鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1909~100分de名著③

2020-03-30 12:50:25 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、100分de名著③です。

100分de名著のテキスト「歎異抄」を読みました。

「絶体絶命の時に浮上する言葉」
というコピーも魅力的ですが、解説者・釈徹宗の前書きにも引き込まれました。

・親鸞が亡くなって30年、解釈が異なってきたことを嘆き、弟子の唯円が師との会話をまとめたのが「歎異抄」。
・元本はわずか原稿用紙30枚程度でとても短い。
・書かれて700年大切に伝えられてきた。
・近年でも西田幾多郎、遠藤周作、司馬遼太郎などをはじめとする多くの人々から高く評価されている。
・「善人でさえ往生できる。ましてや悪人ならなおさらだ。」という逆転の発想が面白い。
・本書ではわずか18条を1条ずつ解説する。

遠藤周作はキリスト教徒のはずなのにどうして「歎異抄」なのか?と疑問に思いつつ本書を読み進めていくと、浄土真宗の教義がキリスト教プロテスタントにかなり近いということを知りました。
西洋と東洋で別々に生まれた教義が驚くほど似ているということは、人間の本質を突いているからに他なりません。
当時の宣教師が驚いた、という記録がしっかり残っているそうです。
遠藤周作が「歎異抄」に興味を持ち、やがて高く評価することになった理由が判ったような気がします。

という小さなことよりもっと大きな疑問があります。
それは「歎異抄」のコピー「絶体絶命の時に浮上する言葉」です。
「絶体絶命の時」「絶望のどん底」で一筋の光明となって胸に蘇る言葉とは?
その言葉を早く知りたくて読み進めました。

第1条、第2条・・・・やはり難解です。
普通の読書のようにサラサラとは読めません。
何度も同じところを読み返し、何とか意味が理解できると次に進みます。
そしてそこにも新しい単語、新しい解釈が登場します。
そしてそれらを組み合わせた新しい教義が登場します。
脳内メモリはあっという間に容量オーバー。
新しいデータが入力されると、古いデータに上書きされます。
途中で放棄したくなりましたが、筋肉と同じで、鍛えている内に脳内メモリが増えていくことを期待して読み続けました。

そして途中でひらめきました。
なぜ無人島に持って行くなら「歎異抄」と言われるのか、その理由が判ったような気がしたのです。
本書の“妙な難解さ”がポイントなのだと思います。
表面的に理解した気になりますが、同時にまだ真意を理解していないという確かな実感があります。
だからこそ何度も何度も繰り返し読むのでしょう。
生涯真意にたどり着くことはないでしょうが、読み返す度、アリの一歩でも近づくことを喜びとして読み返すのでしょう。
それが「無人島に持って行くなら歎異抄」の答えでしょう。

・・・などと字面を追いながら余計なことを考えていました。
気が付けば第18条、そしてあとがきの解説も読み終えました。
結局、これだ!という明確な「絶体絶命の時に浮上する言葉」には巡り会えませんでした。
繰り返し読んで理解を深め、心に刻まれたときに初めて「絶体絶命の時に浮上する言葉」となるのでしょう。

ということで、今回は「歎異抄」とはどういう本なのかを知ることができたということで良しとしたいと思います。
その内、本格的に読みたくなったら解説者・釈徹宗さんの解説書を読むことにしましょう。

ここでいつもは書き終わりですが、続きを少々。
「歎異抄」に続き100分de名著のテキスト、三木清「人生論ノート」を読みました。
高校生のときに読んだ本のガイドなので、当時よりは理解が深いだろうし、当時の記憶がよみがえるかな、などと呑気に読み始めましたがトンデモナイ!
哲学者が哲学書を解説するとこうも難解になるのか!という見本です。
理解の及ばないところはテレビ放送を参考にすると何とかなるかも、というレベルではありません。
文字通りただ字面を追いながらページをめくり半ばを過ぎても全く理解できません。
絶望の中、AMAZONの内容紹介を目にしました。
=====
死について、幸福について、懐疑について、偽善について、個性について、など23題――
ハイデッガーに師事し、哲学者、社会評論家、文学者として昭和初期における華々しい存在であった三木清の、肌のぬくもりさえ感じさせる珠玉の名論文集。
その多方面にわたる文筆活動が、どのような主体から生れたかを、率直な自己表現のなかにうかがわせるものとして、重要な意味をもつ。
=====
そうですか、論文集だったのですか・・・。
「歎異抄」以上に難解で、繰り返し読んでも理解が深まる気がしません。
残念ですが中途で脱走することにします。
脱走は「ビリーズ・ブート・キャンプ」以来かな。
次は身の丈に合ったものを読むことにしましょう。

