鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその792~北海道の旅

2013-08-30 07:26:01 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「北海道の旅」です。

串田孫一氏の詩的な文章を今年「博物誌」で知りました。
花や鳥、虫に対する優しい眼差しに惹かれて、画文集や図鑑を読みました。
著者の登山家としての顔にはそれほど興味がないので、代表作「山のパンセ」などは読んでいません。
ただ本書「北海道の旅」は別。
私が生まれ育った北海道を著者が半月にわたりぶらり気ままに旅した記録がどんなものか知りたくて、読むことにしました。
当時著者は40代後半。
今の自分に近い年齢ということもあり、50年前の北海道を著者とともにのんびり旅している気分で読みました。
青函連絡船で北海道に渡り、鉄道、バスなどを乗り継ぎながら、地図と地元の人の話を頼りに離島や山を巡ります。
時には噴煙の中を頭痛と喉の痛みに堪えながら登るというような無茶もしますが、かといって有名だからとか、高いからという理由で登る山を選ぶことはしません。
わずか数百mという標高の山でも大切に登ります。
決して贅沢な宿を選ばず、食には無頓着。
車窓から見えた山や川、沼などの名前こそ大切で、克明に記録しています。
そして山で出あった植物や鳥、昆虫の名前も・・・。
著者の自然に向ける温かい眼差しはやっぱり「博物誌」や画文集と一緒でした。

ただ、山や自然を汚す者や、礼儀をわきまえない思いやりのない者への厳しい言葉も書かれており、違う一面を知りました。

ちなみに本書は1962年に筑摩書房から単行本が出版され、1997年に平凡社から文庫版が出版されています。
収録されている北海道の風景が、前者は写真家による写真、後者は著者によるスケッチという違いがあります。
本文中に著者がスケッチを描いているシーンが頻繁に出てきます。
それならやはり著者のスケッチと文章の両方がそろっている文庫版がおすすめ。
昔、単行本で読んだ方は、文庫版で読み直してみてはいかがですか?


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お気に入りその791~最強のふたり

2013-08-28 12:57:23 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「最強のふたり」です。

先日わが家のチャンネル権を握る二人が不在だったので、かねてから用意していた映画DVDを観ました。
「最強のふたり」というフランス映画。
首から下の自由を失った富豪と、貧困から犯罪に手を染めたこともあるが真っ直ぐな心を持った男。
この二人の出逢いと友情を描いた作品です。

「こんな夜更けにバナナかよ」を読み、「潜水服は蝶の夢を見る」を観た後で、チャンスをうかがっていて、ようやく観ることができました。
ハリウッド映画ほど脳天気ではありませんが、暗くなりがちなテーマを努めて明るく描いた素敵な作品でした。
主人公二人は置かれた立場こそ違えど、苦しい状況を懸命に生きていることが共通しています。
そんな二人が出逢い、互いに刺激しあうことで、諦めかけていたものを掴み取ります。
それは家族の愛でした。
映画を観終わり、求めるものは誰も同じなんだなぁとあらためて思いました。
そして身障者と健常者の差って些細なものなんだということも実感しました。

この作品はフランスで大ヒットし、東京国際映画祭や日本アカデミー賞で高く評価された関係で日本でもヒットしました。
ところがアカデミー賞の外国映画部門にはノミネートさえされませんでした。
いかにもアメリカ人好みのストーリーなのになぜ?
ハリウッドでリメイクが計画されているということと何か関係があるのでしょうか?
・・・そんなことはどうでもいいです。
とにかく素晴らしい映画でした。
オープニングとエンディングをうまく重ねた脚本にはハリウッド映画にはない洒落た雰囲気を感じました。

映画って本当に良いものですね。
こういう作品はぜひ映画館で観たいものです。
ふっと小説「キネマの神様」で主人公が書いたという「映画館の臨場感」についての文章が蘇ってきました。
ちょっと長いですが最後に引用します。

