学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

0130 鎌倉クラスター向けクイズ【解答編】

2024-07-26 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
第130回配信です。


武力「蜂起」→「放棄」のタイポ

慈光寺本・流布本の網羅的検討を終えて(その17)─『承久兵乱記』の六月十五日付院宣〔2023-08-22〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/63ce88e6d18a1403e4b2cad76aac8580

0111 木下竜馬氏「治承・寿永の内乱から生まれた鎌倉幕府─その謙抑性の起源」(その1)~(その4)〔2024-07-01〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/6345a16c7c0729fa520a1f463e51af15
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/e3fed1954fd5b3e398c7756891c78606
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/91c38b7ee69fc4a0f3033e4490d0ab0d
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/9cde924ebe81de0b34776b44df7117cd
0115 当面の運営方針について(再考)〔2024-07-11〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/6d9819f5f3f6d3c829cb1ebd56295380

高橋典幸(東京大学教授、1970生)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鎌倉クラスター向けクイズ

2024-07-26 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
唐突ですが、ここで問題です。

【設問】
 下記文章は高橋典幸・山田邦明・保谷徹・一ノ瀬俊哉著『日本軍事史』(吉川弘文館、2006)の「古代中世 四 源平の戦いとモンゴル襲来」(高橋典幸担当)から引用した。(p71以下)
この中に重大な誤りがあるが、それを指摘した上で、どのような問題があるかを説明せよ。
なお、いわゆる倒幕説と義時追討説の対立とは関係がなく、その点は考慮する必要はない。

-------
承久の乱
 しかし、成立当初の鎌倉幕府の基盤は不安定であった。強力な御家人制が形成されたのは東国に限られ、頼朝が直接出向くことのなかった西国においては御家人になる者の数も少なく、頼朝との関係も東国武士に比べれば弱いものであった(田中稔・一九九一)。また、軍事体制が御家人制に一本化されたわけではなく、院政期以来の院を中心とする軍事体制も健在であった。とくに後鳥羽院は、新たに西面の武士を設置するなど、武士の組織化に積極的であった。以前から朝廷に仕えていた都の武士や、御家人とはならなかった西国の武士、さらには在京する御家人たちが院のもとに組織されており、実際に後鳥羽院はこれらの武士に直接宣旨や院宣を下して積極的に軍事活動を展開していた。鎌倉幕府成立当初は二つの軍事体制が並立しており、後鳥羽院もけっして軍事的主導権を幕府に譲っていたわけではなかったのである。
 一二二一年(承久三)に勃発した承久の乱は、こうした二つの軍事体制の衝突であった。後鳥羽院は自己の配下の武士を中心に、追討宣旨を下して幕府打倒を図ったのに対し、幕府は遠江以東一五ヵ国の御家人に動員令を下してこれに対抗したのである。これは軍事的主導権をめぐる争いであった。そうした意味で、幕府方の大勝利・後鳥羽院側の惨敗に終わった戦後、後鳥羽院が「武力蜂起」の院宣を発したとされることはたいへん興味深い(本郷和人・一九九五)。この院宣は『承久兵乱記』という軍記物にみえるもので、事実として他の史料で確認することはできないが、承久の乱を契機に院による独自の軍事組織・軍事体制はみられなくなることから、軍事的主導権が名実ともに幕府に移行したことを象徴する逸話と言えよう。
 毎年五月に京都の新日吉社で行われた小五月会の流鏑馬も、そうした変化を象徴するものとして注目される。すなわち、承久の乱以前は院の北面や西面に仕える武士が流鏑馬の射手を勤めており、院の軍事力を誇示する場となっていたのであるが、承久の乱後は幕府が京都に設置した六波羅探題に仕える御家人(在京人)によって担われるようになった。軍事的主導権の交代は、このように目に見える形で京都の民衆にも示されていたのである。
-------

『日本軍事史』(吉川弘文館、2006)
https://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b34646.html
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする