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鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代半ばのオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1283~凍原

2016-11-30 12:20:04 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、凍原です。

桜木紫乃の「凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂」を読みました。
柴咲コウ主演のドラマ「氷の轍(わだち)」が本書の続編らしいと聞き、予習を兼ねて、といったところです。
前に葉室麟が北海道新聞に連載している「影ぞ恋しき」がシリーズ第3巻ということを知り、途中で前2巻を読んで、登場人物の関係がようやくわかった、ということがあったものですから。

ちなみにネットで「氷の轍」をチェックしたら「凍原」とは主人公の名前が違いました。
釧路が舞台ということと脇役のベテラン刑事が共通しているだけかもしれません。
今のところ「続編」というのは、?マークです。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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少女は、刑事にならねばならなかった。
1992年7月、北海道釧路市内の小学校に通う水谷貢という少年が行方不明になった。
両親、警察関係者、地元住民の捜索も実らず少年は帰ってこなかった。
最後に姿を目撃した同級生の杉村純少年によると、貢少年は湿原のほうへ向かっていったという。
それから17年、貢の姉・松崎比呂は刑事となって札幌から釧路の街に帰ってきた。
その直後、釧路湿原で他殺死体が発見される。
被害者は、会社員・鈴木洋介34歳。
彼は自身の青い目を隠すため、常にカラーコンタクトをしていた。
比呂は先輩刑事である片桐周平と鈴木洋介のルーツを辿るように捜査を進めてゆく。
事件には、混乱の時代を樺太、留萌、札幌で生き抜いた女の一生が、大きく関係していた。
『起終点駅(ターミナル)』で大ブレイク!
いま最注目の著者唯一の長編ミステリーを完全改稿。
待望の文庫化!
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「混乱の時代を樺太、留萌、札幌で生き抜いた女の一生」を描くパートが、かなりのウエイトを占めていました。
被害者が彼女の孫ですからそれは自然でしょうが、そこに主人公の弟の行方不明事件が関わってきます。
そして最後のドンデン返し。
二つの事件の陰にはもう一つの事件が隠されていたのです!

一般的なミステリー小説では、第3の事件までも明らかにして幕を閉じるのでしょうが、本書は違いました。
樺太、室蘭、釧路で懸命に生きた名も無き女の一生を静かにフェイドアウトさせます。
人生の最期くらい静かに送らせてあげたい。
著者のそんな思いに読者も納得したのではないでしょうか。

本書は、個性豊かな登場人物たちが織りなすドラマであり、美しい釧路湿原にある染色工房が舞台。
こちらも映像化が望まれる作品でした。



お気に入りその1282~笹の墓標

2016-11-28 12:40:34 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、笹の墓標です。

今回ご紹介するのは、森村誠一の推理小説「笹の墓標」。
先日「笹の墓標展示館」についての記事を目にして読むことにしました。
過酷な強制労働を描いた作品を読んだのは、吉村昭の「赤い人」以来。
ただし過酷な労働を強いられているのは、「赤い人」では囚人でしたが、「笹の墓標」では騙されたり強制連行されてきた普通の人々。
その差は実に大きいです。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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第2次大戦中に起こった、北海道のダム工事における強制労働での犠牲者の遺骨発掘作業で、沼公一郎は腐乱死体を発見した。
遺体は、神沼の恋人である葦原奈美の同僚で、上月良彦だった。
奈美は、夢を抱いて東京に行き変死していたが、上月も、故郷・唐津に恋人の中路香織を残して上京していた。
やがて捜査線上に、北海道の政財界の大物が浮上する。
事件の真相に迫るに連れて、強制労働の歴史の因縁が明らかになるとともに、神沼と中路への関わりも深まっていく。
過去の宿怨と現代の殺人事件が時間と空間を超えて交錯する、社会派推理の傑作!
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小説の冒頭に、強制連行されたり、騙されたりして連れてこられた朝鮮人2人が登場します。
一緒に脱走しようと約束した仲間が亡くなり、若い朝鮮人は一人、周到な準備の末、見事に脱走を成功させます。
その経緯と並行して、脱走のほとんどは失敗に終わり、激しいリンチが加えられたことが書かれていました。
実にむごい話です。

