鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1935~たくさんのふしぎ2

2020-05-30 12:48:57 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、たくさんのふしぎ2です。

やさしく詳しく教えてくれる絵本「たくさんのふしぎ」にハマっています。
前回に続いて読んだ3冊をご紹介します。

「スズメのくらし」

内容紹介を引用します。
=====
私たちにもっとも身近な鳥、スズメ。
しかしツバメの巣をよく目にするのとはちがい、スズメは巣を見かけることも少なく、何を食べているか、どこで眠っているかなども、ほとんど知られていません。
スズメはとても臆病で、人間が近づけないため、これまでそんな基本的なこともわからないことが多かったのです。
この本では、30年以上も野鳥の撮影を続けてきた写真家が、関東や秋田県で観察したスズメのくらしぶりを紹介します。
スズメは、キツネやカラス、タカ類など多くの動物に食べられてしまいます。
そのため、子育てをしてなかまを増やさなければなりません。
そこで他の鳥とはちがい、子育てを年に1度ではなく、3~4回も繰り返しています。
鳥の巣はふつう、1度しか使えないものなのですが、スズメの巣は清潔で何度でも使うことができます。
きれい好きなことが子育てに役立っていることなど、スズメの秘密を明かします。
=====

身近なスズメのことをほとんど知らなかったことに驚きました。
内容紹介で紹介されていること以外にも
・2週間で卵から孵り、2週間で巣立つ。
・1日に300回もエサを運ぶ。
・最初はイモムシのような消化しやすいものから。徐々に草の種なども運ぶ。
・巣立った後も親はエサを運ぶが、その期間は短い。
・天敵であるタカの巣に隣接して巣を作ることもある。
・カラスはスズメの巣を把握しておき、子スズメが巣立ったときを狙って襲う。
・スズメは水浴び・砂浴びを繰り返して体を清潔にすることで巣を清潔に保つ。

我が家の向かいの家のカーポートには何年にも渡りスズメの巣があり、カラスも巡回しています。
スズメやカラスにこんなドラマがあったとは・・・。

「トドマツ」

内容紹介を引用します。
=====
日本では北海道だけに生えているトドマツの木。
成長すると高さ30メートルにもなり、寿命は90年~150年といわれます。
しかし無事に成長するのはとても難しいこと。
めばえて5年たっても高さ10センチにならないこともあります。
森の中で、他の植物や病気とたたかいながら大きくなっていくトドマツの姿を描く写真絵本です。
=====

以前「かがくのとも」で「えぞまつ」について学びました。
どちらも北海道特有の松。
やせっぽちの幼いトドマツが、新しい枝を上・右・左の三方に伸ばすことを繰り返して成長する姿を何年にも渡って追った写真はとても貴重です。
一人前の「樹」になるまでの道のりがはるか遠いことを知りました。
他にも、倒れた老木に根をおろして一列に並んで成長する幼木の姿や、陽の光を求めて横へ横へと枝を伸ばすことで命をつなぐ若木の姿など、心に訴える写真が多かったです。

「カタツムリ小笠原へ」

内容紹介を引用します。
=====
「はるか遠くの島にカタツムリの楽園があるんだって。300万年前に海を渡ったご先祖さまの子孫がくらしているらしいよ……」。
そうきいた東京のカタツムリたちが1000キロ離れた太平洋上の小笠原諸島へやってきた。
そこは、天敵も少なく緑と湿度にあふれるすばらしい土地。
120種をこえる様々なカタツムリがくらしていた。
のろくて臆病なカタツムリがいかに海を渡り大繁栄するに至ったのか、大冒険のはじまり。
=====

流木に乗り小笠原諸島にたどり着いたかたつむりたち。
そこはエサになる緑が豊富、殻の元になる石灰質が豊富、気温や湿度も理想的、そして何より天敵がいない!
島々のいろいろな場所に合わせて身体を適応させていき、今では120種類にもなったそうです。
まさに楽園です。
主役が「かたつむり」だけに何とものどかな進化物語。
ほんわかしていて良いです。

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お気に入りその1934~たくさんのふしぎ

2020-05-27 12:37:16 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、たくさんのふしぎです。

「たくさんのふしぎ」という雑誌絵本をこれまで何冊か読んできました。
このシリーズは8~10才が対象だそう。
長く愛読していた科学雑誌ニュートンは中学生以上が対象でした。
ニュートンより少しやさしいですが、それでもかなり詳しく書かれています。
どちらも共通しているのはカラーの絵(写真)と文章がセットになっていて、実に理解しやすいこと。
「たくさんのふしぎ」はいろいろな分野の基本的なことを丁寧に学ぶことができることが魅力です。
また何冊か読むことにしました。