気になるのは高校生の自分が「人生論ノート」を読み切ったのか、ということ。
同時期に「どくとるマンボウ航海記」を読んで夢中になったことはよく覚えています。
「人生論ノート」の一節も記憶にないということは、今回のように途中で脱走したのではないかと思います。




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お気に入りその1908~絵本3冊

2020-03-28 12:15:41 | 鬼平
今回のお気に入りは、絵本3冊です。

絵が美しい上、子どもたちの科学する心を満足させる絵本を3冊ご紹介します。

①「とりになったきょうりゅうのはなし 改訂版」大島英太郎

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
絶滅したと思われている恐竜は、実は姿を変えて今も生きています――それは「鳥」です。
恐竜には、体が小さく羽毛や翼を持つものがいました。
そして恐竜が絶滅しても、「翼を持ち飛ぶことの出来る恐竜」の子孫だけが生き残りました。
それが、鳥なのです。
近年発掘の相次ぐ「羽毛恐竜」の化石から証明された、恐竜と鳥の関係を、絵本の形で生き生きと描き出しました。
子どもたちは、身近な鳥と、太古の恐竜とのつながりに驚き、壮大な時の流れに思いを馳せることでしょう。
なお、最近では、化石の状態が良ければ、恐竜の色や模様も推定できるようになりました。
この度、これらの最新研究を反映させて内容を改め、真鍋真氏による解説文も新たに書き下ろした“改訂版”を刊行します。
一部の恐竜の絵柄には、判明した色や模様を描きました。
巻末解説には、恐竜研究の歴史や、最新の研究結果が盛り込まれています。
恐竜の「今」を知ることができる一冊です。
=====

大島英太郎さんという方の絵本を初めて読みました。
主に鳥や昆虫、恐竜の科学絵本を制作しているそうです。
本書は、年々研究が進む恐竜について最新の知見を加えて改訂したばかりというので、期待して読みました。
恐竜から現在の生き物までがとても細密に描かれています。
そして最新研究により解明された色彩や模様も正確に再現されています。
本書に登場する生き物たちは特に名前が紹介されずにお話は終わりますが、そのすべての名前は巻末で紹介されています。
子どもたちにシンプルに伝えることは大切ですが、親たちに正確に伝えることも大切だという作者のこだわりを感じます。
この方の他の作品を鑑賞したくて「きょうりゅうのおおきさってどれくらい?」を注文しました。
恐竜研究の急速な進歩はこれからも目が離せません。
それを肌で感じながら成長していくであろう子どもたちがうらやましいです。

②「いのちのひろがり」中村桂子・著、松岡達英・画

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
庭にいるアリとわたしたち人間は仲間です。
魚も、草や木も、キノコやコケ、細菌も、すべて仲間です。
なぜかといえば、地球上にいるすべての生きものたちのはじまりは、もともと38億年前に生まれた、ひとつの細胞だからです。
つぎつぎと仲間を生み出しながら、わたしたちへ受けわたされてきた「いのち」の物語を描きます。
=====

生命科学の伝道師・中村先生とお気に入りのイラストレーター松岡達英という名コンビ。
期待して読みました。
これまで目にしてきた松岡氏の細密イラストに比べ、ラフに描いていました。
現在地球上にいる多種多彩な生き物のすべてが、たったひとつの細胞から進化した末裔であり、仲間なのだということを、進化の過程を含めて紹介しています。
それぞれの時代の生き物がたくさん登場します。
これだけのボリュームのイラストを描くのですから、すべてを細密に!と要求するのは酷です。
たくさんのイラストを堪能できて良かったです。
そしてお母さんのお腹から生まれた「あなた」も、たったひとつの細胞から進化した末裔であり、現在地球上にいる生き物すべてと仲間なのです、という壮大で素敵なストーリーは子どもたちの心に響いたことでしょう。
思った通りの素敵な絵本でした。

