鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1922~風神雷神

2020-04-29 10:05:18 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、風神雷神です。

久しぶりに小説らしい小説をじっくり読んでいます。
原田マハのアート小説「風神雷神」。
予約して購入した割には上下巻の分厚さに圧倒され、読み始めるまでに半年もの時間を要しました。
いざ読み始めるとお気に入りの作家だけあって、一気に作品世界に引き込まれました。

物語は現代、風神雷神に相当するギリシャの神々JuppiterとAeolusを描いた絵が発見されたところから始まります。

続いて物語は一気に、安土桃山時代へと飛びます。
天正少年使節団、俵屋宗達、織田信長、狩野永徳らが次々登場します。
続いて京の栄華を余すところなく描いた屏風絵、洛中洛外図屏風をめぐる人間模様が丁寧に描かれます。
時の権力者はこれを地方の権力者と同盟を結ぶための切り札として用いたのですね。

俵屋宗達はわずか7歳で生家である扇屋の売れっ子絵師になり、10歳で信長に謁見します。
そして12歳のとき、信長の命により洛中洛外図屏風の制作をする狩野永徳を手伝うことになります。
宗達が永徳を手伝ったことは史実ではないでしょうが、生没年を含め何かと謎の多い宗達だからこそ筆者は自由に書いています。

この後も次から次へと意外かつド派手な展開が続きます。
いくら何でも史実に反し過ぎだろう!と本に文句を言いつつも、次の展開が楽しみで仕方がありません。

※これ以上具体的な内容はネタバレになるので書けません。
 この大胆な展開を未読の方はぜひご体験ください。
 著者のこれまでのアート小説はかなりち密に史実を織り込んでいますが、今回は冒険しましたね。
 新たな境地ってところでしょうか? 

毎回ついつい時間を忘れて読み進めてしまいます。
気が付けば半身浴は汗だく。
夏ならいつまでの汗が引かなくて困るところです。

気が付けば上巻を読み終わるところ。
こりゃ下巻も楽しみだ。
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お気に入りその1921~サセック③

2020-04-27 12:21:21 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、サセック③です。

サセックの「ジス・イズ」シリーズ第3弾「ジス・イズ・ケープケネディ」「ジス・イズ・ヴェニス」を読みました。

「ジス・イズ・ケープケネディ」

1963年発行の本書。
当時は人類が宇宙に進出し始めた時代、ソ連に追いつけ追い越せと熱意を持って臨むアメリカの姿がここにあります。
「ジス・イズ・ニューヨーク」と同様、アメリカン・ドリームを目指す若き国の勢いが凄い!
ロケット開発により観光目的の町ができあがり、ロケット開発の歴史を伝えるため、空軍基地に実物大ロケットをずらっと展示します。
やることが派手ですね。
そして初めて宇宙を飛んだアラン・シェパードを筆頭に7人の宇宙飛行士たちの揃い踏み。
これこそまさに映画「ザ・ライト・スタッフ」のハイライト・シーンそのもの。
続いて当時最新型のサターンロケットが誇らしげに紹介されています。
後にアポロ計画でポピュラーになったサターンⅤ型の初期型です!
この年から1969年に人類が月を歩くまでの6年間、宇宙進出の黄金時代が続くことになります。
金色に輝く着陸船が月に降下していく様を、買いたてのカラーテレビにかじりついて観ていた少年時代を思い出しました。
アメリカ国民が明るい未来を信じて一丸となって進んでいた、あの時代の空気そのものが本書に封じ込められていました。
「ジス・イズ」シリーズの中では異色で、観光ガイドというよりも科学史紹介に近い内容。
これはこれで新鮮でした。

「ジス・イズ・ヴェニス」

「ジス・イズ」シリーズの存在をEhonNaviで知ったときに紹介していたのが「ヴェニス」でした。
出版社の内容紹介を引用します。
=====
サセックの「ジス・イズ」シリーズは、観光ガイドとしても街の歴史を知る入門書としてもおすすめです。贈り物としても喜ばれています。
水の都、ヴェニスへ行こう!
本書は、旅する絵本作家サセックが、シリーズ中でもっとも愛したうちの1冊です。
運河をわたる楽しいゴンドラ、華やかなサンマルコ広場、優雅なゴシック様式のドゥカーレ宮殿、石づくりのリアルト橋……あまりにも美しすぎる迷宮都市めぐりを、じっくりとご堪能ください。
=====

すっかりお気に入りの仲間入りした「ジス・イズ」シリーズ。
「作者サセックの最も愛した1冊」と言われては読むしかありません。
届いた本は某町立図書館の除籍本だったため、特に格安でした。
2005年に復刻され、わずか15年で除籍ですか。
表紙に保護シートを張ってあることもあり、ほとんど傷みがないというのに・・・。
借り手がいなかったから、というのが除籍理由かもしれません。
町のみなさんに本書の美しさを味わってもらえなくて残念です。

