鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその2299~チョッちゃんが行くわよ

2023-10-31 12:20:31 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「チョッちゃんが行くわよ」です。

「続 窓ぎわのトットちゃん」で黒柳徹子さんのママがとてもエネルギッシュな方だったことを知り、ママの自伝を読むことにしました。
1982年発行の「チョッちゃんが行くわよ」です。
黒柳徹子さんのママ・朝(ちょう)さんの幼いころから晩年までが書かれています。

チョッちゃんは少女期に大正時代のモダンガールを目にしているためかオシャレに敏感で、自作した服が周囲から褒められるシーンが何度か登場します。
大正時代のモボモガは歴史の授業で習ったくらいですので、実際にその時代を経験した人の書いたものを読むことになるとは、とちょっぴり驚きつつ読みました。

チョッちゃんの父は町医者で家庭は裕福でした。
それがよくわかるエピソードがありました。
チョッちゃんの兄は医大を目指す浪人生で東京の下宿住まいをしていました。
そのころチョッちゃんも東京の音楽学校で寄宿舎生活をしていました。
兄は仕送りが届くとチョッちゃんにいろいろ買ってくれたそうです。
裕福さがわかるエピソードその2。
チョッちゃんのお母さんはまったく料理ができない方ですべてお手伝いさんにしてもらっていたそう。
そして生涯をキリスト教の熱心な信者として生きたそうです。

チョッちゃんは自身と娘・徹子とを比べて書いています。
二人の共通点は、何にでも興味を持つこと。
二人の違いは、チョッちゃんは雑な性格のため興味を持ったものを途中で投げ出すのに、徹子はとことん追求するのだそう。
その点は現・NHK交響楽団のコンマスを務めた父に似たのだろうとのこと。
ちなみに徹子の名は初志貫徹から名付けたもので、男の子を想定して徹と名付けるつもりだったとか。

さて本書は、チョッちゃんの戦中戦後の活躍ぶりを読みたくて開きました。
結果はどうだったのでしょうか。
おおまかには「続 窓ぎわのトットちゃん」に書かれていた通りでしたが、ご自身のことなので少し控えめに書いているように感じました。
それでも疎開先に米などの食料を買い付けに来た人たちの要望により食堂をやって稼いだこと、それが警察に止められると、今度は青森と東京の質屋の間を往復して青森の食料を東京に届け、東京の衣類などの質流れ品を青森に届けて、これまた大きく稼ぎました。
さらに音楽学校で声楽を習ったこととその美貌から結婚式などの呼ばれては歌を披露してご馳走を家に持ち帰っていたそうです。
戦中戦後の暗さを感じさせない、大活躍ぶり。
シベリアに抑留されていたご主人が帰ってきた時には、戦災で失った家を稼いだ金で再建していたそうです。
さらにもうひとつチョッちゃんのすごいエピソード。
それは47歳で5番目の子を出産したことです。
心身ともにたくましいからこそできたことだと思います。
爪の垢を煎じてあやかりたいと思ったのは私だけではないと思います。
本書を原作としたNHKの朝ドラ「チョッちゃん」が1987年に放送されたそうです。
主演は古村比呂。
北海道滝川市出身の朝さんを北海道江別市出身の古村が演じたのですね。
平均視聴率は何と38.0%!
朝からチョッちゃんのパワフルな行動を目にした人は活力がみなぎったことでしょう。

どんな時代でも絶望せずにたくましく生きることができることを学びました。
本書を読んで、こんな魅力的な方の人生に触れることができて本当に良かったです。

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お気に入りその2298~肋間神経痛

2023-10-28 12:04:11 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回はお気に入りではなく、先日経験した肋間神経痛について書きます。

