鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその2039~わいるどらいふっ!

2022-01-31 12:43:23 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、わいるどらいふっ!です。
「わいるどらいふっ! 身近な生きもの観察図鑑」という四コマコミックを読みました。
生きものたちの知っているようで知らない世界をたっぷり堪能することができました。
ベッドサイドに置いて1~2話読んで、自然を感じつつ眠りに就くのはとても気持ち良かったです。
ちなみに本書の前は「石の辞典」を読んでいました。
あれも自然を感じられて良かったなぁ。
これまでベッドサイドに合わなかったのは「夏井いつきの365日季語手帖」。
その月の季語と例句を読み、俳句を考え始めると、できあがるまで眠れなくて困ったものです。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
意外と知らない生きものたちのクスッと笑えるエピソードをコミックでご紹介!
自然・生きもの好きを中心にSNSで話題のいきものイラストレーターの一日一種さんの連載『わいるどらいふっ! 』を書籍化。
どんぐりを埋めた場所を忘れるリス、鳴かないと全然わからないホトトギス……
オリジナルイラスト図鑑も収録し、生きもの好きにはたまらない1冊です。
=====
SNSでこういう面白いのが連載されているのですね。
スマホばかりを見ている人は、小説を読んでいる人ばかりではないし、友だちとつながっている人ばかりでもないと思っていましたが、こういうのを読んでいる人もいるのですね。
うらやましい!(私はガラケーなので・・・)
芽を出し大きく葉を開いたドングリの前で、自然環境を維持することの大切さを語るリスに対し、どこに埋めたか忘れただけだろ、と横槍を入れるリスが登場する話。
こういうクスッと笑えるオチがたっぷり。
時には残酷なオチもありますが、食物連鎖も自然の営みとして軽く受け入れられます。
早春に成虫となるギフチョウは1年の大半を幼虫・さなぎで過ごします。
さなぎの多くは冬の間にネズミたちに食べられてしまうことは、ギフチョウにとっては悲しいことですが、ネズミにとっては生き残るために仕方のないこと。
その辺りの互いの感情表現がサラッとしていて上手いと思います。
自然界に悪者はいないのですから。
生き物好きの娘はSNSで読んでいるかな。
もしまだならこの本をプレゼントしようと思います。
とても面白いので第2巻も用意しました。
続きを楽しみます。


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お気に入りその2038~リーチ先生

2022-01-28 12:24:47 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、リーチ先生です。
原田マハの「リーチ先生」を読んでいます。
かなりページ数があるためまだ最初の1/3くらいのところです。
出版社の内容紹介を引用します。
=====
好いものは好い。
そう感じる私たち日本人の心には、きっと“リーチ先生”がいる。
日本を愛し日本に愛されたイギリス人陶芸家の美と友情に満ち溢れた生涯を描く感動のアート小説。
第36回新田次郎文学賞受賞作
1954年、大分の小鹿田を訪れたイギリス人陶芸家バーナード・リーチと出会った高市は、亡父・亀乃介がかつて彼に師事していたと知る。
──時は遡り1909年、芸術に憧れる亀乃介は、日本の美を学ぼうと来日した青年リーチの助手になる。
柳宗悦、濱田庄司ら若き芸術家と熱い友情を交わし、才能を開花させるリーチ。
東洋と西洋の架け橋となったその生涯を、陶工父子の視点から描く感動のアート小説。
=====
読みながら陶芸を楽しんでいたころを思い出しました。
20年ほど前から5年ほど、自宅の小さな焼き窯で皿などを焼いて楽しんでいました。
土をこね、成形し、素焼き後に絵を描き、釉をかけて本焼き、そして窯だし。
成形や絵を描くときは家族と一緒にやったこともあります。
仕事が忙しくなったことと窯の煙突が落雪で壊れる位置にあったため、休止したまま今日にいたっています。
あれからもう15年も経ったのですね。
陶芸は無心になる場面があちこちにある上、土こねは良い運動になるので、心身ともにリフレッシュしたものです。
あまり齢をとらないうちに再び陶芸を楽しむ時間を持ちたいものです。
さて本書の感想を少々。
冒頭から柳宗悦、バーナード・リーチ、河井寛次郎、濱田庄司というビッグネームが登場します。
回想シーンに入るとさらに高村光太郎、高村光雲まで登場します。
これだけのメンツが生き生き描かれているのは、まさに原田マハのアート小説だから。
今は毎日、どんな展開になるのかを楽しみにして読んでいます。
これって何だか毎朝妻が楽しみにしている朝ドラ「カムカムエヴリバディ」に似ています。
ここまでで興味深かったのはイギリスで提唱された「アーツ&クラフツ運動」です。
産業革命により粗悪な工芸品が大量生産されていることを憂い、芸術的な手工芸品の大切さを提唱した運動だそうです。
柳の民芸運動につながりそうな話です。
さて本日読んだところがリーチが初めて陶芸の絵付けを体験する場面です。
いよいよ陶芸編のスタート。
ますます楽しみになってきました。


