Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

アジアの女子サッカーは世界最高のレベル… Matildas にアジアの壁… ②

2011-10-24 | Football Asia
3試合を終えて Matildas は1勝2敗の4位。3連勝で首位を走るなでしことは6勝点、2位の北朝鮮とは5勝点の差がついている。更に中国が1勝2分で2勝点 Matildas を上回っていた。残りは2試合。次の中国との対戦はお互いに生き残りをかけたサバイバルマッチとなってしまった。
“五輪予選突破の為には残りの2試合はまさに勝利が必要とされる試合。選手達にとっては北朝鮮戦や日本戦と同じくらい難しいものとなる。物事がスムースに進んでいれば前向きにそして自信を持ってプレーできる。 いかに我々が困難な時に物事に対処するかと言う事がチームやスタッフにとって真のテストとなる。 次の2試合のキーは我々がいかに自分自身をコントロールするかである。通常、我々は大変立ち直りが早い選手団である。そしてこの信頼を完璧にする事が最後の2試合において我々のマニフェストとなるであろう。“Sermanni 監督は中国戦を前にこの様に語った。
サバイバルマッチのキックオフの約1時間半前に終わる日本対北朝鮮の試合では Matildas, 中国の両チーム関係者はひたすらなでしこの勝利を願っただろう。北朝鮮が勝点7のまま4試合を消化すれば中国はオーストラリア戦に勝てばその時点で中国が北朝鮮を上回る事が出来た。 オーストラリアが勝っても北朝鮮と勝点1差で3位に浮上する。
しかしながら北朝鮮の最終戦は格が落ちるタイ。タイには負ける事はまず考えられなかったので3試合を終えた時点で既に中国、オーストラリアに残されたチャンスは殆どなかったのかもしれない……

The Westfield Matildas defeated host team China   Australia 1-0 China 8th Sep.
サバイバルマッチに臨む両チーム。 Matildas は Garriok, Kellondo Knight GK Williams こそ名を連ねたが前のなでしこ戦からスタメンメンを7人も替え、 DF Polkinghorne Slayter , FW De Vanna, Walsh らはベンチスタートとなった。
一方ホスト国の名に掛けても最終戦まで“生き残りたい”中国は前の試合で 2-0 で大会初勝利を収めたタイ戦のスタメンからメンバーを3人替えた。タイ戦ではスタメンで起用された注目の美人選手韓端はベンチスタート。そしてタイ戦はベンチスタートで交代出場後ゴールを決めたエースストライカー徐媛はスタメン起用された。
これでの両国の直接対戦成績は中国の18勝8分5敗。試合は開始から地元中国が10,167人の観衆の後押しを受けて これまでの対戦戦績を示すかの様にMatildas ゴールに迫る。 6分馬君のクロスに徐媛が合わせるがショートはGK Williams の正面に。その直後には中盤からロングボールが左サイドを疾走する徐媛に送られそのままドルブルシュートに持ち込むがWilliams が再びブロック。 12分には古雅莎からのパスを受けた徐媛がまたも Matildas ゴールに迫るがここも Williams がブロック。 試合序盤は中国の攻撃を GK Williams そして DF Laura Alleway とKim Carroll が必死に跳ね返すシーンが続いた。
劣勢のMatildas は22分に左からのクロスを Simon がボレーで合わせるが僅かにボールを外れる。
その1分後またもロングボールが前線に送られフリーで徐媛が受けるが線審はオフサイドの判定。後でビデをみたらオフサイドではなかったらしい… 27分今度は左サイドを崩した Matildas が中に送るが Heymann がボレーシュートを外しチャンスを逃した。
その後も中国が攻勢にでるがゴールを割る事が出来ず前半は 0-0 で終えた。



後半3分中国ベンチは古雅莎に替えて美人選手韓端を投入する。 



しかし後半開始から徐々にペースを握ったのは Matildas 。 1対1での体格差が徐々に表れ始め、また試合開始当時から続いた中国MF陣ビルドアップが構築できないと言う現象は解消せず、前線の徐媛、尤佳の2人の個人突破頼みは変わらなかった。53分には右サイドから Simon にパスが通るが角度の無いところからの Kyath Simon のシュートは GK張挹茹の正面に。
そして61分右CKを得た Matildas は波状攻撃を見せ MF Laura Allway が2度立て続けにシュートを放つが相手DFにあたり跳ね返されるも最後はそのリバウンドを Van Egmond が直接蹴り返したシュートが中国ゴールネットに突き刺さり後半優勢に試合を進めていた Matildas が先制ゴールを決めた。



中国ベンチは66分尤佳を下げて馬暁旭、74分には周菲菲を下げて屈珊珊を投入し攻撃の枚数を増やすそして韓端と馬暁旭をトップに張らせ4トップ状態で同点ゴールを狙う。 Matildas も先制後の64分 Simon に替って De Vanna を入れて前線の運動量を増やし、屈珊珊が投入されると FW Heymann を下げて DF Polkinghorn を投入する。
中国はロングボールを多用し前線にボールを集めるが攻撃のバリエーションが乏しく Matildas は最後まで自軍ゴールネットを揺らさせなかった。 
ボール支配率では中国が 53.1% と上回ったが相手ゴール前 30m 内に侵入した回数が中国の22回に対してオーストラリアは27回と上回っている。シュート数を見るともっと違いが顕著に表れ Matildas 15 に対して中国が 6。枠内シュートは Matildas が7本もあったのに中国は僅かに1本。ボールはキープしても相手陣内深い地域には侵入できずなかなかシュートに持ち込めなかったという事だろう。



“私はこうやってチームが立ちなおった事が大変嬉しい。 重要ないくつかの試合に敗れ大会をあとは帰国を待つのみとなった状況ではたやすく負けてしまう事は解っている。しかしこの試合で選手達がいかに集中していたかと言う事がわかり本当に嬉しい。15分を過ぎて我々の方が勝っており勝てるチームである事が解った。試合の立ち上がりの中国チームは大変危険であった。一旦我々が落ち着くと彼女達のオプションを削除する事が出来た。我々は大変タフなトーナメントになる事は解っていた。我々は惜敗を2試合喫した。もし我々が勝点9を挙げて3位で終えられればそれは良いトーナメントで有ったと言えるだろう。 まだレース上に残っている事がこのチームにとってハイライトになるであろう。“ Sermina 監督はこの様に述べた。

この試合の前に行われた日本対北朝鮮戦は 1-1 で引き分けた。 オウンゴールで先制したなでしこはそのままリードを保ち五輪予選突破決定目前で交替出場の金朝蘭のゴールで同点に追いつかれロンドン五輪出場決定はお預けとなってしまったが、この金朝蘭の同点ゴールは中国、オーストラリアの選手達により大きなショックを与えただろう。
その中で行われた試合。地元中国を相手に勝利を収めた Matildas が一縷の望みを残せる結果となった。
そしてなでしこの五輪出場が決まった。3日前にはなでしこの勝利を在留邦人女性達に言いふらし回った私だがこの日は目の前を歩く Aussie Girls や Ladies に御礼を言わねば…と思った。( 勿論何も言わなかったけど… )
それにしても中国サッカーはどうなってしまったのだろう…男子はとっくに弱体していつけど女子も……
この試合は NHK BS で中継されたそうだ。なんで最初に言ってくれなかったのだろう。タイマー録画をしたのに…。韓端を見たかったなぁ…..

Australia 1 (Emily VAN EGMOND 62’) China 0
Westfield Matildas : Lydia WILLIAMS (gk), Servet UZUNLAR, Laura ALLEWAY, Kim CARROLL, Elise KELLOND-KNIGHT, Aivi LUIK, Emily VAN EGMOND, Teigen ALLEN, Heather GARRIOCK (c), Michelle HEYMAN (4. Clare POLKINGHORNE 75’), Kyah SIMON (11. Lisa DE VANNA 65’)

中国隊: GK ①張挹茹; DF③周高萍、⑤翁新芝、⑥袁帆④-李丹陽;MF ⑪古雅莎 (⑩韓端 ’48 ) ⑧馬君、⑯張娜
⑲周菲菲 ( ⑱屈珊珊 73’); FW ⑦尤佳 ( 馬暁旭) ⑨徐媛

Westfield Matildas ready for Korea
11日間の五輪最終予選も最終日を迎えた。既になでしこは予選突破を決めており。この時点で3位のオーストラリアまで可能性が残されていたとは言え2位の北朝鮮も最終戦はまず負ける事が考えられないタイ戦。 Matildas がロンドン五輪に出場する為には韓国戦の勝利だけでなく北朝鮮の選手達がまた大量にドーピングで引っかかってくれる事くらいしか可能性が残されていなかった。
“勝利は我々に3位の座を齎す。 この目標以外に我々は何も考えられない。この試合は北朝鮮戦や中国戦同様難しいものとなるだろう。 我々は中国戦に臨む前同様に前向きな姿勢を以ってこの任務に集中する事が大変重要である。”
Sermanni 監督は故障を抱える多くの選手が何とか最終戦でプレーできる事も望んだ。
“この大会では前のトーナメント(ワールドカップ)よりも選手達の故障に悩まされた。 Kyah Simon と Caitlin Foord は韓国戦はベンチ入り出来ないだろう。選手達は100%フィットしていないが Sarah Walsh, Sally Shipard らは起用出来る目処が立つだろう。 “
中国戦で途中交代した Kyah Simon はくるぶしを負傷しており韓国戦はベンチから外れるとの事であった。 
こうした状況下Matildas は韓国戦に臨む事となった。

Westfield Matildas come from behind to beat Korea Republic Australia 2-1 Korea Republic

初戦“格上”と思われた地元と 0-0 の引分けを演じた韓国であったが続く日本戦は一旦は追い付くも1-2で敗れ、第3戦の北朝鮮戦も5分に李賢英のゴールで先制するも3連続ゴールを喫し 2-3 で敗れ、第4戦の格下タイ戦では主力を休ませたがようやく 3-0 で勝利を収めた。既に予選突破の可能性は無くなっていたが最終戦のオーストラリア戦に勝てば3位が見えて来る。若い選手が多いので今後の為にも格上のオーストラリア相手に結果を出したいところだっただろう。
最終戦ではスタメン8人を入れ替え日本戦で起用されたスタメン7人を入れてレギュラーメンバーでスタメンを組んで来た。
一方の Matildas は怪我で離脱した Kyah Simon 以外全て中国戦でスタメン起用された選手達が連続して名を連ねた。
これまでの対戦成績は韓国の5勝5分2敗。これは意外な戦績だと思った…



韓国は INAC 神戸レオネッサでプレーする池笑燃のみならず2ゴールを挙げている李賢英も要注意選手。しかし先制ゴールは 27分MF権荷娜が決めた。 権は日本戦でも途中出場した選手。 Matildas は今大会先制ゴールを許した試合は敗れており
公式戦の逆転勝となるとワールドカップでの1次リーグ最終戦ノルウェー戦までさかのぼらねばならなかった。
しかもその試合は両チーム1次リーグ突破が掛かった試合であった。
しかし後半、 Sarah Walsh, Lisa De Vanna が投入されると一気に攻勢に転じる。 63分には FK を得ると Heather Garriock が Servet Uzunlar に流しそのまま Uzunlar が放った強烈なショットが GK Jun Min Kyung を襲う。 Jun Min Kyung は何とかその弾道を弾き出すがこぼれ球に詰めた De Vannna が押しこんで Matildas が同点とする。
勝利を狙う Matildas は69分に FW Tameka Butt をMF Teigen Allen に替って投入するとその7分後 Garriock のクロスを受けた Butt が逆転ゴールを決める。



逆転されてから韓国は同点ゴールを目指し 84分日本戦にスタメン出場し、INAC神戸でプレーする⑮ Kwon Eun Som, 88分に⑫ Lee Sea Eun を投入し Matildas ゴールを脅かすシーンも演じたが GK Williams , DF Kim Carroll を中心とした守りで最後まで失点を許さず2試合連続完封を達成。 3位以上の座を確保した。
同時にキックオフとなった北朝鮮 vs タイ戦は 5-0 で予想通り北朝鮮が圧勝。 なでしこに続いて北朝鮮が五輪切符を手に入れた…..
 
