琵琶湖を旅して、その歴史について調べる程に、奈良、京都、吉野、熊野の香りと共に、琵琶湖の或場所は幽玄を感じさせたので、この幽玄とその心理的美について考えたくなりました。今まで、それほど気にしていませんでしたが、淳仁天皇(733-765:33才)が急に意識の上にあがり、その天皇が頭から離れません。それといいますのも、琵琶湖の奥の奥、菅浦に伝わる、その天皇の伝説が、何故か、私の心に住み着いてしまったからです。永井路子さんの小説「美貌の女帝」と「氷輪」を読んでいるせいもあります。さて、20代の半ば、イギリスの大学の恩師に連れられて研究生徒とイギリスの聖地巡りの旅に誘われました。以来、陰惨な古城や聖なる霊地と言われている場所に立ち、聖と俗の問題を考えたり、その場から感じるアースフィーリングを分析して宗教心理学を勉強したりしている内に、その現場から感じる感情「アースフィーリング」をとても大事にするようになりました。つまり歴史散歩の面白さは、それぞれの現場に立つ所からスタートしなさいという教えです。学問は大事ですが、地球の聖地といわれた現場の雰囲気とか、陰惨でも、その伝説を大事にしなさい、という恩師の教えです。日本人のアイデンティティの一つに「幽玄美」という概念があります。その幽玄美について暫く思索していきます。あまり深刻に考えないで下さい。まして言語学的な解釈を「幽玄美」という日本語から詮索しないで、気楽にお付き合い下さい。辞典をひいて幽玄美とは、など分析せずに、子供の頃から聞かされたお化け、気味悪いけれども、何となくひかれる童話の世界、星やお月さま、その月の光に照らされた柳の木の下に恐ろしいけれども美女のお化けが上品にこちらを眺めている風景、演劇で観る幻想の世界、和歌、歌舞伎、お能、それぞれに皆様が感じる幽玄の世界について、暫く考えてみます。
<自分は何処へ旅しているのだろうか?:374>
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