というムダ話は置いといて本書の感想を少々。
「パリ」「ロンドン」に続く歴史ある街の紹介です。
このシリーズは、表紙を開くと街に入る作者サセックの姿が描かれています。
そして最後、裏表紙の内側に街を出る作者が描かれています。
毎回その街の色に染まった作者の姿を見るのが楽しみのひとつ。
ヴェニス編ではどんな姿になって街を出たのかな?
予想通りゴンドラの漕ぎ手の姿になっていました。

さて本文を読み始めると「水の都ヴェニス」が他の街と全く違うことに驚きました。
想像では、街中に多数ある運河に観光用の船が行き来しているだけで、生活圏は自動車と思っていたので、まさか完全に自動車がない暮らしだとは思ってもいませんでした。
運河沿いにガソリンスタンドがありますが、水上タクシーや水上バスなどに給油するのが仕事。
昔ながらのゴンドラも、かなり減ったとはいえ、まだ数百隻が運行しているそうです。
また天国を描いた壁画があることで有名な宮殿から監獄までが1本の運河で結ばれていて、その途中に「ため息橋(嘆き橋)」があるというのは出来すぎ。
街はたびたび水に浸かるそうで、いくつかの高い塔は傾いてしまったそうです。
とにかく自動車社会と一線を画する不思議な街です。
その空気を一度味わってみたくなりました。
足元から違う街並みと、移動スピードの緩やかさ、というこの街の特質はきっと住人の性格にも表れていることでしょう。
サセックはそれらすべてを愛して描いたのではないでしょうか?

今回の2冊もとても美しく、面白かったです。
満足満足。

蛇足ですが、今回選んだ2冊の内「ヴェニス」は実は補欠でした。
本命は「ジス・イズ・エジンバラ」。
スコッチウイスキーの発祥の地であり、ハリーポッター誕生の地。
ふたつの「お気に入り」が生まれた土地ってどんなところでしょうか?
それをお気に入りの「ジス・イズ」シリーズで読むとなると、お気に入りがトリプルで揃います。
それを狙おうと思ったのですが、値段が高い・・・。
他のシリーズ本の3~4倍もするのです。
古書価格が大きく変動することはこれまで何度か経験していますので、しばらく様子を見ることにします。


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お気に入りその1920~還暦祝い

2020-04-24 12:27:38 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、還暦祝いです。

今月還暦を迎えました。
普通なら家族みんなで集まって食事会をするところですが、コロナの影響で自粛。
母と義母2人の高齢者の安全には代えられませんから。
ということで子どもたちからお祝いの品をいただきました。
小樽のガラス工房で制作された洒落たグラス2点です。
同じデザインの大と小。
緑と黒が混ざり合い、内側の赤が少し透けて見える、何とも不思議な深みのある色彩。
内側は漆器を思わせる赤一色。
還暦にぴったりの色合いです。
そして指が吸い付くような柔らかな質感としっかりした持ち応え。
大きい方をウイスキー用、小さい方を日本酒用として、早速晩酌で使いました。
お酒の色合いを楽しんだり、割加減を見るのに透明部分がないのが不便ですが、子どもたちからのプレゼントなら話は別。
ウイスキーの割加減はメジャーカップやショットグラスで測れば良いのですから。
ああ、いつもより美味しい!
これは飲み過ぎちゃいます。

このグラスについて調べてみました。
グラスに添えられていた作者名は、小樽のガラス工芸家・林拓緯(はやしたく)さん。
作者名を頼りにネットで検索したのですが、今回のようなグラスはなかなかヒットしません。
「小樽」というキーワードを外すと、伊丹市立工芸センターさんと伊丹郷町クラフトショップさんの2か所でヒットしました。
7年も前から小樽で活躍している作家なのに不思議です。
とりあえずこのグラスは「滴」というシリーズの作品らしいことが判りました。
さらに伊丹郷町クラフトショップさんのコメントを引用すると、
=====
色と模様が印象的で、内側の赤が漆の作品のような雰囲気も感じます。
表面のグリーンがキラキラと光沢があり、幻想的な美しさです!
=====
なるほど納得のコメントです。

さらに伊丹郷町クラフトショップさんの自己紹介に「陶磁器・ジュエリー・ガラス・染織など「伊丹国際クラフト展」で入選した全国の作家の一点ものを販売中」とありました。
きっと林拓緯さんが同展に出品して入選したことから、伊丹の2か所で紹介されているのでしょうね。

これを選んでくれた子どもたちのセンスに感心しつつ、これからも愛用していきたいと思います。


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お気に入りその1919~スケッチトラベル

2020-04-22 12:10:17 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、スケッチトラベルです。

「スケッチトラベル」は2012年に発行された大判の画集です。
概要について、AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
アニメ・漫画・イラスト・絵本、それぞれの世界を代表する至極のクリエイターが世紀の競演。
アメリカ、ヨーロッパ、アジア…、71人の作家たちが一冊のスケッチブックに絵を描いて、世界中に回した。
夢と友情と願い、そして希望に満ちた奇跡のプロジェクト。
=====