今月最初の土曜日、突然左鎖骨の下端が痛くなりました。
朝、背を屈め左手を前に突き出す姿勢をすると鎖骨下に強い痛みが走り、驚いて手を引きました。
何が起きたのかがわからず、鎖骨下をマッサージしたり、ストレッチをしましたが効果は見られませんでした。
インターネットで調べると症状から肋間神経痛らしいことがわかり、数日で痛みが引かないときは病院に行きましょうとのことでした。
夕方には痛みがおさまり、一安心しましたが、翌朝は前日の比でないくらい悪化しました。
どういう姿勢をしても激痛が走りランニングシャツを脱げないのです。
たまたま日曜だったのでその日は一日着替えずに過ごしました。
左腕を動かすと多くの場合激痛が走り、鎖骨上の筋肉にも痛みを感じるようになりました。
さらにエスカレートすることを恐れましたが、その夕方には前日同様に痛みが治まりました。
そして月曜の朝。
何事もなかったように痛みがなく平穏な朝をむかえることができホッとしました。
解説通り痛みは2日で終わりました。
その後痛みのことを忘れ、あれこれ忙しくしていましたが、金曜の朝に左鎖骨の同じ場所ににぶい痛みがあることを発見。
ドキドキしつつ状況の変化を見ていますが、土曜になっても特にエスカレートすることはありません。
このまま再発せずにいてほしいです。
しかしあの痛みの大きさはあまり経験がありません。
ひどいときはしゃがみ込むほどでした。
治療法は湿布と鎮痛剤ということで、根本解決ができなさそうなことも残念です。

話は変わりますが、先日知人が珍しい病気になりました。
インフルエンザ脳症という病気です。
インフルエンザウイルスの影響で脳に障害が出る病気です。
発熱後に意識が混濁し、痙攣、昏睡が起こり、治療が遅れると後遺症が残ったり、死に至る場合もある恐ろしい病気だそうです。
5歳以下の子供か60歳以上の高齢者がかかります。
知人は発病後、意識が混濁し、時間感覚がないことを繰り返し訴えていました。
出勤後様子がおかしいことに周囲が気づき、かかりつけ医のところに連れて行って受診、心不全の診断を得て、別の病院で再受診、インフルエンザ脳症の診断で1週間の入院加療ということになりました。
この話を聞いたときはたかがインフルエンザで入院とは大げさなことだと思いましたが、痙攣や昏睡になる可能性があるそうで、それなら症状がおさまるまで入院した方が本人や家族が安心です。
今回は発見が早かったため、後遺症もなく治るのではと期待しています。
自分も60歳を過ぎているので他人ごとではありません。
わが身を守るため、家族や知人に事例を紹介して周知をはかっているところです。
インフルエンザが流行しています。
みなさんもご注意ください。


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お気に入りその2297~日本人はどのように建造物をつくってきたか2

2023-10-26 12:23:02 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「日本人はどのように建造物をつくってきたか」その2 です。

先日、「日本人はどのように建造物をつくってきたか」のシリーズ第1巻「世界最古の木造建築・法隆寺」を読んだ感想を書きました。
続いて今回は第2巻である「世界最大の鋳造仏・奈良の大仏」の感想です。
高校時代に修学旅行で見てきましたが、大きかった他はたいした感想を持たずにきました。
まずは本書で学んだことを箇条書きします。

(1)大仏の鋳造と鍍金に使われた金属の量
・銅 499トン
・錫 8.5トン
・金 440kg
・水銀 2.5トン

(2)制作工程
1.木材で骨組みして粘土で輪郭を作る塑像を作る
2.塑像に粘土を張り、乾いたら外すという手順で外鋳型を作る
3.塑像を銅の厚さ分削る
4.型持ちで外鋳型を支えて塑像を囲う
5.銅を流し込む
6.2-5の工程を下から8回に分けて行う
7.全体像が出来上がった後、デコボコや裂けの修繕、ヤスリ掛けをした
8.台座を鋳造した
9.鍍金(金メッキ)を施した
10.途中から並行して大仏殿を建築した