本書によると、強制労働を強いられていた人々の7~8割が日本人、2~3割が朝鮮人だったそうです。
この事実を知り、韓国や北朝鮮の皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。
過去に日本人がこんな酷いことをしたこと、そしてそれを次の世代に詳しく伝えていないこと。
これまでは、皆さんが事あるごとに日本憎しと抗議する様を、戦後何十年も経っているのに・・・と思う気持ちがありました。
でも「そうでもしないと思い出してくれないのが日本人」と考えると、抗議されても仕方がないと考えるようになりました。

著者は高名な推理小説家であるとともに、731部隊を世に知らしめたことで有名な戦争犯罪の告発者でもあります。
今回は戦争犯罪ではありませんが、朝鮮人の強制連行、慰安婦問題などの戦時体制に関わる国家的犯罪行為を告発しています。
著者が731部隊に続き、この手の小説を書いた理由はおおよそ次の通り。
「戦争犯罪等の処理は当事国同士の賠償で終わり、個人が相手国を訴えることは認めない」という判例があるそう。
その理由は「個人が相手国を訴える行為を認めると、再び戦争を巻き起こす引き金になりかねない」からだそうです。
著者はこの辺りに大いに不満を持っているようですが、私は何となく理解できます。
個人が告訴を目指すと冷静さを欠いて国民感情の荒れが増幅し、世論が戦争に向かうことが十分懸念されます。
したがって国民に不満が残っている場合は、たとえ賠償が一度終わっていても再び国が国民に成り代わり交渉すれば良いのです。
当事国同士が多少の密室で冷静に交渉することが、事を荒立てないために重要です。
ただし今の韓国は、慰安婦問題を日韓の政府間協議で決着したのに国民を納得させられずにいますが・・・。

とにかくこういう国家犯罪等があったことを日本人は忘れてはいけません。
イジメでも、イジメられた人は決して忘れないのに、イジメた人は忘れる人が多いと聞きます。
自分が悪いことをしたという記憶は辛いものですが、それを忘れないことが再発を防ぐことにつながるのです。
そういう意味で、本書は大切な一冊。
軽く読めますが重たい一冊です。
ぜひご一読を!

最後に。
「笹の墓標展示館」は、地元の人々、日本全国や韓国からボランティアでかけつける若者たちに支えられてきました。
3mを超える積雪とマイナス30度に迫るという過酷な自然に長年耐え続けてきました。
けれども、永遠に耐えられるはずはなく、いつかは倒壊するでしょう。
これから冬に向かう今は無理にしても、来年の夏、必ず見学しに行こうと決意しました。




お気に入りその1281~舘野鴻②

2016-11-26 12:37:13 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、舘野鴻②です。

前回、舘野鴻の「ぎふちょう」「つちはんみょう」について書いたばかりですが、今回は続いて届いた「こまゆばち」(かがくのとも2012年10月号)について書きます。
今回、舘野鴻は作画担当。
著者は澤口たまみです。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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「かがくのとも」でははじめて取り上げる昆虫の「寄生」。
昆虫世界では種を継続するための普遍的な生存戦略です。
こまゆばちは蛾の幼虫に卵を産みつけ、孵化した幼虫は蛾をすぐに殺すことなくその体内で成長します。
こまゆばちの生態を丁寧にみせながら、寄生するものされるものの関係性をわかりやすく精緻な筆致で描いています。
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これまで鑑賞してきた絵本と比べ、作画が雑でした。
特に背景・・・。
2000円を超える絵本と数百円で買える雑誌とでは、作画する時間が大幅に違うでしょうから仕方ないか・・・。
いつか画家が本腰を入れ絵本として作画し直した作品を鑑賞したいものです。
もしそうなったら、また数年がかりの作業になるのでしょうね。

絵本のストーリーは内容紹介の通りですが、絵本を補足する小冊子が付属しており、その中に興味深い文章がありましたのでご紹介します。
著者が親子グループに寄生バチのお話をしたときのことです。
毛虫の体内で成長したこまゆばちの幼虫たちが一斉に出てきて、毛虫の脇でこれまた一斉に繭を作って蛹になる、という話をしました。
大人たちは気持ち悪がりましたが、子どもたちは大いに感心したそうです。
「毛虫の体中で成長するなんてすごい」
「ねこバスみたい」
などと言いながら・・・。
そのとき著者はとても感動し、それが本書制作につながったそうです。