“今日は大変伯仲した難しい試合だった。私はこの試合の後半に逆転をした選手達の見せた気骨と奮闘を誇りに思う。最初の3試合で2試合も負けた事を考えてみれば容易に大会を投げ出してしまうことは単純に考えられる。この試合をひっくり返した事が選手達の気骨を示唆している。“
同時に Sermanni 監督はチームが怪我に悩まされながら力強く大会を終えられた事を誇りに思った。
“もし今大会の全てを見ていたのであれば我々が逆転勝を出来るとは考えられなかったはずだ。ワールドカップの最後の試合で我々はフィットして来た。2人の故障を抱えた、本来ならチームに合流できない選手達と共に大会に臨まねばならなかった。そして3人程の選手だけが故障を抱えていなかった。 我々の戦力は限られていた。私はいかにして選手達が奮い立ったかを誇りに思う。彼女達はピッチ上に何も残さなかった…



Australia 2 (Lisa De Vanna 63', Tameka Butt 76') Korea Republic 1 (Kwon Hah Nul 27')
Westfield Matildas : GK ⑱Lydia WILLIAMS ⑩Servet UZUNLAR ⑤Laura ALLEWAY ③Kim CARROLL ⑧Elise KELLOND-KNIGHT ⑥Aivi LUIK ⑫Emily VAN EGMOND ②Teigen ALLEN ( ⑲Tameka BUTT 68’) ⑦Heather GARRIOCK (c) ⑳Michelle HEYMAN ( ⑪Lisa DE VANNA 46’) ④Clare POLKINGHORNE ( ⑨Sarah WALSH 46’)

韓国:GK ①全 ; DF ③李垠美 ④沈篼姸 ⑤ 金度妍 ⑥柳志恩 MF ⑦田佳儿 ( ⑫ 李世恩 )  ⑧権荷娜 ( ⑮ 権恩松 ) ⑬李賢英 (⑲車妍喜71’) ⑭趙昭賢 FW ⑩池笑燃 ⑰柳英雅

4年前同様ワールドカップでは準々決勝に進出しながら五輪予選は突破出来なかった Matildas 。まだ AFC に加盟してから五輪予選の壁は破れていない。 
それだけアジアのレベルが高いと言う事だけど、五輪は全体の出場枠が12カ国なのでアジアからは2カ国しか進出出来ない。
ワールドカップの結果からもう1カ国増やしてほしいところだけど…. そうなると男子が減らされるか?
他国の事を心配している場合ではないが次のワールドカップ予選までの3年間、彼女達に選手強化の為に潤沢な予算は廻って来るのだろうか….
なでしこも来年のロンドン五輪後大きな世代交代を余儀なくされるかもしれない。その時に後任のなでしこ達が育っている事を祈る。今かつてない追い風、順風が吹き荒れているこの時期に…….

10月6日~16日またも11日間で5試合日程が組まれたとベトナム、ホーチミンで開催された AFC U-19 Women’s Championship で日本 U-19 は見事優勝を果たし来年ウズベキスタンで開催される FIFA U-20 Women’s World Cup 進出を決めた。そして2位となった北朝鮮。3位に入った中国もFIFA U-20 の出場権を勝ち取った。
オーストラリアは6カ国中5位に終わった。  
なでしこ予備軍も順調に育っているみたいだ。 男子は今度こそ U-20 通過してくれよ…



アジアの女子サッカーは世界最高のレベル… Matildas にアジアの壁… ①

2011-10-24 | Football Asia
世界タイトルを勝ち取りその1ヶ月半後厳しい日程を乗り越えて来年の五輪出場を勝ち取ったなでしこ達の姿を今やテレビでは見ない日は無い。本当に正当な評価だと思う。今世界一のタイトルを保持している競技、団体はプロ野球と女子サッカーだけだからだ。しかし女子サッカーは“世界一”になる前となった後での格差は激し過ぎるとも思った。
今のなでしこ達の素晴らしいところは先人達の残した事そしてこれまでの積み重ねに敬意を払い続けている事だ。それはその時代を良く知る代表に長く身を置く澤穂希がいるからだ。彼女の存在が先人達の功績を後世に伝承していく事だろう。 これは男子サッカーではあまり見られない事ではないかな…しかし代表が強くなった今、サッカーという商品価値が一気に上がった幸せな時代なのだ….

9月5日、その日は商用でシドニーの見本市に参加していた日だった。閉幕時間である午後5時が近づいて来た時、携帯電話で中国で行われていたロンドン五輪の女子サッカーアジア地区最終予選の結果を検索する為にヤフーサイトにアクセスした。そしてなでしこがオーストラリア代表 Matildas を 1-0 で破った事が解った。
おもわず拳を握りしめた。 タイ、韓国を連破したあとのこの Matildas 戦が1つの山場と思っていた。昨年の AFC Women’s Cup で優勝を果たしワールドカップでベスト8に残った Matildas と同じくワールドカップに出場した北朝鮮との直接対決で勝点を幾つ稼げるかがこの11日間で5戦を行う過酷な日程を勝ち抜くひとつのポイントと思っていた。
だから Matildas 戦の勝利で大きく予選突破に近づいたと思ってほっとした。
見本市後に現地日本人の方が経営する日本食レストランに行った。そこで働く日本人女性達に試合結果を教えてあげた。
“日本勝ちました。これでロンドン五輪に大きく前進です。”
彼女達は本当に喜んでくれた。そして私は付け加えた。“日本女性は素晴らしい。世界一です。”
だけど気になった事も。現地の人達の間ではあまりこの五輪予選が話題になっていなかったらしく、いつ予選が始まってどこで詳しい試合経過が解るのかなかなか解らなかったらしい。 オーストラリア女子サッカー代表チームは現アジア王者、いや女王なのになぁ……

West Field Matildas defeated by world champions Japan Australia 0-1 Japan 5th Sep.

何年にも亘って特に近い関係を持っている日本は強くて友好的なライバルである。 彼女達との戦いは常に特別なものとなるであろうと言う事は解っている。日本は我々の限界をテストしようとするだろう。我々は日本のプレースタイルに大変な敬意を払っているがそういった敬意はお互いに持っている事だろう。 日本が世界タイトルを勝ち取った後にこの予選にどの様に焦点を定めているか見るのが非常に楽しみである。 世界一に酔ったままか、変わらずプレーするか。 大きな大会での過去の対戦成績は対等である。トップチームとの対戦は引分けか1点差の勝敗だ。明日の日本戦ではこれまでの歴史通りになる事を希望する。そして次の日本戦で結果が出ればこの五輪予選突破に大きく前進できる。

試合前日 Matildas の Tom Sermanni 監督はこう語っていた。 ワールドカップでは若い選手を起用。1次リーグではそれが功を奏したが準々決勝戦ではミスから失点を喫しスウェーデンに敗れ準決勝進出はならなかった。だから最も警戒する相手と思っていた。この Matildas 戦に勝てれば北朝鮮戦は引き分けても、最悪負けても予選突破の2位以内が充分に射程内に収まると思っていた。 しかし Matildas は初戦で北朝鮮に敗れている。この日本戦に対する意気込みはなでしこ達以上ではないかと危惧もした。

この試合のなでしこは全員がワールドカップのレギュラーメンバー。一方の Matildasは前のタイ戦からスタメンを8人も替えて来た。しかし初戦の北朝鮮戦でスタメン起用された選手が8人。このなでしこ戦のスタメンがレギュラーメンバーであった。ワールドカップレギュラー選手を7人なでしこ戦に先発させた。ただGK はタイ戦で起用されワールドカップでレギュラーだった Anne Barbieri が起用されるかと思ったが北朝鮮戦同様に23歳 Lynda Williams が起用された。 Williams は175cm Barbieri は 166cm その違いだったのだろうか…. そして Sara Walsh も日本戦で今大会初スタメン起用された。
さすがにDFラインは③ Kim Carroll 175cm, ④ Polkinghorne 171cm ⑬ Slatyer 174cmと長身選手が揃う。更にベンチには⑫ Van Egmond 175cm , ⑮ Sally Shipard 176cm そして緊急召集された 180cm のDF ⑤ Gloria AllwayそしてFW ⑳ Michelle Heymann 180cm らが控える。
Denmark Fortuna Hjorring でプレーするVan Egmond はワールドカップではレギュラーだった選手。ワールドカップではDFで起用された ⑩Caitlin Foord は本来の攻撃的ポジションで起用された。本来 FW 選手である Uzunlar もワールドカップでは Foord 同様守備的ポジションで起用され、この2人の連係ミスからピンチや失点を招くシーンもあったがこの予選大会では Uzunlar もFWで起用されていた。

開始早々日本ゴールに迫るのはアメリカ Magic Jack でプレーする 156cm の⑪ Lisa De Vanne。右に左に動いて日本DFを撹乱しようとした。 De Vannna は2007年 ワールドカップ中国大会で4得点を挙げたストライカーだ。2006年アデレードで行われた Asian Cup ではこの Walsh と De Vannan にかなりやられた。 
しかし10分も過ぎるとなでしこ達のボール回しが上回る様になり永里らが決定的なシュートを放つが惜しくもクロスバーの左に外れる。 その後もなでしこのチャンスが続くが GK Williams がファインセーブを見せ得点には至らなかった。
後半に入りなでしこは⑩澤が比較的高い位置を取るようになり更に攻勢が続く。また美人選手⑮鮫島のサイド攻撃も顕著になって来た。そして62分、素晴らしいビルドアップから最後は⑨川澄が決めてなでしこが先制をした。前半の半ばからDF4人の前に MF 陣4人を並べ効果的なブロックを敷いていたがこのシーンはなでしこ達のボール回しが完全に上回った。
先制を許した Matildas ベンチは72分に DF Slatyer , ⑭ MF McCllum を下げて FW の⑩ Yesim Uzunlar ⑰ Kyah Simon を投入する。 Uzunlar はワールドカップではレギュラーでこの五輪予選も北朝鮮戦、タイ戦とスタメン起用されていたのだがなでしこ戦はベンチスタートだった。 Simon がピッチに入って来た時永里に抱きついて健闘を誓っていたけどこの2人は過去にどういう接点があったのかな…
Matildas は同点ゴールを狙って前線にロングボールを多く起用する様になるがなかなかシュートに持ち込めない。なでしこは71分に川澄に替って⑪安藤梢そして82分には⑪大野忍に替って⑱丸山香里奈といった前線の選手達が投入されたので Matildas の両サイドバックはなかなか上がれなくなった。丸山は五輪予選初登場。彼女のゴールが見たかったけど….
85分には 160cm の FW ⑨ Sarah Walsh に替って180cm の Heymann が投入され、最前線が4トップの形になるがなでしこDF陣もしっかりと対応し最後まで失点を許さなかった。

試合後 の記者会見でSemanni 監督はまず勝利を収めたなでしこに祝辞を送りこの様に述べた。
“我々は本当に日本に打ち負かされた。 日本はいかなる瞬時でも大変な自信と落ち着きを持ってプレーしていた。 我々はこの試合は予選の中でももっともタフな試合になると解っていた。そしてワールドカップ終了からどれだけ戻って来ているか常に考えながら大会に臨んでいた。 我々はよく準備と休息が出来て大会に臨んでいると感じていた。 それが分岐点になると思っていた。しかし今それが正しくない事が解った。今のキーポイントはまだ我々には2試合残されていると我々が思える事が出来るかどうかだ。 まだ五輪予選突破の可能性は残されている。可能性が残されている限り我々は前を向いて臨まねばならない。”

前に直接対決を見たのは2006年アデレードで開催された AFC Women’s Cup だった。この時なでしこは Matildas に 0-1 で敗れたのだけど今回は 1-0 の勝利。しかも試合内容を圧倒していた。ワールドカップを優勝した事でプレーに自信が植え付けられたと言う印象をテレビで見て感じた。
日本同様ワールドカップ終了後から短いインターバルで五輪予選に臨んだ Matildas の最も懸念されたのが選手達のコンディションだった。なでしこ戦をテレビで見る限りその心配が的中したと言えただろう。運動量で圧倒的な差があった。まだ肌寒さの残る南半球からの遠征ではこの日の気温28度は厳しかったかもしれない。
Semanni 監督が“格下”のタイ戦ではメンバーを大幅に替える等“ターンオーバー制”を敷いたのも選手達のコンディションを考えてなのかもしれない。
試合日程も Matildas にとっては少し不運だった。初戦で北朝鮮、第三戦で日本と当面のライバルと調子の出にくい序盤であたり連敗した事で五輪予選突破に大きくブレーキが掛かってしまった。 
しかし取りこぼしのきかない短期集中開催でしっかりと勝点を重ねるなでしこは本当に凄い、さすがだと思った。
集中開催…1993年のドーハの悲劇。そして1996年マレーシアで行われたアトランタ五輪予選の歓喜を思い出した……



Australia 0  Japan 1 ( Kawasumi 62' )

Westfield Matildas : GK ⑱Lydia WILLIAMS ②Teigan ALLEN ⑬Thea SLATYER ( ⑩ Servet UZUNLAR 71’) ③Kim CARROLL ④Elise KELLOND-KNIGHT ⑯Caitlin FOORD ⑭Collette MCCALLUM (c) ( ⑰ Kyah SIMON 71’)
④Clare POLKINGHORNE ⑦Heather GARRIOCK ⑪Lisa DE VANNA ⑨Sarah WALSH ( ⑳ Michelle HEYMAN 83’)

日本 : GK ①.海堀あゆみ DF ② 近賀喬子、③岩清水梓、④熊谷紗希、⑮鮫島彩 MF ⑥阪口夢穂 , ⑧ 宮間あや ,
⑨ 川澄奈穂美 ( 71’⑦安藤梢 ) ⑩ 澤穂希、FW ⑪大野忍 ( 82’⑱丸山佳里奈 ) ⑰ 永里優季 



