Ｗカップサッカー・日朝戦を振り返る

＜2.9日朝戦を振り返る＞

色々話題を呼んだワールド杯アジア地区2次予選の初戦、北朝鮮戦、まずは負けられない我が日本代表が白星のスタートを切り予選Ｂ組の首位に立った。
私は勝利の安堵感と共に、両チームが非常にフェアーにフレンドリーに激戦を終えたと言う印象を持った。とても核弾頭ミサイル発射とか経済制裁施行などと言っている国同士の試合とは思えなかった。朝鮮ＤＦ陣も激しく当たってきたが、反則で倒した後は日本のＦＷ選手を起こし、日本がボールアウトをして得たスローインをそのまま返すという紳士的なプレーが目立った。そして日本のサポーター達は対戦相手国国歌演奏を静寂に受け入れ昨夏のアジアカップでの地元サポーターとの違いを見せつけたと思う。
この日の日本代表のスタメンはジーコ監督の明言通り国内組のみで形成されたが、これは高く評価できる。いくら中村、高原の調子が良くとも一度明言したことを翻しては選手達のモチベーション維持に支障をきたす。そして、ジーコから“抜擢された”小笠原の直接FKで先制点を挙げたのだが、この小笠原のゴールは相手にあたえる衝撃、そして彼の起用が間違っていなかったことを示すなどあらゆる意味で得点以上に効果があった。
だが後がいただけない。直後にも追加点の好機があったが得点には至らずそれが苦戦の原因となった。北朝鮮は失点後、日本の攻撃をペナルティーエリア内に侵入させない様にＤＦラインはあまり下げすぎない位置で維持をしつつも中盤のラインを下げ数的優位を保ち日本のバイタルゾーン侵入を防ぎ、前半のシュート数を5本に抑えた（北朝鮮は日本より1本多い6本）そして29分には早くも故障でコンディションがいまいちのエースキム＝ヨンスを投入した。ユン=ジョンス監督は一次予選でも3試合に前半での選手交代を慣行している。このエース投入によって在日Ｊリーガー安英学がより攻撃的に動くようになり攻撃に厚みが出て来た。29分、３７分のシュートもキム＝ヨンスが絡んでいた。また同じく在日Ｊリーガー李漢宰も積極的に中盤からミドルシュートを放つなど、アウェィの北朝鮮の攻勢が目立った。
日本は前半、28分に宮本があわやという場面と40分には三都主が自身のドリブル突破からシュートを放ったが試合開始10分以降のチャンスらしいチャンスはこの２回のみであった。
特にサイド攻撃に就いては、右サイドの加地の攻撃参加は顕著であったが、三都主の上がりはこのシュートと小笠原の得点のきっかけになった開始直後のファウルをもらった突破のみであった。　43分にはユン＝ジョンス監督は早くも二人目の交代カードを切った。左サイドＤＦをナム＝ソンチョルに替えたのだが、前半再三攻撃の起点となった日本の右サイド加地の突破をケアーする為か？実際後半に入って加地からの突破は激減した。
こうして北朝鮮が失点後早めの選手交代でチームを再構築し主導権を握りだす。これは力が劣るチームが取る典型的なゲームプランだ。恐らく朝鮮の選手達は時間が経つにつれてこのゲームに対する自信を深めて行った事だろう。
同点にされた後、ジーコ監督が動く。64分に高原、66分に中村を投入したことでシステムの変更と共に流れが変わった。
高原は3本シュートを放ったが、うち一本は少なくとも決められたはずである。一時ドイツのサッカー少年の間ではノーマークでシュートを外すことを“タカハラする”と揶揄された。どうやら日本の子供達の間でも使われそうだ。ロスタイムの大黒の決勝ゴールは我々を救ったと共に松田、本山をベンチから外してまでもベンチに入れ、その上試合にまで起用したジーコ監督も救った。というよりもジーコの眼力なのか？？
日本が後半放った11本のシュートのうち、半分以上が欧州組みが投入されてであった。
この試合、日本のシュートがゴール枠を捕らえたのは北朝鮮より4本も多い16本のシュートを放ちながら、北朝鮮のそれより少ない5本（北朝鮮は6本）であり、これは次戦以降の課題だ。
だがロスタイムのゴールで勝利を得た事は大きい。昨年オマーン戦での久保の決勝ゴール、アジアカップでの中澤の同点弾、そして97年ウズベキスタン戦の呂比須の同点ゴールとロスタイムの得点が目立つ様になった。アジアでは10年以上も前からトップクラスでありながら、ドーハの悲劇を招いたり、ワールド杯フランス大会でアジアから出場4カ国の中で唯一勝ち点無く終わったりと、いわゆる勝負強さが未だ技術に追いついていなかったが、ここに来てその勝負強さが備わってきた。こればかりはアウェーでゲームを行う等の場数を踏まねば改善されない。
北朝鮮は86分に直接ＦＫから素晴らしいショットを含めこの日最多の3本のシュートを放ったキム＝ヨンジュンを初め在日Ｊリーガーの二人以外にも日本と対等に戦った選手達が見られたことから次のホームでのバーレーン戦に向けて大いに収穫もあっただろう。
日本は次に最強の相手イランとアウェーでしかも累積警告で出場出来ない三都主、田中抜きで戦わねばならない。まだまだ我々は先の北朝鮮戦でのロスタイムの様な思いが続くのかもしれない。