ハリウッドのアニメーターとして有名らしい堤さんという方の発案で、世界を代表する絵描きたちがスケッチブックの1~2ページに絵を描くリレーをしました。
スタートして4年半、最終走者は日本が誇るアニメの巨人・宮崎駿、世界のクリエーターたちが一目置く存在です。

スケッチブックの原本はゴール後オークションにかけられ、収益金のすべては世界中の子どもたちの識字率向上をめざす団体に寄付されました。
また限定で制作されたサイン入り復刻本と、今回入手した廉価版の収益金も同様の目的に充てられたことでしょう。

このような素敵な目的のために1冊のスケッチブックが世界のクリエーターたちの間を旅をするという壮大な試み。
これまでその存在を知らなかったのが不思議なくらい魅力的な試みです。

参加したクリエーターたちは有名な方ばかりだそうですが、申し訳ありませんがほとんど存じ上げませんでした。
でもこの試みに快く協力してくれたというだけで、彼らの作品を好意を持って観てしまいます。

全くオリジナルな絵を描いた方、スケッチブックを運ぶ自画像を描いた方など作品は様々。
なにより世界を代表するクリエーターだけあってオリジナリティとメッセージ性が強い強い。
1枚1枚にかかる鑑賞時間の長いことといったら!
同じ作家の作品を続けて鑑賞するときとは大違いです。
初対面の作家の個性とメッセージを探り出すのですから時間がかかるのは当然でしょう。
改めて世界が広いことを実感しました。
たっぷり目と心の保養になりました。

最後に、本書に参加したクリエーターたちの中から、お気に入りベスト3を挙げます。

第1位
余りにベタですがトリをつとめた宮崎駿。
映画「ルパン三世カリオストロの城」からのファンなので仕方がありません。
2ページを一杯に使った複葉機とそれを見上げる少年の姿は圧巻です。
「未来への輝く希望」が詰まった素敵な作品です。

第2位
これもまたベタですがフレデリック・バックです。
当時御年87歳の画家が地球環境の未来を案じつつ描いてくれました。
「きれいな水と生命のある海と森を守ります」という画家のメッセージが添えられています。
本書の世話人・堤さんによると、バックは「画家はメッセージを発信する義務を負っている」と語っていたそうです。
彼の作品は「木を植えた男」しか知りませんが、他の作品も読んでみたくなりました。

第3位
一人に絞れません。
フアンホ・ガルニド、ピーター・デ・セヴ、ポール・フェリックスの3人がお気に入り。
AMAZONで3人の作品を探したところ、フアンホの作品だけが見つかりました。
「ブラックサッド」というマンガ。
レビューの評価も高いので、1冊読んでみることにしました。
また楽しみが増えました。


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お気に入りその1918~サセック②

2020-04-20 12:13:05 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、サセック②です。

「ジス・イズ・ニューヨーク」に続いて「ジス・イズ」シリーズの2冊「ジス・イズ・パリ」「ジス・イズ・ロンドン」を読みました。

「ジス・イズ・パリ」
長い歴史に彩られたパリの名所をご案内!
1000年前のローマ時代に建設が始まったといわれる建物を筆頭に、古い建造物のオンパレードです。
・「新しい橋」と名付けられたパリで一番古い橋
・凱旋門の下には名もなきひとりの兵士が埋葬されている
・ナポレオンの建造物がいくつもある
・フランス革命に関わる建造物もたくさん
・マリー・アントワネットたちが処刑されたギロチン台を撤去した跡地は何と庭園になっている
京都と同じで、歴史を勉強してから行った方が楽しめる街のようです。

「ジス・イズ・ロンドン」
ロンドンは、パリに負けず劣らずの長い歴史に彩られているんだろうな、と思いつつページをめくりました。
それでもロンドンの歴史が、1世紀にローマの商人が市場を作ったことから始まった、ということを知り、その歴史のとんでもない長さにびっくり。
自分が生まれ育った札幌はせいぜい150年ほどの歴史しかないので、長い歴史を持つ街に憧れがあります。
旅先で江戸時代の風情を感じただけでも満足しているのに、2000年も昔の風情を目の当りにしたらどんな感慨が起こることでしょうか?
一度体験してみたいな。
などと考えながらさらにページをめくりました。
今は国会議事堂として使われているウェストミンスター宮殿は建物がとても長くて、廊下が3kmもあるそう!
名物は歴史のある建物群ばかりでなく、2階建てバスも。
本書が発行された1960年当時でも市内を1000台ものバスが走り回っていたそう。
そしてそのバスを停留所で待つ長い列と、その目の前で大道芸をする芸人たち、というのも意外な名物なのだそう。
そういえば本書の1ページ目は、もやもやして何も見えないページでした。
名物の「霧」からロンドン案内がスタート、という斬新さ。