Westfield Matildas squad announced 18th August
なでしこ達が戴冠を受けた FIFA Womes’s World Cup から1カ月。約2週間後に迫ったロンドン五輪女子サッカーアジア地区予選のメンバー20人が発表された。
ワールドカップには怪我でメンバー入り出来なかった Sarah Walsh, Thea Slayter ( 共に Sydney FC ) の2選手が代表に復帰。そしてワールドカップメンバーに最後に漏れた Aviv Luik ( Brisbane Roar ) も五輪予選メンバーに入った。
ワールドカップメンバーの中では赤道ギニア戦に先発出場した Lauren Colthorpe が膝の怪我で、そしてスウェーデン戦でスタメン起用された Ellyse Perry , 赤道ギニア戦でスタメンだった Leena Khamis や Casey Dumount らが外れた。
“最終メンバーを決めるのは再び難しい決断であった。” Semanni 監督は胸中をまず吐露した。
“我々は多くの才能に満ちた選手達を抱えている。11日間で5試合を行う五輪予選にたった20名しか選出できないのでは選考過程で大変バランスを考慮する必要があった。柔軟性を持ってプレーするグループである事が大変短い期間で行う試合数のキーとなる。 Thea と Sarah の2人は共に特別な質をチームにもたらす。そして今チームはアジアの大きな大会に臨む彼女達の膨大な経験と知識が加えられた。 

Sara Walsh はこれまで代表出場歴64試合。 Thea Slayter は46試合。 共に27歳のベテラン選手。Walsh は代表通算29ゴールを上げており、7月のワールドカップに出場出来なかった事が非常に悔まれた。
平均年齢 21.9歳のワールドカップメンバーにWalsh, Slayter といった2006年Asian Cup の日本戦で好パフォーマンスを見せた彼女達が戻って来た事でなでしこも相当苦戦すると危惧をした…しかしその後 Matildas に災難が降りかかってきた。

Teigen Allen - Sydney FC - 17 - 9 (0), Laura Alleway - Brisbane Roar - 21 - 4 (0),
Melissa Barbieri - Melbourne Victory - 31 - 80 (0), Tameka Butt - Brisbane Roar - 19 - 23 (1),
Kim Carroll - Brisbane Roar - 23 - 44 (2), Lisa De Vanna - Brisbane Roar/magicJack - 26 - 71 (25),
Caitlin Foord - Sydney FC - 16 - 5 (1), Heather Garriock - Sydney FC/LdB Malmo - 28 - 125 (20),
Elise Kellond-Knight - Brisbane Roar - 20 - 25 (0), Samantha Kerr - Perth Glory - 17 - 18 (3),
Aivi Luik - Brisbane Roar - 25 - 12 (0), Collette McCallum - Perth Glory - 25 - 68 (11),
Clare Polkinghorne - Brisbane Roar - 22 - 49 (2), Sally Shipard - Canberra United - 25 - 5(4),
Kyah Simon - Sydney FC - 19 - 29 (7), Thea Slatyer - Uncontracted - 27 - 46 (2),
Servet Uzunlar - Sydney FC - 21 - 26 (1), Emily van Egmond - Canberra United - 17 - 8(1),
Sarah Walsh - Sydney FC - 27 - 62 (29), Lydia Williams - Canberra United - 23 - 26 (0)

Head Coach: Tom Sermanni, Assistant coach: Spencer Prior, GK coach: Paul Jones, Doctor: James Ilic
Physiotherapist: Kate Beerworth, Assistant physio: Lauren Cramer
Sam Kerr ruled out of 2012 London Olympic 29th August

初戦の北朝鮮戦を3日後に控えた28日。練習中に FW Samantha Kerry が膝を負傷し離脱を余儀なくされた。
Kerry は17歳ながらこれまで代表試合出場が18試合もあり3ゴールを決めており今年のワールドカップでもブラジル戦、ノルウェー戦そしてスウェーデン戦にスタメン出場したレギュラー選手だった。
“ Sam の怪我はごく普通の練習中に起きてしまった。残念だけどこういう事はスポーツでは起こりうることだった。 重要な事に Sam はこういう状況でも予想できる通り good spirits であった。 Sam は生き生きとしておりチーム内でも人気があった。そして彼女の存在がただ無くなっただけだという共鳴を創造できる選手だった。 我々全ての考えはこの瞬間も彼女と共にあることで、彼女がすぐに復帰する事を確信している。” 

Samantha Kerry の離脱により翌日 Michella Heyman が緊急招集された。
Canberra United の FW 選手 Heyman は昨年中国で開催された AFC Women’s Cup のバックアップメンバーであった。
“今大会で我々が求める柔軟性という点を考えれば Heyman は理想の選手だ。彼女がウィングや前線のポジションで見せるプレーはチームに何か異なったものを与えてくれる。 Michelle は今大会に必要となる素晴らしいペース、柔軟性そして器量を兼ね備えており、 Sam Kerr と同じ様な事をもたらしてくれるだろう。 我々は本日(8月29日)休息の必要な選手達と共に練習を休み、Heyman が合流する翌日の練習を見て初戦のメンバーを選考する。” 
この様に Semanni 監督は語った。 Heyman は昨年3月に行われた北朝鮮との試合で代表デビューを飾っている。

Matildas Ready for opener
“大変難しいトーナメントになるだろう。多くのタフなチームがありタフな試合があり最後に残る事も出来る。選手達が最善を尽くし有用性を得たチームが五輪に残る事が出来るだろう。 北朝鮮はアジアではアジアの戦いの中では決勝に進出するか予選を突破するかのどちらかを達成すると言う突出した歴史を残している。彼女達は五輪の為にここに来ている。 明らかに彼女達の準備は何人かの選手達が出場停止処分を受けた事で頓挫もしただろうが、彼女達は立ち直りが早く、また立ち直りも早い国を木曜日(9月1日)の初戦で相手にする事は非常に難しい事だ。 昨年Asian Cup で、そして今年の国際試合で見た Matildas がここでも見られる事を願っている。 それは選手達あポジティブなサッカーをするチームで、本当に集中をしたチームで、勝つ試合をフィールド上で演じるチームで五輪の本当に行きたいと言う野心をもったチームだ。 “ Semanni 監督はこの様に語った。
そして GK Melissa Barbieri 主将は “ 技術的に Asian Cup で準決勝、決勝戦に進出した時と同じ試合数で出来ない任務では無い。 ” と予選に臨むにあたってこの様に語った。

Westfield Matildas suffer narrow defeat to DPR Korea Australia 0-1 DPR Korea 1st Sep.
9月1日。これまでこれほど注目された事がなかった女子サッカーの五輪予選が開幕した。 
日本の初戦、タイ戦のキックオフの笛が吹かれたのとほぼ同時に斉南五輪スポーツセンターで Matildas は強豪北朝鮮との一戦に臨んだ。 この予選会の日程も開催国である中国が組んだのだろうか? 候補である北朝鮮とオーストラリアを初戦で直接対決となった。思い出すのは1980年3月マレーシアで開催されたモスクワ五輪アジア地区予選。たった一つしかない出場権を競い本命が韓国、対抗に地元マレーシアと日本が予想されていた。しかし当時の力からして韓国が最有力だった。( モスクワ五輪サッカーもアジアから出場枠が3カ国あったが予選は地域に分けて行われた。) 
大会日程は地元であるマレーシアが組み、初戦で日韓が対戦する事に。当時この予選を中継するテレビ局はさっぱりなく深夜に韓国のラジオ局から流れて来る中継を必死に聴いていた。 日本は善戦するもPKで先制され更に2失点を喫し終了直前に木村和司のアシストから高原が決めて一矢を報いたものの 1-3 で敗れた。 そして地元マレーシアはその後何と韓国を 3-0 で粉砕し予選終盤に行われた日本対マレーシア戦では碓井のゴールで日本が先制し期待させられたが後半ジェームス=ウォンに同点ゴールを決められ上位2チームが残る決勝戦に日本は進めず、決勝戦ではまたもマレーシアが終了直前にジェームス=ウォンのゴールで韓国を破りモスクワ五輪出場権を獲得した。
しかしモスクワ五輪はマレーシアもアメリカ、西ドイツ、日本に同調しソ連軍のアフガン侵攻に抗議しボイコットをした…..
今では考えられない事ばかりだった…..

おそらく地元中国は北朝鮮とオーストラリアを直接対決させて星を潰しあって貰って何とか上位2位以内に滑り込み五輪出場権を獲得したかったのではないだろうか…そういう意味ではなでしこの初戦はタイ戦で良かったと思った。もし初戦でタイか中国以外が相手だったらどうなっていただろう……

注目の初戦。北朝鮮のスタメンはDF 遊正煕 MF 李芝京、趙潤美、金淑京、FW 羅恩心 金明花ら6人のワールドカップメンバーをふくんでいた。ワールドカップ大会中にドーピングで陽性反応のあった Song Joung Sun, Sim Pok Jong らを含め13人のメンバーが入れ替わった。ベンチにはワールドカップで3試合出場した金恩珠はベンチスタートだった。 2010年AFC Women’s Cup の決勝戦のオーストラリア戦に出場した選手4人がスタメンに起用された。
一方の Matildas のスタメンは代表に復帰した Slatayer そしてワールドカップメンバーが8人が入っていた。 GK はワールドカップではレギュラーだった Barbieri ではなく Lynda Williams 。スタメンに起用されたワールドカップ経験者の中では怪我で交替出場が多かった Sally Shipardがいた。 レギュラークラスではVan Egmond そして代表復帰した Sarah Walsh がベンチスタートだった。そして Asian Cup の決勝戦に出場した選手7人がスタメン出場していた。
試合は開始早々 Ellis Kellond Knoght のシュートが僅かにクロスバーを越える等 Matildas が主導権を握るかに見えたが10分ワールドカップメンバーだった金淑京のゴールで北朝鮮が先制する。 
後半に入って 67分に Sarah Walsh , 74分に Kyah Simon そして78分に Michelle Heyman ら FW 選手が投入され、 Walsh がGK趙潤美と1対1になり出鼻をチップキックで浮かせてゴールを狙うが僅かにポストの右に外れ、 その後Simon が放った強烈なショットもGKの正面を突く等最後までゴールネットを揺らせず黒星スタートとなった。

   

“勝ち試合にはキーとなるチャンスがあるのだがこの試合の私達はそれを勝ち取れなかった。それが恐らく両チームとの差であっただろう。我々はタフで厳しい試合の続くこのトーナメントにやって来たのであるが、少しばかりがっかりさせられたパフォーマンスもあった。しかし考え方によっては我々は勝利に繋がるチャンスを多く造ったとも言える。それはまだ大会はこれからも試合は続くのだと示している。我々は次からの4試合に集中する代わりにこの試合の敗北に必要以上に失望したり集中を乱したりしてはならない。 ”
試合後 Semmani 監督はこの様に語った。 そして久々に Matildas に戻った Walsh, Slatayer そして緊急招集された Heyman らが強豪北朝鮮相手にある程度のパファーマンスを見せた事も Semmani 監督を喜ばせた。

Australia 0  DPR Korea 1 (Kim Su Gyong 10')

Westfield Matildas : GK ①Lydia WILLIAMS, ⑩Servet UZUNLAR ⑬Thea SLATYER ③Kim CARROLL ④ Elise KELLOND-KNIGHT ⑮Sally SHIPARD ⑭Collette MCCALLUM (C) ⑦Heather GARRIOCK
⑲Tameka BUTT ( ⑰Kyah SIMON 75') ④Clare POLKINGHORNE ( ⑳Michelle Heyman 79') ⑪Lisa DE VANNA ( ⑨Sarah WALSH 65')

北朝鮮: GK ① 趙潤美 DF③金南煕、⑤風善花、⑥尹松美、⑮遊正煕 MF ⑦李芝京、⑧趙潤美 ( 89’⑭黄圣美 )
⑨金淑京、FW ⑩金英愛 ( 59’⑲金恩花 ) 、⑪羅恩心、⑰金明花 

