鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1257~魔笛

2016-09-30 12:36:42 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回は残念ながらお気に入りとはなりませんでした、絵本「魔笛」をご紹介します。

那須田淳・著、ミヒャエル・ゾーヴァ・画。
この絵本は「大人向け」「絵が美しい」というキーワードで検索して見つけました。

モーツァルトのオペラ「魔笛」は有名らしいですが、それについて何の知識もありません。
またミヒャエル・ゾーヴァという画家も有名らしいですが知りません。
世界で認められるオペラ作品を有名画家の作品で鑑賞できるとは、この絵本、一挙両得!
まさに大人向けの絵本を楽しみました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
世界のどこかで、誰かの演出により、いつも上演されていそうなモーツァルトのオペラ「魔笛」の絵本バージョン。
濃淡をきかせた緑色と明暗のある青色を基調にした、重厚な素朴派絵画とでも呼びたいミヒャエル・ゾーヴァの絵が、何より魅惑的。
たとえば永遠の子どもと呼ばれる3人の天使は、ハイソックスにランドセルや運動着姿という普通の少年のコスチュームだけれど、よく見ると顔や体つきが大人でギョッとさせられる。
こういう登場人物たちの斬新な現代性と、背景の樹木や山や空の描写に漂う、ドイツ浪漫派絵画を思わせる神秘性が、とてもよく融合している。
ゾーヴァが舞台美術を手がけた1998年フランクフルト歌劇場での「魔笛」は、終了後観客の賛辞の歓声と足踏みが地鳴りのようだったらしい。
この絵本は、その上演のためにゾーヴァが描き下ろした、舞台美術と衣装の原画をもとに構成されている。
「魔笛」は、太陽の王が死んだ後の、夜の女王の闇による世界支配を、若者が愛と英知と忍耐をもって打ち破り、再び世界に朝を取り戻す、光と闇の闘争物語。
王子タミーノが魔法の笛に助けられながら、沈黙、火、水の試練の後に夜の女王の娘タミーナと結ばれる愛の物語であり、主人公にいつも伴走している陽気な鳥刺しパパゲーノが、パートナーのパパゲーナを獲得し子どもをたくさん産む幸福物語でもある。
本書での「魔笛」は、ある夏の夜、森の中の小さな宿でタミーノが大蛇に襲われる夢を見て目覚めるシーンに始まり、大きく開いた窓から朝日が射し込んでいる同じ部屋のシーンで終わる。
朝のベッドにはもう誰もいない。
すべては旅人タミーノの見た一夜の夢だったのか。
大人も十分に楽しめる1冊だ。(中村えつこ)
=====
愛と英知と魔法、そして逆転の物語。
オペラ「魔笛」をゾーヴァの絵で味わう。
神秘的なものと喜劇的なもの、幻想的な情景と奇想天外な人物とを、シュールリアリスティックな絵の中に集結させたミヒャエル・ゾーヴァは、現在、同時代の出版芸術における偉大な魔術師のひとりに数えられている。
本書はこのゾーヴァは、1998年にフランクフルト歌劇場で上演されたオペラ《魔笛》のために描いた、卓抜した着想の舞台美術および衣裳草案をもとに構成された。
《魔笛》のあらたな幕がいま開く。
=====

長ーい紹介文ですね。
それだけ解説が必要な高尚な内容だということでしょうか?

あらすじは次の通り。
=====
ある日、王子タミーノが寝ていると夜の女王が現れて、太陽の王の死後を引き継いだ神官ザラストロに娘バミーナを誘拐されたので救い出して欲しいと頼みます。
タミーノは鳥刺しパパゲーノの助けを得て救出に向かいます。
バミーナを我が物にしようと迫る奴隷頭モノスタトスから救い出すも、魔法の笛を奪われピンチに陥ります。
そこへ神官ザラストロが現れ、本当は夜の女王が闇により世界を支配しようとしていることを伝えます。
タミーノは真実を知り、光と闇の闘争は終わりを告げることになります。
=====

娘を誘拐されたと訴えた夜の女王こそが、王子タミーノをそそのかして闇による支配を画策していた悪者だった・・・。
終盤に善悪が逆転する、起承転結がはっきりした物語。
ひとひねりある物語であり、いろいろ深いテーマを暗示させる場面があるとはいえ、ストーリーだけで人気オペラになるとは思えません。
聴いたことはありませんが、きっとモーツァルトの楽曲が見事なのでしょう。
オペラのCDを聴いて確認しようとまでは思いませんが・・・。
wikiを読むと、その中の一曲「パパゲーノとパパゲーナのアリア」がグリコ?のCM曲になったことがあると書いていました。
早速聴いてみましたが、わずか15秒ではいい曲なのかどうかは、さっぱりわかりませんでした。

世界で認められるオペラ作品を有名画家の描いた絵本で鑑賞しよう!というお得な企画。
結果的には、絵は好みでないし、心に響くストーリーでもなかったため、どうでもいい一冊となってしました。
たまにはこういうこともあるのですね。
残念。


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お気に入りその1256~塩狩峠

2016-09-28 12:29:36 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、塩狩峠です。

三浦綾子の「塩狩峠」が発表から今年で50年と知り、読むことにしました。
著者は「氷点」「泥流地帯」など有名作品が多い北海道出身の作家ですが、読んだことがありませんでした。
前から何かの機会に一冊くらいは読もうと思っていましたので、良い機会でした。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
結納のため、札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。
声もなく恐怖に怯える乗客。
信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。
明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。
=====

青年がその身を犠牲にして列車の乗客たちを救ったという実話を元にした小説。
とても興味がありましたが、「主人公がキリスト教を信仰していた」という但し書きを読むと、どうも宗教色が強そうで敬遠したい気もしました。
ただ50周年、北海道出身作家というキーワードを考えると、今回を逃せばもう読む機会は無いかもしれないと思い、何とか読み始めました。

実際に読んでみると、さすがに実力作家のロングセラー小説。
面白い。
読みやすい。
登場人物たちの心情がよく理解できる。

気が付けば、毎日、時間の許す限りページをめくっていました。
残念だったのは古い版の文庫本だったために活字が小さくて、オッサンの目には少々こたえたこと。
やっぱりオッサンは最新の大きな活字の本を買わなくちゃダメ、と後悔しました。

さて本書の感想などを少々。

文明開化により日本文化が軽視され西洋文化が持てはやされた時代にあっても、キリスト教はヤソ教と呼ばれ、白い目で見られていたのですね。
人々の心ってそんなに急には変わらないということでしょう。
そんな逆風の時代にキリスト教を信仰した人々は強い信念を持っており、後世の人々にとって見習うべき人々でした。
本書に登場するキリスト教徒たちの真っ直ぐな信仰心は神々しいほどです。
信仰の有無にかかわらず、信じるに値する素敵な人々でした。

また当時は結核で多くの人が命を落とす時代でもあったことを改めて実感しました。
今でこそ抗生物質で完治できる病ですが、当時は死病。
患者のことを話すことさえタブーとされた様子が描かれています。
そんな中、栄養のある食べ物をよく噛んで食べて養生をすること、という名医のアドバイスを守り、主人公のフィアンセは健康を取り戻します。
これは結核からカリエスまで発症した患者としては奇跡的なことだったでしょう。
愛の力が起こした奇跡、というキリスト教の教えにつながる感動的な出来事を描きたかったのでしょう。

明治末年の札幌が詳しく描かれていたことも興味深かったです。
当時の札幌には医師が30人しかいなかったと書かれていて驚きました。
その後に人口は4万人、と書いてあり、それなら仕方がないと納得。
190万都市も110年前はそんなに小さな町だったのですね。

本書は、いろいろな人々との関係に悩む青年の葛藤を描いていました。
キリスト教徒でなくても、ひとりの人間として得るものが多い素敵な作品でした。
発表から半世紀を迎えて再び脚光を浴びる作品というのは、やっぱり名作ですね。
思い切って読んで本当に良かったです。




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お気に入りその1255~オセアノ号、海へ!

2016-09-26 12:54:34 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、オセアノ号、海へ! です。

絵本「オセアノ号、海へ!」で、海中世界に遊びました。

まずはAMAZONの内容紹介を引用します。
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『ナマケモノのいる森で』の作者ボワロベールとリゴーが、自然への讃歌と敬意をこめて、そして自然を守るために、再びデュオを組んで作品を作りあげました。
海のうえにも、海のなかにもポップアップの楽しいしかけがいっぱい!
美しいイラストレーションとしかけの素晴らしさで世界中の話題をよんだ人気作家による新作しかけ絵本。
=====

縦長の仕掛け絵本です。
海中体験をたっぷり味わえること、請け合い!

出航する港の海底はゴミだらけ。
北極では氷山と遭遇。
海面下の氷の大きいこと!
そして嵐の中を突き進むオセアノ号。
熱帯の海では、色鮮やかなサンゴと魚たちが花畑のようです。

仕掛けは特に動きが豊富な訳ではありません。
仕掛け絵本の名手サブダの「シャーク 海の怪獣たち」を読んだ後なのでなおさらそう思ったと思います。

本書は重なり合い陰になった部分が実に丁寧に描かれており、読者が顔を動かしたり、表側の仕掛けをめくったりすることで、海中世界の奥行を感じることができます。

美しい海の世界にゆったりのんびり浸ることができました。

これは大人にとっての癒し絵本です。
心が疲れている方にお勧めします。

ちなみに現在並行して三浦綾子の名作「塩狩峠」を読んでいます。
「信仰の苦悩」を読んでいて、時々息抜きが必要になった時に「オセアノ号」は最適でした。


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お気に入りその1254~ムーミン

2016-09-23 12:22:39 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「たのしいムーミン一家」です。

トーベ・ヤンソンの「ムーミン」シリーズを初めて読みました。
いろいろな版が出ており迷いましたが、評価の高い山室静版にしました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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2014年トーベ・ヤンソン生誕100周年!
青い鳥文庫ムーミンシリーズが新装版で登場!!
長い冬眠からさめたムーミン谷の愛すべきなかまたちが、海べりの山の頂上で、黒いぼうしをみつける。
だが、それは「魔法のぼうし」だったために、つぎつぎにおかしな大事件が……。
フィンランドのアンデルセン賞受賞作家、トーベ・ヤンソンが描く、詩情あふれるファンタジー。
角野栄子の巻末エッセイつき。
=====

冒頭は冬のはじめ。
スニフとスナフキンはムーミンの家で冬眠します。
ムーミンはスニフのいびきがうるさいからと、スナフキンと一緒の部屋で眠ることにします。
目を閉じ、次に目覚めるともう春、素晴らしい爆睡!
こんな冬眠ならしてみたい、と多くの人が思ったのではないでしょうか。
札幌以上に冬の長いフィンランドだからこそ、厳しい冬を飛び越してみたい、という願いがあるのでしょう。
気持ちは十分すぎるほどわかります。

物語の登場人物はアニメでお馴染みのメンバーとほとんど一緒。
ムーミントロール、ムーミンパパ、ムーミンママ、スノーク、スノークのお嬢さん、ヘムレン、スナフキン、スニフ。
そしてニョロニョロ、じゃこうねずみ。
トフスランとビフスラン、飛行おに、アリジゴク、モランはこの巻だけのゲストかな?
あとはミイとミムラさんが出場したら完璧でした。

ムーミンの彼女はアニメではノンノンでしたが、原作では名無しだったのですね。

ムーミンパパが半生記を書いていること、ムーミンママがおおらかな愛情でみんなを包み込んでいること。
スナフキンは旅好き、スニフは臆病であわてんぼう、ムーミンと相思相愛のスノークのお嬢さん。
アニメのムーミンそっくり。
いいえ、アニメが原作に忠実に作られていたのですね。

妖精たちの世界。
それぞれ個性的なムーミンと仲間たちののどかな日々。
いろいろな事件が起こるけれど、決して酷い状況にはならないのは、やっぱりファンタジー小説だからでしょう。
最後に登場した飛行おには特に強大な魔力を持っているだけにヒヤヒヤしながら読みましたが、トフスランとビフスランの思いやり深い願いにより大団円。
見事な結末でした。
トーベ・ヤンソンは何と素晴らしいストーリーテラーでしょう。
ムーミンが長く愛されている理由を知ることができました。

ヤンソンはあとがきでどんな物語を書こうと決めて書いていないと述べています。
途中から書き始めることも多く、登場人物たちが自由に動き回っている内に結末を迎える、ということを読者のように楽しんでいたそうです。
素敵な話です。

今回は1冊だけ読むつもりでしたが、もう1冊読んでみようという気になりました。

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お気に入りその1253~木を植えた男

2016-09-21 12:30:23 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「木を植えた男」です。

かの有名な「木を植えた男」を読みました。
30年近くも前に話題になったあの作品です。
この作品は、最初は小説として世に出て、次に短編アニメ映画が製作され世界中で話題になり、最後に絵本になったそうです。
ジャン・ジオノ著 フレデリック・バック画。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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フランスの山岳地帯にただ一人とどまり、荒れはてた地を緑の森によみがえらせたエルゼアール・ブフィエの半生。
同名の短編映画は、'87アカデミー賞短編映画賞受賞。
=====

当時、短編アニメ映画が大評判になり、テレビで何度も目にしていたことをよく覚えています。
当然あらすじや絵も知っています。
今回は絵の美しい絵本を鑑賞したい、という思いから、フレデリック・バックの絵を改めて鑑賞するため購入しました。

いやー、舐めていました。
驚くほど心に響く、感動的なストーリーでした。
あらすじを知っているから、という理由だけで、あやうく読まずに終わるところでした。
まさに、百聞は一見にしかず。

先日読んだ「あたまにつまった石ころが」にも共通する、信念を貫き通す男の話。

彼らは、有名になりたいとか、お金持ちになりたいとは思いませんでした。
大好きな石に関わる仕事がしたいと願い精進を続けた男と、荒れ果てた土地を昔のように自然豊かな土地に戻したいと願い木を植え続けた男。
ふたりの共通点は、誠実であること、他人の戯言に左右されないことなどいろいろありますが、とにかくどちらも尊敬できる人物。
彼らの人生を心にとめ置き、半歩でも近づけるような生き方をしたいと思います。






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お気に入りその1252~あたまにつまった石ころが

2016-09-20 12:12:04 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「あたまにつまった石ころが」です。

この素敵な絵本の著者はキャロル・オーティス・ハーストです。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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切手にコイン、人形やジュースのびんのふた。
みなさんも集めたこと、ありませんか?
わたしの父は、石を集めていました。
まわりの人たちはいいました。
「あいつは、ポケットにもあたまのなかにも石ころがつまっているのさ」
たしかにそうなのかもしれません―
2001年度ボストングローブ・ホーンブック賞。
ノンフィクション部門オナー賞受賞作。
=====

子どものころから石を集めていた著者の父親を描いた実話絵本です。
「大きくなったら石に関わる仕事をしたい」
という彼に対し、大人は
「そんな仕事は儲からないよ」
と声をかけますが、全く気にしません。
やがて人々は
「あいつの頭の中には石ころがつまっているのさ」
と言い、彼自身も
「ぼくの頭の中には石ころがつまっているのさ」
というのが口癖になります。

独学で学びながら、博物館級のコレクションを蒐集した彼。
彼を見出して掃除夫として雇い、自分の後任の博物館館長にまで推挙した女性館長。
素敵な実話です。
著者の「父以上の素晴らしい人生を知りません」という言葉に納得です。

まさに「好きこそものの上手なれ」を体現した幸せな人生でした。
いろいろな抵抗にあいながらも好きなことを全うできた人生は、うらやましいくらい光り輝いています。
ふっと「さかなクン」の顔が思い浮かびました。
凡人の戯言に振り回されず、一つのことを貫き通す心の強さが共通しています。
ゴジラ松井の座右の銘「努力できることが才能である」やイチローの背中にも通じます。
わが人生を顧みると何と右往左往してきたことか!
今からでも少しは見習おうと思います。

ちなみに
「あいつの頭の中には石ころがつまっているのさ」
は本人にとっては褒め言葉だったことでしょう。

それは北杜夫著「どくとるマンボウ昆虫記」のラストと同じだからです。
=====
ところで私はといえば、たしかに虫たちを好きではあったが、別段それによって何のサトリをひらいたわけでもなく、人に語るべきものはなにもない。強いていえばただひとつ、たとえ人から「あいつはムシケラのような奴だ」と悪罵されようとも、私はにっこり微笑できようというものだ。
=====


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お気に入りその1251~セレスティーヌのおいたち

2016-09-17 12:26:22 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「セレスティーヌのおいたち」です。

絵本「くまのアーネストおじさん」シリーズの「セレスティーヌのおいたち」をやっと読むことができました。
前に絵本「セレスティーヌ」を読んだときに、対になっている本書もぜひ読みたいと願っていました。
AMAZONでは絶版の上、古本も品切れ。
頼みの古本検索サイトbookgetも空振り。
仕方なくヤフオクに登録して出品を待っていました。
そしてついに出品メールが届き、入手することができたという次第です。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
「ね、わたしはどうしてそこにいたの、アーネスト?」
「わからない。でも、きみはそこにいたんだよ、たしかに」
「ひとりぼっちでいたの、わたし?」
「そう、ひとりぼっちだった。だから、ぼくがきみをいえにつれてきたんだよ。マフラーにくるんでね。ぼくはとってもうれしかったよ」
わたしどんなふうに生まれてきたの?
くまのアーネストおじさん最終巻。
=====

絵本「セレスティーヌ」ではアーネストがごみ箱に捨てられていた赤ん坊を拾って、セレスティーヌと名付け、大切に育てはじめるまでを描いていました。
誘拐と間違われて警察に連れていかれたり、近所の人々といさかいがあったりしましたが、やがて二人の穏やかで幸せな生活が始まりました。
この後の二人については、たくさんの巻で微笑ましい物語がつづられているそうです。
私はまだ「あめのひのピクニック」と「セレスティーヌのクリスマス」しか読んでいませんが。

物心ついたセレスティーヌは、きっと勇気を振り絞ってアーネストに質問したのだと思います。
それに対しアーネストは優しく、そして誠実に真実を語ります。
読んでいるこちらも彼ら同様に緊張しました。

表紙の絵。
いつもアーネストの隣にいたセレスティーヌが、少し離れたところからアーネストの背中を見つめています。
聞こうか聞くまいか迷っている様子。
小さな胸は不安に押しつぶされそうです。
とてもいじらしい彼女の背中を見ると、大丈夫だよと声をかけてあげたくなります。
でも安心。
彼女にはアーネストがいます。
彼女を誰よりも愛している彼だからこそ、彼女の不安を必ずや解消してくれるでしょう。

「セレスティーヌ」で知った彼女の生い立ち。
捨て子だったことを彼はどう伝えるのでしょうか?
アーネストは、質問されるのをこわがっていました。
セレスティーヌの様子からその日が来たことを感じますが、用事を思い出しては先延ばしします。
最後はどれだけセレスティーヌを愛していたかを中心に、生い立ちを語ります。
セレスティーヌは何度も何度も教えてとせがみます。
その度にアーネストはやさしく教えます。
セレスティーヌのこころが落ち着くまで何度も。

セレスティーヌの不安なこころが、アーネストの愛によって落ち着いていく様が感動的です。
何度も読み返してしまいました。
バンサン最後の作品ということもあり・・・。

それにしても、こういう素敵な作品が絶版で、子どもたちが読むことができないとは、実に残念なことです。



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お気に入りその1250~琉球処分(後編)

2016-09-15 12:31:36 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「小説 琉球処分(後編)」です。

「小説 琉球処分」の後編をようやく読み終わりました。
ページ数の多さもありますが、何より内容の重さに手が進みませんでした。

作品の中で琉球の高官が語ります。
「古来わが国は外国に向かっては、頼り、こいねがうだけが道」
日本の併合要求に対し、回答を先延ばししながら、来るはずのない清国(中国)の援軍を待ちます。
そう願うことだけが精いっぱい、という状況が悲しい・・・。
けれどもアヘン戦争後の清国には琉球王国を助ける力がありません。

琉球王国は清国を支持する頑固党、日本を支持する開化党、どちらも支持しない中立派に分かれ乱れます。
有能な若者たちは、それぞれの立場、それぞれの信念により道を違えていきます。
誰もが国を愛する気持ちと幸せになりたい気持ちに違いがないのに・・・。

ある日、琉球の苦しい状況を夢に見ました。
当事者のひとりとして状況打開を模索していました。
実に苦しい夢でした。

結局、琉球王国は歴史が示すように日本に併合されました。
琉球の高い志を持った若者たちは、王国の解体とともにちりちりに散っていきました。
ある者は、清国へ救済を求める密航の途中で溺死。
ある者は、日本政府の間者になり、やがて家族と別れひとり東京に渡り、
ある者は、親方(琉球の大名)の息子ながら、併合後、県の戸籍係の職に甘んじ、
ある者は、日本と清国の国力の違いを知り、清国に救済を求めて渡った者たちを連れ戻しに行くが殺されます。
こうして志の高い若者たちは王国の解体とともに消えていきました。
彼らの力が沖縄県の地位向上に向けられなかったことがとても残念でした。

琉球処分後の沖縄県は、わずかの例を除きほとんどを本土から来た役人が占めました。
まさに植民地政策。
同じ日本でありながら米軍基地が沖縄に偏在している理由は、ここにありました。
政府の建前と本音が見えたように思います。
今なお沖縄を植民地同然にしか見ていない官僚たちの考えには納得できません。
沖縄処分を読み、沖縄を応援する気持ちがより一層、強くなりました。

沖縄の諸問題に興味がある方に本書をおすすめします。



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お気に入りその1249~仕掛け絵本

2016-09-12 12:43:53 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、仕掛け絵本です。

仕掛け絵本の名手サブダの2冊目を堪能しました。
「シャーク 海の怪獣たち」です。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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本書は既刊「恐竜時代」と対をなすロバート・サブダ、マシュー・ラインハートによる‐立体・海の古生物百科‐です。
35体以上の海の古生物(怪獣)のポップ・アップと最新の古生物学情報…太古の海は多くの未知の怪獣に彩られてきました。本書は、多くのサブダファンに新鮮な驚きと創造的な興味を呼び起こすことでしょう。
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最近お気に入りのEhonNaviの内容紹介も引用します。
=====
恐竜の次は、海の怪獣の登場!
超人気作『恐竜時代』に続く、太古の世界シリーズ第二弾の本書は、前作のインパクトはそのままに、35体以上のポップアップと最新の古生物情報で、海の怪獣たちの世界に立体的に迫ります!
サメだけじゃない!
海の中の古生物の中には、こんなに迫力のあるカッコイイ怪獣たちが生きていた。
太古の海は、まさに未知の世界。
ますます冴えわたる、サブダとマシューのしかけに目が釘付けです。
=====

前書「恐竜時代」では、チラノサウルスが飛び出して驚きましたが、本書では巨大ザメが飛び出して驚きました。
どちらも迫力たっぷり。
そしてその他たくさんの仕掛けによる立体的な動きで、海の古生物を楽しく学ぶことができました。
こりゃたまらん。
まさに芸術的!
前書も気に入ってくれた娘がまたまた喜んでくれました。

しかしまあ本当に、いったいどういう仕掛けになっているのでしょう?
高度なテクニック満載の仕掛け絵本であることは間違いなし。
複雑に連携する仕掛け。
そういえば「恐竜時代」の破損個所はまだ修復していません。
下絵が見えるように修復する方法を探していました。
先日「絵本 強力 補修テープ (3cm×5m) H-27-B」というのをAMAZONで見つけました。
今度チャレンジしようかな。



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お気に入りその1248~琉球処分(前編)

2016-09-09 12:09:08 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「小説 琉球処分(前編)」です。

沖縄の皆さんにはとても申し訳ありませんが、先日まで本書の存在を知りませんでした。
さらに言えば「琉球処分」という言葉も知りませんでした。
みなさんは知っていましたか?

日ごろから米軍基地の沖縄偏在という不平等や、日米地位協定の不平等に不満を持っています。
沖縄県知事の意見に耳を貸さない政府の強硬さを苦々しく思っています。
太平洋戦争で沖縄県民の4人に1人が亡くなった沖縄決戦は、「捨石作戦」だと思い、申し訳なく思っています。

それらの根源は「琉球処分」にあったようです。
明治政府により強行された琉球王国の解体と併合。
中国の南沙諸島問題やロシアのウクライナ進出問題などのような非道をかつて日本も行っていたとは・・・。
ショックでした。

まあ、ここ北海道も一歩間違えたら旧ソ連に侵略されていたかも、といわれていますので、他人事ではありませんが・・・。

本書は新聞コラムで紹介されていました。
前後編の分厚い本のため、かなり前から読んでいましたがなかなか前に進みませんでした。
ようやく前編を読み終わったのでここまでの感想を書くことにします。

琉球王国は中国と日本に貢物を納めながら、綱渡りのような外交で生きながらえてきた国だったことが描かれています。
強国に挟まれた小国の悲哀。
琉球の船が台湾に漂着し地元民に大量虐殺されたにもかかわらず、中国は動いてくれなかった。
何のための貢物だったのか?
中国に抗議し賠償金を取ってくれた日本の行動も、琉球を我が物にするため。

明治政府の高官、大久保利通以下役人たちの思惑。
琉球王国の高官たちの思惑。
琉球の高官たちには体調を壊す人も出てきます。
「外交」という世界はそれほど胃が痛くなる世界なのですね。
特に譲歩せざるを得ない立場の国の高官は辛い。
王様と国を守るため、必死にのらりくらりとはぐらかしながらも、追い込まれていきます。

後編はどうなるのか?
希望は前編で登場した琉球の有能な若者たち。
彼らが活躍することを願います。

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