今回選んだ2冊はニューヨークとは大違いで、歴史ある都市ばかり。
売り出し中の若い都市と歴史ある古い都市では、その違いは歴然としていました。
3冊とも60年前に書かれた旅行ガイド絵本ですが、今でも違和感なく読めるのは、都市の性格というものが今も変わっていない、ということでしょう。

サセックの絵はどれも味わい深く、しかも都市の特徴の切り取り方が独特で面白いです。
パリ編のオープニングが「ネコが幸せに暮らす街」という紹介でスタートしている辺りはまさにそれ。
他の都市のも読んでみたいし、美術作品として鑑賞したいという思いがフツフツと湧いてきます。
どうしようかな?
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お気に入りその1917~ヨシタケシンスケ

2020-04-17 12:29:32 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ヨシタケシンスケです。

以前、ヨシタケシンスケの初エッセイ「思わず考えちゃう」が新聞の図書ランキングコーナーで紹介されていました。
「りんごかもしれない」「このあとどうしちゃおう」「みえるとかみえないとか」がお気に入りで、次はどの絵本を読もうかな?と考えていたので、迷わず本書を購入したのですが、気が付けば積読本の仲間入り。
読み始めるまでに1年も経ってしまいました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
あわよくば、生きるヒントに。
「考えすぎても、いいじゃない! 」
人気絵本作家ヨシタケシンスケのみんな待ってた、初エッセイ集!
電車で、カフェで、自分の家で。
「ついつい考えすぎちゃう」ヨシタケ氏が、スケッチと共に書きとめた、まじめーな事から、世にも下らぬ事まで。
たとえば。
「仕事のピンチを乗り切るには?」/「いわゆる男女の仲って、何?」
「他人のストローの袋が気になる」/「孤独感を、どう解消するか」
「明日、すごいやる気を出す方法」……。/がんばりたくない「大人」のための絵本!
-----------------------------------------------------
目次
はじめに
第1章 ついつい考えちゃう
ご自由にお使いください/富士山の盗み撮り/ききうでのツメは切りにくい
一番きたなくない部分ってどこだろう/心配事を吸わせる紙/明日やるよ
その時その時にその場にいない人を悪者にしながら/甘やかして甘やかして
どうにかして後悔してもらいたいのだが/もう脱いでいいですか/ぼくのストローのふくろ
世の中の悪口を言いながら/7時って、くつしたみたい/謙虚さを保つクリーム
また出てまいりました
第2章 父だから考えちゃう
お熱はかり中/息子の髪を洗うと、必ず途中でアクビをする
今しかないのに、もったいないのに/裸シートベルト/くつ
ちぎってちぎって食べさせてよ/スノードーム/ねえ、うんちついてる?
もータクマ! オマエ、クチのまわりケチャップだらけじゃんよ!
ラーメン屋さんでアメをもらった子のうれしそうな顔
プンちゃん、はさまっちゃってるよ?/寝てる/ちっちゃい子
なんにもないねえ/けっこうゆれるね/よごれて洗ってよごれて洗って
とても気に入って、大好きになっちゃって
どうでもよすぎて言わないこと、大事すぎて言えないこと
ハイ。ヨシタケでございます
第3章 ねむくなるまで考えちゃう
できないことをできないままにするのが仕事
あなたのおかげで私はとうとうあなたが必要なくなりました
幸せとは、するべきことがハッキリすること/このこどく感はきっと何かの役に立つ
ボクはあやつり人形/自分がすること、選ぶこと、見ること、聞くこと
でも、どうすればいいんだろう?/若い頃、別にムチャはしなかった
自分にできないことがどんどん見えてくる/いわゆる男女の仲
いくつになっても、あの頃の自分の味方で/もし、そうなったら
相手の「できないこと」によりそう/身の周り3メートル四方のできごと
この世はすべてねむくなるまで/こちらでできるのはご提案までです
おわりに

内容(「BOOK」データベースより)
電車で、カフェで、自分の家で。「ついつい考えすぎちゃう」ヨシタケ氏がスケッチと共に書きとめた、まじめーな事から、世にも下らぬ事まで。たとえば―。「仕事のピンチを乗り切るには?」「いわゆる男女の仲って、何?」「他人のストローの袋が気になる」「孤独感を、どう解消するか」「明日、すごいやる気を出す方法」…。絵本作家ヨシタケシンスケの、「読むとクスッとしてホッとしてちょっとイラッとする」スケッチ解説エッセイ!
=====

「りんごかもしれない」「このあとどうしちゃおう」「みえるとかみえないとか」という3冊の絵本では、著者の柔軟で多彩な発想力に舌を巻いていました。

「第1章 ついつい考えちゃう」ではその発想の源が明らかにされます。
いつか使うかわからないネタを日々コツコツと集めているのですね。

「第2章 父だから考えちゃう」は懐かしく読みました。
我が家でもそうだった、ということの多いこと。
子どもたちが小さかった頃の思い出がぱあっと蘇りました。
こんなに小さな出来事っていちいち書き留めないし、写真も残っていないけれど、微笑ましいシーンだからこそ記憶に残っているのでしょうね。
中でも「スノードーム」「うんちついてる?」「ケチャップだらけじゃん」「あめもらったうれいそうな顔」は最高!
我が家の子どもたちはすっかり大人になったけれど、そんな場面があったなあって、しばし思い出に浸りました。
この章だけでも本書を手に取った甲斐がありました。

