今回のお気に入りは、「腸内細菌が家出する日」です。
「あなたの体は9割が細菌」に触発されて腸内細菌に関する本をもう一冊読みました。
お気に入りの寄生虫学者・藤田紘一郎先生の著書「腸内細菌が家出する日」です。
2016年7月発行ですから「あなたの体は・・・」とほぼ同時期の発行です。
「あなたの体は・・・」以降の最新知見ではなく、長年、寄生虫や細菌との共生を研究してきた先生の見解を知りたかったのです。
内容紹介を引用します。
=====
今、あなたの体内から「腸内細菌」が家出している!
自然界との共生を忘れた人間たちに襲い掛かる自然からのシッペ返し。
腸内細菌、サンゴ、ミツバチ・・・。
3つの家出から、傲慢になった人類に起こっている逆転現象を読み解く。
・人類は健康を求めて努力しているのに、うつ病やアレルギーなどの病気が急増しているのはなぜか?
・“家出”を思いとどまってもらうため、私たちはどうしたらよいのか?
etc.
健康と人生を、意外な視点から見つめなおす、キセイチュウ博士渾身の書き下ろし。
家出を防げれば、健康も人生も思いどおりにいく!
――腸内細菌は、もう一人の私だった! ――
私たちの体は37兆個の細胞でできているとされていますが、私たちの腸の中には体細胞の27倍近い数の細菌が棲みついています。
遺伝子数だけでなく細胞数からみても、腸内細菌は「もう一人の私」なのです。
そして、それらの細菌の多くはヒトの腸でしか棲むことができないため、私たちが病気にならないよう、長く生きられるようにいろいろ工夫しています。
→そんな腸内細菌が家出してしまったら…
=====
目次
第1章 私を操っているのは誰?(「クサイ、キタナイ、キツイ、キモチワルイ」4Kの青春;「まとも」な道を踏み外したワケ ほか)
第2章 宿主をコントロールする寄生生物(アリの脳を支配する槍型吸虫;サナダムシになくて槍型吸虫にあるもの ほか)
第3章 腸内細菌は「もう一人の私」だった(腸内細菌の素顔がみえてきた;運命、健康、行動も腸内細菌が握っている!? ほか)
第4章 あらゆる病気も腸内細菌しだい(あなたの腸内細菌を決定するものは何か;選ばれし4種類の腸内細菌たち ほか)
第5章 腸内細菌が家出する日(海のお花畑が消えていく…;グレート・バリア・リーフに迫る危機 ほか)
=====
本書は先生自身の研究生活を振り返ることから始まります。
若い頃、トキソプラズマという細菌を研究していて注射針を自分の指に刺す失敗から自らも感染。
それから性格が変わったそうです。
元々はおとなしくて慎重な性格だったのに、妙に楽観的な性格に変わってしまい、寄生虫学を研究することになったそうです。
親からは寄生虫学をやるなら勘当だと言われ、教授からはトランプばかりしていたため研究室から追い出され、
アメリカの研究機関が奇跡的に拾ってくれたおかげで今があるそう。
その後は寄生虫の研究に没頭する訳ですが、早くから寄生虫が全て悪ではなく、寄生虫と共生することが利益を生む場合もあることを主張していました。
自身もサナダムシを体内に飼っており、ダイエットだけでなく、花粉症やアトピーの予防にも効果があるそうです。
そんな博士ですから腸内細菌との共生にも精通しており、自身の古くからの主張が補強されてうれしかったと思います。
世界中でいろいろ研究が進められ、新たな発見が相次いでいることを報告しています。
結局、腸内細菌は指紋のように人それぞれ異なり、自分の腸内細菌を守ることが健康を保つ上でとても重要だと述べています。
そして「酢タマネギ」のレシピを載せ、これを毎日摂ることで自衛できると提案しています。
これこそ「あなたの体は9割が細菌」に欠けていた大切なピースです。
危ない! 気を付けろ! と声をかけるだけでなく、どういう対策をすれば良いかを身近な例で紹介してくれるのは、さすが藤田博士です。
これを知っただけで読んだ甲斐があるというものです。
高コレステロール、高血圧、糖尿病などで定期的に病院に行っている知人が何年も前から酢タマネギを食べていることは知っていましたが、普通の人が腸内環境を整える上でも効果があるのですね。
早速やってみようと思います。
なお本書ではさらにサンゴの白化現象やミツバチの失踪事件にも触れています。
サンゴは褐虫藻と共生してしており、サンゴがプランクトンを食べた後の排泄物を褐虫藻が栄養として吸収し、褐虫藻が光合成で得た栄養をサンゴが吸収しています。
地球温暖化で海水温が褐虫藻が耐えられない温度まで上がることで、褐虫藻が出て行き、やがてサンゴも死ぬのです。
ヒトも腸内細菌に消化吸収や栄養素生成、雑菌からの防御などを外注しているのですから、腸内細菌に出て行かれては、健康を維持できず、死を早めることになります。
まさにサンゴとヒトは共生生物に生かされている者同士なのです。
そしてミツバチ。
北米で起きたミツバチ失踪事件はまだ記憶に新しいと思います。
博士の見解は、ミツバチの腸内細菌に変化があったことが失踪の原因だというのです。
ミツバチによる果物などの受粉は必要不可欠な作業です。
博士はアーモンドを例にして説明していますが、米国のアーモンド農家の受粉作業は規模が大きく、膨大な数のミツバチが投入されます。
アーモンドが終われば次の作物、そして、また次へとミツバチは大忙し。
あまりに蜜や花粉の種類が偏り過ぎたためミツバチの腸内細菌が大きく変化してミツバチの健康を保てなくなったと推察します。
ナルホド、毎日ラーメンばかり食べていて病気になったということですか。
一理あるなと思いました。
ここで本書を読んで良かったと思うことをもう二つ挙げて終わりたいと思います。
一つ目は「本当の自分」などいないということ。
いるのは細菌と共生している自分だけ。
ヒトの細胞数と遺伝子数をはるかに超える細胞数と遺伝子数をもつ腸内細菌はヒトの性格まで左右するもう一人の自分といえます。
二つ目はヒトの進化についてです。
ヒトの腸内細菌はチンパンジーよりかなり多いそうです。
腸内細菌が自分で消化できないものを消化したり、自分で生成できない栄養素を生成してくれるため、ヒトは余力ができて脳を発達させることができたというのです。
ヒトへの進化の秘密が腸内細菌にあるというのは新たな見解ですし、とても説得力があります。
藤田先生、たくさんの新たな知見をお教えいただきありがとうございました。
「あなたの体は9割が細菌」に触発されて腸内細菌に関する本をもう一冊読みました。
お気に入りの寄生虫学者・藤田紘一郎先生の著書「腸内細菌が家出する日」です。
2016年7月発行ですから「あなたの体は・・・」とほぼ同時期の発行です。
「あなたの体は・・・」以降の最新知見ではなく、長年、寄生虫や細菌との共生を研究してきた先生の見解を知りたかったのです。
内容紹介を引用します。
=====
今、あなたの体内から「腸内細菌」が家出している!
自然界との共生を忘れた人間たちに襲い掛かる自然からのシッペ返し。
腸内細菌、サンゴ、ミツバチ・・・。
3つの家出から、傲慢になった人類に起こっている逆転現象を読み解く。
・人類は健康を求めて努力しているのに、うつ病やアレルギーなどの病気が急増しているのはなぜか?
・“家出”を思いとどまってもらうため、私たちはどうしたらよいのか?
etc.
健康と人生を、意外な視点から見つめなおす、キセイチュウ博士渾身の書き下ろし。
家出を防げれば、健康も人生も思いどおりにいく!