(3)大仏と大仏殿の歴史
743年聖武天皇が大仏制作を発表してから14年後の757年に大仏と大仏殿は完成します。
その29年後の786年に大仏の尻に裂け目ができて、左手が落ちました。
さらにその41年後の827年には尻が折れくぼみ、頭が傾き始めたため、土の山を築いて防ぎました。
そして855年、地震により頭が落ちてしまいました。
861年に頭を取り付けることができました。
さらなる災難が大仏を襲います。
1180年に平家の焼き討ちに合い頭と手が壊れ落ちます。
1184年には鋳造修理が終わっています。
1567年、戦国時代の戦乱のため、腰から下の部分を残して焼け落ちました。
1691年、大仏の修理が終わりました。
1709年、大仏殿が再建されました。当初のものより間口が4間狭いが、それでも世界最大の木造建築物。
1903年と1974年に大仏殿修理
今に至る。

さて本書を読んでの感想です。
第一に、1300年も前に世界最大の鋳造仏を建造し、それを囲む世界最大の木造建築である大仏殿を建て、さらに大仏殿の東西に高さ100mに及ぶ七重の塔を建てたというスケールの大きさに圧倒されました。
そして当時、国民の2人に1人にも上る人々がこのプロジェクトに参加したそうです。
いくら天皇が発案したからとはいえこのような壮大な取り組みが見事に成功裏に終わったことに驚きを禁じえません。
当時の日本は、中国や朝鮮に学び、追いつこうとしていたアジアの後発国です。
無理に無理を重ねたことは明らかです。
著者はあとがきに、これだけのことをしないと国民の心が休まらなかった大変な時代だったのだろうと書いていました。

第二に、大仏や大仏殿が壊れる度に民衆が浄財を出し合って修繕してきた歴史を知り、々日本人として感動を覚えました。
大仏殿の昭和の大修繕が完了した1980年、さだまさしがお披露目の場で歌いましたが、あの時「あの瓦からあの瓦まで私の瓦です」と言って笑わせたのがとても印象に残っています。
前回の大仏殿修理からすでに40年以上経っています。
次の修理の際は私もぜひ協力したいものです。

本シリーズは細部まで書き込まれたイラストが豊富なため、とても読みやすいです。
当初は第6巻「巨大古墳 前方後円墳の謎を解く」を含めた3巻を購入しましたが、追加で第3巻「大坂城 天下一の名城」と第10巻「桂離宮 日本建築の美しさの秘密」も買っちゃいました。
素晴らしいシリーズです。




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お気に入りその2296~トットちゃん2

2023-10-24 12:50:09 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、トットちゃん2です。

「続 窓ぎわのトットちゃん」の後半の感想です。
前半の感想に引き続き、ネタバレに注意して書きたいと思います。

トットちゃんは青森の家族のもとを離れ、東京のミッションスクールに入学します。
校舎を空襲で焼かれたためお寺を間借りしての授業ですが先生方の厳しいこと・・・。
でもトットちゃんは相変わらずトットちゃんです。
決して縮こまったりしないところがさすがです。
そしてNHKの入社試験、入社後の仕事ぶりなどが書かれています。
登場するエピソードは「トットチャンネル」と重複する部分が多かったです。

本書を読んでへーっと思ったのは2点。
トットちゃんのママがいかにエネルギッシュで魅力的な方かということ。
そして「徹子の部屋」に歌詞があったということ。

前者についてはママの自叙伝「チョッちゃんが行くわよ」を読むことにしています。
後者についてはぜひ本書を読んで歌詞を見つけて、お馴染みのメロディに合わせて歌ってみてください。

最後に一言。
黒柳さん、続編を書いていただき、ありがとうございました。
とても面白かったです。
黒柳さんの願いが届き、ウクライナやパレスチナなどの紛争・戦争が無くなることを私も願っています。


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お気に入り2295~トットちゃん

2023-10-20 12:29:13 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、トットちゃんです。

黒柳徹子さんの「続 窓ぎわのトットちゃん」が発売され、話題になっています。
まずは内容紹介を引用します。
=====
国民的ベストセラー、42年ぶり、待望の続編!
国内で800万部、全世界で2500万部を突破した『窓ぎわのトットちゃん』。
世界中で愛されている、あのトットちゃんが帰ってくる!
泣いたり、笑ったり……トットの青春記。