「第3章 ねむくなるまで考えちゃう」は、えーっ、そんな逆転の発想をしてるだ!と感心させられるほど著者自身の内面を正直に語っています。
まさに誤解を恐れずに語っているその姿勢に好感が持てました。
誤解を与えないそのギリギリさが著者の見事なバランス感覚であり、売りなのでしょう。
おじいちゃんの死後の世界を描いた「このあとどうしちゃおう」や、視覚障害者のことを遠回しに描いた「みえるとかみえないとか」などは、著者のこのバランス感覚が実によく発揮されていることに気づきました。
また著者は「エネルギッシュな頑張るマン」や「信念を貫く熱い男」ではない、どこにでもいる小さなことが気になる普通の人だということもわかりました。
その著者がコツコツ周囲を観察して思いを馳せた積み重ねが作品となったからこそ、読者の共感を呼ぶ人気作品が誕生したのでしょう。

このブログを書いていて気づきました。
思いついたことをブログに書いていること自体が、著者のスケッチほどではないにしろ、頭の整理になったり、わが身を振り返るきっかけになったりで、役に立っているようです。

このブログのサブタイトルは現在「50代後半のオヤジのお気に入り」ですが、今月誕生日を過ぎたら「60代前半のオヤジのお気に入り」に変更します。
これからも日々考えたことを文章にすることで頭を整理したり、わが身を振り返ったりして、ボケ防止を図っていきたいと思います。

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お気に入りその1916~サセック

2020-04-15 12:18:52 | 鬼平
今回のお気に入りは、サセックです。

「This Is New York (ジス・イズ・ニューヨーク) 」ミロスラフ・サセック/松浦弥太郎・訳

絵本ナビで「美しい絵本」をキーワードにして検索したところ、まるでポスターみたいに美しいですよ!と絶賛していた「ジス・イズ」シリーズ。
ナビでは「ジス・イズ・ヴェニス」を紹介していました。
AMAZONで調べると何冊もあることが判明。
いろいろ迷いましたが、とりあえず1冊目は「ニューヨーク」にしました。

ヤフオクの内容紹介を引用します。
=====
いろいろな人と車が行き交うタイムズスクエアから、セントラルパークに暮らす大きなしっぽのリス、休みなく走りつづける消防車、野球ファンでにぎわうヤンキース・スタジアムまで…。
1960年に初出版された本書の中のニューヨークは、今もなお新鮮な輝きを放ちつづけています!
ニューヨーク・タイムズ誌選定最優秀絵本賞(1960年)、アメリカ青少年クラブ児童文学最優秀賞(1961年)受賞作品。
発行 2006年 第3刷 ブルース・インターアクションズ
=====

1960年頃のニューヨークといって思い出すのは、映画「ティファニーで朝食を」(1961年公開)。
オープニングがニューヨーク5番街のティファニー宝石店というのは有名です。
大好きなオードリー・ヘップバーンの魅力たっぷりの映画であるとともに、たくさんの人々がアメリカン・ドリームをつかもうとニューヨークに集まってきた時代の光と影をみごとに表現した映画でした。
本書はその時代のニューヨークをどう表現したでしょうか?
わくわくしながらページをめくりました。

巨大な車が高層ビル街を走り回り、渋滞が常態化した大都会。
巨大看板が林立し、何万ものエレベーターが運行しています。
そして消防車が絶え間なく走り回っています。
靴磨きから成りあがった者もいます。
ドラッグストアも、薬だけでなく日用品が買えたり、簡単な食事を提供するまで巨大化しました。
世界一の港、世界一のビル、巨大なヤンキースタジアム。
まさに街自体がアメリカン・ドリームを体現しています。

それらをシンプルに色彩鮮やかに仕上げたイラストのオシャレなこと!
すべてがエネルギーと自信に満ち溢れていることも、ポスターみたいに美しく感じられる要因でしょう。

サセックはニューヨークを見事に描いて見せました。
そんな彼は他の街もたくさん描いています。
落ち着いた伝統の街を彼はどう表現したのかが気になるところ。
ということで次に読むのはロンドンとパリ、どちらにしようか迷い、結局両方読むことにしました。
すでに注文済みなので到着が待ち遠しいです。

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お気に入りその1915~ポケトークS②

2020-04-13 12:08:06 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ポケトークS②です。