Westfield Matildas put five past Thailand Australia 5-1 Thailand 3rd Sep.
中1日おいてのタイ戦。 北朝鮮戦のスタメン8人を入れ替え途中出場だった Michelle Heyman, Kyah Simon をスタメンに起用。そしてGK には Melissa Barbieri , MF Van Egmond らワールドカップレギュラーメンバーがこの試合にはスタメンに起用された。
タイのスタメンは日本戦で怪我の為に20分でベンチに退いた DF Sritala Duangnapa そして FW Nisa Romen の2人を除く9選手が連続スタメン起用された。初戦の日本に敗れはしたがある程度はやれると自信を持ったのではないか? 
しかしながらこの試合は立ち上がりからフィジカルで圧倒的に勝る Matildas の猛攻で幕を開けた。
12分、 Heather Garriock が直接ねらったFKは僅かにクロスバーを越えたが13分に波状攻撃から Kyah Simon が先制ゴールを上げるとその2分後には Michelle Heyman がゴールを決める。
Heyman はこのゴールを以前チームメイトで本来ならこの日が誕生日であった7月20日にトレーニングの帰りに交通事故で亡くなった元Illawarra Stingrays のAshleigh Connorに捧げたとの事であった。
それはSimon とのパス交換でDF陣を置き去りにし最後はヘッドで押し込んだゴールであった。
更に34分、Garriock と Polkinghome が相手DFを引き付けフリーの Heyman がタイゴールに蹴りみリードを広げた。 そして前半終了間際には Simon が相手PA付近で粘ってボールをキープし Heyman に送ると今度は後方から走り込んだ Tameka Butt に戻し、Butt が放ったショットがタイゴールに突き刺さり 4-0 で前半を終えた。
後半に入り Matildas ベンチは Garriock に替えて Polkinghorne , Kellond Knight に替えて Sally Shipard と言ったワールドカップメンバーを投入した。
58分 van Egmond が30mのFKを直接叩きこみ 5-0 とした。その直後にDFの連係ミスから Dangda Taneekarn にゴールを奪われ 1点を還される。
タイベンチは61分に5失点の GK Sudtavee Kanyawee に替えて Pannipa Kamolrat を投入した。
その成果があったのかその後は両チームとも得点は生まれず 5-1 で Matildas が勝利を挙げた。



試合後のインタビューで Sermanni 監督はまず Heymann のパフォーマンスを称えた。
“Michelle はこの2年間で自信を得た。 彼女が2ゴールを挙げた事は素晴らしい事だ。質の高いストライカーのゴールだ。我々が5ゴールも決められた事が嬉しい。” 
61分にはワールドカップで Young Player of the Tournament を受賞した17歳の Catlin Foord も今大会初めて投入された。
そして日本戦に向けたコメントも。
“ゴール数を増やす事はこのトーナメントでは重要な事だ。今やアジアのチーム相手のゴールを決める事は容易ではない。またこの試合を前半で決められた事が良かったと思う。後半は何人かの選手を替えて次の日本戦に向けて休ます事も出来た。
しかしながら後半のパフォーマンスは多くの要望を残した。 タイは後半我々にプレッシャーを掛けて来たので我々はリズムを失った。 失点は基本的な守備のミスからだ。もし我々がトップチームを目指すならこの様な失点は避けねばならない。 次の試合は改めて90分間の試合に臨むスイッチを入れ直す必要のある大変重要な試合である。

オーストラリア戦を前になでしこは2連勝しており勝点で上回っていたが日本が3点差をつけたタイ相手に4点差をつけた Matildas 。この次の日豪戦は負けると得失点差で差をつけられる。最低でも引分けを…とこの時点で願っていた。



Australia 5 (Kyah SIMON 14', Michelle HEYMAN 16', 34', Tameka BUTT 45', Emily VAN EGMOND 58')
Thailand 1 ( Dangda Taneekarn 59’ )
Westfield Matildas : GK ①Melissa BARBIERI (c), ②Teigan ALLEN ⑩Servet UZUNLAR ⑥Laura ALLEWAY
⑧Elise KELLOND-KNIGHT ( ④Clare POLKINGHORNE 45') ⑲Tameka BUTT ⑫Emily VAN EGMOND
⑥Aivi LUIK ⑦Heather GARRIOCK ( ⑮Sally SHIPARD 45') ⑳Michelle HEYMAN ⑰Kyah SIMON
( ⑯ Caitlin FOORD 61')

Thailand : GK ①Sudtavee Kanyawee ( ⑱ Pannipa Kamolart 61’ ) DF ② Darut Changplook ③ Suphaon Kaeobaen ⑫ Kwanruethai Kunupatham ⑯ Saengchan Khwanrudi ( ⑤Kanjana Sung Ngoen 46’ )
MF ⑧ Junpen Seesraum ⑨ Warunee Phetwiset ⑩ Sunisa Srangthaisong ⑰ Anootsara Maijarern
⑳ Wilaiporn Boothduang FW ⑲ Dangda Taneekarn ( ⑪Nisa Romyen 64’ )

長谷部フル出場 その評価は… HSV Hamburg 1-1 Vfl Wolfsburg

2011-10-24 | EURO Football
このスタジアムにはもう何度脚を運んだ事だろう…
欧州クラブの“地元”サポーター達は日本人選手が在籍している時は大挙して押し寄せいなくなると潮が引く様に来なくなる“日本人観光客”の事をどう思っているのだろう….
10年以上前に初めて来た時はイランのマハダビキアがいた。そして高原が入団し、彼が Frankfurt に去ってからも。ここには何度も来た。2006年のワールドカップの時には2度もここで観戦した。そしてそれからも…..
2004年シーズン開幕前に商用で訪れた時。この時はまだ高原が在籍していた。 Fan Shop に寄ってお土産を物色していた時全ての店員さんが私に。“ Takahara Olimpisch !! “ と非常に嬉しそうな表情で私に声を掛けて来た事。それは”我々の選手がオリンピックに出るんだ。“という喜びを感じているんだとすぐに解った。
この人達の事を思い出し、その後高原が会った事もない医師が五輪派遣には健康の保証が出来ない、と不可解な決定を降した事が残念でならなかった。
アテネオリンピック開幕時にそのシーズンの Budesliga が開幕した。高原は途中出場を果たした。それは当時の監督がこの決定に対し抗議をしているかのように思えた。私は少し溜飲の下がる思いがしたけど HSV のサポーター達はもっと胸がすかっとしたのではないか……
今、HSVはここしばらく見られなかった程に喘いでいる。 今シーズン9試合を消化して2勝1分6敗で最下位に甘んじている。まだリーグ戦4分の1強を消化しただけであるがこれまで二部リーグに陥落した事のないチームの低迷ぶりにドイツ入りした約10日前からほぼ連日チーム周辺の報道新聞紙上等に見られた。
そしてついに10月18日、Thorsten Finke 新監督を迎える事となった。しかし Finke 氏はスイスの強豪チーム FC Basel 1893 の“現役監督”であり今は UEFA Champions League に参戦中でもあった。
その Champions League の Benfica Lisbon 戦の日に HSV への“移籍”が発表された。 
“現役監督”に声をかけるクラブ幹部もそうだけどそれを快諾する Finke 氏の胸中もちょっと….と思ってしまう。
それが売った買ったのプロの世界と言い切ってしまえばそうなのかもしれないけど…
確かに今 Basel は11試合を消化して勝点19。首位 Luzern とは5勝点差の5位と“低迷”してはいるが…
キックオフ前なのにずいぶんTVカメラとマイクが集中していると思ったらそれは Finke 新監督へのインタビューだった。







スタジアムに向かう電車内は勿論 HSV サポーター達で埋め尽くされていた。それでも私の周囲には緑色のマフラーを巻いた Wolfsburg サポーターが数人。しかし HSV サポ達とは非常に平和的に会話がはずんでいる。
高原がいた時は HSV サポーター達から“タカハラ ! タカハラ!”と声を掛けられたが今は誰も声を掛けない。(当たり前か…)
女性のWolfsburg サポの1人と目があったので
“貴女は Wolfsburg から来たのですか?”と訊ねると
“Wolfsburg 出身だけど今は Hamburg 郊外に住んでいる。”と答えたので
“私は日本から来た。そして今日は Wolfsburg と Hasebe を見に来た。”と言うと周囲の Wolfsburg サポ達が一斉に私に親指を立てながら長谷部を称え始めた。
電車は停車駅ごとの混雑が増しある HSVサポが“ Wolfsburg は aussteigen ( 下車 ) してくれ。”と言うと話していた女性が “ Ausstigen ( 降格 ) はそちらのほうよ。“と返し車内に笑いが。
すると他の HSV サポが“こちらはまだ2部でやった事は無いぞ。”といったので彼女は“我々は2009年の シーズンのチャンピオンよ。”と返す。
彼女の耳元で“ 2008-09年は長谷部がプレーする Wolfsburg が優勝した。昨シーズン優勝した Dortmund は カガワがいた。日本人のいるチームは優勝する可能性がある。 HSV は今いない。”というと非常に受けて周囲の Wolfsburg サポ達に教えてだした。
彼女は前に週に私が Basel にいて Champions League を観戦したけど Basel の人達はみながっかりしていたよ、とか 38年前Alex Magath が現役時代 HSV のメンバーの一員として来日し TOYOTA CUP を戦った事等を話した。 もっとドイツ語がわかればもっと多くの人達ともっといろんな話が出来るのになぁ…いつもそう後悔する….
HSVのスタメンは前節 Freiurg 戦で2トップであった韓国代表の⑮孫興民と38.Zhi Gin Lam を2人ともベンチスタートとしペルーの⑨ Paolo Guerrero とクロアチアの ⑩Mladen Petric を2トップに置いた。Freiburg 戦は孫興民の先制ゴール等で 2-1 で今シーズン2勝目を収めていたので孫興民が見られると少し楽しみだったのだけど….







その他はベネズエラの Tomas Rincon をスタメンに起用しボランチに置いていた。 Rincon はこの試合の前ワールドカップ予選でベネズエラ代表としてアルゼンチンを降した歴史的ゲームのメンバーでもあった。
Wolfsburg は前節 2-1 と勝利を収めた Nurnberg 戦のスタメンから選手を4人替えて来た。後半から途中出場であった⑬長谷部が右サイドバックのポジションにスタメン起用され、⑤韓国代表の具滋哲がなんと ⑱Mario Mandzukic と組む2トップに起用されていた。長身の Mandzukic のやや後方という感じではあったが…
日韓両選手本来のポジションでの起用では無かったがそこは Magath 監督の考えがあっての事だろう。
選手紹介の後で Finke 監督が映し出されると大きな拍手が沸いた。








HSV のキックオフで始まった試合は65秒、前節では出番のなかった2列目右の② Patrick Ochus がサイドをドリブルで上がり入れたクロスに中央で待ち構える長身の Mandzukic ヘッドで合わせてあっさりと Wolfsburg が先制ゴールを挙げた。 Ochus にも Mandzukic にも全くマークがついておらず練習でも見られない様な綺麗なドリブルからクロスそしてヘッドだった。 








HSVというよりもここの雰囲気はホームチームの選手達に試合への入りを遅らせる何かを作っているのか?と錯覚させられる。こういう失点は私でさえ3度は観ている….
その後は目が醒めた如く HSV のシュートシーンが連続して演出される。4分にはトルコ人の右MF⑰ Gökhan Töre のFKにGuerro がヘッドで合わせるがゴール枠を外れ、9分40秒に後方からのパスに Töre が左SB④ Marcel Schäfer と競りながら放ったシュートはSchäferの脚に当たり惜しくも外れ、その後のCKから Guerro が再びヘッドで狙うが惜しくも外れる。
だけど以降 HSV はシュートに持ち込めなくなってしまう。パスをやり取りする選手だけで動いているのでコースが簡単に読まれてしまう。だから何度も容易にパスカットされてしまう。 長谷部の動きを見ると顕著に上がる Ochus の後方を上手く埋めて、相手が攻撃に転じると自分のサイドに入ってくるボールを持たない選手でもうまくマークしている様に見えた。またCBの⑮ Christian Träsh と連携して攻守の切り替えに対応している様だった。
そして時折見せるミドルパスも効果的に思えた。
20分を過ぎると再び HSV のシュートシーンが続く様になった。 23分にはCKのこぼれ球を拾ったTöreがミドルを放ち24分にはセルビア人ボランチの44.Gojko Kacar が撃ったミドルは GK ① Diego Benaglio が弾き出す。
左SB④ Heiko Westermann がサイドを上がって来て攻撃の良い起点になっていた。25分には Westermann が左サイドを上がり入れたクロスに合わせた Petric が放ったシュートはGK Benaglio の正面に。26分には Westermann が自ら放ったミドルは惜しくもポストの右に外れ、27分には Westermann のクロスに Kacar が⑯Kyrgiakos と競りながらヘッドで狙うが Kyrgiakos に当たりCKに。
HSVの連続攻撃にスタジアムが沸くがシュートが外れたり止められたりする度に大きな溜息が洩れた。
30分を過ぎるとTöreが Ochus の上がった後の右サイドに流れて来る様になる。更に Rincon 、左SB Dennis Aogo らがドリブルで上がってくる。41分には二列目左の⑦ Marcell Jansen がドリブルで上がってくると長谷部がマークに入る前に外から上がった Aogo に送る。 Aogoの入れたクロスに Guerrero がヘッドを放つがゴール枠を外れてしまったがこれまでで一番良い攻撃が演じられた。
先制後劣勢続きでシュートに持ち込めない Wolfsburg は何度もピンチを招いたがGK Benaglio がファインセーブを連発したりDF陣が必死のカバーを見せ HSV の決定力不足にも助けられ何とか前半は無失点で終える事が出来た。

