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現象学的歴史学?

2015-11-24 | 増鏡
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年11月24日(火)10時18分55秒

昨日、某図書館で本郷和人・西研・竹田青嗣氏の対談集『歴史と哲学の対話』(講談社、2013)を見かけ、本郷氏はこんな本も出しているのかと驚きました。
「はじめに」から少し引用してみると(p8)、

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【前略】
 私も石井先生にならって、中世史像を復元してみたい。できれば、先生とは異なる方法を模索しながら。天皇を安易に持ち出す「上から・外から」の歴史叙述は、ひとまず措いておこう。人間の内在的な欲求や成長しようとする精神など、「中から・内から」人の生を解き明かす学問は何だろうか。真剣に思い悩んだ結果、一つの結論に到達しました。それは、哲学に他あるまい、と。
 しかし、思い至ってはみたものの、中世史と哲学のコラボレーションなど、聞いたことがない。では、自分一人で一から哲学を学び直そうか。でも、表面だけなぞるならともかく、哲学の本体は難解をきわめます。ヘーゲル、マルクス、フッサールなど、とてつもなく高い山々が連なっていて、安易に近づくことを許しません。
 どうしよう。途方に暮れていると、友人の編集者、山崎比呂志氏さんが救いの手を差し伸べてくれました。竹田青嗣先生、西研先生に教えを請うのが良いのではないですか、と。お二人ともたいへん懐が深いから、本郷さんが真摯に問いかければ、答えてくれるに違いありませんよ。幸い私はお二人と懇意にしていますから、頼んであげましょう。
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という事情で出来た本だそうですね。
鼎談ではなく、本郷氏が西氏・竹田氏と個別に対談するという形式になっています。
そして「現象学という方法に助けをかりたらどういう地平が広がるのかなと、僕は前から思っていた」(p13)本郷氏の関心に基づき、現象学を中心とする「中世史と哲学のコラボレーション」が展開されるのですが、もともと哲学的素養のない私は、ちょっと前なら本郷さんは現象学などという難解な学問にも取り組んでいるのか、と感心したはずでした。
しかし、たまたまこの夏、石川健治氏の「窮極の旅」を検討する過程で法哲学者の尾高朝雄について調べる必要が生じたので、結果的に現象学についても少しだけ学ぶ機会がありました。
ま、周辺的なことを少し齧っただけですが。
そして、法哲学において尾高朝雄が生み出した成果を考えると、現象学的歴史学?の未来についても、まあ、袋小路とまでは言いませんが、けっこう厳しそうだな、とは思います。

>筆綾丸さん
歴史学を超えて華やかな社会的活動を展開する本郷和人氏と異なり、森茂暁氏は川添昭二氏の堅実な学風を受け継ぐ、ちょっと古風なタイプの研究者ですが、その森氏にして何で「赤裸々に告白した異色の日記」に簡単に誑かされてしまうんですかねー。
対象との知性のタイプの違い、ということでしょうか。

>フェルマーの式が引用され
この夏のアザラシ騒動でも新聞・雑誌で見かける保阪氏の発言はずいぶん硬直しているように感じたのですが、本当にボケてしまったみたいですね。

>『第3次世界大戦の罠』
カバーに佐藤優氏の写真が出ていたので美的な観点から購入を躊躇いましたが、勇気を振り絞って買ってみました。
これから読みます。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

親不孝者 2015/11/23(月) 18:31:15
小太郎さん
『とはずがたり』や『増鏡』は歴史家が鼎の軽重を問われる試金石のようなもので、森氏のように言われたら、ふーん、そんなものですか、としか言いようがないですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%9C%80%E7%B5%82%E5%AE%9A%E7%90%86
『昭和史のかたち』の最終章(十章)には、xのn乗+yのn乗≠zのn乗というフェルマーの式が引用され、次のように書かれています。
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xを国民にし、yを天皇にたとえ、zを政治体制と考えるのである。nに「象徴」という字句をあてはめると、「平時体制」という天皇と国民の良好な関係が生まれる。ところがnに「主権者」とか「大元帥」「現人神」などをあてはめると、歪みのあるファシズム体制やら、軍事主導体制が生まれるのではないかと思えるし、本来なら天皇自身が拒否してこの数式は成りたたないとなるはずである。(180頁)
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冗談ならともかく、こんなアホなことを本気で書いたら、数学教師であった泉下の父君への冒瀆になるはずであって、救いようのない痛ましい駄本と言うべきですね。・・・人間、長生きしても、あまり意味はないのかもしれません。

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883436
黒嶋敏氏の『天下統一 秀吉から家康へ』を、そういうもんかなあ、などと疑問を抱きつつ、半分ほど読み進めました。
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