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お気に入りその2037~千と千尋

2022-01-26 12:14:52 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、千と千尋です。
先日、妻が一言。
「千と千尋の神隠し」の舞台を観に行きたい。
ジブリ映画のファンであり、劇団四季のファンでもある妻は、札幌から劇団四季が去ってから舞台を観に行っていませんでした。
ましてやコロナ禍。
上演予定の6月にはコロナ禍がおさまっていて欲しい、という願いを込めて予約を入れました。
プレイガイドの会員向け先行予約。
フジコ・ヘミングや辻井伸之のピアノコンサートでは即日席位置まで予約できたのに、今回は仮予約のみ。
2月22日の抽選まで待つことになります。
もし外れたら一般予約で申し込まなくてはなりません。
元旦のおみくじは大吉でした。
少々早いですがここでその運を使いたいと思います。
ちなみに主要な6つのキャストはダブルキャスト。
千尋は橋本環奈と上白石萌音、湯婆婆は夏木マリと朴ロ美、釜爺は田口トモロヲと橋本さとしなど。
予約した回は、橋本・朴・田口の組み合わせだそうです。
湯婆婆は本家である夏木マリの方が良いな、などと当選してもいないのに勝手なことを考えています。

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お気に入りその2036~志村けんとドリフの大爆笑物語

2022-01-24 12:35:01 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「志村けんとドリフの大爆笑物語」です。
昨年の年末に「志村けんとドリフの大爆笑物語」というドラマを放送しました。
ご覧になられた方も多かったのではないでしょうか。
昨日、遅ればせながら録画していたのを観ました。
予告編でドリフのメンバーを誰が演じるのかは目にしており、志村けんと加藤茶を山田裕貴と勝地涼というイケメン俳優が演じることに多少不安を感じていました。
ところがドラマでは二人ともきっちりとコメディアンを演じ切り、素晴らしいコントをみせてくれました。
ひげダンスでスイカの早食い、CM制作コントで牛乳を大量に飲むなど、食べ物を粗末にするということで苦情の手紙が殺到した伝説の笑いを見事に再現していました。
体を張った二人の演技に拍手を送ります。
またいかりや長介を演じた遠藤憲一も「威勢のいい銭湯」で体を張っていました。
この3人のコントにはドラマだということを忘れて大爆笑しました。
とても懐かしかったです。
ドリフってこういうスッキリする笑いだったことを思い出しました。
ドラマではコント作りに真剣に取り組む場面も描かれていました。
お客様にいかに笑ってもらうかスタッフみんなで意見を出し合います。
アイデアを絞り出してコツコツと作り上げていく地道な作業です。
それを16年も続けてくれたのです。
ありがたいことです。
おかげで存分に楽しませてもらいました。
ドリフのみなさん、ありがとうございました。
役者のみなさんはもう勘弁して!と言うでしょうが、第2弾を制作して欲しいです。
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お気に入りその2035~川島逸郎

2022-01-21 12:28:40 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、川島逸郎です。
美術的に美しく、科学的に正確な生物の図版が好きで、古い図鑑をよく鑑賞しています。
カラー写真が当たり前の現代では科学的に正確に描かれた図版は絶滅危惧種かもしれませんが、手描きにこだわる画家は少数ながらまだ存在しています。
そういう画家のひとりである生物画家・川島逸郎さんの初の作品集が新年そうそう発売されました。
「虫を観る、虫を描く 標本画家川島逸郎の仕事」
川島さんは一昨年「イラストレーション」という雑誌にお気に入りの画家・舘野鴻さんとともに紹介されていて、その名はチェック済みでした。
ただ同誌に同じく掲載されていた漁譜画家・長嶋祐成の作品集は見つけて鑑賞できたのですが、川島さんの作品集は見つけられず、残念に思っていました。
本書を見つけたときはようやく念願がかなうと思い、多少高価でしたがすぐに注文しました。
出版社の内容紹介を引用します。
=====
一般書籍の挿画だけでなく、多くの国内外の研究を支えてきた川島逸郎の絵の数々。
昆虫学者の丸山宗利氏も自身の新種記載論文には川島逸郎に絵を依頼し、自身では気づかなかった部位まで精密に描かれていることに驚愕するといいます(本誌掲載寄稿より)。
本書では、その作品をほぼ原寸で掲載。
驚異的な観察眼により生み出される、細かな点描や美しい線の数々を堪能ください。
2章では失われつつある手描きの標本画の担い手として、川島自らが自身の仕事を振り返り、自らの言葉で解説します。
ドイツ装、ケース入り。
=====
ケースから出すと、本の表紙に厚紙を貼って仕上げてあります。
これが「ドイツ装」というものなのでしょう。
おそらく本を長持ちさせる方法のひとつだと思います。
川島さんの作品は、顕微鏡で観察しながら描いているそうで、細部へのこだわりが半端ではありません。
毛1本を描くにも、点を置くにも妥協はありません。
売れっ子昆虫学者・丸山宗利さんは川島さんの標本画を世界一と評しています。
丸山さんは自身でも標本画を描きますが、自身の論文では川島さんに標本図を描いてもらっているそうです。
専門家が舌を巻くほど正確な標本画ということでしょう。
その作品は決して美しさを求めていないのに美しいです。
まさにため息が出るという表現がぴったりなほど。
こういうものにあまり興味を示さない妻もしばらくながめていました。
作品を見ていると昆虫の体は完全に左右対称ではないことに気づきます。
もしかしたら左右対称でないことに意味があるのかもしれません。
意味を考え付くのは100年後の昆虫学者かもしれません。
写真や動画がいくら鮮明になっても標本画でなくては得られないインスピレーションがあると思います。
それが標本画の役割なのでしょう。
本書には高い技術と情熱を長時間維持することで成り立つ標本画がたっぷり収録されています。
雑誌「イラストレーション」、学術誌、一般書籍など、掲載される媒体ごとに細密度を変えて描いているそうですが、私にはほとんど見分けがつきませんでした。
後半に興味深い標本画がありました。
前肢の形状に特徴があるため、左右の肢を一番厚く見える向きと一番薄く見える向きに描き分けていました。
研究者の研究テーマに合わせ、こういう難しい描き方をしている場合もあるのです。
その後ろに、作品の制作過程を細かく紹介していました。
標本画家育成のための記録ということでしょうか。
後継者の誕生につながれば良いですね。
丸山さんは博士論文の制作にあたり、200枚以上の標本図を描いたことがあるそうです。
その際に目を酷使して視力をかなり悪くしたそうで、川島さんには目を大切にしてほしいと書いています。
同感です。
川島さんはまだまだこれからですので、お身体に気を付けつつ、後世に残る作品を生み続けて欲しいと願います。
川島さんによる謝辞には、多くの関係者への感謝の言葉がつづられていますが、その中で注目したのは二人の編集者への感謝の言葉です。
それによると本書の企画を著者にすすめたのは実際に発行した出版社ではなく、別の出版社でした。
企画をした出版社とそれを引き継ぎ発行にこぎつけた出版社のそれぞれの編集者の尽力があったからこそ本書が誕生したのだそうです。
本書のような標本画の作品集は前例がないため、採算ベースの読みを含め、多くの壁があったことが想像されます。
こういう特殊な本が多くの人々に評価され、売上目標を達成することで、第2、第3の企画が動き出すことを期待します。

(おまけ)
亜紀書房さんのウェブマガジン「あき地」に川島さんの「虫を描く私――標本画家のひとりごと」が連載されています。
1月12日に第8話が更新されました。
ご興味がある方はどうぞ。

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お気に入りその2034~たくさんのふしぎ2

2022-01-19 12:22:49 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、たくさんのふしぎ2です。
「たくさんのふしぎ」シリーズの最新刊と既刊2冊の感想を書きます。