後半に入り HSV ベンチはセルビア人 CB 23 Slobodan Rajkovic に替えて左 SB だった Westerman をCBに置きオランダ人 CB⑤ Jeffrey Bruma と組ませ右SBに Aogo を左から回して来た。そして前半は足元へのパスばかりであったが後半は選手がスペースに入る動きや相手DFを引き付けスペースを作る動きが顕著に見られ開始から圧倒的に試合を支配し始めた。
そして55分遂に同点ゴールが生まれる。波状攻撃を見せ最後は Kacar からボールを受けた Petric が中央から放ったシュートがゴール右隅に突き刺さった。
失点後から攻勢を続けるも今一決定力に欠けていたHSV攻撃陣が遂に同点ゴールを奪った。








大歓声が場内を包む。そしてその余韻が残る1分後 Jansen がドリブルシュートを見せGK Benaglio が弾いてCKに逃れるとそのCKから Kacar がヘッドを放つが惜しくも外れる。 59分にはスルーパスを受けた Guerrero がシュートを撃つがDFに当たってこの時点で8本目のCKに。 Wolfsburg はこの時点でまだ2本しかCKを得ていなかった。その直後に右サイドでFKを得た HSV はTöreが直接狙うがここもGK Benaglio がパンチで弾き出す。 観客は逆転ゴールが決まるのが今か今かと Wolfsburg ゴールに迫る度に乗り出しては外れる度に大きな溜息と拍手も送っていた。








守戦一方の Wolfsburg は63分に具滋哲が中央からドリブルで突破そして Mandzukic にボールを送り久々のシュートを導き出すが GK Jaroslav Drobny がファインセーブを見せ大歓声を引き出す。
しかしこのシュートを機に HSV の一方的な攻撃の手が緩み始めた。同点ゴールの前に 2列目左の 24 Dejagah に替って投入された前節 Nurunberg 戦ではスタメンだった⑪ Hasan Salihamidzic がフィットして来たのか中盤とDFがしっかりと2ラインを構成する様になり HSV のパスがこの“網”に掛かる様になって来た。そして Ochus が右から左に入っていたがこれは相手右SBに入った Aogo 対策だったかもしれない。
パスがカットされる度に場内のサポーター達からは大きな失望の溜息が洩れる。 HSV ベンチは79分に Kacar を下げて前の Freiburg 戦ではスタメンだった⑬ Robert Tesche を投入し84分には Jansen を下げて孫興民ではなく Zhi Gin Lam を投入する。これで少し楽しみにしていた孫興民のこの試合の登場は無くなった......








試合は終盤になるにつれ両者当たりが激しくなりイエローカードも出される。HSV の選手にカードが出されたり Wolfsburg の選手に出されなかったり、倒れても起き上らないとものすごい口笛とブーイングが沸き上がる。
82分に映し出されたボール支配率を見ると HSV が51%であったが地域占有率でみると HSV が60% も占有していた。これだけ攻勢に出ているのだから観客は逆転ゴールを見たかっただろう。
87分にはDFのクリアーボールをそのまま Aogo がシュートを撃つが GK Benaglio がまたもやナイスセーブ。88分にはTöreからPaolo にボールが入り HSV サポーターは一斉に立ち上がるが Kyrgiakos, Träsh が必死に身体を寄せてシュートを撃たせない。ロスタイムに入りWolfsburg ベンチは具滋哲を下げて DF 23. Marcos Russ を投入し逃げ切りを図る。 そして久々に攻撃に転じた Mandzukic が倒されてなかなか起き上れない、大ブーイングを浴びてもいや起き上らない?
競り合いでは身体的強さを見せつけていたのに...








そして結局2分あったロスタイムも過ぎ試合は終わった。
HSVは前節に続いて勝利を挙げられそうな試合内容だっただけにサポーター達は少し不満が残るか...それとも上昇気流の兆しと考えるか....
Wolfsburg の Maghat 監督としてはアウェーとはいえ低迷する相手から勝点3を奪い、4勝ち点差で5位の Werder Bremen に迫り Europena League そして Champions League 争いに割って入りたかっただろう...
キックオフ前に試合を終えた Dortmund は 1FC Köln を 5-0 で粉砕し香川がゴールを決めた。そして長谷部は先発フル出場であった。
翌日以降の地元紙での長谷部の評価は何故か今一だった。 WELT am SONNTAG , Die Bild 紙は4.Kicker 誌にいたっては 4.5 であった。 確かに後半はあまり目立っていなかったけどなぁ.....
具滋哲は Kicker が3.5 で他は3だった。そして Kicker 誌が選ぶ Spieler des Spliels は当然のごとく Wolfsburg の GK Benaglio だった。試合終了後孫興民と具滋哲が何やら立ち話をしていた。









肝心の Magath 監督の評価はどうだったのだろう。次節 Wolfsburg は Herta Berlin をホームに迎える。
その試合で先発起用される事を願いながらスタジアムを後にした。いや、その前に怪我をしないでくれよと願うべきだろう。







11月にはワールドカップ予選が2試合あるから....


今度はアウェーの連戦だ。平壌に観に行きたいなぁ.........


これぞワールドカップ !!! Ireland 15-6 Australia 17th Sep. 2011

2011-10-11 | Weblog
腕時計のデジタルはもう77分を過ぎていた。Wallabies はもう Ireland ゴールの数メートル手前まで何度も迫っている。スコアーは15-6 で Ireland がリード。ここでWallabies がトライを決めてもまだ追い付けない。すると Cooper のパスがこぼれてそれを拾った⑭ Tommy Bowe が一気に右サイドを駆け上がる。周囲の Irish 達は大歓声を上げる。トライ寸前に何とか追い付いた⑭ James O’Conner がタックルに入り食い止める。競技場内に大きな嘆息が漏れる。もうこの時点でWallabies の勝は無いと多くの人が思っただろう。席を立つ Aussie 達が出て来た。
そしてノーサイドのホイッスルが鳴った。グリーンの一団が狂喜乱舞する。あぁこれが世界のトップクラスの闘いかぁ… と少し羨ましく思った。

前日深夜にハミルトンから帰って翌日はもうチェックアウトせねばならなかった。シティのホテルにはもう空き部屋が無かった。Aussie達に占領された様だった。
でも次の日は早朝のフライトでニュージーランドを脱出せねばならなかった。だから空港近くのホテルに宿泊する事にしていた。
前日All Blacks に 7-83 で大敗したけどこの日も日本代表のレプリカを着て外に出た。例え負けてもレプリカを脱ぐ理由などどこにも見当たらない。負けて脱ぐなら最初から着なければ良い。それが私の信念。ワールドカップ参加国として堂々と着てればいいと思っていた。
中心街のお気に入りの寿司テイクアウェイ店で寿司を買って AIR BUS EXPRESS に乗る為バス停に向かった。ところがバスがなかなか来ない。 中心街の Quay Street が閉鎖されてしまったのでバスルートが大きく変わったらしい。30分近く待ってようやくバスが来た時はほっとした……
初めてチェックインした空港のすぐ前のホテルは完成したばかりのモダンなホテル。値段も City Down Town のホテルより少し安いくらい。これから街中なんか泊らずにここに泊ろうかなぁ…と思った。
ホテルで事務処理をしたけどあまりに快適過ぎてあっという間に時間が経ちここ出たくなくなった。 やっぱり職場環境は大切なんだなぁ…..
試合が行われる Eden Park は今回初めて行く競技場。一旦街まで出ねばならないと AIR BUS EXPRESS の停留所に向かった。バス停には Irish, Aussie そしてSpringboks のユニフォームを着た家族がいた。 男の子に“昨年のサッカーのワールドカップは楽しんだかい?”と訊くと“ Yes “ と言うので、”私は日本人だけど、日本は Last 16まで残ったのを憶えているかい?“と訊くと男の子は2人とも頷いていた。するとお父さんが”1995年のワールドカップの日本戦も憶えているよ…” と話しかけて来た。あの時日本はAll Blacks 戦で 145失点だったけど昨日は失点83で済んだよ。と言うと、今大会日本は良くやっている、と言われた…..
Springboks の初戦 Wales 戦の疑惑のPG に就いては触れなかった。前の日に Wales サポータに話題を向けるとに彼らは、
Fxxxing English Referee と吐き捨てる様に言っていた…..

バスに乗り込むと運転手が Eden Park に行く人は途中で下車して下さい…てなアナウンスを行った。 これはラッキーと思うも初めて行く場所なのでどこで降りるべきか解らない。そして乗客も殆どが外国から来ているので同じ事を考えていたようだ。しかしやがて車窓からそれらしい雰囲気が伝わって来た。



緑の集団が目に付く様になって来た。そしてバスが停車し運転手が“ Eden Park の行く人はここで下車ください…”といった内容のアナウンスをし、殆どの乗客が一斉に運転手の方に向かった。彼は丁寧に競技場の場所まで私達に説明していた。 でも本当にすぐ近くだった…



キックオフまでまだまだ時間があった。多くの Irish 達がバーでビールをあおっている。でも半分以上は Irish 系の Kiwi だろうなぁ…と思った。 腹が減っては….と3軒ほど並んでいた中華料理屋の1軒に入った。客はいなかったけど20分もしないうちに Aussi, Irish そして Kiwi 達で一杯になった。 Kiwi 達はAll Blacksのレプリカを堂々と着ている。ならば自分も日本代表を着ていても恥じる事は無いと本当に思った。 中華料理屋は世界中どこでもある。日本人にとっては有難い事だなぁ…..



外は強い雨が降って来た。自分の席は屋根で覆われているかなぁ… と心配になった。そしてこの雨はどちらに味方するのかなぁ…とも思った。
雨が小振りになって来たので店を出て競技場に向かった。 Eden Park を見てその素晴らしさに驚いた。ここがこの国でのラグビーの聖地なんだろうなぁ…と思った。そして競技場の周囲は民家で囲まれている事も驚いた。
中華料理屋ではお茶しか飲まなかったので喉が渇いてたまらならず席に就く前にコーラを買った。 600ml が NZ$4.50 約288円。
日本の定価のほぼ2倍。近所のロジャースの3倍だ…と思った。
席は Category 2 にも関わらず素晴らしく見通しの良いところ。やっぱりラグビー大国は違うなぁ…でも将来 All Whites が強くなったらここで海外の列強とも試合をするのだろうか…と思った。それとも North Shore か Wellington のCake Tin こと Westpac Stadium を使い続けるのか…と関係の無い思いを巡らしていた。



まだ試合開始まで40分近くあったので着席されているところはまばらだったけど私の隣には御婦人が1人で座っていた。どちらからともなく声を掛け合った。彼女は自分が日本から来た事がわかるとまず、地震と津波のことを案じてくれた。それは彼女自身が Christchurch に住んでいた為であった。幸い被災地からは離れていたので被害は皆無に等しかったらしいが、地震当日はかなり揺れて怖かった事や知人の多くが被災した事を話してくれた。 前の週に Christchurch を訪れたけど中心街が全く復興していない姿を見てショックだった。と話すと、復興対策が遅いと彼女も不満を露わにしていた。そして Christchurch での試合は全てキャンセルになって残念。 日本の Pool Match が本当は Christchurch で行われるはずだったんだけど…てな話をした。
彼女は緑のフラッグを持っていたので訊ねてみるとIrish 系の移民らしく、当然この試合は Ireland が勝つチャンスがある。と言っていた。 今年の Six Nations ではフランス、ウェールズに敗れて3勝2敗であったが最終戦の England 戦では 24-8 と快勝を御収めている。Tri Nations を久々に勝ったとはいえWallabies にとってもけっして Easy な相手では無かったはずだった。
スクリーンに映し出される南アフリカ対フィジー戦を見ながらそんな話をした。



Ireland のスタメンは前のアメリカ戦からメンバーを4人替えて来た。注目は⑮ Rob Kearney。⑥ Stephan Ferris と共に 今年の Six Nations では出場機会が無かった選手だ。 ただ Ferris はアメリカ戦でスタメンだった。アメリカ戦ではスタメンでなかった本来のレギュラー⑨ Eio Reddan も① Cian Healy と共に起用された。SOはこの試合も Ronan O’Gara ではなくJonathan Sexton だった。
一方のWallabiesは James O’Conner が8月13日の南アフリカ戦以来スタメンに戻ったが、当初スタメン予定であった⑦ David Pocock, ② Stephan Moore が怪我の為に離脱し替って ②Tata Polota-Nau ⑦ Ben McClaman が起用された。思えばこれがこの試合の苦戦の始まりだったのだろう。結局Wallabies も前のイタリア戦から4人スタメンが替った事となった。
キックオフ時間が近づくにつれてだんだんと客席が埋まりだした。周囲の席も。ある男性が席を1つ詰めてくれ、と彼女に頼んだ。先ほども我々がある男性に頼まれて席を1つずらしたのだがその彼の連れだった。しかし彼女は今度は譲らない。何度も移動をさせられ我々が席を失ってしまうのを危惧してのことだった。 そして我々2人を含めた周囲10名ほど全員がチケットを差し出し座席を確認しはじめた。すると男性の1人が“あなた達の席は L だからもっと前だ。ここはLLだ。”と私達2人のチケットを指した。
あらら、これは形勢大逆転バツが悪い。慌ててこちらが退散する事に。そこで私は“彼女は Christchurch で私は日本から。共に Big Earthquake の被害にあったので、ここは御好意を。”と言うと他の人達も含め多くの人々に大受けした。彼女も笑っていた..そして私達は“本当の席”に着席した。 そこは更にピッチに近く選手達の動きが手に取る様に解る席。うわぁぁぁ~っと2人で顔を見合わせた。それでいてピッチ全体も良く見渡せる。さすが本場の競技場だと思った。
キックオフが近づくがその前にブラスバンドの素晴らしいドリルが披露された。これは見事。彼女にはこれは地元の軍隊のブラスバンドだと教えてくれた。さすが、節度が違うなぁ…と思った。



そしていよいよ両チームが入場し国歌が斉唱される。 後方の Aussie 達が Advance Australia Fair を合唱し出した。
キックオフ直前になると雨が降り出したがこの席の上は屋根からはみ出しておりもろに雨粒が降り注ぐ。
“ Another problem が起こったわ…” と御婦人が苦笑いを….. 