==========
映画館の臨場感とは、映画というシステムがこの世に誕生すると同時に作り出された究極の演出なのである。それは1世紀経った現在でも、ほとんど原型を変えることなく伝えられているのだ。ドライブインシアター、カウチポテト族、ホームシアターなど、映画を取り巻く環境は確かに変化しつつある。しかしそれでも映画館が滅びないのは、その臨場感こそが、「娯楽」を追求した人類がようやく獲得した至宝だからだ。映画館は一級の美術館であると同時に、舞台、音楽堂、心躍る祭りの現場でもあるのだ。
この世に映画がある限り、人々は映画館へ出かけていくだろう。家族と、友人と、恋人と・・・・・ひとり涙したいときには、ひとりぼっちで。
人間の普遍的な感情、笑いや涙、恐怖や驚きが映画館にはある。ありとあらゆる人生がある。人間が人間である限り、決して映画館が滅びることはない。たまらなく心躍るひとときを求めて、人はきっと映画館に出かけていくのだ。
==========

この中の「この世に映画がある限り」という一見ダサいフレーズで胸が熱くなったのは私だけでしょうか?

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お気に入りその790~世界大博物図鑑 別巻2

2013-08-24 12:52:29 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、世界大博物図鑑 別巻2です。

荒俣宏著「世界大博物図鑑 別巻2 水生無脊椎動物」を買ってしまいました。

前々から欲しくて安い出物を見つけるまではと我慢していたのですが、先日晩酌中につい酔った勢いで注文してしまったのです。
ああ予定外の1万円の出費って痛い・・・。
今さらながら自分の計画性の無さにがっかりです。
これに懲りて、しばらくは妻の蔵書でもながめて読みたい本を選ぶことにした方が良いでしょう。

さて愚痴はこれくらいにして。
届いた本は輸送用箱に入った美品でした。
わくわくしながらページをめくると、美しい図版が次々現れます。
1枚1枚の図版が和洋の手仕事の美にあふれています。
期待に違わぬ美しさ、と言葉にするのは簡単ですが、そんな美しい博物図版がこれでもか!と続くのです。
このボリューム感、さすがは世界大博物図鑑。いつもながら圧倒されます。
一昨年から昨年にかけて、世界大博物図鑑の本編全5巻をそろえ、ワクワクしながら荒俣氏の博学を堪能しました。
美しい図版を鑑賞し、解説文を拾い読み。

荒俣氏が魂を込めて書き上げた解説文の全文を読破してこそ、世界大博物図鑑の真の価値を知ることになるとは判っているのですが、そのとんでもないボリュームに圧倒され、立ち向かう気力もわきません。
著者には申し訳ありませんが、図版鑑賞と解説文の拾い読み、こういう付き合い方で勘弁してもらっています。
そんなシリーズの別巻2冊目、本当の最終巻として出たのが本書、水生無脊椎動物です。
本書に収録されている水生無脊椎動物は次の通り。

原生生物/海綿動物/刺胞動物/有櫛動物/紐形動物/輪形動物/鰓曳動物/曲形動物/触手動物/軟体動物/星口動物/毛顎動物/有鬚動物/半索動物/棘皮動物/絶滅した水生無脊椎動物

プランクトンに始まり、カイメン、クラゲ、イカ・タコなど多種多様な生物が並んでいます。
その中で最も楽しみにしていたのが貝類。

「美しさを図版で鑑賞したい生物」といってイメージするのは、昆虫や鳥類、魚類、そして植物。
その多種多様な形態と色彩を楽しみます。
それらをこれまで世界大博物図鑑を含めたいろいろな図鑑、図譜で堪能してきました。

そしてもう1種類、それらに匹敵するほど美しいと思っていたのが貝類。
これまで一風変わった図譜でしか鑑賞していませんでした。
その一風変わった図譜とは、アルベルトゥス・セバの「博物宝典」です。
この本の著者は有名な博物コレクターであり、自慢のコレクションをより美しく見せるための工夫が一杯詰め込まれたのが「博物宝典」。
確かに美しい貝をたくさん鑑賞できましたが、解説文がほとんどありませんでした。
そこが荒俣氏との大きな違い。大いに不満が残ったものです。