ポケトークSのカメラ機能で、洋書「Beatrix Potter's ART」を読みました。
今回はその感想を書きます。

ポケトークの操作は、最初多少手間取りましたが、慣れると割とスムーズになりました。
翻訳するページに重しを置いてできるだけ平らにして、ポケトークをかざし、ピントが合うのを待ってシャッターを押します。
焦点が合うまでに多少時間がかかるのは、手振れのせいかもしれませんが、ハード的に改良すべき点だと思います。
ライトをオンにして撮影するときは、明るすぎて一部の文字が光って判読不能になりますが、その場合少し斜めから撮影すると良いようです。
あとは翻訳ボタンを押すだけ。
絵に添えられた短い解説文から、1ページ丸ごとの長文まで翻訳してくれます。

ここからは翻訳についての感想を短文と長文に分けて書きます。

〇短文翻訳

ビアトリクス・ポターの画集にはたくさんの生き物が描かれています。
絵の解説文の翻訳は瞬時です。
絵のモデルになった生き物の名称、絵を描いた時期とその技法、あとは絵の短い解説だけが書かれています。
絵の技法と解説は読みやすく訳してくれます。
ただし生き物の名称は、ほとんどの場合うまく訳せませんでした。
イギリスでおなじみの生き物ばかりだったせいかもしれません。
日本でもおなじみのモンシロチョウは翻訳できました。
外国でおなじみの生き物の名称を日本名に訳するというのはまだポケトークは苦手のようです。
ポケトークを使うのは図鑑類を読むときがほとんどなので、今後、翻訳辞書が充実していくことを期待します。

〇長文翻訳

まえがきなどの長文は翻訳に多少時間がかかる上、意味不明な訳文があちこちに出てきます。

(意味不明になる理由その1)
1ページずつの翻訳なので、ページをまたぐ文章の翻訳はいかにAIでも不可能。
ただし2ページを続けて翻訳する機能があれば、ページをまたぐ文章の翻訳が可能になります。
これもメーカーさんに改良を期待したいです。

(意味不明になる理由その2)
ビアトリクス・ポターの生まれ育ちに関する部分は、お父さんが弁護士というところから始まり、かなりうまく訳していました。
ところがポターが成長するに従い、どのようなことがあって、どのような絵を描くようになったか、という変遷を記述した辺りは、書いてあることの半分も理解できなかったように思います。
なぜ油絵をほとんど描かなかったのか?
ジャポニスムやアールヌーボーにどのような影響を受けたのか?
そこの書いてあるはずなのに理解できず、とても残念でした。
AIは芸術的概念をうまく訳せないのかもしれません。
今後の翻訳精度向上に期待します。

〇全体的に

カメラ翻訳だけを使いたくてポケトークを購入した者としてのストレートな感想は「なるほど、これは値がある!」というものです。
何年も前に博物画や絵画だけを鑑賞する目的で購入した洋書が、ここにきて読めるようになったことに感激しています。
長文の翻訳精度はまだ納得できる域に達していませんが、これまで読むことすらあきらめていた洋書の文章部分が何となくでも理解できるようになったのですから値倍増です。
外国語は苦手だけど、洋書を持っている、という皆さんにポケトークをおすすめします。

〇最後に
今は別の洋書「Larousse Animal Portraits」という博物画集を読んでいます。
パリの自然史博物館に所蔵されている、18世紀から20世紀に一流画家たちによって描かれた博物画集です。
初めて読んだ「まえがき」によると、自然史博物館の所蔵品は、ルイ14世の弟が蒐集した膨大なコレクションが元になっているとのこと。
なるほど、世界中の珍しい生き物がこんなにたくさん見事な筆致で描かれている、その成立理由が分かりました。
王族でなくてはなかなかできることではありません。
解説文や生き物の名称などもそこそこ読めるので、博物画を鑑賞する助けとなっています。
ポケトークを思い切って購入したことで、こういう楽しみが増えました。
今後は、メーカーさんに翻訳精度の向上、辞書の充実などを期待します。






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お気に入りその1914~すごい標本

2020-04-11 12:50:22 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、すごい標本です。

北海道新聞が紹介していた「北大総合博物館のすごい標本」を読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
開館20周年を迎えた北大総合博物館の収蔵標本と研究のあらましを伝えるビジュアルブック。
300万点に上る収蔵標本のうち特に重要なものを、植物、昆虫、古生物など10の分野別に各10点、合計100点取り上げ、精細な写真と解説で紹介する。
宮部金吾(植物)、松村松年(昆虫)など歴代研究者の横顔、標本作成や保存に欠かせない道具、建物の見どころや学生・ボランティアの活動なども収める。関連年表付き。

北海道大学総合博物館……
1876年(明治9年)に開校した前身・札幌農学校以来、北海道大学が収集してきた標本を収蔵・展示する総合博物館。設置は1999年。
陸上植物から考古学まで幅広い分野からなる標本群は約300万点に上り、ある生物を定義する際の拠り所となる「タイプ標本」約1万3千点を含む。
築90年余を誇る旧理学部本館で研究・教育を行うとともに、約50人の資料部研究員、約250人のボランティアが、企画展示、市民セミナーなどの活動を支えている。
=====