Wallabies のキックオフで始まったこの一戦。雨のせいかボールもピッチも滑り気味4分には Ireland にノックオンがありWallabies ボールのスクラムとなった。そこから Cooper の早い玉出しからWallabies がボールを繋ぎだそうとするが ⑮ Beale に ⑮ Kearney が入れたタックルがハイタックルに取られWallabies がPGを選択しこの試合ではスタメンだった O’Conner がボールをセットする。隣の御婦人は “ Babe, Baby Baby…” と口ずさむ。これくらいは決めるだろう…と思われたPGを O’Connor はポストに当ててしまい先制のチャンスを逸した。この日も Quade Cooper がボールを持つと Kiwi 達から凄いブーイングが飛ぶ…O’Connor はイタリア戦も最初のキックを外した。



しかし9分に再びスクラムで反則を貰って得たPGは正面と言う事もあり難なく決めてWallabiesが先制した。 後ろの Aussie 達は “ Go!! Wallabies !! “ の歓声を送る。 
だがここから Ireland が優位に試合を進める。 Quade Cooper のキック、パスがうまくチャンスに結びつかない。その度に Irish やKiwi 達から拍手が沸く。 そして13分にはPGを得てSexton が決め、17分にはオーストラリア陣中央で得たマイボールスクラムをのチャンスに早い球だしから Tommy Bowe が DG を鮮やかに決めて逆転した。 このDGは大きかったと思う。

Wallabies は強固な Ireland の守備陣の前になかなか陣地をゲイン出来ない。そして Ireland のカウンターも鋭い。ラグビーはあまり解らないがWallabies は中央へ中央へと突破をはかるのに対し Ireland はよくボールを両サイドに散らしている様に思えた。それでも23分には Tommy Bowe のオフサイドの反則を誘い得たPGをO’Connor が決めて6-6 の同点に追いつく。
そしてラック、モールでWallabiesが押すシーンが続いた。このプレシャーが功を奏したか25分には⑧ Jamie Heaslip がラックの中のボールを手で掻きだしたと反則を取られPGを選択する。これが決まればWallabies の再逆転と言うところであったが O’Connor が外してしまった。今大会は England の Wilkinson しかり、Press Kicker がPGや Conversion Kick を外すのが目立っている。

 

そしてこの時間から Ireland のスクラムを含めたプレッシャーの強さが目立ち始める。33分にはマイボールスクラムから反則を誘いPGを得るチャンスを。しかし今度は Sexton がPGを決められない。さっきの O’Connor のPGと言いあまり難しい位置でも距離でもないと思ったんだけどなぁ…雨もやんで上空はあまり風があるとは言えないんだけど…..
そして終盤のやく7分間はWallabies 陣営で試合が進み前半が終わった。  Irish 達の大歓声が沸き上がった。対照的に Aussie 達はちょっとこんなはずでは….といった表情。しかし後半は何とかなるだろう….とみな思っていただろう….

ハーフタイムの間に隣の御婦人や周囲の Kiwi, Aussie 達と話した。御婦人はルール説明の放送を聴くべくラジオを持っておられた。からりのラグビー通だなぁ…と思っていると御主人がラグビー関係の方らしく一般席でない関係者席で観戦されているとの事。Wallabies はオープンに早くボールを回そうとすると Ireland は上手く展開を遅らせている。この日のWallabies はスクラムが今一なので後半はそれが左右するかも…と教えてくれた。そして後半実際にその通りになったので本当に驚いた…
反対隣の老紳士はブリスベンからやって来たらしい。年齢を聞くと80歳。 Rugby League もけっこう見るらしい。
ブリスベンというと今年は洪水があったり大変だったと思うけどいかがでしたか? 3月に Suncorp Stadium で行われた A-League の Grand Final を観に行ったんですよ…てな話をしたんだけどなかなか通じなかった。だから御婦人が改めて説明してくれたら解った見たいだったけど A-League は御婦人も解らなかったらしく上手く伝わらなかった。
あぁさすが Native. それとも俺の勉強不足か….
御婦人はキックの応酬になると面白くなくなるのでそれを案じていた…

後半の開始早々はWallabies の早い展開が目立った。しかし Cooper のチップキックが相手にダイレクトでキャッチされる等この日の彼の出来は今一つ。隣の御婦人も“彼は好きでない…” と言っていた。




そして48分⑤ J.Horwill がオフサイドをとられ Sexton がPGをきっちり決め遂にというかようやく Ireland が再びリードを奪った。
この時点ではまだ Aussie達も少し余裕があったかもしれないがピッチ上ではなかなか Ireland ゴールが遠い。
Ireland は自陣内でもモール、ラックに持ち込み時間をかける。それはWallabies の焦りを誘う為だったのか….



50分にはIreland の Ronan O’Gara が投入されたが SOには Sexton がそのまま残った。 O’Gara の投入が Ireland の勝利を呼び寄せたのかもしれない。 Six Nations では Sexton とO’Gara が共にピッチに立つ事は無かったが8月21日のフランスとのテストマッチは ⑩ Sexton ⑫ O’Gara が共にスタメン出場していた。
53分には Ireland のマイボールスクラムからPGを得たがここは Sexton が蹴りポストにぶつけてしまった。これが決まっていればWallabies は苦しくなるところだったがAussie サポーター達の安堵の声が良く聞こえた。
そしてWallabies の怒涛のオープン攻撃が始まった。Cooper, O’Connro が起点となりボールを展開するが Ireland もタフな守備を見せる。何度かゴールライン直前でストップするシーンがあったがその度に Irish 達が大歓声を上げる。そして スクラムになる度に Ireland ! Ireland !! の大歓声が競技場にこだました。



58分にWallabies は良い攻撃を展開したが最後は② S. Moore がオフサイドの反則を取られたり焦りは払拭できなかった。
翌日のオーストラリア地元紙ではこの日の地元 Kiwi の Lawrence 主審のジャッジを
 “非常に厳格だけど一定していなかった。それが両チーム主将のフラストレーションを呼んだ。”と書かれていたが試合も終盤に近付くとリードを許していたWallabies の選手達が審判の判定に不服そうな表情を浮かべるシーンが続いた。
62分この試合を大きく左右した次の得点が Ireland に決まった。  Ireland ボールのスクラムを3度やり直した末にとうとう Wallabies 側にScrum Collapse の反則が取られた。そしてこれを途中出場の Ronan O’Gara がPGを決めて Ireland のリードは6点となった。まだ時間は20分近く残っていたけど追い付くには 1TG が必要だった。
それだけにWallabies は容易にボールを蹴りだせなくなった。Ireland はボールキープの時間を長く長く取ろうとしている。
しかし Wallabies はマイボールスクラムになっても Ireland のプレッシャーがきつくてボールが上手く出して繋げない。68分またも スクラムでfront-row crumbles の反則を取られ Ireland にPGを与え O’Gara が難なく決めて 15-6 と決定的な得点差にしてしまった。この時点で勝利を確信したか Irish 達はもう狂喜乱舞していた。 



それでもWallabies は相手22m陣内でプレーし続けた。1トライでも還して負けるにしても7点差以内であればボーナスポイントが入る。前に試合で Ireland はアメリカにてこずり勝つには勝ったがスコアーは 22-10 。ボーナスポイントは入らなかった。Wallabiesはこの後アメリカ、ロシアといった格下との試合が続くので1勝点でも上げたいところだった。しかし74分、抜け出したと思った ⑬Faingaa のミスパスで絶好機を逃し、その直後に Drew Mitchell が投入され Faingaa が退き ⑭ Ashley-Cooper が中央に入る。76分には Ireland ゴール1m手前に迫るが Ireland も必死に押し返す。77分Cooper のパスがこぼれて Tommy Bowe が拾い上げ一気に右タッチライン沿いを駆け上がる。 Irish 達が狂ったように送る歓声に乗って Bowe が疾走した…..



試合が終わって、幸福の笑みを満面に浮かべている隣の御婦人と挨拶をし別れを惜しみながら席を立った。
“地震は大変だったと思うけど good luck !!” と言われた。特に私は被災していないけど….
“ありがとう。 Nice Game でした。 Ireland が決勝まで進撃する事を祈ります。“

競技場の内外でそして街中に向かう電車の中でさらに街の中心街で….緑の Irish 軍団が喜びの宴を Kiwi達と一緒に繰り広げていた。 一方の Aussie サポーター達は、“これで準々決勝戦がSpringboks、準決勝戦がAll Blacks になってしまうだろう..” と消沈していた….



Down Town から空港に向かう Air Bus Express はなかなか来なかった。1時間近く待ってバスが来た時は涙が出そうに嬉しかった。そしてシャワーを浴びてベッドに潜り込んだのは午前1時を過ぎていた….

翌日、 Cairns 行きのフライトの中にはWallabies のレプリカを着た人達が10人程乗っていた。
亜熱帯のCairns は雨の Auckland と異なり過ごしやすく良い仕事も出来た。だけどホテルには何故か FOX Sports Channel 1,2 は入っていいたが3 が入っておらずワールドカップのテレビ観戦は出来なかった。でも疲れのせいか夜は早く寝てしまった。

Eden Park で観戦してから数日後に帰国したが日本はラグビーワールドカップの話題がさっぱり上がっていなかった。日本が出場しているにもかかわらず。まだ日本戦が2試合残っているにも関わらず…あの盛り上がりがものすごく懐かしく感じた…..

Wallabies は準々決勝で南アフリカを破って準決勝進出を決めた。次はAll Blacks 戦。事実上の決勝戦かもしれない。 Ireland は Pool League 最終戦でイタリアを退け首位で準々決勝に進んだものの Wales に 10-22 で敗れた。 
あぁ、本当は準々決勝あたりから見たかったんだよなぁ…..

準決勝戦、決勝戦。どんな試合になるのだろう。その前にテレビ観戦出来るかなぁ…




試合は曇りのち晴れ 天気は雨のち晴れのち雨のち晴れのち… Australia 32-6 Italy 11th Sep.

2011-10-09 | Weblog
ワールドカップもいよいよ今日から準々決勝、所謂決勝トーナメントが始まった。
残った8カ国の顔ぶれを見るとこれといった波乱も無く予想通りの顔ぶれとなった。
しかし Ireland が Australia を破ってグループリーグ1位で勝ち残ったので南北半球4カ国がそれぞれ同じゾーンに入ったので比較的下馬評の高かったAll Blacks 、Springboks そして Wallabies が決勝戦までお互いに消しあう事となった。こうなると Wilkinson の調子があがらず苦戦続きだった England が俄然有利になった、しかし今大会台風の目 Ireland も面白い…これからが真のワールドカップと言える戦いが始まるのだと思っていた…だけど俺の予想はこうも外れるとはなぁ....

日本が健闘を見せた時間があったフランス戦の翌日、同じ North Harbour Stadium でWallabies は今大会初戦になるイタリア戦を迎えた。 
この日私は同じホテルには部屋が取れず移らねばならなかった。しかしチェックアウトの際にその事を話すと、
“そんな事は無い空室はたくさんある。宿泊を延長しますか?”と言われた。
しかし次に取ったホテルは徒歩10分もかからないところでキャンセルが効かないと思ったのでその好意には
“ No Thank you “ と言うしかなかった。彼も残念そうに“それではまたのお越しを。昨日の日本は凄かったですね…” と言われた。
滞在中はずっと日本代表のレプリカを着続けていたので街を歩いていると多くの Aussie 達がWallabies のレプリカを着て闊歩しおており彼らに“昨日はナイスゲームだったなぁ。”と声を掛けられた。 
それだけ彼らにとっては“健闘”だったのかもしれない….
次のホテルにチェックインしても Aussie や Kiwi 達にフランス戦の事で話しかけられた…..