一時は保育社の「原色日本貝類図鑑」でも買おうかと考えましたが、あれは写真図鑑。
やはり気の利いた解説文と美しい図版の両方を堪能したい・・・。
ということで荒俣氏の世界大博物図鑑が最終ゴールでした。

という訳で美しい図版はたっぷり鑑賞しました。
今は絶妙な解説文の拾い読みを楽しんでいます。
タカラガイ、オウムガイ、ホタテガイ、シンジュガイ、シジミなどなど・・・。
相変わらずの博学ぶり、ヘーボタンがあったら何度押したことでしょう。
こうして電子書籍にはない、気が向くままに行き当たった項目を読む、という読み方でストレス解消をしています。

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お気に入りその789~昆虫図鑑2冊

2013-08-21 12:27:15 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、昆虫図鑑2冊です。

最近読んだ昆虫図鑑2冊の感想を書きます。

1冊目は、長谷川哲雄著「昆虫図鑑~みぢかな虫たちのくらし」です。

<紹介文引用>=====
この本では、比較的身近に見られる昆虫を中心に、およそ600種あまりを、すんでいる環境と生活のしかたとのかかわりを軸にして紹介しました。
ふだん見過ごしている小さな昆虫も、こちらから近づいていって、その気になって探したり、観察したり、飼育してみたりすると、今まで気づかなかった、すばらしく豊かでおもしろい世界が見えてくるはずです。
==========

わずか48ページの絵本なのに「昆虫図鑑」と銘打っている本です。
ページ数から図鑑としては期待しませんでしたが、カスタマーレビューの「美しい画集として鑑賞している」という言葉に期待して注文しました。
本が届き、ページをめくって驚きました。
普通は表紙画が一番丁寧で美しいのが当たり前ですが、本書はどのページも表紙にして良いくらい丁寧に細密に仕上げられているのです。
昆虫と植物の関係が生き生きと描かれていて、簡単な解説が添えられています。
あるチョウのオスメスはどこで区別するかとか、ヒョウモンチョウ類はどこで区別するかなど、ナルホド!という解説があり、読み物としても面白いです。

本書は対象年齢「こどもからおとなまで」と書いているとおり、漢字にフリガナをふるなどして、誰でも楽しめるようにしています。
そしてわずか48ページで600種もの昆虫を紹介するため、次のようなうまい分類をしています。

 / 春の花と昆虫1~2 / 初夏の花と昆虫 / 夏の花と昆虫 / 秋の花と昆虫 /
 / 植物を食べる昆虫 / 昆虫の食草と食べあと1~4 /
 / バッタやキリギリス、コウロギの仲間 / セミやカメムシの仲間 /
 / 樹液にあつまる昆虫 / かれ木にすむ昆虫、きのこを食べる昆虫 /
 / ハチの仲間、ハエやアブの仲間 / 生きた虫を食べる昆虫、死体やふんを食べる昆虫 /
 / 池や沼の昆虫 / 川にすむ昆虫 / 夕ぐれから夜に活動する昆虫 /
 / 冬のすごしかた / 昆虫の大きさの測りかた /

こんな良質で美しい「昆虫図鑑」に巡り会えて本当に幸せです。
欲を言えば昆虫少年だったこどもの頃に読みたかったです。
きっと今以上に感激したはず。


さて2冊目は「原色少年昆虫図鑑」です。
江崎悌三・河田党 共著、昭和28年8月発行、ちょうど60年前の古い図鑑です。
日本図書館協会の紹介文によると、
「普通種及び害虫320種を適確な生態描写の原色図を入れて適切に解説する少年向昆虫図鑑の最高版」
とあります。