――腸内細菌は、もう一人の私だった! ――
私たちの体は37兆個の細胞でできているとされていますが、私たちの腸の中には体細胞の27倍近い数の細菌が棲みついています。
遺伝子数だけでなく細胞数からみても、腸内細菌は「もう一人の私」なのです。
そして、それらの細菌の多くはヒトの腸でしか棲むことができないため、私たちが病気にならないよう、長く生きられるようにいろいろ工夫しています。
→そんな腸内細菌が家出してしまったら…
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目次
第1章 私を操っているのは誰?(「クサイ、キタナイ、キツイ、キモチワルイ」4Kの青春;「まとも」な道を踏み外したワケ ほか)
第2章 宿主をコントロールする寄生生物(アリの脳を支配する槍型吸虫;サナダムシになくて槍型吸虫にあるもの ほか)
第3章 腸内細菌は「もう一人の私」だった(腸内細菌の素顔がみえてきた;運命、健康、行動も腸内細菌が握っている!? ほか)
第4章 あらゆる病気も腸内細菌しだい(あなたの腸内細菌を決定するものは何か;選ばれし4種類の腸内細菌たち ほか)
第5章 腸内細菌が家出する日(海のお花畑が消えていく…;グレート・バリア・リーフに迫る危機 ほか)
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本書は先生自身の研究生活を振り返ることから始まります。
若い頃、トキソプラズマという細菌を研究していて注射針を自分の指に刺す失敗から自らも感染。
それから性格が変わったそうです。
元々はおとなしくて慎重な性格だったのに、妙に楽観的な性格に変わってしまい、寄生虫学を研究することになったそうです。
親からは寄生虫学をやるなら勘当だと言われ、教授からはトランプばかりしていたため研究室から追い出され、
アメリカの研究機関が奇跡的に拾ってくれたおかげで今があるそう。
その後は寄生虫の研究に没頭する訳ですが、早くから寄生虫が全て悪ではなく、寄生虫と共生することが利益を生む場合もあることを主張していました。
自身もサナダムシを体内に飼っており、ダイエットだけでなく、花粉症やアトピーの予防にも効果があるそうです。
そんな博士ですから腸内細菌との共生にも精通しており、自身の古くからの主張が補強されてうれしかったと思います。
世界中でいろいろ研究が進められ、新たな発見が相次いでいることを報告しています。
結局、腸内細菌は指紋のように人それぞれ異なり、自分の腸内細菌を守ることが健康を保つ上でとても重要だと述べています。
そして「酢タマネギ」のレシピを載せ、これを毎日摂ることで自衛できると提案しています。
これこそ「あなたの体は9割が細菌」に欠けていた大切なピースです。
危ない! 気を付けろ! と声をかけるだけでなく、どういう対策をすれば良いかを身近な例で紹介してくれるのは、さすが藤田博士です。
これを知っただけで読んだ甲斐があるというものです。
高コレステロール、高血圧、糖尿病などで定期的に病院に行っている知人が何年も前から酢タマネギを食べていることは知っていましたが、普通の人が腸内環境を整える上でも効果があるのですね。
早速やってみようと思います。
なお本書ではさらにサンゴの白化現象やミツバチの失踪事件にも触れています。
サンゴは褐虫藻と共生してしており、サンゴがプランクトンを食べた後の排泄物を褐虫藻が栄養として吸収し、褐虫藻が光合成で得た栄養をサンゴが吸収しています。
地球温暖化で海水温が褐虫藻が耐えられない温度まで上がることで、褐虫藻が出て行き、やがてサンゴも死ぬのです。
ヒトも腸内細菌に消化吸収や栄養素生成、雑菌からの防御などを外注しているのですから、腸内細菌に出て行かれては、健康を維持できず、死を早めることになります。
まさにサンゴとヒトは共生生物に生かされている者同士なのです。
そしてミツバチ。
北米で起きたミツバチ失踪事件はまだ記憶に新しいと思います。
博士の見解は、ミツバチの腸内細菌に変化があったことが失踪の原因だというのです。
ミツバチによる果物などの受粉は必要不可欠な作業です。
博士はアーモンドを例にして説明していますが、米国のアーモンド農家の受粉作業は規模が大きく、膨大な数のミツバチが投入されます。
アーモンドが終われば次の作物、そして、また次へとミツバチは大忙し。
あまりに蜜や花粉の種類が偏り過ぎたためミツバチの腸内細菌が大きく変化してミツバチの健康を保てなくなったと推察します。
ナルホド、毎日ラーメンばかり食べていて病気になったということですか。
一理あるなと思いました。
ここで本書を読んで良かったと思うことをもう二つ挙げて終わりたいと思います。
一つ目は「本当の自分」などいないということ。
いるのは細菌と共生している自分だけ。
ヒトの細胞数と遺伝子数をはるかに超える細胞数と遺伝子数をもつ腸内細菌はヒトの性格まで左右するもう一人の自分といえます。
二つ目はヒトの進化についてです。
ヒトの腸内細菌はチンパンジーよりかなり多いそうです。
腸内細菌が自分で消化できないものを消化したり、自分で生成できない栄養素を生成してくれるため、ヒトは余力ができて脳を発達させることができたというのです。
ヒトへの進化の秘密が腸内細菌にあるというのは新たな見解ですし、とても説得力があります。
藤田先生、たくさんの新たな知見をお教えいただきありがとうございました。