①「空とぶ宝石トンボ」 今森光彦 文・写真
 写真記シリーズの「昆虫記」で著者のファンになり、その後何冊か読みました。
 里山の写真家の目はいつもやさしくて、読むたびに心が洗われます。
 本書はタイトルも素敵ですね。
 著者が子供のころから親しんだ豊富な種類のトンボたちを宝石になぞらえていますが、
 比叡山山麓から琵琶湖にかけて広がる豊かな自然も著者にとっての宝物でしょう。
 ヤンマ、トンボ、イトトンボ、カワトンボ、そしてムカシトンボ・ムカシヤンマ。
 こんなにたくさんの種類が身近にいるのは何ともうらやましい。
 故郷を誇りに思う著者の自慢げな顔が目に浮かびます。
 お気に入りの一枚は、トンボのドアップでたくさんの毛が生えている写真。
 残念だったのは将来の昆虫少年たちのために、それぞれのトンボの見分け方を伝授して
 くれなかったことです。

②「貨物船のはなし」 柳原良平 文・絵
 サントリーのアンクルトリスのデザインで有名な柳原良平さん。
 本書は貨物船が大好きな著者が制作した美しい貼り絵の絵本と知り読むことにしました。
 あちこちにアンクルトリスが登場します。
 最近は貨物船がつく港は深く掘られているため直に貨物の受け渡しをするのが当たり前
 ですが、港が浅かった時代は貨物船を接岸せず、艀(はしけ)という小さな船を介して
 貨物の受け渡しをしていたことを知りました。
 ウイスキーの銘柄で有名な「カティーサーク」が紅茶を運ぶ高速帆船の名だったことも
 知りました。
 そしてかつて旅の主役だった船がスピードで旅客機に遠く及ばないため、豪華客船に
 活路を見出したことも。
 著者は5歳で船が好きになり生涯船を愛しました。
 太平洋戦争で彼のお気に入りの商船のほとんどが徴用船となり撃沈された悲しい記憶が
 なおさら離れがたいものにしたのでしょう。
 貼り絵の美しさを鑑賞しようという軽い気持ちで読みましたが、なかなか深い本でした。

③「南極のさかな大図鑑」 岩見哲夫 文
 以前「南極色彩魚拓図録」という本を鑑賞したことがあります。
 著者の名はその時も目にしました。
 その本には色彩魚拓の制作方法や魚を確保するための国際協力などが詳しく書かれており、
 魚自体の説明はあまりありませんでした。
 それに比べ本書は「南極のさかな大図鑑」というタイトル通り、南極の魚の特徴を
 浅い海、深い海、深海に分けてていねいに紹介していました。
 冒頭のエピソードが面白かったのでご紹介します。
 偶然船に打ち上げられた南極の魚の奇妙な姿に驚き、船医がスケッチをしました。
 さらに標本にしようと考えましたが、まんまと猫に食べられてしまったそうです。
 これが世界初の南極の魚の記録。
 当時は極寒の南極海に魚が豊富にいるとは考えられていませんでした。 
 海水温マイナス2度、普通の魚は凍り付きます。
 南極の魚(ナンキョクカジカの仲間)は赤血球を無くして血をサラサラにしたことと、
 血中に氷の粒ができたら特殊なたんぱく質で包むことで凍結を防いでいるそうです。
 南極海に大量に発生する植物性プランクトン、それを食べる大量のオキアミ。
 たくさんのごちそうがあることが、南極海に魚がたくさんいる理由です。
 考えてみるとクジラやペンギン、アザラシがたくさんいるのは、海の資源が豊富だから。
 そんな簡単なことを本書に教えてもらいました。
 南極海は低温の海水のカーテンで外洋と仕切られているそうです。
 そのカーテンを境にして温暖な海だけに住む魚と寒冷な海だけに住む魚は互いに行き来が
 できないそうです。
 これまで知っていた魚たちとは全く違う魚たちのことを知り、とても面白かったです。