③「ひがんばな」甲斐信枝

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
古くから多くの愛称で親しまれるひがんばなは、不思議な植物です。
球根から茎を伸ばし、葉も出さずにいきなり花を咲かせます。
花びらは咲き終わっても散らず、茎を立たせたまま、養分を球根に吸い戻します。
そして次の夏までは、葉を茂らせて新しい球根を育てます。
球根は地中でどんどん増え、秋のお彼岸の頃に一気に茎を伸ばして、一斉に見事な花を咲かせるのです。
ひがんばなの知られざる生長を、まばゆいばかりに鮮やかに描きます。
=====

甲斐信枝さんの「雑草のくらし ~あき地の五年間」は凄い絵本でした。
畑の跡地を5年間に渡り観察し続け、その様子を克明に記録した絵本です。
1年目、2年目、3年目・・・、毎年様相がどんどん変わります。
徐々に背の高い草が優勢になったかと思うと、つる草が巻き付いてその上を行きます。
さらに地下茎に蓄えた栄養を元に春から一気に成長を遂げる草が優勢になると、最後に大どんでん返しが待っているというお話。
どんな結末かはぜひ手に取ってお読みください。
いつもなら気に入った作家の絵本は何冊か読むのですが、甲斐さんのは躊躇していました。
透明水彩で描いたような淡い色彩のため、色弱の目にはぼやぼやとしか見えなかったのです。
そこへいくと今回の「ひがんばな」はクッキリ鮮やかな色彩。
これなら安心して鑑賞できると思い、手に取りました。
予想通り鮮やかな赤い花びらが無数に描かれています。
花びらの裏側が同色でないことを初めて知りました。
そして信じられないくらいたくさんの呼び名があることや、球根を分裂させて子孫を増やすことも知りました。
何より花が枯れるとその養分を球根に吸い戻すことや、地上に掘り出されても球根が根を伸ばし球根自身を地中に引きずり込むことを知り、面白かったです。
さすがは甲斐さん、ヒガンバナのことを丹念に調べ、観察した見事な科学絵本です。
満足満足。


こういう素敵な絵本を子どもたちと一緒に読む機会がなかったことが残念です。
子どもたちが小さい頃は仕事仕事で時間がありませんでした。
若いお父さんお母さんには、両立は大変でしょうが、子どもたちに良質の絵本を読み聞かせしてあげて欲しいです。






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お気に入りその1907~夏子の酒②

2020-03-25 12:14:53 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、夏子の酒②です。

「夏子の酒」のモデルになった久須美酒造のお酒を味わいたくて行きつけの地酒屋さんに行きましたが1本も置いていませんでした。
仕方なくネットで注文することにしました。
地酒屋さんだと並んでいる中から選ぶのですが、ネットだと全銘柄から選ぶことになります。
「夏子が苦労して古の酒米を復活させ、至高の銘酒を完成させた」という物語。
その「至高の銘酒」は、現実世界では酒米「亀の尾」を使用した純米大吟醸「亀の翁」に該当するようです。
普段飲んでいる晩酌用の酒に比べかなり高価で、北海道までの送料を含めると四合瓶なのに6000円近くになります。
私にはちょっと贅沢すぎ。
でも作中の酒に近いものを実際に味わうなんて滅多にできない経験。
さて、どうしましょう? 

これに似た経験はこれまで2度ありました。
・2001年、ニッカウヰスキー余市蒸溜所のシングルカスク10年が初めて世界一に輝いたときに販売したウイスキー
・イギリスの冒険家シャクルトンが南極に残し近年発見されたウイスキーを2012年にブレンダーが再現したウイスキー
どちらも奮発して購入し、感激しながら味わったものです。
ニュースや本で知ったお気に入りの情報を味覚で立体化することができてとてもラッキーな経験でした。
こういう場面は滅多に訪れるものではありません。
この20年間で2度、そして今回が3度目です。
こういう時は奮発しましょう!

◎ 久須美酒造 清泉 純米大吟醸「亀の翁」

yahooショッピングの商品説明を引用します。
=====
「清泉」の看板的商品「亀の翁」純米大吟醸。
「亀の尾」の40%精米を使用した純米大吟醸を約2年間冷蔵貯蔵した限定酒です。
原料米:亀の尾
精米歩合:40%(全量自家精米)
アルコール:16度
仕込水:新潟県名水指定の自家湧水
容量:720ml
冷蔵庫出年月:2019年10月
製造年月:2018年2月
=====

ついに届きました。
「夏子の酒」の登場人物になったつもりで利き酒の真似事をしました。
まずは冷で。
これは美味しい!
うま味たっぷりの上、程よい酸味があるので飲み飽きない酒です。
なぜか樽酒のような杉の香りも感じられます。
うま味と醸香香は余韻が長いです。
続いてぬる燗で。
酸味が弱まり、香りとうま味が増しました。
ますますスイスイいけます。
上原先生の「酒は純米、燗ならなおよし」という名言が浮かびます。

原作通り大粒の「亀の尾」を自家精米して真珠のように仕上げているのかな?
原作通り仕込みの手順は手間を惜しまずにやっているのかな?
などと原作の感動場面を思い出しつつ味わいました。

もう一本燗をつけたいな・・・。
いやいや四合瓶が空になっちゃう。
我慢してもうひと晩楽しむことにしました。

原作通りの「至高の銘酒」かはわかりませんが、抜群に美味しいお酒であることは確か。
「夏子の酒」の感動を味覚で立体化することができました。
この20年で3度目の奮発もその甲斐があったというものです。
良かった、良かった。

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お気に入りその1906~渡辺可久②

2020-03-23 12:19:31 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、渡辺可久②です。

渡辺可久さんの細密な博物画をたくさん鑑賞したくて「海のさかな」に続き、「川のさかな」という図鑑絵本を鑑賞しました。

出版社の内容紹介を引用します。
=====
アユやイワナ、コイ、サケなど、日本の川や湖にすむさかな100余種を、すむ環境とともに精密な絵で紹介した楽しい絵本図鑑。
=====

カスタマーレビューでどなたかが「海のさかな」に比べ「川のさかな」は色が地味、という感想を書いていました。
これまで考えてもいませんでしたが、まさにその通り。
海の環境、特に熱帯ではサンゴ礁などがカラフルなため、魚もカラフルになったのでしょう。
また深海では赤い色が保護色になっていることも魚をカラフルにした理由でしょう。
さらに色彩ではありませんが、サンゴ礁や深海では形態も奇抜です。

それに比べ川には魚をカラフルにしたり形態を奇抜にする環境がありません。
せいぜい婚姻色で派手になるくらいかな。
だから川の魚って地味なんだと、まるで新発見のように納得しました。

さて本書は「海のさかな」と同じく住む環境ごとに魚を紹介しています。
河口付近、下流域、中流域、上流域。
流れのゆるいところでは、川底に泥が溜まりエサとなる生き物がそこに隠れており、それを探すためにヒゲの生えた魚が多いこと、草やコケを食べる魚は意外と少ないことなども新発見でした。
他にも寒い地域の魚、暖かい地域の魚、琵琶湖の固有種、外来種、世界の珍種なども紹介されており、楽しく読むことができました。
そうそう、北海道のウグイが本当はエゾウグイという名だったことも新発見でした。

細密画に添えられた文章も面白かったです。
とくに冒頭部分。
=====
太古の昔、植物が上陸し徐々に繁栄し始めると、植物をエサとする昆虫が上陸しました。
そして昆虫をエサとする昆虫や空を飛ぶ昆虫が現れ、昆虫も繁栄します。
やがてエサとなる昆虫を追って魚が川に入り込み、ついには内陸の湖にまで達しました。
=====
これまで川の魚の始まりについて考えたことがなかったのでとても面白く読みました。

本書の発行年は「海のさかな」の4年後。
これだけ年数があいているということは最初から企画されていたのではなくて、「海のさかな」が好評だったので続編が要望されたということでしょう。
大人の図鑑と同等レベルの細密画に興味深く読ませる文章が添えられているのですから当然です。
これぞ作家の実力の賜物!
奇抜さで目を引く企画モノと全く違います。
今回こういう「ホンモノ」に巡り会えてラッキーでした。