確かに子どもたちの言う通り、こまゆばちの幼虫ってすごいです。
たくさんの幼虫たちが、毛虫を殺さずに食べ続ける方法を知っているなんてすごい。
幼虫たちが毛虫の体内で呼吸できるなんてすごい。
幼虫たちが対外に出て繭になった後、毛虫が外敵から繭を守るなんてすごい。

気持ち悪いなんて言っていられません。
自然が創った素晴らしい仕組みに触れて感心する子どもたちの反応に改めて教えられました。




お気に入りその1280~舘野鴻

2016-11-24 12:42:52 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、舘野鴻です。

久しぶりに昆虫細密画の名手・舘野鴻の絵本を鑑賞しました。
今回鑑賞したのは「ぎふちょう」(2013/6)と「つちはんみょう」(2016/4)の2冊。
しめて4320円は大きな出費でしたが、それだけの価値があるため息の出るような素晴らしい作品でした。

作家のことは以前「しでむし」(2009/4)を鑑賞したときにブログに書きました。
メレ山メレ子の「ときめき昆虫学」に紹介されていて知ったこと。
ファーブル昆虫記の表紙絵で有名な熊田千佳慕の弟子であること。
点のひとつひとつ、線の一本一本を正確に描いており、どれだけの時間をかけて観察し、どれだけの時間をかけて描いたのか、想像できないこと。

今回の2冊も同様の出来栄え。
特にギフチョウは大のお気に入り。
鱗粉の1枚1枚、体毛の1本1本を丁寧に描いており、この美しさは本物以上。
以前ご紹介した田淵行男の「安曇野の蝶」がこれまでで一番感動した作品ですが、それに近い作品でした。
まさしく絵を鑑賞するだけでも満足、という絵本。

ただし作者が長い時間をかけて観察したことで知りえた「虫たちの生涯」をつづった文章も魅力的。
以下は、作者が書いた虫たちの物語についての感想です。

ギフチョウは早春に蝶になり、早々にオスメスが出会って産卵すると生涯を終えます。
卵のいくつかはダニに吸われカラになります。
孵化した幼虫の何匹かはアリに連れ去られます。
葉を食い尽くして地上に降り、次の葉を探していると、カエルやネズミに襲われます。
抵抗といえば、隠していた赤いツノを出して威嚇するだけ。
そしてようやく生き残った幼虫は蛹となり、10か月もの長い眠りにつきます。
この間に捕食者に見つからなかった者だけが、翌春、蝶として羽ばたくことが許されます。

このようにギフチョウは、ほとんど抵抗らしい抵抗をせずに生涯を過ごします。
弱肉強食の自然界でよく生き残ってこれたものです。
きっと抵抗しないことも自然のひとつのかたちなのですね。
作者はあとがきで、観察を続けてきたギフチョウたちを根こそぎ捕まえていった男たちのことを書いています。
ギフチョウが森の生態系の中でも弱者に位置することを知った後で、このあとがきを読むと、居たたまれない気持ちになりました。
絶妙なバランスの上に成り立っている大自然を破壊するのは人・・・。

ツチハンミョウの幼虫は、ハナバチの巣の中で、ハチの幼虫と花粉ダンゴを食べて成長し、蛹を経て成虫になります。
成虫は地上に出ると葉を食べて食べてどんどん太ります。
その栄養を元にして4000個もの卵を生み、その生涯を閉じます。
孵化したたくさんの幼虫たちは、大群でハナバチの巣にたどり着き、飛び立つハチにしがみついて花にたどりつきます。
そこで目指す特定の種のハナバチに出会い、しがみついて巣にたどり着きます。
たまたま同じハチの巣にたどりついたツチハンミョウの幼虫2匹。
相手を倒した最後の1匹が成虫になることができます。

幼虫の寿命はわずか4日間と書かれています。
その間にこのような難関を突破して安住の地にたどりつくことができるのは4000匹の内、2~3匹。
生存率0.1%以下とは、とんでもないサバイバルゲームです。
何もそこまで複雑にしなくてもいいのに!と言いたくなるようなルートをたどる生涯。
以前ブログに書いたユキムシの生涯も複雑でしたが、ツチハンミョウも負けていませんね。
こんなわずかばかりの幸運にすがって生をつないでいる生きものもいるのですね。
そういえば以前、特定のハチに寄生する寄生バチに寄生する寄生バチがいると、読んだことがあります。
2段構えの寄生という複雑さに驚いたものです。
自然界の多様性や複雑さは深遠な宇宙そのもの。
とても人間に把握しきれるものではない、と思い知らされます。







お気に入りその1279~ジャーニー・ボーイ

2016-11-21 12:12:55 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「ジャーニー・ボーイ」です。

高橋克彦の作品を読むのは久しぶり。
著者はいろんなジャンルの作品を書いていますが、冒険活劇もそのひとつ。
以前読んだ「バンドネオンの豹」はとても面白かったです。
今回の「ジャーニー・ボーイ」を書店で見かけたときに、冒険活劇に分類される作品であるとともに、一度は読みたいと思っていたイザベラ・バードの「日本奥地紀行」をベースにしていることを知り、即購入しました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
美貌の英国人女性冒険家は蝦夷地を目指して旅立つ。
供は異能の腕利き通訳、ピストル・ボーイ――
藩閥政治打倒を目指す勢力の魔手が二人に迫る!!
東北を舞台とした奇跡の明治冒険譚!
ときは明治11年、英語が堪能で腕も立つ伊藤鶴吉は、イザベラ・バードという英国人女性冒険家の北海道行きの旅に同行することを外務省から依頼された。
バードには内緒の、通訳兼護衛役の密命を帯びている。
まずは日光を目指す二人に、藩閥政府打倒をもくろむ勢力の魔手が迫る……。
実在の英国人女性冒険家、イザベラ・バードの世界的名著『日本奥地紀行』をベースに、日本の真実の姿を追い求めるバードと伊藤の冒険を描いた、胸躍る物語。
=====

イザベラ・バードはその名の通り世界中を飛び回り、何冊もの探検旅行記を遺しました。
その中でも明治初期に関東から北海道までを旅した旅行記には興味がありました。
「ジャーニー・ボーイ」で彼女の探検に触れることができて、とてもうれしかったです。

彼女が雇い入れた通訳・伊藤は、街を牛耳る親分からスカウトが来るほどの喧嘩殺法の使い手。
人呼んで「ピストル・ボーイ」。
実話かどうかは知りませんが、いかにも有りそうなネーミングです。
彼は頭も切れ、雇い主であるイザベラの信頼感は高まるばかり。
この通訳には秘密の役目がありました。
政府から、彼女の命を狙う者たちから守る護衛として密命を受けていたのです。

・・・という風に物語は始まります。

未開の地を旅する彼女は50歳代。
女性としての恥じらいなどもう無いのかな、と思っていたら、完全個室でバスタブに浸かりたいなどと言い出します。
彼女は、バスタブやベッドを旅行の荷物に入れたいし、イギリス流の食事も続けたい、と探検家らしからぬ言動が目立ちます。
「味噌は腐った臭いがするから嫌い」など、その土地の食べものを食べようとしません。
これまで世界中の秘境で冒険旅行を続けてきたのが不思議です。
想像していた人物とは随分違いました。

ところが終盤、彼女はわがままの中には伊藤を試すための言葉があったと語ります。
そして伊藤は、ふんどしひとつで働く男たち、腰巻ひとつで働く女たち、素っ裸のこどもたちに向ける彼女の目の優しさに気づきます。
伊藤が恥ずかしくて隠したかった風景を、彼女は優しく受け止めていたのです。
西洋文化を物まねした景色には興味を示さず、自然な姿を愛してくれました。
そういう人だったのですね。

彼女が訪れた会津は、幕府側につき最後まで戦ったため、明治政府は戦後復興に消極的でした。
「見せしめ」の意味合いでしょう。
そのため人々の暮らしぶりは当時の日本では底辺だったようです。
伊藤がバードに見せたくなかった気持ちが分かります。

そんな歴史も本書では学ぶことができました。
そしてバードを狙う者たちと伊藤らの戦いという冒険活劇の要素も十分楽しむことができました。
ちなみに肝心の旅は新潟までしか描かれておらず、楽しみにしていた北海道紀行が無くてとても残念でした。
続きは・・・、無理でしょうね。
高橋克彦は東北を舞台にしたかったのですから。


お気に入りその1278~ハリー・ポッター

2016-11-18 12:04:12 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ハリー・ポッターです。

待ちに待ったシリーズ最新作「ハリー・ポッターと呪いの子」が届きました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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8番目の物語。19年後。
『ハリー・ポッターと死の秘宝』での戦いから19年が経ち、父親となったハリーが2人目の子どもをホグワーツ魔法学校へと送り出したその後の物語です。
ハリー・ポッターとして生きるのはもちろんたいへんなことだったのですが、その後のハリーも決して楽ではありません。今やハリーは、夫として、また3人の子を持つ父親として、魔法省の激務に押しつぶされそうな日々をすごしています。
ハリーがすでにけりをつけたはずの過去と取り組まなければならない一方、次男のアルバスは、望んでもいない “ハリー 一家の伝説" という重圧と戦わなければなりません。
過去と現在は不吉にからみあい、父も子も痛い真実を知ることになります。
闇はときとして思いがけないところから現れるのです。
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J・K・ローリングを含めた3人の共著。
小説ではなく舞台上演用の脚本として書かれたものです。
翻訳家の文章は相変わらず硬めで読みづらかったですが、脚本ということでセリフとして書かれている分、読みやすかったです。
内容については、これから読む人のために触れませんが、前7作に負けない作品としておすすめします。

感想を内容紹介の範囲内で書くことは難しいですが、挑戦します。

今回はハリーの次男アルバスが主人公です。
意外な人物と友達になり、ハリー顔負けの行動力を発揮します。
彼が巻き起こす大胆な行動は、ジェームズ、ハリー、アルバスと続くポッター家の血筋だと考えると納得です。

またハリー・ポッター・シリーズでお馴染みの登場人物たちがたくさん登場することも魅力のひとつ。
ハーマイオニー、ロン、ドラコ・マルフォイ、スネイプ、ダンブルドア、マクゴガナル・・・。
その中には一人3役という人がいたりして・・・。
とにかく読んでのお楽しみです。

これ以上はネタバレしそうなので止めます。

シリーズ各巻は長編小説であり、特に後半の巻は分冊しなくてはならないほど長くなりました。
ところが今回は舞台上演用ということで、とても短くまとまっています。
これまで長過ぎて読めなかったという方は、再チャレンジしてはいかがですか?

今回の作品は実に良くできた脚本です。
舞台化だけでなく映像化しても面白いと思います。
魔法の世界の再現には、CGがピッタリです。



お気に入りその1277~ラスコー展

2016-11-16 12:40:47 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ラスコー展です。

先週末の東京出張の際、ついでに国立東京博物館か国立科学博物館を見学しようと思い、どんな特別展をやっているか調べました。
一番目を引いたのは、国立科学博物館で開催されている「世界遺産 ラスコー展」でした。
2万年前にクロマニョン人が描いたラスコー洞窟の壁画を実物大で再現した!というコピーを目にしたときはヨダレが出そうになりました。
研究者でさえ入ることを許されないラスコー洞窟の壁画を、例えレプリカとはいえ実寸で鑑賞できるとは!
こんなチャンスは二度と無いと思い、行ってきました。

細密に再現された洞窟と壁画の数々。
それを描いたであろうクロマニョン人たちの復元模型。
どちらも技術の粋を結集した見事な展示でした。

洞窟の壁画は、2パターンで鑑賞します。
①照明が壁を明るく照らし、実際の絵の輪郭や色彩を直に鑑賞します。
②その後、照明が落とされ真っ暗になり、絵の輪郭だけがブラックライトに浮かびだされます。
色彩の美しさは①、ぼやけた輪郭は②。
両方が揃って初めて、壁画の細部までの鑑賞が可能になります。
本物には許されるはずのない鑑賞方法。
レプリカで良かった!と思わせる見事な展示方法でした。

再現された4人のクロマニョン人たちは、まさに生きている様でした。
皮膚の質感、薄い体毛、そして柔和な表情。
本当は人間が復元模型のフリをしているのではないか?
誰もが疑うほど、見事な出来映えでした。
間にガラスがないため、顔を間近まで近づけじっくり観察していると、スタッフが声を掛けてくれました。
「素晴らしいでしょう?
 皮膚はシリコン、体毛は人毛で仕上げているのですよ。」
リアル過ぎです。
復元模型の制作技術は、ついに実物と見分けがつかないところまで到達したことを実感しました。
これで中に精密機械が入ったら、映画「ターミネーター」が現実のものになります。

それ以外の展示物は・・・。
あまり興味が湧きませんでした。

なお当日は上の会場でシーボルトの企画展が開催されていました。
これまで図鑑などで知っていた植物画などの現物を鑑賞するチャンスでしたが、こちらの方は時間の関係で諦めました。



お気に入りその1276~花や散るらん

2016-11-14 12:32:49 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「花や散るらん」です。

現在、北海道新聞の朝刊に連載されている葉室麟の「影ぞ恋しき」は、シリーズものの第3巻にあたる作品。
先日、シリーズ第1巻「いのちなりけり」を読み終わり、続けて第2巻「花や散るらん」を読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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今度はあの二人が浅野家の吉良家討ち入りに巻き込まれる!
京で静かに暮らす雨宮蔵人と咲弥は、朝廷と幕府の暗闘に巻き込まれた上、赤穂・浅野の吉良討ち入りに立ち会うこととなる。
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京の郊外に居を構え静かに暮らしていた雨宮蔵人と咲弥だったが、将軍綱吉の生母桂昌院の叙任のため、上京してきた吉良上野介と関わり、幕府と朝廷の暗闘に巻き込まれてしまう。
そして二人は良き相棒である片腕の僧、清厳とともに江戸におもむき、赤穂・浅野家の吉良邸討ち入りを目の当たりにする事となるのだが。
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主人公は、立身出世や身に余る金銀など全く興味なし。
田舎に引きこもり、ただ愛する家族と静かに暮らしたいだけ。
ああそれなのに、またも大きな騒動に巻き込まれます。
毎年クリスマスイブに大事件に巻き込まれる映画「ダイ・ハード」の主人公みたい・・・。

という訳で今回巻き込まれた騒動は忠臣蔵で有名な吉良邸討ち入り。
それは幕府と朝廷の駆け引きの果ての悲劇でした。
妻や子の危機に立ち向かう蔵人。
いやー、今回も面白かった。
ページをめくる手が止まりませんでした。

武門の花の散らせ方。
お家の名誉を守るために、十分時期を見計らい命を散らしていった男たち。
それが忠臣蔵だったのですね。
そういう点に注目して丁寧に描くのは、いかにも葉室麟らしい。
とても勉強になりました。

ちなみに本書を読んで、ようやく香也の出自が判りました。
現在連載している「影ぞ恋しき」は、雨宮蔵人と妻・咲弥、ふたりの娘である香也がなぜか吉良の血を引いている、ということから物語が始まりました。
香也は第1巻には登場しなかったので、第2巻が忠臣蔵に関わる物語であることは誰でも想像がつくでしょう。
読む順番を違えるとこんなことになってしまう・・・。
困ったことですが、それも前2巻を読み終えて解消しました。
今連載中の「影ぞ恋しき」の香也は、父母の留守に訪れた刺客に対し、武門の娘として堂々と応対して追い返すほど立派な娘に成長しています。
今後の展開が楽しみでなりません。





お気に入りその1275~絵本ヴァイオリニスト

2016-11-10 12:28:39 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、絵本ヴァイオリニストです。

明日から出張でブログを更新できないため、取り急ぎ、本日更新することにします。

今回取り上げる「ヴァイオリニスト」は「くまのアーネストおじさん」シリーズのガブリエル・バンサンが描いたデッサン絵本。
ヴァイオリンの音が聴こえてくるようだ、と絶賛された作品を堪能しました。

音楽家としていつまでも芽が出ないために父との確執に悩む青年。
そんな青年の奏でるヴァイオリンの調べに真っ直ぐに耳を傾ける少年。
いつしか町中に若きヴァイオリニストのファンが増えていきます。
聴衆の真っ直ぐな感動が、青年の凍った心を融かします。
さらに彼は少年にヴァイオリンを教えることを決めます。
こうして青年の止まっていた時間が再び動き始めました。