①世界の納豆をめぐる探検
出版社の内容紹介を引用します。
=====
納豆は日本だけの食べ物だと思っていませんか?
実は納豆の仲間はアジア各地、アフリカにもあるのです。
納豆をせんべいみたいにしたり、スープにしたり、食べ方も様々。
世界中で調べた美味しそうな納豆を紹介します。
そして、日本の納豆はいつ、どのようにして生まれたのか?
大いなる謎にも挑みます。
この本を読んだらきっと誰かに納豆の話をしたくなります。
=====
納豆はとても安い食品のため、ほとんど注目されていないそうで、アジアやアフリカで広く食べられていることは知られていないそうです。
著者はそれを知り、現地を訪れて調査しました。
面白いのはどこのも香りや味わいで、間違いなく納豆だとわかることです。
そしてどこか和食っぽいのだそうです。
また日本の納豆製造メーカーの方のコメントも興味深かったです。
納豆は大豆をナットウ菌で発酵させて作りますが、いくらオートメーション化しても、豆の大きさや水分量、ナットウ菌の状態により出来上がりが変わるそうです。
生き物を相手にするということは難しいことなのですね。
本書冒頭で著者の納豆の食べ方が紹介されています。
珍しい食べ方もありましたが、そこに紹介されていない食べ方が我が家ではポピュラーです。
それはカレーライスのカレーに納豆を1パック乗せる食べ方です。
テレビで観て真似たのですが、納豆好きの娘は欠かさず乗せるようになりました。
カレーに納豆?と引きたくなる気持ちはわかりますが、意外や意外、美味しいのです。
興味がある方はぜひお試しを!

②森をそだてる漁師の話
出版社の内容紹介を引用します。
=====
北海道の襟裳では漁師さんたちが、昆布や魚がたくさんとれるように、海の見える丘に木を植えて森をつくっています。
宮城県の気仙沼では、海から20キロも離れた山に、漁師さんたちが木を植えています。
フィリピンでは、海辺にマングローブの林をつくっている漁師さんがいます。
漁師さんたちに会って話を聞いたら、海と森のあいだにある深いつながりが見えてきました。
=====
コロナが沈静化した11月、新ひだか町の友人が札幌に来たので久しぶりに居酒屋へと繰り出しました。
メニューを開きイクラ丼の写真を見て、彼がポツリ。
「このイクラは外国産かな?」
いつもサケならお任せ!と言っている彼のその言葉に、サケが獲れないと伝えるニュースがようやく真実味を持って蘇りました。
年々サケが獲れなくなってきている上、ロシア由来の赤潮被害で岸に接近したサケが全滅したのです。
さらに漁船の燃料が記録的に高騰しています。
漁師さんたちは三重苦です。
今年は海に活気が戻ることを祈ります。
本書には襟裳の先人が登場します。
昔は立派な昆布がたくさん採れたため、昆布漁師が次々集まり、村は栄えました。
冬を越すため丘の木を薪にしている内に山は丸裸になり、砂漠のようになりました。
襟裳特有の強風により砂が飛ばされ、昆布を干す砂利の浜は砂浜になってしまい、海中にも砂が積もり昆布が年々痩せていきました。
危機感を持った漁師さんたちが丘に木を植え森を再生したことで、今では昔ながらの立派な昆布が採れるようになったそうな。
森を育てることでその養分が川を下って海に入ります。
山の養分が海藻やプランクトンを育て、隠れ場所とエサを求めて小魚が集まります。
やがて大きな魚も集まり、海が豊かになるそうです。
遠回りのようですが確実な生態系の回復方法といえます。
最近耳にする「ブルーカーボンプロジェクト※」に通じる活動です。
※ブルーカーボンプロジェクトとは、海藻・海草を育てることでCO2の吸収を促進するとともに、豊かな海を取り戻そうという計画