これまで手仕事の見事な絵本や図鑑などをいろいろ鑑賞してきましたが、まだ巡り会っていない作家がたくさんいるんでしょうね。
これから先もそういう作家たちとの出会いがあることでしょう。
とても楽しみです。

(おまけ)
渡辺可久さんと前後してその存在を知った絵本作家かこさとしさんについて。
かこさんを取り上げたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」を観ました。
偶然にも亡くなる直前の取材でした。
DVDには亡くなった後に「みずとはなんじゃ」が完成し出版されたことを伝えるミニ番組も収録されていました。
文章を仕上げたが絵を仕上げることができずに亡くなったかこさん。
絵本作家・鈴木まもるさんの描いたラフに修正を加えたかこさん。
鈴木さんはかこさんが亡くなった後、作品の中にかこさんを描き加えて仕上げました。
私たちを含めた生き物すべてに必要な水を汚さないようにみんなで守ろう!というかこさんのラストメッセージは「みずとはなんじゃ」を通じてこの先何年も何十年も子どもたちの心に届くことでしょう。
ただひたすら子どもたちのために、という願いが宿った絵本はどれも感動を呼びます。


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お気に入りその1905~原田マハ

2020-03-20 11:30:30 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、原田マハです。

原田マハのアート小説がお気に入りです。
今回読んだのは、これまでにない試みの短編集でした。

「20 CONTACTS 消えない星々との短い接触 20」

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
私はある日、私からの挑戦状を受け取った。
――20名の巨星との〈接触〉を開始すべし。

『楽園のカンヴァス』でルソーを、『ジヴェルニーの食卓』でモネを、『暗幕のゲルニカ』でピカソを、『たゆたえども沈まず』でゴッホを描いてきたアート小説の第一人者・原田マハが、キュレーターとして自身初となる展覧会を企画。
それに合わせ、以下20名の著名アーティストの真髄に迫る20作品を書き下ろしました。

猪熊弦一郎、ポール・セザンヌ、ルーシー・リー、黒澤明、アルベルト・ジャコメッティ、アンリ・マティス、川端康成、司馬江漢、シャルロット・ペリアン、バーナード・リーチ、濱田庄司、河井寛次郎、棟方志功、手塚治虫、オーブリー・ビアズリー、ヨーゼフ・ボイス、小津安二郎、東山魁夷、宮沢賢治、フィンセント・ファン・ゴッホ――。

アート、文学、映画、マンガ……
巨匠たちの創作の秘密を解き明かす、10年ぶりの書き下ろしアート短編集誕生!
=====
どの物語を読んでも、ふたりの間に流れる親密な時間と愛情に満ちたやりとりに、つい笑みがこぼれてしまう。
そして、巨匠と呼ばれた彼らの佇いや声色、人柄までもがじわりと伝わってきて、あたかもそのひとりひとりと握手を交わし、ハグしたような気分になる。
世間からもてはやされるセレブリティとしての彼らではなく、素顔の彼らと。
林寿美(CONTACT つなぐ・むすぶ日本と世界のアート展キュレーター)
=====

清水寺のアート展を著者自らが監修したそうで、本書はそのガイドブック的な短編集です。
20名のアーティストを著者が訪ねて、二つだけ質問をする、という設定。(もちろん架空の話)
画家だけでなく、版画家や漫画家、さらに童話作家や映画監督、果てはイス作家まで、国の内外を問わずいろいろな分野のアーティストが登場します。
わずか数ページとまさに掌編で、そのアーティストの人となりや作品への想いをサラサラと読むことができます。
アーティストが葛藤する場面や小難しい芸術論が出てこない分、読後に何も残らないといえばそれまでですが、そのアーティストについて興味を持ったことも確かです。
猪熊弦一郎をはじめ、作品を知らないアーティストが1/3ほどもいたため、調べながらの読書となりました。
毎回思うのですが、アート小説には代表的な作品数点だけでも写真を掲載して欲しいと思います。

