彼らは Sunshine Coast から来たとの事だった。それだけでなく JAPAN のサポーターゾーンであるはずなのに Aussie Supporter が何人もいた。日本ならユニフォーム姿でアウェー側には入れさせないが。ただここでは少しでも危険な行為とみなされる振る舞いをすると屈強な警備員が飛んできて摘まみ出される。
一緒に観戦していた人と前半を振り返っていると隣の老夫婦が前半のフォーメーションを訊いてきたので自分のノートを見せる。 彼らもスタメンのアナウンスと掲示板のメンバー紹介がまったく出鱈目だったことに気づいていた。後方の留学女学生達は後半がいつごろ始まるのが訊ねて来たので大体の時間を伝えた…….
試合はこのまま終わるとは絶対に思わなかった。それだけに前半終了間際の玉田のFKが惜しまれてならなかった。後半にはいって選手交代を含めてどういう作戦を取るのだろう?しかしこの試合はGKを都築、川島と二人ともベンチに入れるくらい人手不足だからなぁ……
後半に向けて大歓声に迎えられて日豪の選手達が入場してくる。 掲示番には先制ゴールの闘莉王が映し出される。 円陣を組んで後半の臨む選手達を祈る様に凝視する…何とか凌いでくれよ…と。
両チーム選手交代無いまま後半はオーストラリアの攻勢で始まる。
47分には Kennedy のクロスを Sterjovski がシュートを放つが内田がクリアー。
50分には Carl のFKを内田がクリアーするがこぼれ球を Neil に拾われシュートを撃たれるがポストの右に外れる。54分にはCulina のCKから Sterjovski が後ろに掏らす様にヘッドを放つがこれはゴールネットの上に落ちる。
しかし日本も55分に Neil からのパスをインターセプトした松井がドリブルシュートを放ったり、58分には岡崎が右からのクロスボールを受け上手く切り返してシュートを放つなど徐々に挽回を見せ出した。
しかし59分 Grella が反則を受けそのまま自身がゴール前に放り込んだFKに Cahill が飛び込み日本ゴールにヘッドを叩き込み同点とされた。 競技場中に大歓声が沸く。 さっきは頭の上から撃たれた闘莉王に今度は空中戦で競り勝ったが闘莉王はむしろ Kennedy の動きに気を取られていたので責めるわけにはいかない。むしろ中澤がいてくれれば…..と思うシーンであった。
Aussie のサポーター席では発煙筒が焚かれてそれがなかなか消えなかった....
1失点は覚悟していたが思いのほか早い時間に決められた。
失点直後、今度は内田が突破を見せる。 60分にはドリブルで突破しクロスを入れるがここは Schwarzer がキャッチ。 62分にも憲剛とのパス交換から Stefanutto を振り切り抜け出して逆サイドでフリーでいた松井にクロスを上げるが松井のボレーはジャストミートせずゴールには至らない。 天を仰ぐ松井。ここはワントラップ入れて切り返してもよかったか?
65分今度は Cahill が左から Carl のFKを受けてターンをしてシュートを放ち強烈なライナーが飛ぶがその前に線審が旗を上げた。
あまりの鋭いシュートに後ろの女学生達が“どうしたんですか?今の入っていませんよね?大丈夫ですよね?”と訊くので、“線審が旗を上げているから今のゴールに入っても得点にはならなかったと思いますよ。 オフサイドじゃないかな?”と言うと
“良かった~”と安堵の声を上げる。後で知ったが Cahill にハンドがあったらしい。
68分に日本ベンチは松井を下げて矢野貴章を入れた。 これで前線にターゲットが出来たけど、背番号10番の松井は負傷をしたらしい。
この日のオーストラリアもCBには不安があるはずだ。前線に張りついていてくれれば….と思う。 憲剛が右に入り玉田がトップ下に入ったようだった。71分を過ぎると闘莉王が上がって来るようになった。さっき競り合った Cahill に決められたので自らもう1ゴールを思ったか?しかし闘莉王にはしっかりと守って欲しいと思った。
闘莉王が上がった時は今野がDFに入るが相手がオーストラリアでは闘莉王にしっかりとDFラインに入って欲しいと思った。しかしまたもオーストラリアが盛り返す。
73分には Kennedy, Cahill と繋いで Sterjovski に撃たれるがその前にオフサイド、
75分にはこれまで抑えられていた Nick Carl が振り向きざまにショットを放つ。ここは楢崎がファインセーブで凌いでCKに逃げる。
そしてそのCK, ファーサイドに抜けて行ったがそこに走り込んだ Cahill が阿部と縺れながらシュートに持ち込みそのままゴールネットを揺らされてしまった。
同じ選手に連続失点。しかも決められたのが Tim Cahill 。さすがに Everton でと言うよりも Premiership で存在感をみせるFWだ….と大歓声に沸く観客を見ながら呆然と思った。
後ろの女学生達の泣きそうな悲鳴が聞こえる。更に後ろの Aussie 達の叫びとも歓声ともとれる雄叫びが…
“逆転されちゃいましたね……” 隣席の顧客が嘆息をもらす。
“そうですね…あとベンチに誰がいましたかね…”
こうなるとオーストラリアも守備をきっちり固めて来るだろうなぁ…と思うと逆転ゴールから2分後の78分にオーストラリアベンチは Williamns と Carle を下げて Scot McDonald と Jacob Burns を入れる。Burns は10月アウェーのカタール戦以来の登場。Williams に替って右サイドバックに入る。 McDonald はこの日 Cahill か Kennedy に替ってスタメンかと思ったけど…ワールドカップ予選は7試合目の出場だがまだ得点が無い。 この試合では入れてくれるなよと思った。
完全な守備固めと言う訳でもないし経験の少ない選手がDFに入って来たのでまだチャンスはあると期待したかったが、ベンチの選手が..
