今回のお気に入りは、日高敏隆です。
日高敏隆という人の「世界を、こんなふうに見てごらん」という本を読みました。
なぜ選んだのか、その理由を覚えていませんが手元にありました。
読みやすいけれど、しっかり理解することができない、不思議な本でした。
本書の解説を篠田節子さんという方が書いています。
これが本文をしっかり理解するための「まさに解説」であり、とても助かりました。
本文と解説から気になった文章を引用しつつ、感想を書きたいと思います。
解説より、日高敏隆の人物について
=====
日本の知の最高峰
意外なことに体のどこからも「偉そうなオーラ」を放っていない
少しとぼけた笑いを浮かべて端然と座っている
祇園の料亭があれほど似合わない方はいない
=====
なるほど、だいたいの人物像がつかめました。
本文より引用
=====
僕らの学生時代には、科学において「なぜ」を問うてはいけない、と言われた
真理、真実と思っているものは、実はイリュージョンである
※イリュージョンとは
幻覚というより、個々の生物がそれぞれの感覚・知覚を通し、
認識しているそれぞれの世界のこと
人間の認知する世界もそうしたもので、人間をそういうあやしげなもの、と受け止める「いいかげん」さがないと、かえっておかしなことになる
※「いいかげん」=「良い加減」に近い
=====
いかがです、科学者らしからぬ、まさに「いいかげん」な文章でしょ?
終始、このような雲をつかむような感覚にとらわれながら読みました。
好々爺とはいえ、さすがに「日本の知の最高峰」。
一朝一夕には理解できません。
ちなみに著者が「イリュージョン」という考えを持つようになった経緯も紹介されていました。
それは著者が中学2年のときに読んだユクスキュル著「生物から見た世界」にありました。
ダニには目が無く、皮膚にそなわった光の感覚だけを頼りに木に登ります。
そして木の下を通る動物の皮膚から発する酪酸のにおいを感知すると落下し、毛をかき分け皮膚に食いつきます。
ダニの感覚世界は、人間のそれとは大きく異なることが理解できます。
人間が真理、真実と思っている感覚世界は、他の生物たちとは大きく異なり、人間だけのもの。
唯一絶対の世界でない以上、それをイリュージョンとして「いいかげん」さを持って受け止めることが大切だということ。
なるほどねえ、ちょっと禅問答のようで面白かったです。
アゲハチョウのサナギが緑と茶の2種類ある理由については、昆虫好きとしては興味深かったです。
脳の近くの神経節から出るホルモンが影響すること。
温度、湿度、枝の曲率半径、枝の表面のザラザラ具合などにより、色が決まること。
自然ってもっとシンプルなのかと思っていましたが、意外と複雑なのですね。
最後に、著者のユニークな翻訳本について。
コンラート・ローレンツ著「ソロモンの指環」
読んだ、読んだ!