③ニレの中をはじめて旅した水の話
出版社の内容紹介を引用します。
=====
空中の水蒸気が集まって雨粒になり、地面におりてから根に引き寄せられて木の中に。
驚きと発見でいっぱいの冒険が始まります。
=====
水の循環と木の内部構造について学ぶことができます。
空気中の水蒸気が集まって雨となりニレの木に降り注ぎます。
水はニレの葉の滑り台を何度も滑り、地上に到着します。
すぐに土に浸透し、窒素・リン酸・カリなどの養分を溶かし込みながらニレの根に吸収されます。
水は表皮の下にある導管を上り、養分や水分を運び上げます。
その後細胞の核が分裂して遺伝子がコピーされることを目撃したり、表皮の奥の木部は死んだ細胞でできていることを知ります。
やがて葉に到達し、気孔から蒸気となって大気中に放出されます。
こういうストーリーが専門用語をほとんど使わず子どもに理解しやすい言葉で書かれているとともに、ほんわかした絵で水を子どもの姿の妖精として描いています。
例えば細胞を「生きている部屋」と表現するなど、私としては回りくどくてわかりづらいと感じながら読みました。
子どもたちは本書をどう読むのかな?
感想を聞いてみたいです。


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お気に入りその2033~いせひでこ

2022-01-17 12:17:36 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、いせひでこです。
いせひでこさんの新作絵本「たぬき」を読みました。
AMAZONの内容紹介を引用します。(長いです)
=====
〈お日さん、あったかいねえ〉
〈かあちゃんみたいだねえ〉
2011年の春、絵描きの家の庭にあらわれた たぬきの一家。
産む、育てる、いのちの絆の物語は、やがて別れと旅立ちへ。
小さなからだ全身で「生きる」たぬきたちと、絵描きとのまぼろしのようなおはなし。
著者のことば
「ヒトも動物も木々も草花も、生きるために生まれる。
あるがままの「いのち」を描きたいという思いが、心のそこから湧き起こっていた。
そしてこの本の表紙の絵が生まれた。
「生きる」方向を見つめる目、目、目。
そして、現実と幻術との境目がわからないまま、「たぬ記」に綴られた日々を絵で再現していったら、たぬきが山盛りの絵本が描きあがった。」
いせひでこ(本書、あとがきより)
この絵本『たぬき』はいまから10年前、東日本大震災の年の春に、画家・絵本作家のいせひでこさんの家の庭に現われた、たぬきの一家のお話です。
3月11日、思ってもみない大地震と、それにともなう原子力発電所の事故がおこりました。
いせさんはその日から、地震の記録、原発事故の報道などを小さなノートに記していきました。
4月、近所の公園や道路で、たぬきらしき姿を目にするようになりました。
5月末、朝、デッキの上のスリッパや靴が動いていました。
6月の夜、デッキの人感センサーの明かりに、もそもそ動くたぬきの子と親が浮かび上がりました。
6月以降、「地震日記」は〈たぬ記〉と手製ラベルを貼った観察日記になっていきました。
〈たぬ記〉には、鉛筆やボールペンのやわらかな描線で、たぬきたちの行動、成長、変化という、見たことのない日常が描かれていきました。
頻発する地震のなかで育っていく子たぬきに、「生きて」「生き抜いて」という祈りにも似た思いが重なっているように思えます。
小さな毛衣(けごろも)だった赤ん坊が、成長するにつれ個性が出てくること、ふわふわ、もふもふとした毛並み、庭の小さな森の緑の深さ、草や花や鳥たち、家族のゆくすえなど、ページをめくっていくたびに、思ってもみない展開になることと思います。
東日本大震災の年の、春から夏にかけての、まぼろしのようなお話を、10年をへて、お届けできることになりました。
ご覧いただけますと幸いです。
2021年11月 平凡社編集部
=====
本書はいせさんが震災直後からつけ始めたノートを元にしています。
頻発する地震の震度や放射線レベルの書き込みが当時の緊張感を伝えています。
その不安を和らげるタヌキ一家のスケッチがだんだん幅を利かせていきます。
ベランダの窓ガラスを境に見事な住み分けをしたいせさんとタヌキたち。
互いに不安だったので身を寄せ合ったのかもしれません。
赤ん坊タヌキたちは日々成長し、やがて元気な少年少女となりました。
親たちは安心して姿を消し、少年たちも新天地に旅立ち、この物語は終わります。
いせさんの柔らかで正確なスケッチは見事な絵本となり、当時の不安と未来への希望をやさしく表現しています。
いせさんの絵本はこれまで5冊前後読んだと記憶しています。
本書は名作「ルリユールおじさん」の次にお気に入りの絵本となりました。
震災の辛い記憶を少し和らげてくれたことに感謝です。
ちなみにいせさんがタヌキたちと暮らした借家はその後取り壊しになり、庭から続く鬱蒼とした林を含めて再開発され、今では立派な住宅街になっているそうです。
とても残念です。