「研究のあらましを伝える」って、もしかしたら退屈で面白くないかもしれない、と心配しつつ読み始めました。
その予想は当たっていました。
多くの分野は地味で退屈な話でした。
でも時々ほお!という話があり、さらにわずかにとても面白い話がありました。

ということで心に残った話をご紹介します。

・植物学者・宮部金吾は新種の植物の名前に苦楽を共にし、若くして亡くなった後輩研究者・工藤祐舜の名からユウシュンランと名付けたそうです。
お気に入りの「北海道主要樹木図譜」という日本を代表する美しい図譜を制作した名コンビにそういう逸話があったのですね。

・健康食品で有名なユウグレナとはどうやらミドリムシらしい、というアバウトな知識しかありませんでしたが、面白い進化をしていることを知りました。
ユウグレナのグループには光合成するものとしないものがいるそうです。
もともと光合成をするバクテリアを飲み込んで光合成をして栄養を得ていましたが、一部に光合成を止めてエサを捕食するものが現れ、さらにその一部に再度光合成で栄養を得るものが現れた、という面白い進化をしているそうです。
植物なのにミドリムシだし・・・まったくもって不可思議な生き物です。

・エンマコガネの解説には「アリの巣の生きもの図鑑」で「お気に入り」の仲間入りをした丸山宗利さんの名前が登場しました。
生き物の死体やフンを食べているウジをムシャムシャ食べる姿から閻魔様の名をとって名付けられたそう。
アリの巣に入り込んでアリやアリの幼虫を食べる種類もいるそうですがなかなか見つからず希少標本でしたが、丸山さんが北大の院生のときに札幌市の円山でたくさん捕まえてきたそう。
この欄の筆者はあまりに想定外だったようで「灯台下暗し」だったと書いているのが印象的でした。

・古生物のコーナーの筆者は小林快次さん。
その名前を見ただけで、期待が膨らみました。
以前「ザ・パーフェクト」という本で読んだ「むかわ竜」の完全化石の発見話はとても面白かったです。
(むかわ竜はカムイサウルス・ジャポニスクと名付けられました)
その小林さんによる読者を意識した面白い解説でした。

ニッポノサウルス
 旧樺太で発見された完全体の恐竜化石。
 カモのような口で頭にトサカがあるハドロサウルスの仲間。
 最近の研究でヨーロッパに近縁種をもつ恐竜の幼体であることが判ったそうです。
 発掘からかなり年数が経っていますが継続して研究されているのですね。
 この化石は博物館の目玉なので、研究がさらに進むことを期待しています。

デスモスチルス
 カバのような体つきですが近年の研究では、水中に完全対応していたそうです。
 その短すぎる解説に「もう少し詳しく説明してー!」と声が出そうになりました。
 「水中に完全対応」ってことはクジラやイルカ並みってこと?
 それともアザラシやトドくらいってことかな?
 でも体形が流線形とは程遠いので、どんな風に泳いでいたのか想像がつきません。
 今度博物館に行ったら真っ先に質問してみようと思います。
 もうひとつ近年の研究によると、海苔巻きを束ねたような歯は、水草をかむために
 使っていたのではなく、強い吸引力で水草を吸い取るときに食いしばるために使って
 いたそうです。
 進化樹のどの系統に属するかが謎の生物らしいですが、上記ふたつの説から考えると
 体形と食べ方がジュゴンとかマナティに似ているのでその先祖に違いない、と
 思いました。(素人なので勝手な決めつけをお許しください)
 この化石も今後研究が進むことを期待しています。

アンモナイト
 異常巻アンモナイト化石は、ニッポニテス(日本の石)と名付けられており、
 日本古生物学会のシンボルマークになっているそう。
 またアンモナイト化石が寄せ集まった化石の解説に、軽石などと一緒に石化している
 ことから、アンモナイトの殻は軽いため軽石などと一緒に打ち寄せられて石化したと
 考えられているそう。
 これまでサザエのように重くてがっちりした殻を想像していましたが、オウムガイの
 殻が軽いことを今、思い出しました。

その他、岩石・鉱物コーナーには札幌の旧・豊羽鉱山にスマホに必要な希少金属が眠っているとか、考古学コーナーにはオホーツク人はアイヌ人のイオマンテ(熊送りの儀式)によく似た儀式を行っていたなどという話題があり、多少興味を持って読みました。

北大総合博物館を見学したのはいつ頃だったでしょうか?
ブログを検索すると、すぐに2006年と判りました。
検索機能って便利なものです。
14年も前に行ったきりだったのですね。
開館から7年目と21年目では、展示の様子も大きく変わっていることでしょう。
コロナの影響で閉館している博物館が多い中、通常通り公開を続けているそうです。
今年は自転車で行こうと妻と話しています。



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お気に入りその1913~絵本3冊②

2020-04-09 06:43:43 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、絵本3冊②です。

