「曺国事態は検察と言論が塗り重ねたでっち上げであり狩りだった」としているように「信じたい意見だけを込めた反知性主義の標本だった」と評しています。
 一方、この作品の制作に対するクラウドファンディングには開始から1日で支援金が2億ウォン集まり、最終的には5万人が参加し26億ウォンが集まったとのことです。なお本作を観て評点(10段階)をつけた観客約9千名の内訳は⑩68% ⑨~③1% ②7% ①24% と両極化。下の記事で制作側の「大韓民国は民主共和国か検察共和国か? 検察の刃があなたに向かわないと自信があるのか?」以下の強い問いかけの言葉が掲げられていて、そう考えざるを得ない(?)過去の事例も多々あったことはわかるにしても、自分たちに都合の悪い事実はすべて反対派の陰謀によるものとするのは反知性主義と言われても仕方がないのでは?と思いますが・・・。一応進歩系の代表紙・ハンギョレ(日本版)の「文在寅「チョ・グク捜査、巧妙」vs尹錫悦側「政権が権力私有化」」も紹介しておきます。(→コチラ。)
 一般論ですが情報の読み方はホントに難しいです。たとえば1月24日に田中宇さんが書いた「ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも」(→コチラ)という記事に明確な根拠をもって批判できる人はいるのかな?

▶注目の韓国映画その2は「カシオペア」です。私ヌルボ、個人としてこれまで30余年に観た韓国映画中で一番に名前があがる俳優は何と言ってもアン・ソンギです。1952年の元日生まれで満70歳。近年は出演することはあっても主役の次かその次くらい? 少なくとも日本公開作品で観ることもまれになりました。が、この作品は主演です。もう1人の主演が女優ソ・ヒョンジンで、離婚後シングルマザーとして、またキャリアウーマンとして働いていますが、アン・ソンギは彼女の父の役で、孫娘の面倒を見たりしている・・・が思いがないことに云々というストーリーは下の記事を参照されたし。

▶韓国以外の外国映画で注目は「アフター・ヤン」です。アメリカのSF&ドラマ。これまで「ムーンライト」「レディ・バード」「ミッドサマー」「フェアウェル」「ミナリ」等々のヒット作・話題作を手掛けてきた映画等の製作・配給会社A24が製作した作品です。進歩的なアメリカ人家族で中国系養女の養育係となったアンドロイド(というか人型ロボットというか)がある日突然動かなくなって・・・という話なのですが、問題は単に技術面のことではなく、人間とは何か、人間と機械の違いはどこにあるのかというような思弁的というか、人間としてのアイデンティティの問題にも関わる(?)という点で並みのSFとは違うようで興味があります。
 なおテーマ曲は坂本龍一が作曲し、それ以外の音楽は(「37セカンズ」の音楽の)アスカ・マツミヤが担当としています。また映画の主要なシーンで岩井俊二監督「リリー・シュシュのすべて」(2001)の挿入曲「グライド」が流され、日系アメリカ人歌手ミツキが新バージョンで歌っているようです。本作のコゴナダ監督は韓国生まれのアメリカ人で、「ブルー・バイユー」のジャスティン・チョン監督と共に話題の日本劇場未公開ドラマ「Pachinko パチンコ」の共同監督を務めています。※コゴナダ監督の名は、「晩春」「東京物語」等々数々の名作を生んだ脚本家・野田高悟の名に因んだものとか。

    ★★★ NAVERの人気順位(6月1日(水)現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
 ※[記者・評論家による順位]とも①等の右の( )は前週の順位。評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
  「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 役割たち(韓国)  9.94(31)
②(-) 夢見るネコ(韓国)  9.86(42)
③(新) カシオペア(韓国)  9.79(19)
④(3) 犯罪都市2(韓国)  9.52(17,001)
⑤(4) しなやかに(韓国)  9.50(16)
⑥(6) 詩人の歌、チョン・テチュン(韓国)  9.41(108)
⑦(5) SING/シング:ネクストステージ  9.39(2,665)
⑧(7) マリムさんをよろしく(韓国)  9.27(125)
⑨(10) 劇場版 呪術廻戦 0(日本)  9.25(1,510)
⑩(-) コーダ あいのうた  9.13(948)

 ③「カシオペア」が新登場です。離婚後、弁護士、母として完璧な人生を歩もうと頑張っているスジン(ソ・ヒョンジン)は一人娘ジナ(チュ・イェリム)のアメリカ留学の準備をしています。忙しいスジンのため父親のイヌ(アン・ソンギ)が孫娘の面倒を見ながら3人が一緒に暮らしています。ところがジナをアメリカに留学を送った後スジンは交通事故に遭い、病院でアルツハイマーとの思いもよらない診断を結果を知らされ、平凡だった日常が崩れてしまいます。愛するジナのことを忘れてしまうのではと恐れるスジンのためイヌはスジンの傍らを見守り、記憶を失っても生きていけるよう父娘だけの切ない同行が始まります・・・。原題は「카시오페아」です。
 なお、②「夢見るネコ」は昨年9月9日<韓国の猫の日>を期して公開されたドキュメンタリー。(→コチラの記事参照。)