84分に橋本に替って興梠が入った。 興梠は昨年ACLで所属先の鹿島アントラーズが Adelaide United と試合を行った事から試合前から結構知っている人が多かった。 しかしもっと早く入れてくれよ…とも思った。これで憲剛がボランチにはいったのかな….
興梠が入った直後に内田が右サイドを突破し入れたクロスを憲剛がファーサイドから放つがこれはDFに当たりCKに、しかしCKを取っても高さのあるオーストラリアはしっかり中を固めて来てチャンスを作らせてくれない。
86分に大歓声を浴びて Tim Cahill がベンチに下がりDario Vidosic がピッチに送られる。 Vidosic は代表デビュー戦だった。これで McDonald がトップ下に入り Vidosic が右サイドハーフに入った。 時間が刻一刻と無くなるなか日本が繋いでオーストラリアゴールに迫るのだけど中を固めるオーストラリアDF陣の間になかなか割って入れない。 シュートを撃ててもゴールの前には Shcwarzer が構えている。 86分の矢野のシュートはDFにクリアーされ、88分の玉田のミドルは Schwarzer の正面。90分に憲剛が右サイドを突破してあげたクロスも Shcwarzer の長い手に掴まれた。
ロスタイムは2分あったけど…得点が入る気配はなく、そのままサウジアラビア人の KHALIL IBRAHIM 主審のホイッスルがなった。 あぁ残念…….. 周囲には失望感が漂った。そして見事な逆転勝利に公式発表観衆 69,238 人のうちの90%近い人達の幸せそうな歓声が……… 掲示板にはこの日の Man of the Match , Tim Cahill の得点シーンが何度も映し出される。その度に歓声があがる。
Samurai Blue の選手達がこちらのゾーンに挨拶に来る。 はっきりいってこれだけのメンバーでしかも中澤が離脱した中で良く戦ってくれたと思う。 確かに勝てるチャンスもあったけれど…..
そして今度は闘莉王が一人でこちらに来てくれた。 彼こそこの試合でアウェーの中で最後まで声援を送った我々サポーターを勇気付けてくれた選手だった。私はいっぺんに彼が好きになった。 後で知ったけど彼は悔し涙を流していたらしい………
周囲の人達とお互いに“お疲れ様でした。 御苦労さまでした。” と挨拶をし、 Aussie 達とは “ See You in South Africa !! “ と声をかけられ握手をした。
ホテルまで徒歩で帰った帰りの道中何人もの Aussie 達に See you in South Africa と言われた………
“う~ん、悔しいですね……”
“勝てる気ぃせんよ。シュート撃たへんねんもん。“
“俊輔、遠藤、長谷部、中澤…..彼らが抜けるとダメですかねぇ…..”
“相手も中心選手が抜けていますからね、言い訳にはしたくないですね…”
“日本人は背が低いのばかりやなぁ….これじゃ、ワールドカップベスト4もないで”
“背の高い選手もいるんですけどね….”
“いやいや、背の高い選手の中に低い選手の特徴を生かさんとヨーロッパ勢には勝てんぞ…..”
“野球選手は大きいのいるんですけどねぇ…….”
共に観戦したお客様達とこういう会話をしながら、次第に湧いてくる悔しさを抑えながらホテルに帰った…..
ホテルに帰って Fox Sports で他のアジア地区予選、サウジアラビア対北朝鮮の試合を見ようと思った。翌日は朝6時に出発だけど、しかし開始と同時に寝てしまった。目が覚めた時は鄭大世が上半身裸で座り込んで泣いているシーンだった。そして白色のサウジの選手達が首を振りながらピッチを後にしていた。
スコアーが出ていなかったので最終的に北朝鮮が44年振りに本大会出場を決めたのを確認できたのは次の訪問地 New Zealand の 首都Wellington に着いてからだった。
鄭大世よおめでとう。 朝鮮労働党よ核開発をやめろよ。
さもなくば旧ユーゴスラビアの様にならないとも限らないぞ……