清水寺のアート展にはどんな風に作品を並べたのかな。
本書と併せて鑑賞したかったです。

さて次は「風神雷神」です。
こちらは分厚い単行本上下巻。
読み始めるのに気合が必要です。
さあいつから読み始めようかな。


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お気に入りその1904~夏子の酒

2020-03-18 12:28:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、夏子の酒です。

純米酒「大七純米生もと」を味わいながら、上原浩著「純米酒を極める」やコミック「夏子の酒」を読む、という至福の時間を楽しみました。

「純米酒を極める」
日本酒はもともと純米酒だけ、醸造用アルコールを添加したものは清酒と呼ぶべき!
業界を忖度なく一刀両断してみせる上原浩氏の主張を久しぶりに読みました。
その歯に衣着せぬ見事さに、清々しささえ感じました。
そうそう、著者のこの気迫を感じたかったのです!
本書は一度処分したのですが、ずっと後悔していて、ついにこの度再購入しました。

そしてその上原氏が登場するというコミック「夏子の酒」。
30年ほど前に発行され話題になりましたが、読むのは今回が初めて。
待望の上原氏は途中で登場し、最後まで場を盛り上げました。
作中に登場する上原氏本人の人柄が「純米酒を極める」の文章そのままで驚きました。
そして主人公の夏子の酒造りにかける姿勢は、上原氏と重なるくらい真っ直ぐです。
身近な人々と衝突、対立を繰り返しつつ前進を続けます。
幻の酒米を復活させ、ついに至高の銘酒が誕生します。
この道40年の上原氏が
 非の打ち所がない酒にこれまで2度お目にかかった。
 今回で3度目だ。
と言った場面は実に感動的でした。
そして杜氏の死も。
なるほど、これはドラマになる訳だ!
四半世紀も前のドラマだけど、お気に入りの和久井映見さんが主演しているそうなので見ようかな。

最後におまけをひとつ。
「夏子の酒」は「純米酒を極める」に近い感動を得られる素敵な作品でした。
ならば「夏子の酒」のモデルになった久須美酒造のお酒を味わいたくなるというのが人情というもの。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため不要不急の外出を控えるようにと北海道知事から要請が出ていますが、近々行きつけの地酒屋さんに久須美酒造のお酒があるかどうか偵察に行こうと思います。

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お気に入りその1903~100分de名著②

2020-03-16 12:33:41 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、100分de名著②です。

100分de名著のテキスト、ダーウィン「種の起源」を読みました。
ダーウィンだけでなく同時代のリンネやメンデルも登場し、学ぶところが多かったです。
選んで良かった!

リンネは生物の標準的な個体を分類しました。
その際、標準から外れた個体をノイズとして無視しました。
ダーウィンは、標準から外れた個体をノイズとは考えませんでした。
生物は常に多様化しており、環境に適した個体が生き残ると考えたのです。
そしてこれが多くの世代を経ることで全く違う生物種になるという進化論を提唱しました。
残念ながら当時すでに発表されていた遺伝の法則(メンデル)は進化論に組み入れられませんでした。
なぜなら遺伝の法則は「種の起源」発表後40年以上も埋もれており、その後に再発見されたのですから仕方がありません。
もしダーウィンが遺伝の法則を知っていたら、進化論の内容はもっと自信に満ち溢れたものになってかもしれません。

当時はキリスト教の教えにより、この世界のすべては神が創ったものであり、例えば化石はそういう形の石として神が創ったというのが定説でした。
そこへ進化論をぶつけるのですから、「種の起源」の半分以上が反論を想定しての補足解説だったのはやむを得ないことだったでしょう。

この「反論を想定して用意された補足解説」がまた随分と面白いそうです。
推論の進め方が実に論理的で、まるで推理小説を読んでいるようだといいます。
その明晰な論理展開から、ダーウィンは“科学者の中の科学者”といわれているそうです。

進化論は同時代のウォーレスとどちらが先かということがしばしば話題になりますが、アイデアだけならまだしもアイデアを補強するための山のような論証にかけてはダーウィンの足元にも及ばないそうです、。

以上のようなことが書かれていました。
そして最も重たく受け止めたのは次の考えです。

=====
この世界に存在する生物はどれもたった一種類の生物(元祖生物?)が多様化の末、姿を変えたものである。
したがってどの生物も平等に元祖生物?の子孫であり、生物間に上等も下等もない。
またすべての生物は進化の最先端にいるといえる。
人間だけが最も進化した生物という考えは思い上がりであり、誤りである。
=====