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お気に入りその2032~サクラ図譜2

2022-01-14 12:38:00 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、サクラ図譜2です。
このところしばらく川崎哲也さんの「サクラ図譜」を鑑賞していました。
1ページがB4判というビッグサイズ。
右ページに図版、左ページに解説という構成です。
とにかく贅沢な作りと美しく細密な図版。
ページをめくるごとにため息が出ました。
植物に詳しい方ならもっともっと感動するのでしょうが、品種ごとの特徴が書いてあるのに右から左で読み流している自分を少し残念に思いつつ図版メインで鑑賞しました。
妻から何冊も図鑑を鑑賞しているのに、生き物の名前に詳しくないと指摘されることもありますが、あくまで科学と芸術が合体した美しく正確な図版を鑑賞したいだけなのですから仕方がありません。
本書は川崎さんの急逝後、遺された資料を時間をかけてまとめたものです。
資料は本書に収録後、東京国立博物館に寄贈されることになっていたため、未完成の図版まで収録したのは、素晴らしい判断だったと思います。
前書きや後書きを先に読んで川崎さんと牧野富太郎博士との次のような関りを知り、ワクワクしながら図版鑑賞しました。
・川崎は大学時代から牧野富太郎に師事し植物の描画法と知識を伝授された。
・川崎が描いた「ヤマモモ」の完成度の高さに病床の牧野博士が喜んだ。
・その図版は博士が亡くなって間も無く発行された「牧野新日本植物図鑑」の巻頭ページを飾った。
・編者の大場秀章は、サクラ図の代表格は牧野富太郎「大日本植物志」に収録されているヤマザクラ(1900年)であり、川崎による多数の部分図、解剖図をともなう図解と表示方法は牧野ゆずりであると書いている。
本書の美しい図版を鑑賞しつつ、解説を斜め読みしていて知ったことをメモに残します。
・「しだれやまざくら」は「枝垂山桜」と書く。ナルホド
・「オオヤマザクラ」=「エゾヤマザクラ」=「ベニヤマザクラ」
・わが家にある芳香の強いサクラは名称不詳だったが、候補は次の通り。
 春に開花したら確認したい。
  有明(ありあけ):芳香強い、花弁にうねりあり
  上匂(じょうにおい):昆虫などが多数来訪するほど匂いが強い、花弁5-8枚
  薄墨(うすずみ):芳香強い、花弁が白色で幅が狭い
  駿河台匂(するがだいにおい):芳香に関する記述なし
  その他 :ときどき芳香のする木がある種類もあるそう
本書のように美しい図版が多数掲載された図譜を鑑賞するといつも思うのですが、お気に入りのページを開いた状態で飾ることができて、開き癖を付けない鑑賞方法はないものでしょうか?
ブックスタンドと額縁を合体したようなもので、本のサイズに合ったものがいいのですが。
既製品が見当たらない上、手作りすると本のサイズごとに用意しなくてはならず、いくつも用意する必要がありそうです。
・・・そうか、これが問題で既製品が無いのか・・・。
残念ですが、これからも本を開いて鑑賞しなくてはならないようです。
ちなみにいつもぎゅう詰めの本棚ですが、今回に限り1冊分の隙間がありました。
サクラ図譜はそこにゆるやかに収まり、お気に入りの仲間入りをしました。
次はサクラが咲くころ開くことでしょう。