【本書の内容】
・東京大空襲の数日後、青森を目指して、ひとり夜行列車に乗ったトットを待ち受けていた試練とは?
・「おめえのジンジョッコ、描いてみろ」。疎開先の学校で、みんなとなかよくなりたいトットが、考えついた方法とは?
・「咲くはわが身のつとめなり」の言葉を胸に、トットが通った女学校や音楽学校の思い出は、映画、オペラ、ラーメン、それから?
・「そのままでいいんです」。NHKの専属女優になりたての、トットが救われた一言とは?
・アルバムからお借りした写真や、いわさきちひろさんの絵もたっぷり。

【黒柳徹子さんからのメッセージ】
私は、どう考えても『窓ぎわのトットちゃん』よりおもしろいことは書けない、と思っていました。私の人生でトモエ学園時代ほど、毎日が楽しいことはなかったから。だけど、私のようなものの「それから」を知りたいと思ってくださる方が多いのなら、書いてみようかなと、だんだん思うようになったのです。よし!と思うまで、なんと42年もかかってしまったけど、書きはじめると、笑っちゃうこと、泣いちゃうこと、それから戦争のことも次々に思い出されて……。
=====

トットちゃんの年齢としては発行済の2冊「窓ぎわのトットちゃん」と「トットチャンネル」の中間に位置する作品のようです。
個性を尊重するトモエ学園で教育を受けたトットちゃんがそのまま素直に成長して、NHKの専属女優となり、テレビ創世期に伸び伸び活躍したことは上記2冊で知ることができました。
でも本書を読むとそんなトットちゃんも戦争中は随分辛い思いをしたことがわかります。
今回は本書前半の感想を書きますが、これから多くの人が読むであろう素敵な作品ですから、できるだけネタバレせずにうまく書きたいと思います。

本書は、時系列順に、ひとつのエピソードを数ページにまとめて書かれており、とても読みやすいです。
「子どもたちに読んで欲しい」という著者の願いを強く感じます。
その優しい文章はまさにロングセラーになった「窓ぎわのトットちゃん」と同じ。
北海道弁でいう「読まさる~」です。
(「心地よくてどんどん読めちゃう」という意味)
本書にはトットちゃんのことだけでなく、トットちゃんのママの大活躍が克明に描かれています。
何てたくましいママでしょう。
戦中戦後という激動の時代に自らの才覚で大成功をおさめるなんて、トットちゃんだけでなく誰でも尊敬すると思います。
そんなママの自伝「チョッちゃんが行くわよ」も読みたくなり、すぐに注文しちゃいました。
本書は以上のように期待を十分上回る素敵な作品です。
みなさんにもぜひ読んでいただきたいと思います。
後半もとても楽しみです。

なお本書はロシアのウクライナ侵攻で子どもたちがつらい思いをしていることが契機となって書かれたと思います。
戦争は大人だけでなく子どもたちにもつらい思いをさせるし、長く平和が続いている日本もかつては戦争をしていたことを自らの体験を通して教えてくれます。
決して戦争をしてはいけない、という著者の訴えが聞こえるようです。


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お気に入りその2294~日本人はどのように建造物をつくってきたか

2023-10-18 12:19:59 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「日本人はどのように建造物をつくってきたか」 です。

興味深い本を見つけました。
「日本人はどのように建造物をつくってきたか」という1980年に発行された全10巻のシリーズです。
各巻の内容は次の通りです。
=====
1.法隆寺 : 世界最古の木造建築
2.奈良の大仏 : 世界最大の鋳造仏
3.大坂城 : 天下一の名城
4.江戸の町(上):巨大都市の誕生
5.江戸の町(下):巨大都市の発展
6.巨大古墳 : 前方後円墳の謎を解く
7.平城京 : 古代の都市計画と建築
8.京都千二百年(上):平安京から町衆の都市へ
9.京都千二百年(下):世界の歴史都市へ
10.桂離宮 : 日本建築の美しさの秘密
=====