何という明確な論理でしょう。
以前読んだ手塚治虫の「火の鳥」を思い出しました。
ある星でナメクジのような生物が高度な文明を築きますが、星全体が高温乾燥気候になり、その生物は滅亡します。
彼らの最期の言葉は「神はなぜ我々のような高等生物を見捨てるのですか?」でした。
これを読んで、神にとって生物に高等も下等もないということを思い知らされたものでした。
この「神」を「自然」に置き換えると進化論と同じ。
自然にとって、生物に高等も下等もないのです。

ダーウィンと手塚治虫。
すごい人同士って、こういうところでつながるのですね。



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お気に入りその1902~100分de名著

2020-03-13 12:13:01 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、100分de名著です。

NHKの人気番組“100分de名著”のテキストは、取り上げた元本の内容をコンパクトに紹介している上、どこが魅力的なのかをその背景を交えて解説してくれるのでとても気に入っています。
過去のブログを調べると、これまで5冊読んでいました。
今までで一番印象深かったのは、内村鑑三「代表的日本人」。
新渡戸稲造の「武士道」とともに、明治の知識人の思考の深さや人間の大きさを実感したものです。

今回また100分de名著のテキストを読みたくなり、数ある名著の中から次の3冊を選びました。
「種の起源」ダーウィン
「歎異抄」
「人生論ノート」三木清

選んだ理由を手短に書きます。

「種の起源」
以前、米国のある州では進化論を教えないと聞き、現代において科学より宗教を優先させるとは信じられない!と衝撃を受けましたが、ふっと考えてみると進化論に全幅の信頼を寄せるほど正しく理解していないことに気づきました。
そこで選んだのが本書。
進化論の本家ダーウィンの「種の起源」から出直しです。

「歎異抄」
以前から新聞広告の「無人島に一冊だけ持って行くなら歎異抄」というコピーが気になっていました。
父の葬儀にあたり、我が家の宗派が浄土真宗本願寺派、いわゆるお西であることを知りました。
その宗派の開祖・親鸞の教えが「歎異抄」に書かれているそうです。
よかった! これで読むキッカケができました。
この手の本は難解なものが多いので、できるだけ噛み砕いて解説してくれているといいな。

「人生論ノート」
まだ読書習慣がなかった高校時代に読んだはずですが、内容をさっぱり覚えていません。
オレンジ色の背表紙の薄っぺらな文庫本だったことだけを覚えています。
100分de名著の中にタイトルを見かけ、懐かしくなって、つい買ってしまいました。
高校生の自分が本書を読んで何を感じたのかを思い出せるといいな。
それとも40年以上経ったせいで思い出せないかな?

さてさて今回の3冊の中に「代表的日本人」を上回る面白い本があるでしょうか。
とても楽しみです。

まずは「種の起源」からスタートです。

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お気に入りその1901~加古里子②

2020-03-11 12:21:02 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、加古里子②です。

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として不要不急の外出をひかえ、最近はテレビを観たり読書をしたりして過ごしています。
どちらかというとインドア派なのでストレスはありません。

さて今回ご紹介するお気に入りは、加古里子の科学絵本「人間」。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
人間とは何か、なぜ生まれてきたのか、その身体はどのように作られているのか?
ビッグバンから現在までの人間の歴史を縦糸に、人体の構造・文化史を横糸として織りこみ綴った絵本。
=====
出版社からのコメント
51ページの薄い絵本ですが、内容は「生き物の歴史」「人間の歴史」「人体の不思議」「人類の社会的側面」などまるで1冊の図鑑のように充実しています。
読み聞かせもできますが、興味の持った部分から少しずつ楽しんでいくように絵本を味わうこともできるような本です。
=====
内容(「MARC」データベースより)
人間を地球に現れた生物の一つとして、生物の歴史の流れの中で、人間の発生を描く。
そして、人間の成長と、身体各部の機能を簡潔に示し、人間のつくってきた社会と活動について説明。
「人間」を真正面にとらえた絵本。
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本書は前回読んだ「地球」よりも16年後、1995年の発行です。
「地球」の頃は失礼ながら絵が下手でしたが、「人間」ではまるで別人のように上手になっています。
きっと懸命に練習を重ねたのでしょう。
子どもたちに伝えたいという熱い気持ちが感じられ、このことだけでも感動します。