8名の画家が、食草や生活環境などを含めた昆虫の生態画を種別ごとに描いています。
腕前には差があり、蝶や甲虫、蝉の図版は結構気に入っています。
そして子ども向けのあたたかく、平易な解説文が何と言っても魅力的です。

当時の生活が感じられる解説文が所々にありました。

 いなご    → 栄養価が高く各地で食べられている
  (母から、子どもの頃3匹でタマゴ1個分の栄養があるといわれ、佃煮にして食べたと聞かされました)

 おおくろばえ → 幼虫は便所などで育つ
  (子どもの頃、母が便所のウジ退治に効くといってタバコの吸殻を入れていたのを思い出します)

 ひとのみ   → 主として人に寄生して血を吸い、家屋内に育つ
  (今まで一度だけ、同級生が身体からノミをとって見せてくれたことがあったのを思い出しました)

昭和28年の「普通種および害虫」ってこういう風に紹介されていたんだと知りました。
それよりわずか7年後に生を受けた自分の育った環境とはかなり違います。(栄養環境・衛生環境)
特に衛生環境については、身近な例を挙げて、子どもたちに注意を呼びかけていたのでしょう。

それにしても戦後の混乱期から高度成長への過渡期。
わずか数年の差で環境が随分変わったものです。

本を読むと、その本が書かれた時代を反映する記述に出会うことが多いですが、図鑑も同じ。
その時代が厚みをもって感じられます。

最後に。
本書には、かぶとむしが日本全国に分布すると記述されていました。
かぶとむしは人により北海道に持ち込まれ、定着したのは昭和45年ころといわれていますので誤りだと思います。
もっとも60年前の著者に異議申し立てするつもりはありません。
子どもの頃、北海道にもかぶとむしがいたらいいのになと思いながら、ペットショップで幼虫を買って育てたのを思い出したので、ちょっとこだわってみました。



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お気に入りその788~盆休みの2冊

2013-08-19 12:41:58 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、盆休みの2冊です。

盆休みに読んだ2冊を紹介します。

まずは、高野和明著「グレイヴディッガー」。
久しぶりに高野和明を読みたくなり購入しました。
小悪党 八神が人生初めての人助けのため逃げる逃げる・・・著者得意のスピーディな展開がさらに加速された作品。
あっという間に読めます。
「13階段」「ジェノサイド」「幽霊人命救助隊」、どれをとってもエンターテイメントとして一級品、しかも生と死・正義・権力などを考えさせられる作品でしたが、今回も同様でした。
本書は最後の1行に参りました。
まさかそこで感動させられるとは思ってもいませんでした。上手いですね。

参ったついでにもう1冊読むことにしました。
いろいろ検討した結果、次は「6時間後に君は死ぬ」にします。
届くのを楽しみにしています。

次は原田マハ著「楽園のカンヴァス」。
先日「キネマの神様」を読んで満足したことは当ブログで書きました。
そのときに著者の第2の顔がキュレーターであることを書きましたが、次はその知識が散りばめられた作品を読んでみたくなり本書を選びました。
ルソー作「夢」の姉妹作と思われる作品の真偽を探るストーリーです。
その中で、そもそもルソーは日曜画家か革新的芸術家か?という議論が出てきます。
彼の絵画が美術界で今も尚、評価が分かれていることを知り、ほっとしながら読みました。
「裸の王様」ではないですが、自分だけが彼の芸術性を理解できないのではないかという不安を取り除いてくれました。

本書には家族の再生もかすかに描かれていますが、できればそういうハッピーな話は「キネマの神様」のようにたっぷり描いて欲しかったです。
ただ主題から大きくはずれるため無理だったのでしょうが・・・。

これで著者の2つの顔を知ることができましたが、著者には第3の顔があります。
著者の名前をポピュラーにしたラブストーリー部門です。
というわけで第1回「日本ラブストーリー大賞」大賞受賞作品である「カフーを待ちわびて」を読むことにしました。
おっさんが読んでも感動するか不安ですがチャレンジしようと思います。
「陽だまりの彼女」を続けて2度読みしたので、まだまだいけると信じています。