カスタマーレビューを読むと、
・対象は小学6年生以上
・イラストが豊富で絵本のように読むことができる
・難しい専門用語がふりがなが振ってあり正しく読むことができる
と、高く評価されています。
これは良い本に巡り合いました。
とりあえず、法隆寺、奈良の大仏、巨大古墳の3巻を読むことにしました。
どれもメルカリで格安で入手できました。
私のように次から次へ古書を購入する者にとってメルカリは、アマゾンやヤフオク、日本の古書店よりも安く入手できることが多く、とても重宝しています。

まずは第1巻「法隆寺」から読むことにしました。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
平城遷都1300年記念。
初めて明らかにされた世界最古の木造建築の秘密。
法隆寺の解体修理にあたった棟梁と、建築史家と、建築科の出であるイラストレーターの三人が協力、法隆寺がどのようにして建てられたかという難しい問題を解き明かした。
=====

さらに著者略歴も引用します。
=====
西岡常一
1908年奈良県に生まれる。1995年没。西岡家は、鎌倉時代にはじまる法隆寺四大工の一人、多聞棟梁家につながる宮大工の家柄。明治のはじめ祖父常吉氏の代に法隆寺大工棟梁を預かる。常一氏は幼少より祖父常吉氏から宮大工の伝統技術を教え込まれ、1934年に法隆寺棟梁となる。20年間にわたった法隆寺昭和大修理で、古代の工人の技量の深さ、工法の巧みさに驚嘆したという。法隆寺金堂、法隆寺三重塔、薬師寺金堂、薬師寺西塔などの復興の棟梁として手腕をふるった

宮上茂隆
1940年東京に生まれる。1998年没。東京大学工学部建築学科卒業。論文「薬師寺伽藍之研究」で工学博士号を取得。1980年、竹林舎建築研究所を開設。日本建築の歴史研究と復元設計に専念した。歴史研究では古代寺院建築、中世住宅建築、近世城郭建築、数寄屋と茶室など幅広く、建築設計では国泰寺三重塔(富山県)掛川城天守(静岡県)大洲城天守(愛媛県)などがある

穂積和夫
1930年東京に生まれる。東北大学工学部建築学科卒業。長沢節氏に師事して絵を学ぶ。松田平田設計事務所をへてイラストレーターに。アイビーファッションのイラストなど、おもにファッションや自動車などの分野で活躍してきたが、現在では日本の歴史的な建造物や街並み、歴史風俗などを描くことに意欲的に取り組んでいる。昭和女子大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
=====

伝説の宮大工、古代寺院建築を研究する工学者、建築科出身のイラストレーター。
この3人が小学6年生向けに書いたのですから期待が膨らみます。

冒頭は法隆寺を建てることになった経緯をさらりと書いています。
続いて土地の造成。
元々あった土地が狭かったため、後ろの斜面を崩して敷地を確保しました。
掘った土は盛り土に使ったそうですが、興味深かったのは転圧の方法です。
10cmほど盛っては女性が数人細い棒で地面を突くことを繰り返し、高く積んでいったそうです。
一気に厚く盛ってから力で突いても土中の空気が抜けないからだとか。
非力で良いなんて目から鱗でした。
そしていよいよ建築。
墨壺を使って墨付けを行い、正確な作業を行っています。
大工道具のほとんどは現代でも使われているもので、逆に無いものは平カンナと縦挽き用ノコギリくらいのようです。
1300年以上も前に建築技術がほぼ完成していたことに驚きました。

エンタシスの柱について
元々木が立っていた時と上下を同じにすること、木が立っていた時に南だった面を建物の外側に向けるように使うこと、割れを防ぐため四つ割りなどして芯を抜くなど、木材の扱い方の基本的な部分がさらりと書かれており、いちいち感心しながら読みました。

柱と梁の関係
お寺の屋根は大きくて重いので柱の上に設置する梁を3点支持にして力を分散しているそう。
装飾的な意味合いでそうしているとばかり思っていましたが、強度的な意味合いがしっかりあったのですね。