前回に引き続き絵本を3冊ご紹介します。

①「きょうりゅうのおおきさってどれくらい?」大島英太郎

先日読んだ「とりになったきょうりゅうのはなし 改訂版」が気に入ったので、作者・大島さんの2冊目を読みました。
どちらも2019年発行のため、最新研究を反映しています。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
恐竜には、全長約35mの大きなものから1m以下の小さなものまで、いろいろな大きさのものがいました。
そんな恐竜を、現代の身近なものの大きさと比べながら紹介します。
トリケラトプスは公園のジャングルジムと同じくらい、座ったティラノサウルスはバスと同じくらい。
シノサウロプテリクスは猫と同じくらい……!
子どもたちの生活の場の中に恐竜が描かれることで、恐竜の大きさがリアルに感じられます。
そして、太古の昔に生きていた恐竜が、親しく身近なものに思えてくる作品です。
巻末には、登場する恐竜たちの解説文つき。
時代・食べ物・生息場所などが分かります。
本作は「かがくのとも」2013年1月号のハードカバー化ですが、単行本化にあたり絵柄と解説文の一部を変更しました。
最近は化石の状態が良ければ恐竜の色や模様が推測でき、シノサウロプテリクスはお腹が白かったことがわかっています。
単行本ではそのような最新研究を反映させました。
=====

映画「ジュラシックパーク」では恐竜と人、車の大きさが対比できる場面がふんだんにありましたし、続編では恐竜が街を闊歩する場面までありました。
ただただ壊しまくり殺しまくる派手な映画でしたから、ハラハラしっぱなしで、ゆっくり大きさを対比することなどできるはずもありませんでした。
ましてや恐怖は相手を大きく見せます。
ゆっくり冷静に大きさを対比するなら本書が適任です。
1mを少し超えるくらいの背丈の子どもたちが恐竜にまとわりつくことで、そのサイズ感がリアルに感じられます。
そして日常の風景である公園の遊具、商店街、二階建て住宅、動物園に恐竜を登場させることで、サイズ感は一層身近なものになります。
この絵本ではあり得ない場面をごく自然に見せていますが、それは作者の確かなデッサン力と正確な科学知識の賜物です。
トリケラトプスの解説に幼体は目が大きいと書いてあり、裏表紙に幼体がまさにその通りに描かれていた辺りの心配りも気に入りました。
作者の今後の制作活動がとても楽しみです。

②「ツリーハウス 」ロナルド・トルマン、マライヤ・トルマン

「文字の無い絵本で、絵がとても美しい上、物語が伝わる」という評判を聞き、読むことにしました。
これまで文字の無い絵本を何冊か読みましたが、その中でも
 「アンジュール」ガブリエル・バンサン
 「アライバル」ショーン・タン
の2冊の印象は強烈でした。
果たして「ツリーハウス 」はどうでしょうか?

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
ことばはなくても、絵が、かたりかけてくれる。
ほら、もうおはなしははじまっているよ。
シロクマが、クジラにのってやってきて…
木の上の家からうまれる物語。
ボローニャ国際児童図書賞(ボローニャラガッツィ賞)・イタリア2010年、金の絵筆賞・オランダ2010年、トロイスドルフ絵本賞・ドイツ2011年、世界各国で受賞。
=====

ツリーハウスを訪れる動物たちが描かれています。
シロクマとクマが暮らし始めたツリーハウスの下をフラミンゴの大群が通り過ぎます。
サイが木に激突してハウスを揺らしたあと、ハウスに上がり込みます。
カバまでも、狭いハウスでくつろぎます。
他にもたくさんの動物たちがハウスの周りに集いますが、夕方になると帰っていきます。
賑やかさの余韻を楽しむクマたち。
彼らには明日も楽しい一日が待っていることでしょう。
本書は、読者の気持ちを穏やかにしてくれる絵本で、頭を空っぽにしてただ穏やかな音楽を聴きたい、という日に、頭を空っぽにしてただ読みたい、そんな絵本です。

③「木の実は旅する」渡辺一夫・著/安池和也・画

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
木は、数十年数百年、といった長い期間にわたり、たくさんのタネを生産し続けます。
しかし、せっかくつくったタネも、芽生えた場所が、親の木の下だと、うまく育つことができません。
そこで、木は、すこしでも遠くでタネを芽生えさせようと、さまざまな運び手たちの協力を得て、子ども(木の実)に「旅」をさせるのです。
=====

果実、種子、葉っぱ等が全て実物大で細密に描かれています。
この「実物大」というのが素晴らしいアイデアです。
実物を見たことがないのは子どもだけでなく大人も一緒。
その大きさを知ると、風や鳥や動物たちによって運ばれていく木の実の旅をより身近に感じることができます。
松笠は雨の日に笠を閉じ、晴れた日に開いて種を飛ばすことや、20年も地中で発芽のチャンスを待つ種があることなどのミニ情報も配置されていて楽しく読めます。
また「1本の木から数十万個もの実が旅立つが、大人の木になるのはその内の1個か2個」だということを知り、自然の厳しさも学びました。
これはおススメです!


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