最後にオマケ。
映画「潜水服は蝶の夢を見る」を観ました。
著名な編集長がわずか43歳で閉じ込め症候群になったにもかかわえらず、唯一自由に動かせる左目のまばたきだけで手記を書き上げたという実話を映画化したものです。
主人公が20万回のまばたきで書き上げた原作本を忠実に映画化したそうです。
突然自由を奪われた著者の心理として回想シーンと幻想シーンが多くなるのはやむをえないこと。
彼は著作が出版された2日後に亡くなっていますが、さらに数年生きていたらどんな著書を遺したでしょうか?
「こんな夜更けにバナナかよ」の主人公 鹿野のように精神力のみで闘い続ける男の生き様を遺したでしょうか?
自分には彼らのような強さはありませんが、どんな境遇でも闘う気持ちを見習いたいと思います。



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お気に入りその787~マイ国家

2013-08-13 12:12:03 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「マイ国家」です。

久しぶりに星新一を読みたくなり、選んだのが本書。
表題作は、マイホームを“マイ国家"として独立宣言した男の話です。

春にTVで「どくとるマンボウ ユーモア闘病記~作家・北杜夫とその家族~」というドラマをやっていました。
その中で、北杜夫がマンボウ・マブゼ共和国を建国し、日本から独立宣言したシーンがありました。
北杜夫は「マイ国家」をヒントに独立宣言したのではないでしょうか?

一人もしくは少人数が独立宣言をしたときに国家として認められるのか?
そもそも国家の定義とは?
マイ国国王と彼の領土に迷い込んだ銀行マンの論争は明らかに国王の勝ちでした。

この論争については、かわぐちかいじ著「沈黙の艦隊」の中で丹念に描かれていました。
そのため「マイ国家」を読んでも新鮮さを感じませんでしたが、作品発表当時、その発想は驚きをもっては迎えられたことでしょう。

「マイ国家」が他の作品よりページ数が多いのは、「人民は弱し 官吏は強し」に詳しい、国と大手製薬会社たちに潰された星製薬時代の経験から、国家の理不尽さに触れたかったことが理由かもしれません。
もし「沈黙の艦隊」を読む前なら、とても面白く読んだことでしょう。

さて本書には表題作以外に短編が30編収録されています。
初版は1968年だそうですが、45年も経っているとは思えない、新鮮ささえ感じる作品集です。
人の心理って変わらないものと、あらためて実感しました。
印象的だった作品をいくつか挙げます。

「儀式」 宇宙人が侵略基地を建設するときに必ず行わなくてはならない儀式がある。本人たちが無意味だと思っているその儀式には絶大な効果があった。
「いいわけ幸兵衛」 いいわけ名人の平社員 幸兵衛はなぜかどんどん出世していき、ついに社長にまで上り詰める。彼のいいわけ名人ぶりがその後の意外な局面で生きてくる。
「刑事と称する男」 裏を考えながら読んでいたのにもかかわらず、その裏、そしてさらにその裏をかかれてしまい、見事な結末に舌を巻く。
「特殊な症状」 精神科医に解明できない特殊な症状の夫婦。症状を解明するため医師が住宅に忍び込んだことから事態は急展開を迎え、張り込んでいた刑事が終止符を打つ!
「国家秘密」 何のとりえもない小国を繁栄させた国王の秘策とは? ナルホド、国王すごい!という納得のラストは秀逸。 
「服を着た象」 「お前は人間だ」と催眠術をかけられた象が企業経営に大成功する話。「人間とは?」を常に考えることが成功につながるという教訓!