以降、金堂の次は五重塔を上層階から仕上げ、門と回廊を建て増し、さらに・・・と完成までの道筋が紹介されています。
まるで見てきたかのような記述ですが、おそらくは西岡大棟梁の経験から導き出されたものであり、そのほとんどは正しいのでしょう。
そういう大名人が子供向けに書き下ろしてくれたことは実に素晴らしいことです。
本書は新装版となって2010年に復刻しています。
大切に読み継いでいってほしい宝物のような一冊でした。




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お気に入りその2293~ごぼう飯

2023-10-16 12:14:58 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ごぼう飯です。

石原さとみがMCを務める「あしたが変わるトリセツショー」という番組があります。
これまでほとんど見たことがありませんでしたが、先日は期待を込めて「ごぼう」特集を見ました。
というには理由があり、妻が冷蔵庫にごぼうがたくさんあると困っていたので簡単で大量消費に向いたレシピがあったら良いなと思ったからです。
その番組で意外な事実を知りました。
・あく抜きすることで大切な栄養素や香りが流れ出ている
・だからあく抜きせず簡単に料理するだけで美味しく食べられる

そこで紹介されていた「ごぼう飯」を作ってみました。
材料と手順はNHKのHPにもありますが、数年後の自分のために書き残します。

「そのまんまごぼう飯」

材料
・ごぼう100g
・米2合
・バター30g
・塩少々

手順
・ごぼうの土をたわしで洗い流し、ピーラーでささがきにする
・ごはんが炊き上がったら軽く混ぜ、ごぼうとバターと塩を加えて混ぜる
・蓋をして3分蒸してまた混ぜる

テレビではタレントが2人で美味しい美味しいといって食べており、テレビ向けコメントではないかと半信半疑でしたが、食べてみたらとても美味しかったです。
ごぼうの香りを楽しみながら食べる料理って初めて。
簡単で美味しい、確かに「あしたが変わる」ごぼうのトリセツでした。
ちなみに塩気が足りなかったので、だし醤油をかけてみたら、さらに美味しくなりました。
ぜひお試しください。

(おまけ)
ごぼうのレシピをもうひとつ。
トリセツショーの前に見たのが「ごぼうの揚げ焼き」です。
正確な料理名は覚えていませんが、だいたい次のような手順でした。

・ごぼうの土をたわしで洗い流し、2センチくらいに輪切りする
・片栗粉をまぶしてフライパンで炒め焼きする
・火が通ったら塩を振ってできあがり

そういえばこれもあく抜きしなかったですね。
おかず、酒のつまみ、子どものおやつ、どれにも合う、超簡単なごぼう料理でした。
こちらもとても美味しかったです。


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お気に入りその2292~大地の動きをさぐる③

2023-10-13 12:27:37 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、大地の動きをさぐる③です。

本書は「100歳の地球物理学者が50年前に書いた本」を復刊したものです。
地球物理学の研究を進める上で、科学的思考をどう巡らせ、どのように実証したのかが丁寧に書かれています。
今回はその感想の最終回です。

地震断層の続き
地震断層の縦ずれ、横ずれについての学会発表は多くの学者に評価されたそうでう。
著者がある程度著名が研究者であることと、著者が立てた仮説に対しいろいろな研究者が協力して裏付けが豊富だっだことが評価された理由だろうと書いています。
特に特定の地層をあちこち掘り起こし、ついに木片を発掘し、放射性炭素年代測定で2万数千年前にできた地層と判明したことについて、著者は感謝を述べています。
それとともに著者が無名時代に学会で海進海退理論を発表したときに全く評価されなかったことに触れ、理論の内容ではなく発表者の有名無名で区別する学会の風潮に問題提起していることは興味深かったです。

また新聞社の航空機に研究者が便乗して断層のずれを高空から見ることで、その広範な広がりが明らかに確認できることに驚いたという記述は新鮮に感じました。
今でこそ宇宙から観測したデータを屈指して広い視野で研究ができますが、当時は研究者が初めて地上を離れて観察することで研究の視野が大きく広がった劇的瞬間だったと思います。
その後は航空写真を地上の研究結果と照らし合わせることで研究が大きく進むことになります。
こうして地震断層がそれぞれ単独のものではなく、互いに関係があることが推測されたのです。
断層群の共通性から、やがて日本の国土にかかっている大きな力の存在が明らかになっていきます。

