鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1062~鬼平犯科帳パート75

2015-05-29 12:23:03 | 鬼平
今回のお気に入りは鬼平犯科帳パート75、鬼平秘録です。

オール讀物の増刊号「鬼平秘録~現代を生き抜くための鬼平の名言」を読みました。
池波正太郎没後25年の企画ものです。

これまで小分けに掲載されてきたエッセイや対談を一冊にまとめています。
読んだことのあるものも無いものもありました。
久々の鬼平。
つい面白くて、先に読んでいた本を中断して読んでしまいました。

目次を引用します
=====
・愛読者が選ぶ鬼平傑作選
 「暗剣白梅香」土井敏之(TBSアナウンサー)・選
 「兇賊」清水市代(女流棋士)・選
 「本門寺暮雪」鈴木久仁(あいおいニッセイ同和損保社長)・選
 「穴(あな)」山本一力(作家)・選
・いまを生きるすべての人に! 現代を生き抜くための鬼平の名言  青木逸美
・人生は鬼平が教えてくれた~さだまさし、鬼平を語る
・名作はいかにして生まれたか? 鬼平誕生前夜  里中哲彦
・初代担当が語る~特大カツとハイボール  花田紀凱
・長谷川平蔵の秘密  池波正太郎×江國滋
・今明かされる創作秘話 鬼平を書く楽しみと苦しみ  池波正太郎
・ようこそ鬼平の世界へ 特別再録&インタビュー
 「劇画 鬼平犯科帳」第一話
 「池波さんに魅せられて」さいとう・たかを
・池波正太郎が選んだ「鬼平」ベスト5を歩く 鬼平ゆかりの地を訪ねて  松本英亜
・鬼平を観る! 鬼平「テレビ」の名台詞
・江戸情緒の秘密は京都にあり  春日太一
・なぜこんなに面白いのか? 鬼平の凄み  逢坂剛×諸田玲子
・女の愛する長谷川平蔵  北原亞以子 杉本章子 宇江佐真理 諸田玲子 畠中恵
・池波正太郎という人 想い出の池波正太郎  大村彦次郎×逢坂剛×佐藤隆介
・作家が見た池波さん
 「池波さんの思い出」 渡辺淳一
 「締切の二日前」 井上ひさし
 「池波さんの新しさ」 藤沢周平
・長谷川平蔵を描き続けて半世紀 池波さんとの仕事  中一弥
特別収録
・私にとっての長谷川平蔵  中村吉右衛門
=====

さだまさしのエッセイが面白かったです。
鬼平を読んだらもう他を読まなくて良いと思ったと書いています。
実は私もそう思いました。
鬼平には人の世の表も裏もすべて書かれており、さらに人心掌握術まで学ぶことができます。
世間小説と誰かが言った通りの人生の教科書です。
さださんは数年に一度読みたくなり、5冊ずつ買っては読み、読み終わったら友人知人にプレゼントすることを繰り返しているそうです。
鬼平ファンの鏡ですね。

さいとう・たかをのエッセイは意外でした。
これまで仕事と趣味を分けてきたが、鬼平は好きなものを仕事にした稀な例。
とんでもないものに手を出してしまったと後悔している。
・・・など面白い打ち明け話は次々出てきます。

「鬼平を観る! 鬼平「テレビ」の名台詞」も良かったです。
月刊誌の読み切りである原作は1時間のドラマには短いため、脚本家はTV用のセリフを創作しました。
名言、決めゼリフの数々が紹介されており、えっ、そのセリフって原作に無かったの?と驚くものが多かったです。
池波正太郎が口をはさむこともきっと多かったと思いますが、脚本家陣自体も優秀だったのでしょう。
原作を損なうどころか、逆に原作を引き上げるセリフの数々を再確認しました。

これまでずっと「オール讀物」を読んできた方には目新しいものはほとんどないでしょうが、私のように鬼平特集版しか読んでいない方にはうれしい内容が詰まっています。
お勧めです。

さだまさしに触発されて、今年はもう一度、全巻を読もうと決めました。



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お気に入りその1061~竹鶴政孝パート259

2015-05-27 12:03:03 | 竹鶴
今回のお気に入りは、竹鶴政孝パート259、謎のオールドボトルです。

今回取り上げるのは、先日のネットオークションで取り逃がした謎のオールドボトルについてです。

「ニッカ ノースランド レアオールドウイスキー」という商品名で出品され、147,000円で落札されました。

写真のボトルは余市のウイスキー博物館で見たことがあります。
またニッカウヰスキーデータベースwikiには、
=====
余市に展示されているものだが解説は出ていない。
発売直後の第一号ニッカウ井スキーの新聞広告に「丸瓶角瓶も均一値段」とある事から、第一号ニッカウ井スキーの丸壜版である事が推察される。
=====
と解説してあります。

ただ、ウイスキー博物館には「一号ニッカウイスキー角びん」「一号ニッカウイスキー丸びん」とネームのついたポスター原画が並んで展示されています。
一号丸びんは一号角びんとボトルだけを入れ替え、他のデザインは一緒のポスターです。
そこには「首の長い」ウイスキーボトルが描かれており、今回のボトルとは違います。
「首の短い」今回のボトル、一号丸びんでないとすれば名は何?
混乱します。

ところがウイスキー博物館にはもうひとつ、キーになる資料があります。
ヒゲのおじさんが初めてデザインされた陶器製ボトルが入った木箱、その内側に貼られた製品チラシです。
そこには「スペシャルブレンド茶丸びん」と銘打って、先ほどのポスターの丸瓶が載っています。
ということはポスターに描かれているのは「スペシャルブレンド茶丸びん」ということになります。

以上のことから今回のボトルはニッカウヰスキーデータベースwikiの推察通り「一号ニッカウイスキー丸びん」というのが正解なのかな?
現物が手元にあれば、他にもヒントを見つけられたかもしれないと思うと残念です。

最後にもうひとつの特徴について。
写真のボトルの肩口に「NORTHLAND」という文字が読めます。
ただしこれはヒントになりません。
「ノースランド」は竹鶴政孝が「ウイスキーと私」を書いた昭和47年に発売開始されています。
著書の中で、温めてきたネームをいくつか披露した上で、今回「ノースランド」を採用したと書いています。
つまり今回のボトルの「NORTHLAND」という文字は単にデザインであり、名前ではないということです。

こういう推理は、当該ボトルを手にして、晩酌をしながら行うと楽しいのですが・・・。
今回落札できなかったことは無念ですが、ボトルの名前の推理に一応の決着がついたことで多少気を良くして晩酌を続けました。

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お気に入りその1060~日本アルプスの蝶

2015-05-25 12:19:34 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「日本アルプスの蝶」です。

田淵行男著「日本アルプスの蝶」が届きました。
1979年に定価25000円で発行された高山蝶の生態図鑑です。
古本でも1万円以上もするので悩んでいましたが、つい購入しました。

先日ニッカウヰスキーのオールドボトルをがんばって入札しましたが、落札できませんでした。
その入札価格を考えると安いものです。
オークションに競り負けた腹いせでの購入は、著者に申し訳ないと思いつつも、それが本音。

しかし届いた本書を開くと機嫌はすっかり直りました。
プロカメラマンであり、ナチュラリストであり、詩人でもある著者の力量をわずか数ページで理解しました。

「安曇野の蝶」という細密画の画文集にすっかり魅せられたことは以前書きましたが、写真に興味が無いので写真文集には手をだしませんでした。
ただ田淵行男という人の生き様がどうしても気になり、あちこちのHPの拾い読みを続けていました。

そこで出くわしたのが次の記述です。

・美しき氷河期の後裔<高山蝶>のすべてを克明に記録した驚異の写真集
・34年の歳月と尽きせぬ情熱の結晶。名著「高山蝶」が、いまカラー版で甦る。
・雄大な自然に息づく9種の高山蝶を、科学者の眼と詩人の心でとらえる。
・それぞれの蝶の生活史を四季の自然の中に詩情豊かに解き明かす。

これは「レア物? 販促用パンフレット」というタイトルである方のHPに掲載されていた「日本アルプスの蝶」販促パンフの中の文章です。
横山光夫著「原色日本蝶類図鑑」や串田孫一著「博物誌」のように、詩情豊かでかつ科学的な文章が大好きな私は、これはいつか読まなくてはならない、と決心した瞬間でした。

こんなに早く入手するとは思ってもいませんでした。
大切に読もうと思います。
まだ写真をパラパラと鑑賞して「序文」と「序文に代えて」を読んだだけ。
それでも収穫はたっぷり。
高山蝶9種の卵、幼虫、蛹、羽化、成虫を、その体毛の一本一本までも細密撮影していました。
山の麓に移り住んで臨んだとはいえ、34年もかかった大事業です。
日本鱗翅学界会長絶賛の序文はお世辞ではありません。
そして「序文に代えて」も絶品。
「中村画伯はクモマツマキチョウとタカネヒカゲの発見者
 著者にとっては山と蝶の両方につながる大先輩
 何度読んでも血沸き、肉躍る思いのする名文である」
と紹介している通り発見時の感動が伝わる名文でした。
また補遺に収められている「随想」7本も期待大。

本書は大きくて重たいので、寝る前にとか入浴中にという読書は無理。
居間でバランスボールに腰掛け、膝の上に置いてゆっくり読みたいと思います。

最後におまけとして、もくじを引用します。
=====
序 (白水 隆:日本鱗翅学界会長、九州大学教授・理学博士)
序文に代えて「高山蝶発見物語」(中村清太郎)
I 棲家について
Ⅱ タカネヒカゲ
Ⅲ ミヤマモンキチョウ
Ⅳ タカネキマダラセセリ
V クモマベニヒカゲ
Ⅵ ベニヒカゲ
Ⅶ オオイチモンジ
Ⅷ ミヤマシロチョウ
Ⅸ クモマツマキチョウ
X コヒオドシ
Ⅺ 結び
補遺
I 高山蝶総括(1総説、2各論)
Ⅱ 随想
   目次
   1 霧の山稜-大切戸のタカネヒカゲ-
   2 東鎌尾根の一夜
   3 雪の蝶
   4 そのころの山・このごろの山
   5 岳沢と涸沢
   6 さらば捕虫網
   7 高山蝶周辺
Ⅲ 英文解説・高山蝶総括
Ⅳ 写真・図版目録
あとがき
=====



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お気に入りその1059~竹鶴政孝パート258

2015-05-22 12:03:12 | 竹鶴
今回のお気に入りは竹鶴政孝パート258、アイラモルトです。

「マッサン」効果でニッカのモルトが品薄です。
ウイスキーは何年も寝かせる計画生産品。
予想外の事態にはなかなか対応できません。
出荷するとどんどん売れるのが判っていても、出荷制限をして将来に樽を残さなくてはなりません。
ニッカは製品数を絞って、この難局を乗り切ろうとしています。

そのため晩酌ローテーションのひとつ、ピュアモルト・ホワイトが入手できません。
ニッカのネット販売では品切れ表示。
楽天市場でも単品売りばかり。
ネットでの箱買いを諦め、いつもの酒屋を巡回してきました。
やっぱりありません。
中にはコーナーが無くなっている店もありました。

ピュアモルト・ホワイトはアイラ風の風味を持った特異なウイスキーです。
発売当初は本当にアイラモルトを使っていましたが、近年は余市のモルトをバッティングしていました。
アイラ系のウイスキーって癖が強くて、好きになると時々無性に飲みたくなります。

結局手に入らずじまい。
仕方がないのでアイラモルトを1本買ってきました。

今回買ったのは、初めて見た珍しいボトルです。
ニッカ製品ではありませんが、ここでご紹介します。

「アイラ・ストーム」というウイスキーです。
スコットランド・グラスゴウの“C.S.ジェームス&ソンズ社”がリリースした蒸留所不詳のアイラ・シングル・モルト。

ボトルの裏には
・ホッグスヘッド樽で熟成。
・刺激的にピーティー、スモーキー、潮の香り。
・スウィート、ピーティー、ヨウ素、海塩、ほのかにバニラ、スパイシーな味わい。
・長くスモーキーな余韻。
というそそる文句が並んでいます。

蒸溜所の名が箱やラベルに記載されておらず、アイラ島のシングルモルトという以外は不明です。
ちまたではどの蒸溜所のモルトかと推測が飛んでいますが、美味しければそれでいいです。

早速味わいました。
これは美味い!
実に刺激的、そして塩気。
このウイスキーが3000円弱で買えるとは・・・。
お得感いっぱいです。

ニッカのピュアモルト・ホワイト、早く復活して欲しいな。
代わりのきかない味わいなので、復活までは、アイラモルトで代用することをお許しください。
まったく・・・「マッサン」効果あり過ぎ!


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お気に入りその1058~昆虫放談

2015-05-20 12:23:14 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「昆虫放談」です。

今回取り上げるのは漫画家の小山内龍が昭和16年に書いた「昆虫放談」(1978年版)です。

本書は愛読書である小西正泰著「昆虫の本棚」で、とても面白い昆虫エッセイとして紹介していました。

・小西は電車通学中に「昆虫放談」を読み、吹き出すのをこらえるのが大変だった
・「昆虫放談」は戦中戦後何度も復刻され、NHKラジオで3度も朗読された
・先日読んだばかりの「ニッカ日出造バー」の著者、近藤日出造は小山内龍を天才漫画家と評した
・小山内龍は北海道に生まれ、空襲で東京を焼け出され、疎開先の北海道で42才の若さで亡くなった

「昆虫エッセイ」「近藤日出造」「北海道」と気になるキーワードが重なりました。
さらに北杜夫や手塚治虫のかつての愛読書だったということも知って、いよいよ読むことにしました。

本書の帯は北杜夫の書評。
面白いので引用します。
=====
もし文学に「懐かしのメロディ」といったものがあったら、「昆虫放談」は私にとってまさしくそういう本である。
下手な小説やエッセイよりよほどおもしろい。
子どもから大人まで、本書を読んで思わず笑わぬ人はおらぬはずだし、しかも何物かを与えてくれる本といえる。
=====

ついでにアマゾンの内容紹介も引用します。
=====
スズメ蜂に刺されて、ピョンピョンうさぎのようにはねたり、カブトムシを採集したり…。
虫好きの人にはたまらない話や、そうでない人にとってもなんともなつかしい景色が浮かんでくる、独特の語り口の昆虫文学の古典。
=====

昭和12年に昆虫採集をはじめたこと、蝶や蛾を幼虫から飼育し羽化させたことが、面白おかしく描かれています。
昆虫学者・石井悌博士の指導を受けながら昆虫の世界に入門していくという贅沢な体験記です。
大切に育てている幼虫を食べたクモを跡形もなく踏み潰したなど、子供じみた所業も正直に書いていて、今ならどうかな?と思いますが、本音が書かれていることで心情移入はスムーズにできます。
少年時代の北杜夫や手塚治虫が夢中になったことは本当でしょう。
これこそエッセイの王道ということでしょうか?

本書は戦前に書かれたため句読点がありません。
句点も読点も空白で表現しており、読み始めは違和感がありました。
それでも口語体で書かれているおかげで、すぐに慣れ、スラスラ読めるようになりました。

戦争直前のひっ迫した空気を感じさせない、のんびりしたエッセイに、筆者の心の強さを感じました。

ちなみに本職である漫画については、デッサン力不足でこれがプロ?という出来に見えました。
個性・味わいといえばそれまでですが、私には魅力がわかりませんでした。


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お気に入りその1057~狐笛のかなた

2015-05-18 12:32:09 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「狐笛のかなた」です。

先日読んだ「獣の奏者」シリーズも面白かったので、上橋菜穂子の作品をもうひとつ読みました。
「狐笛のかなた」です。
もともとサラサラ読めるのに一冊で完結しているので、あっという間に読み終えてしまいました。
短い分、軽めでしたがやっぱり面白かったです。

どんどん厳しい状況に追い込まれていく主人公たちが、ラストで種を越えて結ばれることでホッと胸をなでおろしました。
日本むかし話にありそうなラストですね。
海外から来た異能者という設定以外は、農村や里山の風景描写を含め、懐かしい日本を表現していて心が和みました。
本を読みなれていないお子さんが上橋菜穂子作品に入門するなら、本書から入ると良いのではないかという作品でした。

本書の発行年をみると「守り人」シリーズを書いている最中に書かれています。
そしてその後、「獣の奏者」シリーズを書いています。

本書のあらすじは次の通り。

異能者の母と娘。
母の非業の死。
娘の成長。
決して人と添わないはずの獣との愛情。
国の権力者が異能者を用いるため、主人公の運命は大きく変わる。

このあらすじは「獣の奏者」と実に良く似ています。
「獣の奏者」の原点になったといっても過言ではないでしょう。
違いといえば本書が日本にこだわって書いたのに対して、「獣の奏者」はそうでなかったということ。
「獣の奏者」シリーズが世界中で読まれている理由はこれでしょう。

さて、今回も面白かった上橋菜穂子作品。
いずれまた読みたいものです。





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お気に入りその1056~川原慶賀図録

2015-05-16 12:25:50 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、川原慶賀図録です。

川原慶賀展図録を鑑賞しました。

川原慶賀(けいが)という絵師をご存知ですか?
慶賀は江戸時代に長崎で活躍した絵師です。
“シーボルトの絵師”といえばピンとくる方もいらっしゃるでしょう。

これまで科学と芸術が両立する博物画の美しさを求めて、いろいろな博物図譜を鑑賞してきました。
その一冊に「シーボルトの日本植物誌」がありました。
シーボルトが西欧諸国に日本の植物を紹介した図譜です。
そこには美しく細密な植物画が大量に収められています。
簡単な解説を読みながら鑑賞していると、ときどき解説者が「一部を誇張しすぎで現物とは異なる」というコメントを書いていることが気になりました。
その理由を読むと、日本の絵師が描いた元絵は正確なのだが、オランダの絵師が見栄えを良くするために描き変えたそう。
この元絵を描いた絵師というのが川原慶賀です。

それでは慶賀が描いた細密で正確な元絵を鑑賞しようと思いましたが、なかなかぴったりの博物画集が見つかりませんでした。
そうしている内に行き当たったのが本書「川原慶賀展図録」です。

この図録を読んで、慶賀の元絵が掲載された博物画集が見つからない理由が判りました。
慶賀は日本ではほとんど無名の絵師であり、生没年も不明、詳しいことは何もわかりません。
彼の作品は国内には50点ほどが現存するのみ。
「川原慶賀展」で展示した作品のほとんどはオランダ国立ライデン民族学博物館所蔵の作品です。
博物館は慶賀の作品を900点も所蔵しているそう。
日本で研究が進んでいない理由、博物画集が見つからない理由はこれだったのです。

本書に収録された作品について。
日本のすべてを調べてくるように、とオランダの密命を帯びて来日したシーボルト。
彼は医師という立場を利用し、出島を出て江戸を訪れることができた数少ない外国人のひとりです。
彼の指示で川原が描いた作品は、民俗学的なものから自然史学的なものまで多岐にわたります。
日本人の風習、職人の道具、動植物など。
慶賀は洋画の表現力を学び、写実的な作品を残しました。

職人の道具や動植物は実に細密にそして立体的に描かれています。
ところがお正月の風景などを描くと急に稚拙にみえます。
鏡餅や正月飾りなどと人の大きさのバランスが全然とれていません。
ひとつひとつは上手に描くことができるのに、組み合わせるとバランスがとれないのです。
彼が絵師として名を残さなかったのは、シーボルト事件に加担したからといわれていますが、それだけではないようです。
シーボルトも慶賀は博物画が非常に上手だったと書き残しています。
裏を返せば、博物画以外は下手、ということでしょう。

もっとも私は慶賀の博物画を鑑賞することが目的でしたので、何の支障もありませんでしたが・・・。
ただ図録というのは1ページに複数作品を掲載することが多く、ひとつひとつの作品は小さいことが一般的です。
できれば大きいサイズで細密な作品を鑑賞したかったです。
それだけが心残りの博物画集でした。


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お気に入りその1055~山菜採り

2015-05-14 12:46:38 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、山菜採りです。

今年の2月、3月は観測史上ベスト3に入る暖かさが続き、そのまま春が来ました。
雪解けがこんなに早いと、山菜の時期が読めません。
もっとも山菜の時期については毎年悩んでいます。
昨年は1回目は積雪中、2回目は伸び過ぎという残念な結果に終わりました。

先日は、私が休み、妻が仕事という日でした。
様子見といいつつ、多少の確信を持って、今年初の山菜取りに行きました。
通い慣れた厚田の山中でアズキナとウドを採ってきました。
どちらも少し早いかな?というくらいの伸び方でした。

帰ってから調理しました。
普段、ほとんど料理をしないので、あちこち材料を捜しつつ、指を切らないように慎重に包丁をふるいました。

アズキナは洗ってゴミを取り、ゆでるだけ。
マヨネーズをかけていただきました。
アスパラのようなほのかな甘さを堪能しました。

ウドは皮をむき、ダイコンとともに千切りにしてポン酢しょうゆでいただきました。
穂先や細い茎、葉はテンプラにしました。
残った皮も千切りにしてかき揚げにしました。
焼き塩をふっていただきました。
どちらも期待したほどウドの風味が堪能できなくて残念でした。
若い分だけあくが少なかったのでしょう。
あく抜きの時間を短くした方が良かったと反省。

この春から娘が他の町に就職し、夫婦2人の生活です。
妻の帰りを待ってテンプラを揚げましたが、不慣れで手間取っている内に冷めてしまいました。
テンプラはアツアツが一番なのに!
実に残念でした。

もっとも花粉症で鼻水が止まらない、虫に刺されると病院に行かなくてはならないほど腫れるなどの理由で、妻を連れて行けないことが一番残念です。
春の山中でカタクリ、ニリンソウなどの花を鑑賞しつつ山菜を採ることは、食べることより何倍も楽しいのですから。


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お気に入りその1054~竹鶴政孝パート257

2015-05-12 12:49:24 | 竹鶴
今回のお気に入りは竹鶴政孝パート257、非売品「竹鶴」です。

39年前の1976年11月、仙台工場2期工事竣工を記念してニッカウヰスキー「鶴」が発売されました。
この「鶴」は、竹鶴政孝が生涯最後にブレンドしたウイスキーです。
このとき政孝は82歳。
その3年後の1979年8月、政孝は85歳で亡くなります。

創業者の名の一字を取って「鶴」と名づけられたそのウイスキーは、当時の最高グレード。
竹と鶴をデザインした真っ白な磁器ボトルです。

この「鶴」の発売と同時に非売品の「竹鶴」が作られました。
同封された説明書には次のように書かれています。
=====
日本のウイスキーの父、竹鶴政孝が渾身の技と誇りを込めて創り上げ、自らの名を冠した、ニッカウヰスキー「鶴」。
北の自然に育まれたモルト原酒と、ニッカならではのグレーン原酒が絶妙に調和した琥珀の芸術品である「鶴」を、さらに磨きをかけて青磁の陶器におさめ「竹鶴」と命名しました。(非売品です)
=====

今回は希少ボトルということで、すぐに開栓せず、「竹鶴」と「鶴」の外観を比較しました。
なお「鶴」には、底部にNoritakeの銘が入った初期型と銘が無い後期型があります。
合計3種類のボトルをジロジロ見比べました。

寸法はほぼ同一です。
色は説明書の通り青磁の色合いとまっ白の違い。
初期型「鶴」は艶あり白、後期型「鶴」は艶なし白の違いがあります。

胴の部分の竹や鶴の浮彫のデザインは一緒。
ところがその浮彫が大違い。
「竹鶴」は細部まで丁寧に彫られています。
鶴の目や頭頂部の模様が細密に表現されています。
それ対し、初期「鶴」は細部が少々つぶれています。
目は判別できますが頭頂部の模様は判別できません。
そして後期型「鶴」は細部の模様がほとんどつぶれており、輪郭もおぼろです。
残念ながら型押し大量生産品の観は否めません。

また首にかかっているメダルも違います。
初期「鶴」のメダルは裏にフェルトを貼っています。
後期「鶴」はフェルトが無く、両面テープでボトルに固定しています。
メダル自体のデザインも若干違います。
「竹鶴」のメダルは紛失していて、比較不能でした。