     【記者・評論家による順位】

①(-) ドライブ・マイ・カー(日本)  8.44(9)
②(2) 偶然と想像(日本)  8.29(7)
③(3) 小説家の映画(韓国)  8.00(3)
③(新) アフター・ヤン  8.00(3)
⑤(4) マス  7.67(3)
⑥(5) アフター・ラヴ  7.60(5)
⑦(8) モガディシュ(韓国)  7.27(11)
⑧(9) パリ13区  7.00(6)
⑨(10) ポンミョン・ジュゴン(韓国)  7.00(5)
⑩(-) スリー: まだ終わっていない(カザフスタン・韓国)  7.00(3)

 ③「アフター・ヤン」が新登場です。原作はアレクサンダー・ワインスタインの短編小説「ヤンとの別れ Saying Goodbye to Yang」(2016.未訳)。これまで海外の多くの映画祭で上映され、<第23回全州国際映画祭>(2022)にも開幕作として招待された作品です。
 アンドロイドがベビーシッターを務めるのが当たり前になった世界。進歩的なアメリカ人家族のジェイク(コリン・ファレル)一家は中国人少女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)を養子として迎え入れます。そしてミカが東洋の文化を忘れないようにと兄貴格のヘルパーとしてアンドロイドのヤン(ジャスティン・H・ミン)を購入し、養育を任せます。ところがそんなある日、ヤンがシリアルボウルに繰り返し顔を突っ込む姿を見てジェイクたちはヤンが故障してしまったという事実を知ります。もはや家族同然の存在となっていたヤンを救うためジェイクは修理者たちと議論を重ねる過程で結局はもっと深い何かがあるのでは?と考えるようになります。人間とは何か? 人間と機械の違いはどこにあるのか・・・? 原題は「애프터 양」。日本公開は年内のようです。Kino Films配給、ということは私ヌルボ歩いて観に行けるゾ、ムフフ・・・。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月27日(金)~5月29日(日) ★★★
           どこまで数字が伸びる?「犯罪都市2」が600万台から800万台へ