余談ですがその中に「岩盤に圧力がかかり破断する時は破断面が鋭角を示す」という記述がありました。
学生時代に、岩石を円筒形のピースに成型して圧力をかけて破断させる実験をしたことがあり、破断面が鋭角を示していたことを懐かしく思い出しました。
この角度を元にして断層の向きから、その地域はどの向きから圧力がかかっているかを推定しています。
著者は中部・関西方面の多数の横ずれ断層を調べ、西から東に圧力がかかっていることを突き止めました。
また日本の大地震のほとんどが太平洋側で発生していることから、太平洋側の隆起状況を丹念に調べたところ、関東から四国にかけて、太平洋側から圧力を受けて海側が少しずつ隆起を続け、限界を超えると地震が起きて沈降することを繰り返していることが判りました。
この辺りまでくると、この先は日本各地にいろいろな方向から圧力がかかっていることが判明していき、やがて地球全体に関わるプレートテクトニクス理論と結びついていくのだろうな、という見通しが立ちます。
まさに本書に書かれているのはプレートテクトニクス理論前夜の地球物理学であり、かの理論がただのぽっと出のアイデア理論ではなく、本書にあるような多くの研究者による地道な研究が後ろ盾となったからこそ世界に認められたことを示していました。
(本書には一言もそのことが書かれていませんが・・・。)

あとがきで著者が述べている通り、本書には「地質学上の疑問に対して仮説を立て、実測することでそれを実証する」場面が繰り返し出てきます。
そのどれもが「検証の結果、仮説が正しかったことが証明された」という成功事例ばかりです。
著者はさらに続けます。
研究とは袋小路ばかりでなかなか出口(正解)に行き当たらないもの。
本書には成功事例ばかりを書き連ねたが、実際は仮説が正しくなかった場合の方がはるかに多かったことを知って欲しいと。
そうした地道な努力の積み重ねが今日の科学的知見を作り上げたのであり、そのことを知った上で、読者の中から研究を引き継ぐ人が出て欲しい、と結んでいます。

若き読者への呼びかけが胸に残りました。
ぜひ読んでもらいたいです。

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お気に入りその2291~甲斐信枝

2023-10-12 12:09:57 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、甲斐信枝です。

甲斐信枝の観察記絵本が大好きです。
一番のお気に入りは「雑草のくらし」で、「ひがんばな」「ふきのとう」「あしながばち」「きゃべつばたけのいちにち」「たけ」なども気に入っています。
今回入手した「つくし」もその一冊。
すでに手元にあったのですが、著者のサイン本が送料込みで500円以下で販売されているのを知り、つい買ってしまいました。
今回の「つくし」は、かがくのとも傑作集版の第10刷で2017年の発行。
その年、甲斐さんは85歳。
同年に「足元の宇宙~絵本作家・甲斐信枝と見つける生命のドラマ」というドキュメント番組がNHKで放送され話題になりましたので、それを記念して開催された講演会かサイン会で書かれたものと推察します。

本書の内容紹介を引用します。
=====
春の野原に、いっせいに頭をだすつくし。
その1年間のくらしをみずみずしく描きました。
植物の不思議な世界にご招待します。
「つくしだれのこ、すぎなのこ」ってほんとうかな?
=====

冒頭はつくし料理の数々が紹介されています。
我が家でも指先を灰汁で真っ黒にしながらハカマを取り、つくだ煮にして食べたことを思い出しました。
著者はせっせと土を掘り、つくしとすぎなが地下茎でつながっていることや、地下茎の途中に豆のようなものがあることを突き止めます。
しかもその豆のようなものを食べて、イモのようだったと感想まで書いています。
たっぷり観察した後、観察結果を発表しています。
つくしは胞子を飛ばして仲間を増やす役目、すぎなは緑の枝を伸ばして陽光から栄養を作り出す役目、豆のようなもの(塊茎)は来春芽を出すために栄養を貯める役目を持つそうです。
著者は本書でも、相変わらず、とことん観察していますね。
その姿が目に浮かび、微笑ましく感じました。