街中から前日乗ったシャトルに乗って Stadium に向かったが車中は殆どが Aussie 達。そこにイタリア人が10人程度混じっており日本人は ( 恐らく ) 私だけだったと思う。 バスは北部に向かうのには欠かせない有名な橋 Harbour Bridge を通るのだけどその橋は日本人技師が設計したらしい。この日の地元紙にもこの地域で日本と言えばここの橋が日本人によって設計された事以外はだれも関心が無かったが前日の試合はそれ以来初めて日本に関心が集まった日だっただろう。 
日本ラグビー史で最も素晴らしかった瞬間であった可能性がある…と書かれていた。でもかつては 1989年に Scotland に勝った事があるし 1983年にはアームズパークで Wales に 24-28 と健闘し、かつては England 相手に 3-6 と大健闘した。
それらはワールドカップが始まる前の事であるが世界の列強からすれば小国日本がかつてどんな興隆を見せたなんて関心は無かったんだろうなぁと思った。 そしてサッカーだったら世界に知られているのになぁ….と関係ない事を思い出した……

スタンドはWallabies のサポーター達、 Gold and Green Army で覆われていた。それでもイタリア国旗を打ち振る人達もちらほら目に付いた。 Five Nations への参戦が認められ Six Nations と改められた大会に出場するもイタリアはこれまで Pool Stage を突破したことがない。今大会もWallabies と Ireland と同じ Pool と同組で苦戦は免れない。初戦のWallabies戦では負けるにしても7点差以内で何とか勝点1は上げたいところだっただろう。 
一方のWallabies。ラグビーでは最大のライバルである隣国開催のワールドカップで優勝を飾りたいところ。Robbie Dean 監督は地元ニュージーランド人。史上初めてWallabies 監督に就任した外国人監督となったらしいが、前大会終了後に当然All Blacks の新監督に迎えられると思われていた。しかしN.Z. Rugby Union 協会は準々決勝止まりだったAll Blacks監督であった Graham Henry の続投を決めた。 この発表に地元の人達は大反論を唱えた。当然次は Christchurch Crusaders で指揮を取る Robbie Dean 氏が就任すると思われていたがこの発表後彼は Wallabies の監督に迎えられた。
この一連の当時、私は Christchurch に出張中で、“ Robbie Dean が監督の間は Wallabies をサポートする。”と地元協会の決定に激怒を示すタクシードライバーに出会った。
その翌年の Tri Nations でWallabiesは ホームゲームでAll Blacks を破り Aussie 達が“ Kiwi からの best gift だ。”と Robbie Dean 監督の事を話していた。
それでも次に Auckland で行われた試合ではAll Blacks が勝利を収め、しばらくAll Blacks がWallabies よりも優位に立っていた。今大会の直前に開催された Tri Nations でも8月6日All Blacks は地元でボール支配率ではリードされながらもWallabiesを 30-14で破った。しかし翌週 Springboks とのアウェー戦で 5-18 で敗れると8月27日、最終戦、ブリスベンで行われた試合でWallabiesがAll Blacks を 25-20で破り久々に Tri Nations 優勝を果たした。
この快挙にオーストラリアのマスコミは大いに沸き3度目のワールドカップ優勝をライバル国ニュージーランドで果たす可能性を連日報道していた。



そしてこのイタリア戦のスタメンはブリスベンでのAll Blacks 戦と同じスタメン。④ Dan Vickerman もスタメンに入り James O’Connor はベンチスタート。⑭ Adam Ashley Cooper  ⑬ Anthony Fainaga’a らがスタメンに入った。
そして⑩ Quade Cooper の名前が紹介されると Kiwi 達から一斉にブーイングが浴びせられた。  Tri Nations 最終戦でAll Blacks のDaniel Carter へのラフプレーは大会前から地元紙にずっと報道されていた。
オーストラリアのテレビ局でも “ The worst public enemy と地元では紹介されている…” と報道されていた。



一方のイタリアは② Ghiraldini ⑤ Van Zyl 以外は8月21日に行われたフランス戦と同じスタメンだった。そしてこの日のスタメンの中で日本戦でスタメン出場したのは⑭ Benvenuti ⑧Parisse 主将、⑥ Zanni ② Ghiraldini そして① Lo Cicero の5人だけだった。やはり日本戦はだいぶメンバー落ちだったのかぁ…と後で思った。

着いた席は前日とほぼ同じ2階の最前列。なかなか観易い席だった。そして左隣りには Kiwi の女性が右隣には 2世になるイタリア系 Kiwi 家族がいた。ご夫婦とも2世とのことで一緒にいた2人の御嬢ちゃん達はイタリアの国旗を顔にペイントしていいた。
“昨年のワールドカップでは All Whites と Azzuri とどちらを応援しましたか?”と訊くとどちらを応援したと言う訳ではないけどまさか引分けに終わるとは思わなかった。大会2連覇は難しいと思ったけど1次リーグを突破出来ないとは思わなかったと言っていた。

この日は朝から結構まとまった雨が降っていたが競技場に着いた時はすっかり上がっていた。しかしオーストラリアのキックオフで試合が始まる頃は雨がまた降り出して来た。



3分42秒。早速Wallabies がPGのチャンスを得る。だけどイタリアの⑫ Garcia が倒れている。リプレーを見るとモールの中で⑧ Parisse のかかとが Garcia の頭に当たっていた。距離はあるけどほぼ正面。 Quade Cooper がボールをセットすると会場からはブーイングの嵐。そしてそのPGが外れると今度は大歓声が上がった。数日後地元紙に彼の母親のコメントが載っていた。
元々はニュージーランド生まれの Quade Cooper だけど今大会中ずっとこういう目に会うのかなぁ…と思った。

立ち上がりはイタリアの出だしが良い様に思えた。 ⑨ Semenzato が良いキックを上げている様にも思えた。
そして17分、④Vickerman がオーバーザトップの反則を取られイタリアがPGを得る。ここで決まれば試合が面白くなると思ったけどBergamosso はPGを外してしまった。 その直後、今度は Quade Cooperに入れたGhiraldini のタックルが Late Tackle にとられWallabies がPGを得ると今度はブーイングの中でも Cooper が決めてWallabies が先制した。



昨日のフランス対日本戦同様、プレースキックは大切だなぁ…と思った。
その後もイタリアは何とかWallabies の攻撃を凌ぎ続けたが32分にオフサイドを取られてPGを献上。それを確実に Cooper が決めてリードを広げた。 それにしてもWallabies はキックが目立つなぁ…と思った。
だけどここからイタリアが反撃に転じる。スクラムでもWallabiesを押し込むシーンが続いた。そして36分モールの中のボールを ④Vickerman が脚で掻きだしたとホイッスルが鳴りイタリアがPGを得る。今度は Bergamo が決めてイタリアが 3-6 と差を縮めた。隣のイタリア系家族がずいぶん喜んでいた。 しかし更に彼らが喜ぶシーンが。
前半終了直前、またもWallabies は反則を犯し Bergamo がPGを狙う。
“決まれば同点だ….” 隣の男性が呟くのが聞こえた。 そのPGが見事に決まりそれと同時に前半が終わった。イタリア系の観客達とハイタッチをかわした。 



“あの11番は誰だ? デルピエロか?トッティか?”と言うと結構受けた。 でも今のイタリアのサッカー代表チームにはかつてほど名前が通ったスーパースターがいなくなったなぁ…..
前半のWallabies はちょっとミスが目立った。そしてイタリアの方がシンプルに前に前に進出しようとしている気がした。そしてターンオーバーを取ると素早くワイドにボールを回している印象があった。

後半、何人か選手を入れ替えて臨むかと思ったけど両軍選手交替は無かった。47分に⑬ Fainga’a に替って James O’Conner が投入された。オージーサポーター達からは大歓声が沸いた。 
そして50分にWallabies はワールドカップ初トライが決まった。 自陣からカウンター攻撃に転じ ⑪Digby Iona を起点に ⑮ Beale, ⑧ Samo と繋ぎ最後は③ Ben Alexsander がトライを決めた。カウンター攻撃を食らってもイタリアDF陣もけっこう踏ん張ったんだけどなぁ….だけどこの Conversion Kick は O’Conner は決められなかった。しかしこれでWallabies は落ち着きを取り戻したか猛攻が始まった。55分には Quade Cooper から⑭ Ashley-Cooper にナイスパスが決まりトライが決まり今度は O’Conner が Conversion kick を決め、その3分後には Cooper, Beale, Ashley Cooper と繋ぎ最後は Samo を経由して O’Conner がトライを決め、Goal Kick も自ら決めてあっという間に 25-6 とスコアーが開いてしまった。 
更に67分にもスクラムからの早いボールだしから Cooper、Ioane と繋ぎイタリアの Bergamasco, McLean が追いすがるもそのままトライを許し、O’Conner が Goal Kick を難なく決め 32-6 となった。これでWallabies はこの試合4個目のトライ。ボーナスポイントも得る事に。
隣の男性と言うか家族はすっかりおとなしくなってしまった。とはいっても元々静かだったけど….



何とか1トライを還したいイタリアは75分に Parisse が素晴らしいインターセプトを見せボールを前線に蹴りだす。 Bergamasco が先にボールに追いつくがすぐに捕まり最後は not releasing ball を取られてしまった。これが後半唯一イタリアサポーター達が沸いたシーンだった。



73分から雨がまた降って来て帰りが心配されたがその雨も試合終了までには止んだ。
その後何度かWallabies はチャンスを作ったが最後は反則で相手ボールになる事がありトライは上げられなかった。
そして 32-6 のままノーサイドの笛が吹かれた。 前半こそ苦戦を強いられたけど後半に本領発揮と言ったとろか。イタリアでさえこれだけやられてしまうのだからその強さを改めて認識した……



バスで City に戻りパブリックビューイングに行ってみた。ずいぶんと立派なパブリックビューイングだった。やはりラグビー大国なんだなぁ…と思った。2019年日本でワールドカップが開催された時はこれだけのパブリックビューイングは作れるだろうか….





そこでしばらく Ireland vs USA の中継を見ていた。開始からアメリカがずいぶん健闘していた。そして何度もアナウンサーは前日日本がフランスに健闘したことを話していた…..



この日宿泊したホテルは価格の割には設備は今一で部屋には Sky Sports が入っていなかった。ホテル内のバーの中と何故かReception の横のテレビでは Sky Sports が見られるようになっていた。宿泊客の一団がこの事を猛烈に抗議していた….
外は強い雨がまた降っていた。近くにあったフードコートで Take Away した中華料理を食べながらさっき見て来た Australia vs Italy の再放送を見た。そして試合終了とともにそのままベッドに雪崩込んで眠ってしまった…….. 翌日は Christchurch だった…


North Harbour に響いたニッポンコール…. Japan 21-47 France 10.09 2011

2011-10-01 | 夏季五輪

9月26日。会社を出てバス停で先月買ったばかりのスマホをいじっていた。
本当に便利になったなぁ… どこでも web site を見られる… 今夜ジャイアンツはどうなったかなぁ…この前の阪神3連戦は久し振りにみっちりテレビ観戦したしなぁ…と Yahoo のスポーツページを開いた。

アッッ と思った時はもう遅かった。 “日本20年振りの白星ならず。”こういう見出しが目に飛び込んで来た。

しまったぁ…この日の深夜、録画中継されるカナダ戦を結果を見ずにテレビ観戦する事を楽しみにしていたのだった。
あぁ結果が解ってしまった。 そして日本のワールドカップが前回と同じ1分3敗で終わった事も…..
振り返れば約2週間前のフランス戦で始まった Blossoms のワールドカップの挑戦はもう遠い昔の様に思えた。あの時は2勝してくれるかな…と期待出来たのだけど。

降雨で気温の下がったオーストラリアのシドニーからオークランド入りした日は大変な好天気だった。いつもオーストラリアからニュージーランドに入った時は逆なんだけどなぁ…



キックオフ前の国歌斉唱で君が代を精一杯歌いながらNorth Harbour Stadium でフランス戦の臨む日本代表 Blossoms の雄姿を見てワールドカップに母国が参加しているその幸福感を感じた。 しかしその後のフランス国歌 La Marseillaise の大合唱を聞いた時は“頼むから惨敗だけは喫さないでくれ。少しは形になってくれよ…” との哀感に変わった。
学生時代2年連続で ( 1984,85年 ) フランスと対戦したけど当然4戦全敗。スコアーも 0-52, 12-40, 0-50, 0-52 。1985年はフランスでテストマッチが行われたが1得点も挙げられず、当時フランス遠征をレポートしたスポーツ雑誌には当時の中心選手が上半身裸で踊っている姿の写真が“試合後のレセプションでは日本の勝ちと現地マスコミに報道された。”と言うキャプションの付で紹介されたとの記事があった。
私は当時“よくフランスが日本と試合を組んでくれたなぁ。前年にアームズパークで健闘したからかなぁ…” と思った。
だけど 2003年のワールドカップオーストラリア大会では 29-51と結構健闘していた。出来ればこういう試合を見たいなぁ…と思った。

日本のスタメンは⑪小野澤と④ ルーク=トンプソン 以外は8月13日のイタリア戦と同じスタメン。現時点でのベストメンバーと言えると思った。日本人以外の選手が6人入っていた。
一方のフランス。② Servat, ③ Mas ④ Pierre ⑤ Nallet ⑥ Dusautoir ( C ) ⑦ Harinordoquay ⑩ Trinh-Duc そして⑬ Rougerie らが今年の Six Nations でほぼレギュラーとして起用されたメンバー。 8月20日の Ireland 戦で起用された① Barcella, ⑮ Heymans ⑫ Estebanez らがスタメンに。Fabien Barcella はアキレス腱の断裂から復帰した PR。Cedric Heymans は2007年大会も出場した Cap数55 のベテラン。そして Fabrice Estebanez は Rugby League の大スター選手だったらしい。 こうして見るとややコマ落ちと言ったところか….