今まで星作品では「声の網」「人民は弱し 官吏は強し」「ノックの音が」の3冊がお気に入りでした。
今回の作品もお気に入りの仲間入りを果たしました。


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お気に入りその786~山の水族館

2013-08-12 07:00:34 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、山の水族館です。

昨日、家族で留辺蕊(るべしべ)にある「山の水族館」に行ってきました。

滝壺の下の魚たち、希少なイトウの群れなどを展示しているとあって、昨年オープンとともに話題になった施設。
地方の施設が、新しい展示方法で注目されるのは、旭山動物園と同じやり方です。
早く見に行きたかったのですが、わが家から片道260kmもあり、自分で運転して行きたくなかったので先延ばししていました。
今回遠乗りが苦にならない息子が運転を買って出てくれたので、やっと行くことができました。
感謝、感謝。
高速道路を使っても2時間半かかる長距離をスイスイと運転する姿は本当に頼もしかったです。

そういえば家族4人が揃って出かけたのは、子どもたちが小さかったとき以来。
本当に久しぶりで、とても楽しかったです。

さて水族館はというと、広大な北海道、その内陸の田舎町にあるだけあってとても小規模でした。
ゆっくり見ても30~40分で見終わりました。
当日は、日曜日、夏休みということもあり、行列ができていました。
今後もたくさんの来場者が訪れることで、旭山動物園のように増築増設する予算がつき、リピート客を生むサイクルに入ることを願っています。
また立地面から、観光バスで層雲峡温泉に行くコースに入れやすいので、新たな観光コースとして確立することを願っています。

さて肝心の展示について。

最初の展示は、ここの看板にもなっている、滝壺の下の魚たちです。
滝壺の底に人間が立ち、急流に群れる魚たちを観察できます。
規模は小さいですが、素晴らしいアイデアに拍手を贈ります。
お気に入りの旭山動物園でアザラシのトンネルを見るときと同じ感動を味わいました。
いつまでも飽きずに眺めていられます。

次の展示は、川が凍る水槽です。
冬に川面に氷が張り、その下で暮らす魚たちを観察できるという世界初の展示だそうですが、外気温任せの展示のため、夏は川を泳ぐ魚たちを普通に観察するだけです。
小さくても良いので、表面を人工的に凍らせた水槽での展示を望みます。(私のように冬に行けない人のために)
でも魚たちの体調を維持するのが大変でしょうし、コストもかかるので、来場者数が増え、予算が付いたら改善して欲しい部分です。

最後の展示は、ドクターフィッシュの体験コーナー。
手を入れるとドクターフィッシュが集まってきて皮膚の角質を食べてくれます。
2人同時に手を入れられるので比較するのが面白かったです。
娘の手には数匹しか集まらないのに息子の手には相当集まっていました。
手が汚い?とみんなで大笑い。
私は小学生くらいの子が手を入れている横で手を入れましたが、指の又までびっしりで隙間が無いくらい魚が集まったのでとても恥ずかしかったです。
あとで妻が、自分も魚が多く集まり恥ずかしかったが、あなたを見て安心したなどと言っていました。
あのコーナーは、複数で比べあうのがとても楽しいのでおすすめです。

山の水族館は大人も子どもも楽しめる施設です。
ただし札幌からは遠いので、くれぐれも時間にゆとりがあるときに無理をせず訪れて欲しいと思います。
冬は特に、です。


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お気に入りその785~キネマの神様

2013-08-10 12:10:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「キネマの神様」です。

次はどんな本を読もうかな?と探している内に偶然行き当たったのが原田マハ著「キネマの神様」。
そこそこ映画好きなので、オススメの作品を知る手がかりにでもなれば・・・なんて軽い動機で読みましたが、文章が読みやすく、かつ物語の設定と展開が面白かったです。
キュレーターという著者の肩書からお堅い文章を想像していただけに、その読みやすさは驚きものでした。

