鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

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お気に入りその981~日本植物図説集

2014-11-25 12:41:36 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「日本植物図説集」です。

牧野富太郎博士の昭和10年ころまでの業績を集めた「日本植物図説集」(牧野植物学全集第1巻、昭和15年復刻版)で、細密かつ美しい植物図をまとめて鑑賞しています。
74年も前の本ですから今と違い、使われている紙は粗く薄いです。
また印刷技術も原画の細密表現を再現しきれていません。
それでも老眼鏡ではとても細部まで鑑賞しきれない出来映えのため、ハズキルーペを使っています。
ページ一杯に描かれた美しい牧野式植物図は190図版にものぼり、ひとつひとつじっくりと鑑賞していると時を忘れます。
ただしまえがきや解説文は漢字とカタカナばかりの典型的な戦前の文語体。
牧野博士の博学この上ない解説がすらすら読めたらいいのですが、不勉強のためほとんど読めず残念です。

さてここで本書を入手することにした経緯について書きたいと思います。

本書に先立ち「牧野富太郎植物画展」図録を読みました。
平成12年に開催された牧野富太郎記念館の開館一周年を記念して高知県立牧野植物園が発行した図録です。
そこには牧野富太郎の手による神業ともいえる植物図がどのように描かれたかが克明に解説されていました。
著者は牧野博士の弟子にして牧野植物園の小山園長。

園長は次のように述べています。
・牧野博士の代表作は「牧野日本植物図鑑」といわれている
・しかしそこに収録されている植物図のほとんどは牧野博士の指導で画工が描いたもの
・牧野博士自らが描いた牧野式植物図の完成形は「大日本植物志」であろう
・「大日本植物志」は今なお植物図の頂点といわれている
・その中でも「シコクチャルメルソウ」が最も精密と評されている
・「大日本植物志」は明治33年から10年間刊行され中断した

ここまで知ってしまったらぜひ「大日本植物志」に収録された植物図をすべて鑑賞したい・・・。
明治33年に発刊された現物は物理的かつ経済的に到底入手不可能と考え、最初から復刻版を探しました。
そして見つけたのが「牧野植物学全集」第1巻「日本植物図説集」でした。

「日本植物図説集」は
・日本植物志図篇 (明治21年、敬業社、75図版+解説)
・新撰日本植物図説(明治32年、敬業社、100図版+解説)
・大日本植物志  (明治33年、東京帝国大学、16図版+解説)
という3冊の復刻です。

この3冊はそれぞれ性格がはっきりしています。
「日本植物志図篇」は自費出版のデビュー作。
細密で美しい植物図は見事ですが、若さで肩に力が入りすぎ、1画面に盛り込み過ぎの嫌いがあります。
「新撰日本植物図説」は、底をついた研究費を稼ぐために発行した図鑑。
それまでに描いた植物図を使いまわしたり、細密度合では他より少々落ちる図版があります。
ただしシダ類の図版は見事で高く評価されています。
「大日本植物志」は牧野の技量と気力がピークに達したときの作。
今なお日本の頂点と評される植物図が収められた図鑑です。

3冊の性格を知り比較しながら鑑賞することもまた面白いです。
そういう面では、これまで鑑賞してきたどの図鑑や図録よりも味わい深い作品集といえます。

もっと良い紙、もっと細密な印刷、現代語訳された解説文で第1巻だけでも復刻してくれないかな?と願っています。
ただ彩色図版がほとんどないので、高価な割には評価されないでしょうから、誰も手を付けないかな?

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