動物行動学ってこんなに面白い学問なんだ、と感動さえ覚えました。
この本はその後、娘が酪農大学に入学したときにプレゼントしましたが、読まなかったようで残念でした。
ハラルト・シュテンプケ著「鼻行類」
架空の生物を科学者が詳細データまでねつ造して発表している本です。
人間は理屈が通ると実証されなくても信じてしまう滑稽な動物、という皮肉を込めて、あえて発表したそう。
デズモンド・モリス著「裸のサル」
文化的だと思っている行動が、どれほど動物的本能に支配されているか。
こちらもなんとも皮肉たっぷり。
どれも「日本の知の最高峰」のやりたい放題が気持ちいい訳本です。
お高く留まった文化人・科学者の鼻を折る手腕に、凡人として拍手を送ります。
「人間が真理、真実と思っている感覚世界は、他の生物たちとは大きく異なり、人間だけのもの。
唯一絶対の世界でない以上、それをイリュージョンとして『いいかげん』さを持って受け止めることが大切。」
という著者(訳者)の信念を、私も心に刻みました。
それとともに著者の名前を、立場に対する遠慮がない、スケールの大きな人物として心に刻みました。
日高敏隆という人の「世界を、こんなふうに見てごらん」という本を読みました。
なぜ選んだのか、その理由を覚えていませんが手元にありました。
読みやすいけれど、しっかり理解することができない、不思議な本でした。
本書の解説を篠田節子さんという方が書いています。
これが本文をしっかり理解するための「まさに解説」であり、とても助かりました。
本文と解説から気になった文章を引用しつつ、感想を書きたいと思います。
解説より、日高敏隆の人物について
=====
日本の知の最高峰
意外なことに体のどこからも「偉そうなオーラ」を放っていない
少しとぼけた笑いを浮かべて端然と座っている
祇園の料亭があれほど似合わない方はいない
=====
なるほど、だいたいの人物像がつかめました。
本文より引用
=====
僕らの学生時代には、科学において「なぜ」を問うてはいけない、と言われた
真理、真実と思っているものは、実はイリュージョンである
※イリュージョンとは
幻覚というより、個々の生物がそれぞれの感覚・知覚を通し、
認識しているそれぞれの世界のこと
人間の認知する世界もそうしたもので、人間をそういうあやしげなもの、と受け止める「いいかげん」さがないと、かえっておかしなことになる
※「いいかげん」=「良い加減」に近い
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いかがです、科学者らしからぬ、まさに「いいかげん」な文章でしょ?
終始、このような雲をつかむような感覚にとらわれながら読みました。
好々爺とはいえ、さすがに「日本の知の最高峰」。
一朝一夕には理解できません。
ちなみに著者が「イリュージョン」という考えを持つようになった経緯も紹介されていました。
それは著者が中学2年のときに読んだユクスキュル著「生物から見た世界」にありました。
ダニには目が無く、皮膚にそなわった光の感覚だけを頼りに木に登ります。
そして木の下を通る動物の皮膚から発する酪酸のにおいを感知すると落下し、毛をかき分け皮膚に食いつきます。
ダニの感覚世界は、人間のそれとは大きく異なることが理解できます。
人間が真理、真実と思っている感覚世界は、他の生物たちとは大きく異なり、人間だけのもの。
唯一絶対の世界でない以上、それをイリュージョンとして「いいかげん」さを持って受け止めることが大切だということ。
なるほどねえ、ちょっと禅問答のようで面白かったです。
アゲハチョウのサナギが緑と茶の2種類ある理由については、昆虫好きとしては興味深かったです。
脳の近くの神経節から出るホルモンが影響すること。
温度、湿度、枝の曲率半径、枝の表面のザラザラ具合などにより、色が決まること。
自然ってもっとシンプルなのかと思っていましたが、意外と複雑なのですね。
最後に、著者のユニークな翻訳本について。
コンラート・ローレンツ著「ソロモンの指環」
読んだ、読んだ!
動物行動学ってこんなに面白い学問なんだ、と感動さえ覚えました。
この本はその後、娘が酪農大学に入学したときにプレゼントしましたが、読まなかったようで残念でした。
ハラルト・シュテンプケ著「鼻行類」
架空の生物を科学者が詳細データまでねつ造して発表している本です。
人間は理屈が通ると実証されなくても信じてしまう滑稽な動物、という皮肉を込めて、あえて発表したそう。
デズモンド・モリス著「裸のサル」
文化的だと思っている行動が、どれほど動物的本能に支配されているか。
こちらもなんとも皮肉たっぷり。
どれも「日本の知の最高峰」のやりたい放題が気持ちいい訳本です。
お高く留まった文化人・科学者の鼻を折る手腕に、凡人として拍手を送ります。
「人間が真理、真実と思っている感覚世界は、他の生物たちとは大きく異なり、人間だけのもの。
唯一絶対の世界でない以上、それをイリュージョンとして『いいかげん』さを持って受け止めることが大切。」
という著者(訳者)の信念を、私も心に刻みました。
それとともに著者の名前を、立場に対する遠慮がない、スケールの大きな人物として心に刻みました。