ということで非売品「竹鶴」は、Noritakeが手間暇をかけて仕上げたことが判る実に美しいボトルでした。
創業者の名を冠したこのボトルを手に、政孝は何を思ったことでしょう。
人生のフィナーレにふさわしい最高のブレンドを関係者に贈呈することができる幸せを噛みしめていたのではないでしょうか。

ちなみにその時は、後に「ピュアモルト竹鶴」シリーズが世界の最高賞を数多く受賞することになるとは予想していなかったでしょうね。
きっと天国でリタとふたり、今でも受賞のニュースを聞くたびに驚き喜んでいることでしょう。

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お気に入りその1053~歌川国芳展

2015-05-09 12:08:09 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、歌川国芳展です。

札幌芸術の森美術館で開催している「浮世絵師 歌川国芳展(前編)」に行ってきました。

内容紹介を引用します。

=====

江戸、幕末期に活躍した絵師・歌川国芳(1797~1861)の画業を紹介する大回顧展です。
国芳の手になる作品はとても多岐に渡ります。
大判サイズの紙を横に三枚つなげた迫力あるワイド画面の妖怪画。
遠近法と明暗法を駆使した近代の到来を思わせる風景画。
町に暮らす女たちを日常の美とともに小粋に描きだした美人画。
検閲とのじりじりとしたせめぎ合いを匂わせる社会諷刺画。
珍奇で洒脱で浮世絵界での「笑い」を高めた滑稽画。
そして、国芳の真骨頂である勧善懲悪英雄たちを力強く描きあげた武者絵。
どのジャンルをとっても確かな画力と巧みな表現が見て取られ、見応えあるものばかりです。
本展は、前編、後編の二部に分け、それぞれ100点ずつを紹介します。
また、作品個々に図解パネルを併せて掲示することで、浮世絵鑑賞が一段と興味深いものとなるよう工夫を凝らしています。
ぜひ、ご期待ください。

【前編のみどころ】
姫が操る骸骨モンスター《相馬の古内裏》を筆頭に、
ネコ、集まって文字となる寄せ絵・遊び絵2点、
金魚や雀、ネコやタヌキの擬人パロディ10点、
まるでマンガの落書き作品2点、
フォトジェニックな風景画12点、
江戸のダンディズム、役者絵13点、
そのほか、ささやかな日常風景を優しく切り取った美人画やモンスター討伐図など計100点を出品。

【後編のみどころ】
ワイド画面で迫力の巨大クジラ《宮本武蔵と巨鯨》を筆頭に、
出世作〈水滸伝〉シリーズ10点、
人、集まって人となる寄せ絵・遊び絵4点、
近代の兆し、リアルな肖像画〈忠臣蔵〉シリーズ4点、
夏の粧い、美人画8点、
そのほか、武者絵や幕政諷刺の問題作など計100点を出品。

=====

これまでいろいろな浮世絵展を観てきました。
東京国立博物館では人垣の隙間から、しかもガラス越しに、遠くにある作品を単眼鏡の助けを借りてようやく鑑賞しました。
あるデパートの浮世絵展ではガラス越しの上、照明が薄暗かったため、作品を細部まで鑑賞することができませんでした。

ところが今回の浮世絵展は違いました。
市内での開催ということで開館前から並んで先頭集団で観ることができました。
また明るい照明の下、作品に顔を近づけて細部まで鑑賞することもできました。
そして作品数の多いこと!
前編だけでも思い切り堪能できました。
紹介文にもありましたが、妖怪画・風刺画・滑稽画などが多く、漫画的で肩ひじ張らずに鑑賞できたことも良かったです。

これまでも数点だけを鑑賞したり、図録で鑑賞したことはありましたが、やっぱり本物が一番!
画面の迫力や細部の仕上がりを堪能できます。
着物の柄に意味があるという解説パネルを参考にしながら再度鑑賞するという自由さも満足。
作品の中に書き添えてある文字が教科書体フォントのようで読みやすく、さらに添えてあるふりがなまでも読みやすい。
まさに誰でも読んで楽しめる「庶民のための浮世絵」という立ち位置が理解できました。

今回図録を購入し、帰宅後に読んだので、復習・予習はバッチリ。
後編開催が楽しみです。


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