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お気に入りその2031~名建築で昼食を

2022-01-12 12:22:09 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「名建築で昼食を」です。
先日の休みは妻のおすすめDVDを観ました。
「名建築で昼食を」というタイトルのテレビドラマで3枚組。
このドラマは、友だちとカフェ開業を夢見るOL春野藤が、名建築巡りを趣味とする「乙女建築」千明さんとSNSで知り合うところから始まります。
「乙女建築」千明さんに弟子入りすることになり、実際に会って驚いたのは、千明さんが中年男性だったこと。
藤はカフェ開業の参考にするため、取りあえず植草千明と名建築をめぐることにします。
ということで、毎回名建築を訪れ、見どころを紹介します。
原作は、甲斐みのり著「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」。
主演は池田エライザと田口トモロヲ。
結局DVD3枚をぶっ通しで観ました。
全10話+スペシャル版1話。
どの話も面白かったです。
その建築物に詳しい案内人が見どころを説明してくれたり、普段は入れない場所に入ったりと、名建築の鑑賞が好きな人ならヨダレが出そうなシーン満載です。
建築物にそれほど興味のない私もすっかり引き込まれました。
ドラマを観終わった直後は、東京に行ったら必ず訪れようとか、原作をすぐに読もうとか考えていましたが、今冷静になって考えると、自分の趣味嗜好とは少しずれており、優先順位がそれほど高くないことに気づきました。
でもちょっぴり気になることも確か。
千明さんのように知識豊富なガイドさんがいてくれれば、藤さんのように専門的知識が無くても名建築を楽しむことはできそうです。
何の予定もない休日に、地元札幌周辺で名建築をきまぐれ探訪するのは楽しそうです。
そのためには入門者向けのガイドブックがあればいいな。
妻もそこそこ興味があるようなので、ガイドブックを検索し、ちょうど良さそうなのを見つけました。
「北海道建築さんぽ―札幌・小樽・函館」
2020年9月発行なので情報は古くないし、掲載されている建物の数がそれほど多くないのでさらっと読めそうです。
何より著者・佑季 Yuukiさんが大学院まで建築を専攻していたことと、モデル・DJ・フォトエッセイスト・舞踏家という多彩な顔を持つアーティストであることが興味をひきました。
読後はドラマのように名建築巡りを楽しみたいと思います。
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お気に入りその2030~旅屋おかえり

2022-01-10 12:46:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、旅屋おかえりです。
新聞の書籍広告で「旅屋おかえり」の新しいのをみつけ、読みました。
「丘の上の賢人 旅屋おかえり」というタイトルです。
原田マハのライトノベルの続編。
アート小説もいいですが、この手のものもなかなかいけるので、楽しみにして読みました。
出版社の内容紹介を引用します。
=====
あなたのふるさとはどこですか?
幻の札幌・小樽編を収録!
ベストセラー『旅屋おかえり』シリーズ特別編
勝田文さん描き下ろし漫画も収録 いきなり文庫!
売れないタレント・おかえりこと丘えりかは、依頼人に代わり旅をする「旅の代理人」。
秋田での初仕事を終え、次なる旅先は北海道──
ある動画に映っている人物が、かつての恋人か確かめてほしいという依頼だった。
依頼人には、初恋を巡るほろ苦い過去があって……。
『旅屋おかえり』未収録の、幻の札幌・小樽編が待望の書籍化。
北海道旅エッセイ&おかえりデビュー前夜を描いた漫画も収録した特別編!
=====
主人公の丘えりかが、ここ札幌や小樽で「旅の代理人」を務めるそうで、読む前から期待が膨らみました。
ライトノベルだけあって一気にページが進みます。
前作を読んで5年、ストーリーを覚えていませんでしたが、読み始めるとキャラが濃い登場人物たちのおかげで、すぐに前作の続きに入り込むことができました。
売れないタレント・丘えりか、元ボクサーの社長、昔グラビアアイドルの事務員の3人だけの芸能プロダクションに舞い込む「旅の代理人」の依頼。
おかえりは真心を込めて代理人を務め、依頼者に大きな満足を届けます。
今回の依頼は札幌モエレ山に座る男が元恋人かを確かめること。
旅の始まりは小樽から。
すし屋の主、居酒屋の女将の温かいもてなしに満足しつつ、依頼者の元恋人の現状についての情報をしっかり得るあたりはおかえりの人柄のなせる技でしょう。
原田マハを読んでいつも感じるのは、いい人ばかり出てくること。
敵役が登場しないためストーリーが平坦になりやすい点は、読者を感動させることで十分クリアできています。
読んでいる最中も読後も優しい気持ちにしてくれる素敵な作家です。
本書では居酒屋の女将の言葉に感動しました。
女一人で息子を育てるため居酒屋を切り盛りしてきたけれど、息子は失業して家に戻り、プチ家出を繰り返しています。
おかえりは思い切って「あなたは一番やりたかったことができましたか?」と尋ねました。
女将は、子育てをすることとお客様に手料理を喜んでもらうことができて満足していると答えました。
何と素敵な返しでしょう。
そう、人の一生はそれさえあれば幸せなのですね。
思わず胸が熱くなりました。
これだから原田マハはやめられない!と思ったものです。

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