鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1719~春霞

2018-12-28 12:29:17 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「春霞」です。

先日「美酒復権」を読み、日本酒業界に革命を起こしたNEXT5の酒を味わってみようと思い、まずは栗林酒造店の「春霞」から入門しました。

NEXT5のお酒はなかなか手に入らないそうなので、最初からネットショップで探しました。
楽天市場の秋田県物産振興会というところがヒットしました。

「限定酒・春霞 ピンクラベル」1.8L 2484円

商品説明を引用します。
=====
春霞さんの定番のレギュラー純米酒です。
甘みを伴う香り、ジューシーな米の味わいとフレッシュでしっかりとした酸で引きが良くバランス良好なレベルの高い晩酌酒。
コストパフォーマンスに優れる自信の1本です。
■酒造 栗林酒造店
■容量 1.8L
■原材料 米・米麹
■精米歩合 60%
■日本酒度 +2
■酸度 1.8
■アルコール度 15度
■原料米 美郷錦・美山錦(秋田県産米)
■使用酵母 AK-2
■発送方法 常温
=====

一口味わうと、まさに商品説明の通り、フレッシュさと酸味が特徴的なとても美味しいお酒でした。
息子も妻も納得の味わい。
日本酒党の娘にもぜひ飲ませたい逸品です。
レギュラー酒でこの美味しさということは、その上はどんなに美味いのでしょうか?
期待が高まります。
ただし、私は日本酒を買うときに予算を1.8L、3000円までの範囲で検討します。
原価の高い純米酒には厳しい条件でしょうが、日本酒の復権を目指すなら、この辺りを上限として勝負して欲しいです。
この価格帯なら晩酌用に選ばれるでしょうし、これだけ美味しければファンは確実に増えるでしょう。

次に試す銘柄は、秋田醸造の「ゆきの美人」にしようと思います。
ところが現在、年末ということで、ビール・日本酒だけでなくなぜかラム酒まで、かなりの数が集まっています。
これ以上増やすと苦情になりそうなので、注文はある程度それらを消費してから、ということになりそうです。

NEXT5の次なる酒。
早く味わいたいものです。

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お気に入りその1718~佐野洋子

2018-12-26 12:10:12 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、佐野洋子です。

これまで佐野洋子は、絵本「100万回生きたねこ」しか読んだことがありませんでした。
妻がNHK「ヨーコさんの言葉」にハマったことをキッカケに、私も興味を持ちエッセイ「死ぬ気まんまん」を読みました。
そこに描かれた佐野洋子は、死を前にした「とんでもない本音の塊」でした。
余命2年を宣告されて「建前」を捨てたのでしょうか?
それとも元々「本音」の人だったのでしょうか?
興味がわきました。
2010年に亡くなり8年経った今も「ヨーコさんの言葉」が放送され、書籍化される佐野洋子とはどんな人物だったのでしょうか?

手っ取り早く知る方法をいろいろ検討した結果、ムックを読むことにしました。
「佐野洋子<追悼総特集>100万回だってよみがえる」です。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
絵本作家でエッセイスト・佐野洋子の追悼総特集。
幻の遺稿「船の中のこと」や単行本未収録エッセイ、思い出アルバムなど。
谷川俊太郎VS広瀬弦の特別対談、角田光代、西原理恵子他執筆。
=====
巻頭カラー アルバム佐野洋子 1938‐2010
[初公開]
引き出しの中から
四角いにわ/船旅日記/6球スーパー
[特別対談]
谷川俊太郎VS広瀬弦 
「人間好き、批評家。佐野洋子の魅力」
[単行本未収録コレクション]
エッセイ
私はダメな母親だった/屈強なおまわりさん/卵、産んじゃった
ショート・ショート
椿/蟻のハナ子
物語エッセイ
とても小さい唇/しーん
小学館児童出版文化賞受賞挨拶
初めての脚本 自転車ブタがやってきて......
最後の作詞 あの庭の扉をあけたとき
[追悼]
伊藤比呂美・川村康一
[エッセイ]
工藤直子・沢野ひとし・角田光代・川上弘美・山崎努・おすぎ・佐々木幹郎
[カラーページ]
束見本に書かれた『100万回生きたねこ』草稿
『ねえ とうさん』展覧会のためのリトグラフ
佐野洋子が愛したもの 骨董の器、鉄製のフライパン、バー・ラジオのペン
[フォトページ]
仕事場/手帳から
[人と作品]
西原理恵子・三木卓
[考察]
関川夏央・今江祥智
[単行本未収録対談]
佐野洋子×筑紫哲也
    ×岸田今日子
    ×山田詠美
    ×鶴見俊輔×森毅
初期アンソロジー/主要ブックガイド   など。
=====

結論から申し上げると、佐野洋子は日本人離れした大きな人物でした。
大胆に本音を語るまっすぐな人でした。
それでいて優しい人でした。
だから多くの人に好かれたのです。

本音を明かせずに思い悩む人々は、ヨーコさんの言葉によって、複雑に絡んだ思考から一瞬で解放されることでしょう。
なんだ、そんなシンプルな考え方があったのか!と。

本書に登場する西原理恵子もその一人でした。
次の男に乗り換えるときに一時的に重なることを悩む西原に対して、
「それはノリシロといって、数に数えないのよ」と、まさに一刀両断!
感動のあまり「佐野先輩!」と飛びつきそうな声をあげる西原。
きっと「ヨーコの言葉」にはこんな言葉があふれているのでしょう。

また200万円の豪華客船の旅を1/3で飛び出しパリで遊んで帰ってきた佐野に対し「もったいない」と声をかけたら「あんたって小さな男ね」とこれまた一刀両断。
お見事、実に恰好良い。
並みの男じゃ太刀打ちできないことは明白です。

他にも「いろいろ悩んで締め切りに間に合わない」という作家の一言に対し「大作家でもあるまいし」と言い放ちます。
「あなたはどうなんですか?」と返されると「悩んで遅れる事なんてないわよ」とこれまた一刀両断。
間髪入れず当時夫だった谷川俊太郎まで「悩んで遅れる事なんてない」。
こりゃたまらん。

最後にひとつだけ印象的なエピソードを。
「どうして絵本を書いたのか」という問いに対し「自分の能力をお金に換える方法が絵本しかなかったから」とこれまたストレートな答えを返しています。
建前を一言も語らない潔さに敬服しました。

佐野洋子は余命宣告など関係なく、そのはるか前から本音で生きてきた人だったのです。
そんなヨーコの言葉だからこそ、世のしがらみに疲れたときに絶妙な特効薬として効果を発揮するのでしょう。

次は妻の「ヨーコの言葉」を借りて読もうと思います。

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お気に入りその1717~竹鶴政孝パート279

2018-12-24 12:57:04 | 竹鶴
今回のお気に入りは、竹鶴政孝パート279、アランビックです。

前回に引き続き、今年仲間入りした「お気に入りのモノ」について書きます。

ネットオークションで落札した「ニッカブランデーAlambic 単式蒸留器型卓上ガスライター(非売品)」です。
古式ゆかしいデザインと飾るのに丁度よいサイズが気に入っています。
ポットスチル型ボトルの脇に並べると実にお似合いです。
9月の大地震で棚から転げ落ちましたが金属製のため壊れませんでした。

このライターはニッカの「アランビック」というブランデーの販促景品として製作されたもののようです。
「アランビック」という言葉の意味を調べたら「単式蒸留器」でした。
「アランビック」というブランデーの販促品を「単式蒸留器型卓上ガスライター」にしたのは実に安易ですが、そのレトロなデザインとしっかりした作りに当選した方は満足したことでしょうね。

ブランデーをほとんど飲まないため、これまで考えたことがありませんでしたが、「アランビック」と「ポットスチル」ってどう違うのでしょうか?
どちらも単式蒸留器のはずですが・・・。
そんな素朴な疑問を持ち、あちこち調べてみました。
はっきりとは分かりませんでしたが、とりあえず次のように理解しました。

・古代ペルシャの錬金術師が発明した単式蒸留器をアラビア語で「アランビック」と呼んだ。
・「アランビック」の近代的なものを「ポットスチル」と呼ぶ。
・江戸時代に焼酎を蒸留する際に用いる用具を「らんびき」と呼んだのは「アランビック」が語源。

なるほど、余市工場で見慣れたあのポットスチルのご先祖がこのアランビックなのですね。
そして意外にもアランビックは蒸留酒を作るためではなく、錬金術のために開発されたものでした。
調べる過程で、現在でもミニチュアのポットスチルが一般販売されていることも知りました。
どうやら香料の抽出などに使われているようです。
蒸留器の用途ってお酒以外にもいろいろあるのですね。
呑兵衛には想像もつきませんでした。

部屋の陳列棚に、3つの小さな単式蒸留器が並んでいます。
一つ目は大日本果汁のポットスチルを模したボトル。(ニッカウヰスキー、キングスランド)
その隣に寿屋のポットスチルを模したボトル。(サントリーウイスキー、エクセレント)
どちらも竹鶴政孝が手掛けたポットスチルで、寿屋の方が少し兄貴分。
そして三つ目が今回仲間入りした、ポットスチルの源流にあたるアランビック(単式蒸留器)を模したライター。
今回、単式蒸留器つながりで、竹鶴政孝のはるか源流に古代ペルシャの錬金術師がいたことを知りました。
大麦から命の水(ウイスキー)を産み出すこと自体が錬金術であると考えると、政孝も錬金術師の末裔といえます。

ひとつウンチクが増えたおかげで、今宵の晩酌はいつもより味わい深く感じられるかもしれません。

(おまけ)
最近ちょっと気が向いてニッカブランデー、アランビックを購入しました。
ポットスチル風のボトルデザインでした。
ただこの程度の単純なデザインでは、強烈な個性派がそろっている陳列棚のお仲間に入ることはできません。
悪しからず。

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お気に入りその1716~ストロマトライト

2018-12-21 12:29:13 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ストロマトライトです。

今年秋、足寄の動物化石博物館に行って、たくさんの化石や骨格標本を観てきました。
展示物で最古の化石はストロマトライトでした。
地球の大気に大量の酸素をもたらし、生命の爆発的な進化に大きく貢献した藍藻類の化石です。
現在では後発の生物たちに追いやられ、環境の厳しいオーストラリア西部の海岸などにわずかに生息しているだけですが、先カンブリア代には世界中で繁殖していたそうです。
オウムガイやカブトガニ、シーラカンスなどを「生きた化石」と呼ぶのなら、藍藻類は「超・生きた化石」と呼んで良いのではないでしょうか。

展示していたストロマトライトは大きな板状に加工されていました。
光合成を繰り返したことを表す独特の層状模様が魅力的です。
博物館の大半を占めていたデスモスチルスやクジラなどの巨大哺乳類への進化はここから始まったのだと思うと感慨深いものがありました。

帰宅後、MY陳列棚に並ぶ化石群を見ました。
といってもアンモナイトと珪化木、チラノサウルスの歯(レプリカ)のわずか3つ。

彼らが生きていた時代から大幅にさかのぼる大昔に繁栄した藍藻類化石・ストロマトライトのことを考えました。
化石はきっと高価なんだろうなと思いつつ、調べると案外と安く、中には千円を切る激安品まであるではありませんか!
ボリビア産で24億年前から22億年前のものだそうです。
10×15×20mmほどの小粒ながら立派な縞模様があり、太古の光合成の証拠はバッチリ。
すでに相当狭くなっている陳列棚にはちょうど良いサイズです。
注文するとすぐに到着しました。
他の化石より一回り以上小さいですが、そこは生命爆発の立役者。
当然、上座に鎮座してもらいました。

今宵は生命大爆発のロマンをサカナに晩酌といきましょう。
今、「男子ごはん」という番組の「男の、男の、ロマン!」という声が、頭の中にBGMで流れています。

今回の記事はかなりマニアックなため、多くの方は最初から訪れないでしょうし、ここまで読む方はまれでしょう。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




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お気に入りその1715~重松清2冊

2018-12-19 12:25:02 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、重松清作品2冊です。

①40回のまばたき

郵便局の貸出文庫をながめていて、重松清の本を見つけました。
しばらく読んでいないので借りました。
初めて目にするタイトルですが、感動長編とのことなので期待して読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
結婚七年目の売れない翻訳家圭司は、事故で妻を亡くし、寒くなると「冬眠」する奇病を持つ義妹耀子と冬を越すことになる。
多数の男と関係してきた彼女は妊娠していて、圭司を父親に指名する。
妻の不貞も知り彼は混乱するが粗野なアメリカ人作家と出会い、その乱暴だが温かい言動に解き放たれてゆく。
欠落感を抱えて生きる全ての人へ贈る感動長編。
=====

主人公の翻訳家は、ワープロで原稿を書き、フロッピーに保存しています。
やけに時代が古いと思ったら、25年前の作品だそう。

内容紹介の「感動長編」は誇大広告。
残念ながら重松清らしくない作品でした。
著者が29歳で書き始め、30歳で書き上げたそうですから仕方ないか・・・。
まだ感動路線が確立する前だったようです。

冬眠する義妹や〝セイウチ”という濃いキャラの登場が必要だったのか疑問を感じつつ読みました。
これまであまり話題にならなかったのは、著者らしい感動作品でないためでしょう。

ちなみに題名になっている「40回のまばたき」の意味は、作品中に出てきました。
アメリカ口語英語で「うたたね」とのことだそう。
気持ちが落ちた時は「40回のまばたき=うたたね」をすることで、少しは気が晴れる、というようなことが書かれていました。
面白い言葉ですが、主人公の欠落感を埋めるには軽すぎる表現であり、表題として適切ではないと思いました。


②青い鳥

「40回のまばたき」があまりに期待外れだったのでもう1冊読むことにしました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
村内先生は、中学の非常勤講師。
国語の先生なのに、言葉がつっかえてうまく話せない。
でも先生には、授業よりももっと、大事な仕事があるんだ。
いじめの加害者になってしまった生徒、父親の自殺に苦しむ生徒、気持ちを伝えられずに抱え込む生徒、家庭を知らずに育った生徒──
後悔、責任、そして希望。
ひとりぼっちの心にそっと寄り添い、本当にたいせつなことは何かを教えてくれる物語。
=====

村内先生は吃音。
多くを語らず大切な言葉だけを伝えようとします。
その懸命な姿勢が、頑なだった相手の心をほぐしていきます。
先生は自らが吃音に苦しんできたからこそ、相手を思いやる優しい心を持ち、ひとりぼっちで苦しむ生徒を救うために奔走します。
あとがきで著者は、村内先生のことを「ヒーロー」と書いています。
子どもたちの心の悲鳴に駆け付け、いたわるその姿は、まさしくヒーローです。
先生の「間に合った」というひと言は、「手遅れにならずに良かった」という言葉の現れ。
この言葉により、子どもたちだけでなく、読者である私さえ救われた気持ちになります。
まさにヒーローが「壊れかけの心」を救いに来たのです。

著者自身、教員免許を持っており、吃音もあるそう。
きっと村内先生は著者のなりたかった教師像なのですね。

本書は感動に胸が熱くなる、いつもの重松作品ではありませんでいたが、静かに深く魂に響く名作でした。
子を持つ親や教師のバイブル的な作品だと思います。
おすすめします。


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お気に入りその1714~絵本2冊

2018-12-17 12:34:52 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、絵本2冊です。

まずは「ギルガメッシュ王ものがたり」。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
愛すること、信じることを知らないギルガメシュ王は、世界一の城壁づくりに人びとを奴隷のように働かせますが……。
世界最古の物語「ギルガメシュ叙事詩」を映像作家ゼーマンが愛・友情・信頼の視点から読み直し再創造したユニークな絵本。
=====

5000年以上前の古代メソポタミア遺跡から発見された粘土板。
そこに記された楔形文字を解読すると、それは何と人類最古の物語だった!
まさに世紀の大発見。
本書は「ギルガメシュ叙事詩」と名付けられたその物語を、映像作家が絵本にしたもの。
あの斉藤孝先生が絶賛したことで有名になりました。
「人類最古の物語」ということで興味津々。
しかも絵本で読めるのですから、5000年以上前の物語を文章と視覚で体験できます。
少々値が張りましたが購入しました。

本当は3部作だそうですが、続編の2冊は読む気はありません。
その理由はふたつ。
①本書で物語の入り口部分を知ることができただけで十分満足。
②続編には旧約聖書と共通する大洪水が登場するそうで、それには興味なし。

以前小説や映画で話題になった「ダ・ヴィンチ・コード」が、キリスト教の歴史や聖書の内容について知っていることを前提にしたミステリーでした。
キリスト教の信者でない私は部外者の感覚におちいり、興ざめした記憶があります。
その二の舞になりそうと思い、続編は却下しました。

実際に読んでみると、5000年以上前に書かれた物語は「むかしむかし」で始まっていました。
人間て5000年経っても変わらないんだと妙に納得。
そういえばエジプトのパピルスを解読したら「今どきの若い者は」と書かれていたそう。

メソポタミアのギルガメシュ王は神の血と人の血を持った偉大な存在。
人の心を理解できない王に苦しめられた民が神に救いを求め、王が民の幸せを追求するようになるまでの物語です。
そうです、民は、国を治める者に民の幸せを追求して欲しいのです。
民の願いが5000年前から変わっていないことを知ってもらうために、政治家たちに読んでもらいたい絵本です。


2冊目は「リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険」。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
20言語で翻訳出版、世界中で話題の絵本がついに日本上陸!
ハンブルグからニューヨークへ小さなネズミが、大西洋を飛んだ!!
1927年、リンドバーグが初の大西洋横断飛行に成功。
本書はその15年前、1912年のハンブルクが舞台。
知りたがりやの小ネズミは、人間の図書館で何日も本を読みふけっていた。
ある日、仲間のところに戻ってみると、ネズミは1匹もいない。
「ばね式ネズミとり」が発明されて犠牲になり、仲間たちは住みにくい町を捨てて、自由の町NYへ旅立っていったにちがいない。
しかし、仲間を追って港に向かった小ネズミはネコたちに阻まれ、乗船もままならない。
追いつめられたあげく、ふと前をよぎるコウモリを見て、ひらめく。
「そうだ! 大西洋を飛んでいこう!」
小ネズミの試行錯誤が始まった。
本を読み、材料を集め、飛行機をつくる日々。
1回目の飛行、ハンブルク駅舎から飛んで落下したとき、目の前を走る蒸気機関車を見て、蒸気の動力を利用することに思いつく。
2回目の飛行、ハンブルク港では機体が重すぎて失敗。
しかし、その飛行が新聞記者にスクープされて街中の話題になり、人間ばかりかフクロウやネコの追跡を受けることになる。
そして、ある霧の濃い日、子ネズミは意を決して、町で一番高い教会から飛び立つ。
追いかけるフクロウたち、かろうじて逃げ切った小ネズミは、西を、NYを目指して飛行を続ける。朝、摩天楼のそびえ立つNYに到着。
空を見上げて驚いた人間たち、そしてネズミたち…。
やっと仲間に会えた。
「ときとして、最も小さきものが、壮大なことをやってのける」
ヒーローとなった小ネズミは、アメリカの町から町を巡って、航空ショーを披露した。
街角でそのポスターをくいいるように見つめていた少年…。
彼の名前は、チャールズ・リンドバーグ。
=====

1冊目は斉藤孝氏が絶賛した絵本でしたが、こちらは糸井重里氏が絶賛した絵本。
実に美しく細密なイラストと、シンプルに目的を達成するために努力する主人公の行動力が魅力的な絵本です。
著者は子どもの頃から発明が趣味だったそう。
主人公のネズミはまるで著者の分身です。
本書は著者が大学在学中から描き始めた初めての絵本。
それなのにこの完成度。
とんでもない新人作家登場!って大いに話題になったことでしょう。

ネズミ、フクロウ、街並みや港の風景、飛行機の材料など、すべてが丁寧にやわらかく水彩で仕上げられています。
ページ数は多くても文章は最低限。
美しいイラストをたっぷり満喫することができます。
読書が苦手なお子さんが、小ネズミの冒険物語を楽しむも良し。
大人が美術作品として美しいイラストを鑑賞するのも良し。

こういう絵本を見るたびに思います。
本のお気に入りのページを開いたまま飾ることができる額があるといいな、と。
たくさんの図鑑や絵本が出番が来るのを待っています。








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お気に入りその1713~美酒復権

2018-12-15 08:05:08 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、美酒復権です。

久しぶりに書評サイトHONZで紹介していた本を読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
秋田発で日本酒業界に新風を巻き起こした5人の蔵元のグループ「NEXT5」
その劇的な足跡を辿る!
それは、5人の帰郷から始まった──。
ゆきの美人=小林忠彦、白瀑(山本)=山本友文、福禄寿(一白水成)=渡邉康衛、新政=佐藤祐輔、春霞=栗林直章……
2010年4月、秋田の蔵元5人が「NEXT5」という名のグループを立ち上げた。
5人が同じ方向を向いて、酒造りを研究し、共同醸造酒を造る。
その活動は、やがて一つのブランドとなり、右肩下がりで苦境に直面していた多くの酒蔵に刺激を与えていく。
日本酒界を牽引するムーブメントを起こした蔵元集団の軌跡を追ったノンフィクション。
旨い酒、秋田にあります!
知力を結集し、郷土の酒を変えた5人の物語
目次
プロローグ 五人の帰郷
第1章 ゆきの美人 蔵元杜氏の誕生
第2章 山本 どん底からの再起
第3章 一白水成 地域に根づいた酒を
第4章 新政 伝統と革新の探究
第5章 春霞 六郷湧水群が生む美酒
第6章 NEXT5 最強軍団の誕生
第7章 米づくりへのアプローチ
第8章 酒蔵をコミュニティの核に
エピローグ あとがきにかえて
=====
それぞれの事情で故郷の酒蔵を継ぐことになった五人の蔵元は、「どうせダメになるなら、本当にいい酒を造りたい」と、自分の手で酒を造りはじめる。
ゆきの美人、白瀑(山本)、福禄寿(一白水成)、新政、春霞…
二〇一〇年四月、その五人が「NEXT5」という名のグループを立ち上げた。
五人が同じ方向を向いて、酒造りを研究し、共同醸造酒を造る。
その活動は、やがて一つのブランドとなり、右肩下がりで苦境に直面していた多くの酒蔵に刺激を与えていく。
日本酒界を牽引するムーブメントを起こした蔵元集団の軌跡。
=====

本書を読んで、前に日本酒業界の内幕を暴露した本を読んで感動したことを思い出しました。
上原浩著「純米酒を極める」。
著者は長年日本酒業界を指導してきた方で、衰退の一途をたどる業界の将来を憂い、本書をもって一石を投じたのでした。
その内容はざっと次のとおり。
=====
元々日本酒は米と麹だけで造っていた。
戦中戦後の米不足の際に緊急避難的に醸造用アルコールや糖類を混ぜた酒を作ることが許された。
それが米余りの現在でもまかり通っているのはなぜか?
手軽に大量生産ができ、儲かるからだ。
米のアルコール発酵は繊細で、失敗は酒蔵の存亡にかかわることから、杜氏が付きっきりで仕上げたもの。
ところが発酵を途中で止め、醸造用アルコールで仕上げると簡単にできあがるため、熟練の技は必要ない。
ただしアルコールが舌を刺激するため、糖類を大量に投入して刺激を和らげる。
こうして本来できるはずの量の3倍の量の日本酒が出来上がる。
上原氏は日本酒業界に原点回帰を呼びかけた。
消費者を屁理屈で欺くことは止めて本物の日本酒で勝負して欲しいと。
一部の志の高い酒蔵がそれに応え、純米酒だけを生産するようになった。
コストの高い純米酒は安売りできないため、厳しい商売になることを知りつつ、勇気を出して一歩を踏み出した。
消費者と真剣勝負をする酒蔵が増えることで、将来日本酒業界がV字回復することを願う。
=====
回想シーンが長くなってしまいました。
「美酒復権」には「どうせダメになるなら、本当にいい酒を造りたい」という言葉が出てきます。
蔵元の社長が自ら杜氏となり「本当にいい酒」を造った結果、5つの酒蔵は見事V字回復を成し遂げました。
「本当にいい酒」
それは米や酵母、水、そして製法にこだわった酒。
酒蔵の思想を形にした酒です。
NEXT5は大成功しました。
それに刺激され、純米酒に回帰する酒蔵が増えているそうです。
小樽に行った際に必ず立ち寄る田中酒造も、先日、全量を純米酒にすると発表しました。

NEXT5は、上原氏の想いを引き継ぎ、大きく発展させました。
「酒蔵の思想を形にした個性的な純米酒を造ること」こそが酒蔵の生き残る道であることを示しました。
これから個性豊かな美味い酒が増えていくことでしょう。
地酒ファンとしてはうれしい限りです。

NEXT5の酒を味わってみようと思い、ネットで注文しました。
まずは「特徴が無いことが特徴」と本の中で紹介されていた「春霞」を選びました。
ちょうど正月が目前ということで、息子と自分に1本ずつ。
NEXT5で他の4人のメンバーが先行して実績をあげる中、必死に食らいつき追いかける栗林酒造。
その努力の跡をじっくり味わいたいと思います。







 
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お気に入りその1712~眠る盃

2018-12-12 12:14:20 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
回のお気に入りは、眠る盃です。

向田邦子のエッセイ集「眠る盃」を読みました。
巧みな文章力に裏打ちされた、面白くも感動的なエッセイの宝箱でした。
この本は必ずまた読もう、そう思わせる名作中の名作でした。

発表したエッセイの後日談でもう1本エッセイを書いた、というのが2組登場します。
※「ツルチック」と「ライオン」の話
その後日談がまたやたらと面白い!

人間長く生きていても、こんな面白い出来事に出会うことはありません。
彼女のたぐいまれな観察力と記憶力のなせる業、というだけでは説明がつきません。
実は彼女について多くの人が口に出さずとも「神に選ばれた人」だったと考えているのではないでしょうか?

特に著者が電車の窓から街並みを眺めていて痩せた男とライオンが並んで座っているのを見かけた、という話。
そのライオンが実在したことだけでなく、男の姉と向田の親戚の間にロマンスがあったことまで明らかになります。
まさに事実は小説より奇なり。
脚本や小説にでもしようものなら、そんな偶然がある訳がないとバカにされること、請け合いです。

他にも、向田哲という犬の生涯についての話、50歳近くになって小学校の時の先生に怒られた話、下の妹がひとり疎開した先で病に伏し、連れ戻されたときに父が泣いた話などなど。
どれもこれも何度でも読みたくなる素敵な話ばかり。
まさに達人。
彼女の初めての短編小説集がまだ書籍化されていないにもかかわらず直木賞を決めてしまった、そのときの選考委員の気持ちがよーく判ります。

向田作品はまだ読みはじめたばかり。
これからもたくさん読めると思うとわくわく感が止まりません。
ここまで書いて思いつきました。
そういえば彼女は対談の名手でもあったそうです。
次は対談集でも読みましょうか。

最後にAMAZONの内容紹介を引用します。
=====
向田邦子2冊目の随筆集。
「荒城の月」の「めぐる盃かげさして」の一節を「眠る盃」と覚えてしまった少女時代の回想に、戦前のサラリーマン家庭の暮らしをいきいきと甦らせる表題作をはじめ、なにげない日常から鮮やかな人生を切りとる珠玉の随筆集。
知的なユーモアと鋭い感性、美意識を内に包んだ温かで魅力的な人柄が偲ばれるファン必読の書。
文字が大きく読みやすくなった新組版。
=====


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お気に入りその1711~風と行く者

2018-12-10 12:36:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、風と行く者です。

上橋菜穂子の守り人シリーズの外伝です。
録画しておいたNHKドラマ「精霊の守り人」最終章最終話を先日ようやく見終えたばかりなので、バルサたちの物語が続いている感覚で読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
つれあいのタンダとともに、久しぶりに草市を訪れたバルサは、若い頃に護衛をつとめ、忘れ得ぬ旅をしたサダン・タラム〈風の楽人〉たちと再会、その危機を救ったことで、再び、旅の護衛を頼まれる。
シャタ〈流水琴〉を奏で、異界への道を開くことができるサダン・タラム〈風の楽人〉の頭は、しかし、ある事情から、密かに狙われていたのだった。
ジグロの娘かもしれぬ、この若き頭を守って、ロタへと旅立つバルサ。
草原に響く〈風の楽人〉の歌に誘われて、バルサの心に過去と今とが交叉するとき、ロタ北部の歴史の闇に隠されていた秘密が、危険な刃となってよみがえる。
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『天と地の守り人』三部作完結から11年。
『流れ行く者』から10年、『炎路を行く者』から6年、NHKドラマ化を経てあらわれた「守り人」シリーズ外伝は、シリーズ最大の大長編。
バルサの今と20年前が交錯します。
軽装版には、カラー口絵とあとがき、そして解説が付きます。
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冒頭で片腕を失ったタンダが登場します。
あれ、タンダが失ったのは片足だったのではないでしょうか?
ネットで調べると、原作では確かに片腕を失っており、ドラマは事情により片足に変えたのだそう。
そうだったんだ・・・今まで全然気づきませんでした。

回想シーンでは、ジグロと旅を続ける16歳のバルサが登場します。
闘いにおいて平常心を保てず、ただ凶暴なだけの、経験の浅い短槍使いだったバルサが〈風の楽人〉の護衛を経験することで大きく成長します。

これまで思い出すことを避けてきた当時の記憶。

ジグロは私を持て余していたのではないだろうか?
傷を負ってはトロガイやタンダのもとに戻り、心身の回復を図ったものだ。
でもあの年はトロガイたちのもとへは戻らなかった・・・。

そして蘇る〈風の楽人〉との因縁・・・。

このような冒頭シーンで「守り人」の世界に一気に引き込まれました。
物語が進み、ロタ王国の成り立ちや〈風の楽人〉たちの置かれてきた状況が徐々に明らかになるにつれ、文化人類学を基にした異世界大河小説の深みにはまっていきます。