彼が親の過度な期待に押しつぶされなくて本当に良かったと、胸をなでおろしました。
親の元から独り立ちした息子を聴衆にまぎれてこっそりと目にした父親。
彼の胸中には落胆ではなく安堵の気持ちが湧いたはず。
音楽家としての成功以外にも幸せがある、と気づいたことでしょう。

この作品をヴァイオリンの演奏をバックに読みたいと思い、CDをさがしました。
ヴァイオリンの奏者って誰が良いのかがわかりませんので、とりあえずテレビで名前と顔を知っている高嶋ちさ子を選びました。
彼女のCDの中から、ド素人でも聴きやすそうな3枚を選びました。

①高嶋ちさ子 plays ジブリ
②ロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシック
③Lovin' You~Love Song on Violin

自分で選んだので当たり前ですが、どれも聴きやすかったです。
その中で、絵本「ヴァイオリニスト」を読む時のBGMを選ぶとすると②でしょう。
シューベルトのアヴェ・マリア、バッハのアヴェ・マリア、ブラームスの子守歌、そしてドビュッシーの亜麻色の髪の乙女などなど。
ヴァイオリンで身を立てようとした青年と町の人々をつなぐのにピッタリな素敵なメロディです。





お気に入りその1274~いのちなりけり

2016-11-09 12:39:33 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「いのちなりけり」です。

北海道新聞の朝刊に連載されている葉室麟の「影ぞ恋しき」が、なかなか面白い。
主人公たちの関係については先刻ご承知、とばかりに省略され、どんどん物語が展開していきます。
調べてみると「影ぞ恋しき」はシリーズものの第3巻にあたる作品らしい、とまではわかりましたが、第1巻、第2巻の題名がわかりません。
諦めてシリーズではない作品「秋月記」を読んでみましたが、やっぱり気になる・・・。
本屋さんで何冊かのぞいてみましたが、なかなか見つかりません。
最後は主人公の名「雨宮蔵人」をキーワードにして検索し、ようやく題名がわかりました。
「いのちなりけり」と「花や散るらん」
早速注文し読むことにしました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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あの時桜の下で出会った少年は一体誰だったのか―。
鍋島と龍造寺の因縁がひと組の夫婦を数奇な運命へと導く。
“天地に仕える”と次期藩主に衒いもなく言う好漢・雨宮蔵人と咲弥は、一つの和歌をめぐり、命をかけて再会を期すのだが、幕府・朝廷が絡んだ大きな渦に巻き込まれていってしまう。
その結末は…。
=====

17年の歳月を越えて夫婦が再開するまでのお話。
それに水戸光圀やスケさん、カクさん、さらに八兵衛までが登場し・・・。
と書けば、ラブコメ?と思う方もいるでしょうが、ストーリーはいたってハードボイルド。

自分の和歌「いのちなりけり」を見つけ、命がけで女に届けるまでに17年を費やした男。
それを知り、命がけで待つ女。
その男はめちゃくちゃ強くて真っ直ぐ、その女は美しく和歌や行儀作法に精通している。
できすぎ! ありえん!
そう思いつつもページをめくる手が止まりませんでした。
これまで読んだ葉室作品とは一味違いました。
「蜩の記」から「秋月記」までの作品群は、どれも主人公が藩のため、正道のために命を捨てる、というものばかりでした。
ところがこの作品では信じあう夫婦が紆余曲折の末に再会を果たす、という夫婦愛もの。
ただしその「紆余曲折」が生半可ではない。
幕府や藩の後ろ盾のない二人が、幕府と朝廷の争いに巻き込まるというスケールの大きさ。
とても助かる道など無いはず。
幕府の隠密たちが幾度も刺客となって男に襲いかかり、腹心の部下さえ斬る光圀が二人の命運を左右します。
最後のページまでヒヤヒヤしながら読みました。

いやー面白かった!
で、この二人、その後どうなったの?
と思ったのは私だけではなく、他の読者、さらには著者も、ではないでしょうか?

という訳で生まれたであろう第2巻「花や散るらん」に続けて突入です。
こりゃたまらん。
時々こういう当たりに出逢うから、読書ってやめられないんですよね。