ストーリーは、意外な設定がジャブとして効いて、ありきたりの世界からどんどん意外な方向に突入して行きました。
編集長の息子が引きこもり兼、凄腕のハッカーなんていう設定で一発目のジャブが入り、主人公の父が映画ブログに参戦することになった辺りで二発目が入りました。
この二発目は結構効いて、どっぷりハマリました。
そして最後の一発がローズ・バッドの登場。

レビューでみなさんが語っている通り、後半部は涙が幾度もあふれました。
家庭も会社も大好きな場所も、その全てが負の連鎖に巻き込まれている状況が、大逆転し、みんなが丸く収まり幸せになるなんてことは、現実世界ではありえません。
だからこそこの良質のエンターテインメントを堪能して、幸せを疑似体験できたことがうれしかったです。

他の作品も読んでみたいと思いました。
迷ったあげく「楽園のカンヴァス」を注文しました。


<「キネマの神様」内容紹介>=====
四十を前に、突然会社を辞めた娘。
映画とギャンブルに依存するダメな父。
二人に舞い降りた奇跡とは―。
壊れかけた家族を映画が救う、奇跡の物語。
==========
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お気に入りその784~こんな夜更けにバナナかよ

2013-08-08 12:08:55 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「こんな夜更けにバナナかよ」です。

「こんな夜更けにバナナかよ」を読みました。

10年前に出版され、随分話題になりましたが、とても読む気になりませんでした。
題名から、自由にならない身体から出るわがままと介助者の物語であることは明らか。
難病なのか事故なのかは判りませんが、そんな状況がわが身に降りかかったらと思うと恐ろしく、目を背けたのです。

最近本選びの参考にしている「HONZ」でつい先日、本書の文庫解説が全文リンクされていました。
「本の話WEB」という今まで行ったことが無いHPの記事でした。
解説を書いたのは脚本家の山田太一。
解説なら、と思い読みました。
さすが脚本家、読ませる解説を書きます。
筋ジス患者の介助に若者たちが入れ替わり立ち代り入っていたのはなぜ?というところを深くレポートした本なんだ・・・と理解した気になったそのときに「この解説で読んだ気にならないで欲しい!」とずばっと書いてありました。
そして「どのページにもあなたの心に届く何かがきっとあります!」と言い切っていました。
これには参りました。すっかり見透かされました。

これは読まずにいられない、その思いに駆られて急ぎ購入、546ページをダッシュで読みました。

  人工呼吸器を付けたら退院できない
  素人はたんの吸引をしてはいけない
  気管切開後は話せない
  重症の筋ジス患者は病院・施設・親元以外では生きていけないし、恋愛も結婚もできない

それら当時の医療・介護の常識に挑戦し、見事に打破した男の戦いの歴史と、彼の内なる輝きに導かれた若者たちの物語がそこに書かれていました。
すべては実話であり、「介助してやる」「人間として学ばせてもらう」といった考えは誤りだと冒頭から気づかされます。
介護をする者もされる者も共に悩みがあり、傷つき、苦しんでいるのです。
彼らはオシッコやウンコの介助などを通して、同じ時間を共有し、裸の一人間同士として心をぶつけ合います。
筋ジストロフィによる拡張型心筋症でいつか鼓動が止まると知りつつ、一日一日生きるための戦いを続けながら・・・。
表面的な付き合いが多い現代、悩み多き若者たちが集まり、ケンカをしながらも心を開いていきます。
そこは、決して聖人君子ではない、神経質で自己主張の強い、口の悪い中年男の、単に生きるための戦いの場。
鹿野のところに行ったときに味わう心の安らぎ・・・と誰かが言っていました。
別れた妻も「この状態の鹿野でなければ好きにならなかった」と言っていました。
なぜ若者たちが集まったのか?
人と人が正直に心をぶつけ合う場が、ここにしかないからです。
ここにそんな稀有な場を見つけたからです。
だからみんな集まったのです。
健常者の方が選択肢が多い分、悩みも多く深いとも書かれていて、目からウロコが落ちました。