著者は80代後半から足腰が弱くなって観察に出かけられなくなったそうですが、「あしなが蜂と暮らした夏」を書いています。
新たな観察は無理でもこれまで出した絵本で観察したことをあれこれ書いてくれると嬉しいです。
絵本と合わせ技で楽しみますので、どうかよろしくお願いいたします。




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お気に入りその2290~たてのひろし

2023-10-10 12:20:01 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、たてのひろしです。

たてのひろしさんの絵本「どんぐり」を読みました。

内容紹介を引用します。
=====
どんぐりが梢から落ちてくる。
どんぐりは生きようとしている。
けれど、ほとんどは死んでいく。
誰かの命は誰かの糧になっている。
森はそのようにできている。
たてのひろしが季節を越えてめぐる生命の気配を描く。
=====

文字のない絵本は久しぶりです。
絵だけで物語を伝えるためには確かな画力が必要です。
これまで読んだ中で印象的だったのは次の2冊でした。
・「アンジュール ある犬の物語」(ガブリエル・バンサン)
・「アライバル」(ショーン・タン)

本書の作家も画力に定評があります。
たてのさんはファーブルの昆虫画家として有名な熊田千佳慕の弟子であり、師匠譲りの細密な生物画に定評があります。
「しでむし」「つちはんみょう」「がろあむし」は贅沢に時間をかけて制作された力作で私の宝物です。

前置きが長くなりました。
本書について書きます。
※思いっきりネタバレです。ご注意ください
本書はどんぐりが落ちてから若木に育つまでを描いています。
秋、信じられないほどたくさんのどんぐりが森に降り注ぎます。
これらがすべて育つと森はどんぐりの木だらけになってしまうのではないかと心配になります。
そこに野ネズミが現れてどんぐりをもりもり食べます。
続いてカケスが現れてどんぐりを咥えて飛び去ります。
さらに小さな虫がどんぐりに穴をあけて入り込み、中身を食べつくします。
こうしてどんぐりはどんどん減っていきます。
生きているどんぐりはカラー、死んでしまったどんぐりはモノクロで描き分けられています。
おびただしい数のどんぐりがモノクロで描かれている様はドクロにの山を連想させますが、ところどころにカラーで描かれたどんぐりがあり、懸命に根を伸ばしています。
そして春、残ったどんぐりは枝葉を太陽に向けて成長し始めます。
そこに現れたのはシカ。
やわらかくておいしい幼木の葉や小枝をすっかり食べてしまいます。
続いてイモムシたちの登場です。
彼らはいろいろな蝶や蛾の幼虫たちです。
彼らは生き残ったどんぐりの若葉をもりもり食べ、幼木は1本残らず枯れてしまいました。
ついに全滅?
ラストシーンは絵本見開き一面に広がる森の一角。
モノクロで描かれた森の奥の方をよく見ると1本だけカラーで描かれた木が!
そうです。
どんぐりの幼木がわずか1本、生き残ったのです。
この幼木がやがて森にどんぐりを降らせる大木になるのかもしれません。
こうして命は継がれていくのだという希望を抱かせるエンディングでした。

本書は森の生きものたちの命をどんぐりが支えているという一面を描いています。
でもどんぐりの木は一方的に捕食されている訳ではなく、捕食者たちのフンがどんぐりの木の肥料になることも忘れてはいけません。
お互いに助け合う仕組みが大昔から維持されてきたのです。

本書はどんぐりを中心とした森の観察記録でした。
素敵な絵本でしたが過去一ではありませんでした。
植物の観察記録としては名作絵本「雑草のくらし あき地の5年間」(甲斐信江)が一番のお気に入りです。
昆虫の観察記録としては本書の作者が描いた「つちはんみょう」が一番のお気に入り。
これら過去一を更新する名作と出会うことを今後も期待しています。


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