日本のキックオフで始まった試合は出来れば先制点を…と願うが開始早々フランスが日本陣内にライン攻撃を仕掛け攻め込みEstebanez が抜け出すが日本選手の好タックルで何とかストップし胸をなでおろす。タックルをしたのはベテラン小野澤だった。 
しかし4分、13分に連続してトライを決められ 0-14 とあっという間にリードを喫してしまった。しかもその流れが日本にとっては悪かった。 先制トライのシーンはターンオーヴァーされ Mas, ⑧ Lakatia, ⑨ Yachvili と繋がれ最後は ⑦ マイケル=リーチ が追いすがるも Pierre にトライを決められた。しかし後で見たテレビの再放送を見ると一旦倒された Yachvili が倒れたままこぼれ球を拾って Pierre にパスを出していた。本来ならファールのはずだけど…このシーン何度が繰り返し映された。先制トライを喫した後、日本は良い位置でファールを誘い ⑩ ジェームス=アレジ が当然PGを狙うが外してしまった。その約4分後にも日本は連続攻撃を見せ アレジを起点に⑫ライアン=ニコラス 再びArlidgeに渡り⑬平浩二に出したパスを Trinh-Duc にインターセプトされそのまま独走されトライを決められた。 これも リーチ が必死に追い掛けたのだけど….
アレジ がPGを失敗する前にも日本はフランスゴール前に迫ったがそのチャンスはニコラスがボールを落としてしまって行かせなかった。



18分日本はようやく日本は連続攻撃からファールを誘いPGを得て今度は アレジ が決めて3点を還す。よしよしこれから。このPGの前に日本選手の素晴らしいタックルがあり場内を沸かすシーンも…と思うもどうも我が日本代表はノックオンを冒す等落ち着かない。マイボールスクラムになってもそこから前のボールを繋げない。 それだけフランスのパワーが強いのか….




日本がPGで3点を還した直後の22分にもPGを決められ、その後しばらくはよく失点を防いだのだけど29分にも何度もフランスボールスクラムが続いた後に反則をとられ PG を Yachvili に連続して決められ 3-20 とリードを広げられていた。
このPGは共にスクラムの圧力から反則を奪われたもの。フランスのスクラムの強さを目の当たりにした見たいだった。
フランスのリードが広がる度に “ Allez France !! “ のコールが鳴り響いた。 
う~ん、やっぱり世界ランク4位が相手では…このままジャブを的確に決められる様に徐々に点差を開けられるのを見るのも辛いなぁ…と思った。



しかし31分観客席の日本人サポーター達が沸き上がるシーンが。粘り強く前に出る我が Blossoms 。アレジがキックしたボールが相手ディフェンスに当たり、こぼれたボールを Alridge が拾いそのまま誰も遮らない前方を一直線に突き進む。
おぉ..と思うと後ろの Kiwi が私の背中をポンと叩く。そして Alridge が飛び込んでトライを決めた。 2006年FIFA ワールドカップ のクロアチア戦で見られなかった日本のゴール、いやトライがここで見る事が出来た。 
背中を叩いた後ろの Kiwi はちょっと年配のラグビー観戦歴ベテランといった紳士。 思わず握手を交わす。
周囲の Kiwi 達も拍手を送ってくれる。そして私とハイタッチをかわし、後方に座っていた日本の方々とも目を合わせてお互いに手を挙げた。しかしこのあとの Conversion を決めてくれたらもっと良かったのだけど…..
折角の日本のトライに冷や水を浴びせる様に3分後フランス ⑭Vincent Clerc にトライを決められた。それまで日本のディフェンスラインの中央を力で突破して来たフランスだったがオープンに回して右隅に決められた。 
さすがフランスやなぁ…とこだまする“ Allez France “ の叫びを聴きながらそう思った。そして36分 No.8 のホラニ龍コリニアシが怪我でベンチに下がってしまい⑲谷口が入った。ホラニはこの後ワールドカップでプレーする事は無かった。



だけど我が Blossoms は怯まない。 39分にアドヴァンテージを受ける中よくボールを繋ぎ最後は中央で反則を誘いPGを アレジ が決めて 11-25 とまた得点差を詰める。そしてその後のフランスのキックオフからもボールを繋ぎ攻勢に出るなか前半終了のホイッスルが鳴った。リードは許しているが最後に得点を挙げて終わる。前半の終わり方としては良い方だと思った。そして周囲からは“なかなかやるじゃないか..”と色々声を掛けられた。

ハーフタイムの間、“御近所”としばし歓談。みな異口同音にこれまでの日本の健闘を称える。だけど問題はここからフランスが更に調子を上げて点差が広がるのでは…ベンチのメンバーは…と思うが日本はほぼベストメンバー。フランスはどれだけ余力を余してのスタメンなのだろう….

フランスのキックオフで始まった後半。日本はいきなりファールを取られたり、ノックオンをしたりスクラムでファールを取られたり…
42分には Harinordoquayにゴールラインを割られるが何とかトライは食い止める。ちょっと大丈夫かいな…と思うもすぐに落ち着きを取り戻し素早いプレスを見せる。出足は前半よりは良くなっている様に思えた。フランスとほぼ互角に戦っている様に見えた。43分に⑰藤田が③畠山に替って投入されたのが良かったのか….? 44分には Nallet がゴールラインに迫るがリーチが今度はストップ。 観衆から拍手が沸き上がる。



そして49分、連続攻撃を見せて中央から再び Alridge がトライを決め今度は conversion kick を決めて 18-25 と 1TG 差に迫った。 この連続攻撃は中盤から上手く繋ぎ最後はラックから SH⑨田中が持ち出してアレジに繋げた見事なトライだった。
周囲の方々からは Kiwi から Aussie ( 翌日のイタリア戦も見に来るそうだ。)からも、後ろのフランスの御婦人を除いて祝福の嵐だった。
53分日本ベンチは CTB⑬平に替えて 110kg の巨漢22トンガ人アリシ=トゥプアレイが投入された。そして日本の粘り強い攻撃が続く。スクラムの度に、ラインアウトの度に、“ニッポン!ニッポン!!”コールが響き渡る。それは日本人からだけでは無かった。ハーフタイム中に“ ニッポンとはどういう意味ですか?”と訊ねて来た隣の隣の御婦人も一緒になって“ニッポン !ニッポン!!”と大声援を送ってくれる。 
私は彼女に“ニッポンとは Japan の事で我々日本人は祖国の事を Nippon と呼ぶ。”と漢字とアルファベットを交えて書いて説明した。
そのニッポンはピッチ上でも Six Nations 上位常連のフランス相手に引けを取らない。 特にトゥプアレイとリーチが良く効いていた。そして58分、連続攻撃からフランスから反則を奪いアレジがPGを決めて遂に21-25 と4点差に迫った。1トライ上げれば逆転だ。私はピッチに向かって叫んだ。

“おい、勝てるぞ、勝つぞ。この試合勝つぞ !! 負けたら勿体ない。勝つぞ !! “

いくら健闘しても後に残るのは記録だけ。負ければそれしか残らない。あそこまで健闘して惜敗した…なんて日本人以外憶えていない。だから勝ってほしかった。
日本ボールになると“行け!行け!!行け!!!”、フランスボールになると“止め!止め!止め!止めろ~!!” と怒鳴りまくり周囲の人達には迷惑かけたかなぁ….後半に入りと言うよりももう何分間フランスに失点を許していないのだろう..
兎に角、マイボールの時間を長くしてくれ、そうすればチャンスがある…と願い続けた。



しかし、67分日本に反則があり ⑨ SH Yachvili にPGを決められ 21-28 と7点差に広げられる。それでもまだ1TG差、希望はあると思っていたけど71分にNallet にトライを決められその後のゴールも決まって 21-35 になってしまった。
攻撃の中でオープンに展開しだしたフランスが一転して一気に中央突破をはかりだし最後は Nallet が正面から来た小野澤を弾き飛ばしながら決めたトライだった。Nallet 115kg、小野澤85kg。体重差30kgあってはちょっと…..
それでも73分連続攻撃から反則を誘い、ラインアウトを選択しボールを蹴りだすと会場からは拍手とニッポンコールが沸き上がる。 こうなれば最後に意地のワントライを還してくれ~…と願った。
しかしトライを決めたのはフランス。77分と終了直前にもトライを許しそして Allez France !! の中ノーサイドのホイッスルが鳴った時はスコアーは 21-47 と前半終了前よりも得点差を付けられていた。
最後の連続トライもニコラスのノックオンを拾われてからとパスミスを取られて、と日本のミスからだった…..



それでも終了の笛が鳴った後は日本代表に暖かい拍手が送られた。 周囲の人達からも“ナイスゲームだった。下を向くな。”と言われた。 隣の紳士には
“日本には Six Nations も Tri Nations も、来シーズンから Four Nations か、もない。ワールドカップ以外世界の列強と戦う機会が無い。その差が出た….” と言うと、
“日本とニュージーランドは季節が逆だ。日本のオフシーズンに選手をどんどんこちらに送ってここでプレーさせればいい。”と言われたので
“日本選手を受け入れてくれるのかな?”と訊くと
“この日の選手達だったらどこでも受けてくれる。”といってくれた。 それも良い考えだなぁ….
周囲の人達と握手を交わし応援の御礼を行って席を立った。ある人には
“次は日本はどことやるんだ?”と訊かれたので
“ハミルトンで All Blacks だ。”と言うと何とも言えない表情をしていた….

立ち上がりの2トライ喫した事。そしてPGを失敗した事がやはり痛かった。 健闘はしたと思うだけど得点差を見れば8年前 ( 29-51 ) よりも開いた26点差だった。



翌日の新聞は日本の健闘を称える記事満載だった。 Blossoms bravery in vain。 Day of the Minnows。 Livermont worried about inconsistency …. こういう見出しが見られた。
“我々はハッピーでは無い。 失望している、最初に2トライを挙げた時、我々はもう満足していた。おそらくこの日はずっと楽だろうと考えたのだろう。 結果的にそれは警告であり、我々にとっては良い夜ではなかった。日本選手達は大変良くプレーしており恐らくこの得点差を喫するほどではなかったと思う。 試合開始直後、我々は相手よりずっと上回っている。そしてイージーだと思った。こういう考えが後で災難を招く。” Livermont フランス代表監督はこの様に語ったらしい。
そしてフランスのメディアから何が足らなかったのかとしつこく聞かれた時は
“我々は何も案じていない。なぜなら勝ったからだ。 しかし、我々はただ充分な事をやっただけだった。これは警鐘だ。しかし我々は勝った。” と落ち着きを失いながらも答えたらしい。
また地元の英雄 John Kirwan 日本代表監督は
“選手達は勇気を持って闘ったので観客は暖かかった。 我々は東北地方で津波の被害に遭われた方々に勇気あるプレーをすることに就いて話し合った。 結果は関係ない。リビングでテレビ観戦をする人々は何が勇気かを解っている。我々はプレーを続ける事、立ち上がり続ける事、タックルを続ける事で勇気を示す必要があった。 地元のニュージーランド人は解っている。後半は勝利の窓が見えた事を。それは勝てる試合であった。守備で、攻撃で勇気を見せただけでなく70分までフランスと互角に戦った。ニュージーランド人は称えてくれたと思う。” と結果を称賛しながらも
“このレベルので1インチに就いて何度も話した。いくつかの判断ミスやノックオンが重要な時間帯であった。”とミスを悔やんだ。そしてルーク=トンプソンに就いても記事が載っていた。妹の Anna がネットボールのニュージーランド代表 Silver Ferns のメンバーだと言う事や日本に来た経緯。そして次の All Blacks 戦に就いても….
そして日本の選手はフィジカルに限界があると掲載紙は述べていた……

試合後、夜の Auckland はフランス人達が大騒ぎだった。しかしジャパンのレプリカを着ていた私を見ると皆好意的に駆け寄ってきた。その表情は“負けたけど日本はなかなかやるじゃないか…”といったところか…私も心中思った。サッカーなら勝てる。女子は当然。男子も今のフランスなら自信がある…( あまり関係ないか…? )
あるフランス人の御婦人が言っていた。“日本人は素晴らしい。イタリア人は文句ばっかり言うけど。”と言うので
“あぁ… マテラッツィ~~。”と言うと大受けした。 一矢報いたか…? ( 関係ないか?)

このお祭り騒ぎを見てワールドカップに来たんだと言う幸福感が沸き上がって来た。そして少なくともトンガ戦とカナダ戦は期待できるだろうなぁ~ とこの時は思った……..