本書は人間のすべてを描いてみせた、まるで百科事典のような絵本です。
ビッグバンによる宇宙の誕生から星の成り立ち、生命の誕生と進化、ヒトの進化などが連続して紹介されています。
この世のすべてのものはひとつながりになっているということを学ぶことはとても大切です。
そしてヒトの体の構造、脳の進化による科学技術や芸術文化の発展、さらには意見の衝突による戦争まで。
最後はヒトの誕生から死までを紹介しました。
こんな壮大な絵本、見たことがありません。
ナルホド、加古さんが亡くなったときに世間が騒いだはずです。

最後に、著者のあとがきでとても印象的だったのでご紹介します。
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ラジオで女の子が相談していました。
「お母さんとお風呂に入った時にお腹に傷跡がないことに気づいた。
私はお母さんから産まれたのではなく、よその子だったんだ。」
司会者はいろいろ説明をしたが、誤解を打ち消すことができずに放送は終わった。
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それを聴いていた著者は自分にも誤解を打ち消す力がないことに憤慨します。
性教育の解説書を何冊読んでも答えは得られませんでした。
永年考え抜き本書ではこう書きました。
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赤ちゃんはお母さんのおしっこの出るところの近くから産まれる。
そこは赤ちゃんが産まれるととても小さくなる。
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これを読んだときは「うまく書いたな」と軽く流しましたが、何年もの苦心の末にようやく書いたことを知り、深く感動しました。

今回世の多くの人に後れを取って、加古さんという熱い男がかつてこの国にいたことを知りました。
この上は彼を取り上げたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」をぜひ観たいと思いました。
早速いつも利用しているTUTAYAの宅配レンタルに予約を入れました。

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お気に入りその1900~コミック三昧

2020-03-09 12:09:33 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、コミック三昧です。

先日「ONE PIECE」91~95巻と「ゴールデンカムイ」17~20巻をまとめ買いしました。
「ONE PIECE」はワノ国編、「ゴールデンカムイ」は樺太編です。
ちょうど新型ウイルスが市中感染しているため不要不急の外出を自粛するように、と北海道知事から要請があったので、休日の丸一日、マンガを読んで過ごしました。
全部で9巻。
さすがに読み応えがありました。

まずは「ONE PIECE」
ワノ国上陸で始まり鬼ヶ島決戦前夜で終わります。
ワノ国の悲惨な状況は、これまでルフィたちが開放してきたいろいろな国と一緒です。
でもそこを治めるのは霊長類最強のカイドウ。
パワーアップしたルフィがカイドウを打ち倒し、ワノ国に平和が訪れることを楽しみにしています。
ちなみに週刊誌の連載は、この後「おでんの一代記」に入ります。
おでんがゴールド・ロジャーや白髭たちと旅をする辺りは、永年ワンピース・ファンが夢にまで見てきた場面がついに登場したのですから良しとするしかありません。
ただこの調子では、ルフィーたちが「ひとつなぎの大財宝」にたどり着くのにまだ何年もかかってしまいます。
いつまでも読み続けたい気持ちがある反面、還暦を迎えるじじいとしては生きている内に結末を知ることができるのか?と心配になります。

続いて読んだのは「ゴールデンカムイ」
これまで本書でアイヌ語や風習などのアイヌ文化をたくさん学んできましたが、樺太編ではさらに違う少数民族がいろいろ登場し、それぞれの住宅や服装などの文化を学ぶことができました。
そして今回、その少数民族たちを束ねてロシアや日本などの大国から独立しようとするグループの存在が明るみに出ます。
さらにそこに深く関わっているのが“例のあの人”だったとは!
読み進むうちにどんどんスケールが大きくなる冒険活劇に胸わくわく。
流氷の上で最期を迎えた重要キャストと病院から逃走した重要キャスト。
物語は大きく動きました。
今後の展開がとても楽しみです。

連載中のマンガを読むのはあまり好きではありません。
どうせ読むなら最後まで一気に読みたいのです。
そのため連載が終わった全巻セットばかり読んできました。

ただ「ONE PIECE」と「ゴールデンカムイ」は例外。
1~2年後にまたまとめ買いして読むのを楽しみにしています。
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