文庫版の帯には「介護・福祉の現場で読みつがれるカリスマ的名著」とあります。
彼が切り開いた道がまだまだ常識になっていないから、バイブルとして読みつがれているのでしょう。

本書出版直前に亡くなった彼の戦いの歴史は、同じ病気に苦しむ人々や関わったボランティア、医療や介護の関係者に多大な影響を及ぼしただけでなく、われわれ一般市民の眼をも開かせました。
本書が講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞したことは当然でしょう。

本書が「介護・福祉の現場で読みつがれるカリスマ的名著」としては早く読む必要が無い本になることを願っていますとともに、「ひとりの男の戦いのドラマ」としては長く読み継がれる本であって欲しいと願っています。

最後に。
「潜水服は蝶の夢を見る」という映画DVDを大分前に入手しましたが、まだ観ていません。
順風満帆な生活をしてきた男が、ある日突然脳溢血で片目以外の自由を失います。
その彼が「まばたき」で意思を伝え、自叙伝を書き上げたという実話に基づいた映画です。
「こんな夜更けにバナナかよ」と同様逃げていたのです。
これもひとりの男の戦いのドラマ。
近いうちに必ず観ます。

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お気に入りその783~妖怪画談

2013-08-05 12:05:46 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「妖怪画談」です。

先日、BS歴史館の「大江戸・妖怪ブーム」を観ました。

<番組内容引用>=====
日本の夏といえば妖怪。そのルーツは江戸時代。
江戸っ子たちは、妖怪を娯楽として楽しむだけでなく、幕府の締め付けに対抗する政治風刺の道具としても活用、新種の妖怪を次々に発明していった。
その勢いは幕末になだれ込み、国学とも結びついて、妖怪は、なんと明治維新の原動力ともなっていく…!?
今も日本人の心の中に生きる妖怪。
江戸時代の妖怪ブームを通して、妖怪と日本人の不思議な関係に迫る。
==========

水木しげるの弟子、荒俣宏が出演している割には古来の妖怪にあまり焦点をあてない内容でしたが、反面、3人の専門家のコメントで目からウロコが落ちる感覚を、娘も私も味わうことができた面白い番組でした。
お上が推奨する朱子学や仏教の枠を超えた妖怪や幽霊の世界を庶民が支持したことが、やがて幕藩体制の崩壊につながったなどという壮大なストーリー展開には本当に驚きました。
アソビ心あふれた意見の交換は観ていて楽しかったです。
こういうゆとりって大切ですね。

それに触発されて、水木しげる著「愛蔵版 妖怪画談」を買いました。
<書籍内容引用>=====
妖怪は本当にいるのだ!
精緻なタッチと豊かな色彩で、妖怪たちを生き生きと描いてベストセラーになった岩波新書『カラー版妖怪画談』(正・続)
小学生からお年寄りまで幅広い読者に支えられ、一大妖怪ブームを巻き起こした名著が愛蔵版となって刊行される。
ゲゲゲの鬼太郎をはじめとする有名妖怪が大きな判型で甦り、妖怪ファン、水木ファン必携の書。
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いつかは水木しげるの画集を買おうと思っていたので、TVが良いきっかけになりました。
モノクロTV版「ゲゲゲの鬼太郎」から観始め、息子の時代の鬼太郎、娘の時代の鬼太郎と、歴代の鬼太郎を観てきましたので、それぞれに思い出に残る妖怪がいます。
一番怖いのは濡れ女だとか、あかなめと白うねりのエピソードが忘れられないなど、家族で話は尽きません。

大判フルカラーの妖怪画を鑑賞しながら、お気に入りの妖怪の解説を読み、今さらながらにヘーっと感心しています。
また「はんぴどん」という何をやっても半端だが地元で愛されている神様がいるとか、山童は冬の間、山に入った河童のことで性格も姿も随分違うなど、面白い話がたくさん収録されていました。
たまにはこういう本を読んで”見えんけどおる”ものたちの気配を感じることって大切だなぁって思いました。

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