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(2)・・犯罪都市2(韓国)・・・・・・・・・・5/18 ・・・1,792,931 ・・・・・6,546,822・・・・・67,841・・・・2,521
2(1)・・ドクター・ストレンジ ・・・・・・5/04 ・・・・・171,129 ・・・・・5,754,421・・・・・61,276・・・・・・757
       /マルチバース・オブ・マッドネス
3(34)・・あなたがチョ・グク(韓国)・・5/25 ・・・・・107,260・・・・・・・157,573・・・・・・・1,487・・・・・・601
4(3)・・バッドガイズ ・・・・・・・・・・・・・5/04・・・・・・・13,531・・・・・・・392,767・・・・・・・3,735・・・・・・174
5(新)・・モンスター・イン・パリ・・・・・5/26・・・・・・・11,352・・・・・・・・12,260・・・・・・・・・107・・・・・・266
       響け!僕らの歌声
6(新)・・熱い血:ジ・オリジナル(韓国)・・5/26 ・・・・6,651 ・・・・・・・・・9,523 ・・・・・・・・・78・・・・・・・26
7(新)・・アンニョンハセヨ(韓国)・・・5/25 ・・・・・・・・6,538 ・・・・・・・・16,177・・・・・・・・123・・・・・・265
8(26)・・血は水より濃い(韓国) ・・・・5/25 ・・・・・・・・4,365 ・・・・・・・・・8,588 ・・・・・・・・・58・・・・・・・78
9(新)・・オマージュ(韓国)・・・・・・・・・5/26 ・・・・・・・・3,414 ・・・・・・・・・6,659 ・・・・・・・・・54・・・・・・131
10(5)・・詩人の歌、チョン・テチュン(韓国)・・5/18・・3,170 ・・・・・・・22,087 ・・・・・・・・213・・・・・・・68
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「犯罪都市2」は5月22日(日)からの1週間で累計観客動員数が650万人台からさらに830万人台まで増えました。この勢いだと久しぶりに1千万人の大台に届きそうです。
 3・5・6・7・8・9位の6作品が新登場ですが、7位「アンニョンハセヨ」、8位「血は水より濃い」については→1つ前の記事で書きました。また6位「熱い血:ジ・オリジナル」も「熱い血」と大きくは変わらないと判断して説明は省略します。
 3位「あなたがチョ・グク」は韓国のドキュメンタリー。チョ・グク[曺国]は文在寅大統領により2019年9月法務部長官に任命されたものの、その直後から不正の疑惑が次々に浮上し、結局翌10月に辞任した人物。韓国では<ネロナンブル>(내로남불.自分がすればロマンス、他人がすれば不倫)という流行語が生まれ、日本でも<タマネギ男>と呼ばれたりもしました。
 彼の長官任命に対しては保守系が辞任を要求する大規模デモを展開し、一方進歩系はチョ・グク擁護と検察改革を主張してこれに対抗しました。何かにつけ進歩・保守間の溝が深い韓国ですが、本作の立場もはっきりしています。以下は宣伝文そのまま。
 大韓民国は民主共和国か検察共和国か? 検察の刃があなたに向かわないという自信があるのか?  狩りが始まった。検察が投げた座標に沿ってマスコミは押し寄せ、うわさは後を絶たない。怒った大衆の前で検察は剣を振りまわす。そこに追われる者は誰なのか? 君じゃないと自信を持って言えるのか?
 ・・・というわけで、明確にチョ・グクを擁護する進歩系の立場に立っています。これに対する保守系の代表的新聞・朝鮮日報の記事は冒頭に記した通りです。原題は「그대가 조국」です。
 5位「モンスター・イン・パリ 響け!僕らの歌声」はフランスのミュージカル・アニメ。1910年パリは大洪水でエッフェル塔まで水に浸かってしまいます。その霧につつまれた都市のあちこちで謎の怪物が目撃され、人々の間に噂が広まります。噂の主人公はまさに巨大なノミのフランコ。
美しい声と心を持っていましたが怖い外観のために追われた彼は偶然に人気歌手ルシールに会って仮面をかぶった歌手としてデビューします。彼らの幻想的な公演は大成功を収めましたが、フランコを不審に思った警察が包囲網を狭めてきて、友人たちはフランコを守るために秘密作戦を立てますが・・・。甘い声とカラフルなステージマナーでパリをひっくり返した歴代級新人歌手の正体ははたして・・・。韓国題は「몬스터 싱어: 매직 인 파리(モンスター・シンガー:マジック・イン・パリ)」。日本では劇場公開はなく、DVDもしくは配信です。
 9位「オマージュは韓国のドラマ。世界各国の映画祭で上映され、<第34回東京国際映画祭(2021)>でもコンペティション部門で、また韓国内では<第23回全州国際映画祭>(2022)で上映されています。1960年代に活動した韓国第1世代の女性映画監督の作品フィルムを復元することになった49歳の女性監督の現在と過去を行き来するシネマ時間旅行を描いたファンタスティックな作品です。
 「オンマの映画は面白くない」という息子といつも飯のことしか言わない夫、相次ぐ興行失敗でスランプに陥った中年の映画監督ジワン(イ・ジョンウン)。アルバイトとして60年代に活動した韓国で2人目の女性映画監督ホン・ウヌォン[洪恩遠]監督の作品「女判事」のフィルムを復元することになります。(※最初の女性監督は「未亡人」のパク・ナモク監督。) 消えたフィルムを探してホン監督の最後の行跡を追っていたジワンは帽子をかぶった正体不明の女性の影と共にその時間の中を旅行することになりますが・・・。原題は「오마주」です。※この「女判事」という作品は韓国映像資料院のYouTubeチャンネルである<한국고전영화 Korean Classic Film>の公開動画(YouTube)で観ることができます。(→コチラ。) 本作の制作に着手した時はまだ「女判事」のフィルムはまだ見つかっておらず近年発見されたとか、しかし「まだ30分くらいの部分が発見されていないようだ」等シン・スウォン監督への興味深いインタビュー記事は→コチラあるいはコチラ

【独立・芸術映画】
順位 ・・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・モンスター・イン・パリ・・・・・・・・5/26・・・・・・・・11,352・・・・・・・12,260 ・・・・・・・・・107・・・・・・266
       響け!僕らの歌声
2(新)・・オマージュ(韓国)・・・・・・・・・・・・5/26 ・・・・・・・・・3,414・・・・・・・・6,659・・・・・・・・・・・54・・・・・・131
3(58)・・はじまりのうた ・・・・・・・2014/8/13・・・・・・・・・2,000・・・・3,472,099 ・・・・・・・・・・27 ・・・・・・・・2
4(4)・・偶然と想像(日本)・・・・・・・・・・・・・5/04 ・・・・・・・・・1,132・・・・・・・21,035・・・・・・・・・207・・・・・・・・31
5(5)・・WALK WITH ME ・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・856 ・・・・・・・・7,683・・・・・・・・・・71・・・・・・・・18
       マインドフルネスの教え

 1・2位の2作品が新登場ですが、いずれについても上述しました。


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