短槍をうまく使って兵士を馬から落とし、鎖骨を折って戦意を失わせるという、流れる水のごとき戦闘シーンが登場すると、ああ、これこそバルサだ!などとひとり悦に入ります。
ああ、面白い!
さしづめ「みをつくし料理帖」の種市なら「これはいけねえ。たまらねえよう」と言いつつ身をよじるところです。

登場人物たちは、秘められた過去が次々明らかになることで、苦しみ悩んだ末、ついに思いもよらなかった解決策を見出します。
関わるすべての者たちに幸せをもたらす見事な解決策。
こうして物語はハッピーエンドに終わります。
この終わり方、「守り人」本編のエンディングと重なりました。
幸せな気持ちで読み終えることができて満足満足。

あとがきで著者はいくつか書きかけの外伝があり、本書はそのひとつ、と書いています。
他の外伝が一日でも早く完成することを願っています。




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お気に入りその1710~竹内栖鳳

2018-12-07 12:33:51 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、竹内栖鳳です。

今年、札幌で開催された京都近代美術館展で、竹内栖鳳の作品を2点鑑賞しました。
「おぼろ月」の狐と「若き家鴨」のアヒル。
どちらもふわふわの毛並み表現の見事さを間近に鑑賞でき、とても満足しました。
特に「若き家鴨」は、若いアヒルたちのやわらかであたたかい感じと、多様な動きが見事に表現されていました。
竹内の代表作「班猫」はテレビでしか見たことがありませんが、猫の緑色の瞳から目が離さなくなる魅力的な作品。
その他の作品も鑑賞したくて「別冊太陽 竹内栖鳳」を購入しました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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明治初期の京都――。
西洋画の表現方法を考察しながら、日本画の伝統を革新して「新しい日本画」の確立を目指して奮闘する画家がいた。
その画家の名は、竹内栖鳳。
栖鳳の初公開を含む作品、評伝、同時代の京都の画家など多彩な内容の一冊。
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雀が大好きだったそう。
特に「チュンとさえずる雀」を描きたかったなんて、京都日本画壇を代表する大御所ながら親しみがわきます。
「田家喜雀」「百騒一睡」「雪中躁雀図」という作品には、たくさんの雀が描かれています。
おそらくは一羽として同じポーズはないでしょう。
たくさんの雀を嬉々としてスケッチしている様子が目に浮かぶようです。

他にも多くの生き物を描いていますが、シカ、ウサギ、ネズミ、軍鶏、ゴイサギ、サバはまさに絶品。
「写生と省筆」の技巧を尽くした命を感じる作品です。
生き物好きの画家は、飽きることなくスケッチを続け、その中から生き生きとしたポーズを選び、作品に仕上げていったのでしょう。

日本画の世界は、師匠の筆さばきをそのかすれ方まで再現することが求められていたそうですが、竹内栖鳳は西洋風のスケッチを取り入れた新しい日本画を目指しました。
試行錯誤の苦労の中、批判の対象にさえなったそうです。
そういうものに負けず強い信念を持って日本画の可能性を大きく広げた功績は、アッパレの一言です。
イタリアを訪れた時に描いたスケッチ「羅馬之図(ろーまのず)」と「ベニスの月」はその第一歩といえる作品。
水墨画の技術で美しい風景を描いており、和洋折衷の斬新な作品です。
すべてはここから始まったと思うと感慨深かく鑑賞しました。

さらに映画や絵葉書に興味を持っていたというエピソードも研究熱心な画家らしいと感じました。
映画は絵を動かすことができるし、絵葉書は手軽に絵を相手に届けることができるからだそうです。
どんな研究結果が出たのか、お聞きしたかったです。

改革の苦労を想像しながらの作品鑑賞は、いつもと一味違ったものとなりました。
現在の日本画の自由な表現は、ここが出発点。
そういう意味で忘れられない画集となりました。

ちなみに2019年の年賀状は竹内栖鳳の猪画。
森狙仙や円山応挙も良いのですが、それぞれ申年、戌年に使わせていただいたので、今回は最近お気に入りの竹内栖鳳にご登場いただいた次第です。
色紙にさらっと描いたようで、手間をかけた毛描きの魅力には欠けますが、省略の美を楽しめる作品です。

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