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お気に入りその1933~蘭花譜

2020-05-25 12:03:55 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、蘭花譜です。

ニッカウヰスキー創業の大恩人・加賀正太郎。
彼が遺した「蘭花譜」の美しさと悲しい物語に惹かれ、これまで画集「蘭花譜~天王山大山崎山荘」と美術出版・美乃美による復刻版第一集を鑑賞してきました。
先日ネットオークションで洋書の「蘭花譜」を見かけました。
著者名の欄には知らない名前が並んでいます。
念のためサンプル画像を見ると、作品に「西暦一九三四年」と書き添えられており、ますます加賀の「蘭花譜」である可能性が高くなり、AMAZONで調べ直すことにしました。

AMAZONの内容紹介は次の通りでした。
 ※洋書のためgoogle翻訳に翻訳してもらいました。
=====
加賀正太郎は、園芸家でありビジネスマンの先駆者でした。
その蘭のコレクションは、日本で今でも流行し続けています。
1946年、加賀は、通常の植物アートの限界を超えて、花の美しさを捉える方法を模索しました。
そのために、彼は木版印刷に取り掛かりました。
これは、植物の自然な状態をよりよく表すことができるプロセスです。
加賀は、京都で最も優れた芸術家、彫刻家、印刷業者を探し、このグループから、これまでに作成された最も壮大な木版画のいくつかが生まれました。
加賀が友人や仲間のためにコピーを印刷した後、プレートは60年以上にわたってほとんど見られませんでした。
版画を再発行する試みがいくつか行われましたが、キュー王立植物園からのこの新しい出版物の品質と幅に匹敵するものはありませんでした。

蘭花譜は、これらの驚くべき木版画の適切なプレゼンテーションです。
ここでは、98点のプリントがフルカラーで再現されており、この芸術形式の細部が示されています。
研究と情報は他に類を見ないものであり、木版に関するこれまでで最も包括的な研究となっています。
また、加賀正太郎の物語を語り、20世紀前半の日本の歴史と文化を垣間見ることができます。
蘭の狂信者や植物美術愛好家、そして日本の美術史に興味のある人を魅了する美しい本です。
=====
一見、蘭花譜は原始的な日本の芸術の美しいコーヒーテーブルブックだと思うかもしれません。
しかし、この本ははるかに多く、さまざまなレベルで読者を魅了します。
読者は、裕福な日本のビジネスマン、正太郎のポストモダンな洞察を得ます。
加賀;日本における熱帯蘭ハイブリダイゼーションの始まり;そして木版印刷プロセスの詳細な調査。(アメリカ蘭協会)

蘭花譜は注目すべき本であり、20世紀初頭の注目に値する日本の蘭の木版画の物語と、それらを通して3人の著名な男性の物語が語られています。(ランケステリアーナ)

これらの写真は息をのむほど素晴らしいものです。
作者は、それらを国際的な聴衆に紹介したことで表彰されます。(オーキッドレビュー)
=====
スティーブンH.カービーは、米国地質学会の地球物理学者です。
また、日本の仙台にある東北大学やロンドンのユニバーシティカレッジで講義や研究を行っています。
土井俊和氏は、キリンビールカンパニーの製薬部門を退任しました。
木版画の芸術と実践を維持することを使命とする木版館の木版画ショップチームのメンバーです。
大塚徹は、東京と大阪のNHK放送会社で働いていた研究者、作家、ジャーナリストです。
=====

これは間違いなく加賀正太郎の「蘭花譜」です!
しかも「これまで幾度か再発行されてきたが、最も高品質な作品集としてキュー王立植物園が出版した」とまで書いています。
お宝に巡り会った気分ですぐに落札。
ワクワクしつつ本が届くのを待ちました。

「Rankafu Orchid Print Album: Masterpieces of Japanese Woodblock Prints of Orchids」
 (蘭花譜(オーキッド・プリント・アルバム)~日本木版画により描かれた蘭の傑作集)
2019/6/15 Royal Botanic Gardens Kew (キュー王立植物園) 発行

洋書ですから今回も翻訳機ポケトークには大変お世話になりました。
冒頭、蘭花譜がなぜ制作されたのか、加賀正太郎とはどんな人物か、日本独自の細密な木版画の制作過程などが紹介されています。
訳文は、きっとこういうことを書いているんだろうな、とイメージを膨らませつつ読み進めました。
例えば、加賀の「保育所」と訳していた「nursery」はきっと「育種所」のことでしょう。
全体的には7~8割は理解できたかな、というところです。
AIが繰り返し翻訳していく内に正しい翻訳に近づいていくことを願っています。

本書は図版を大判で、ところどころアップで鑑賞できたことがうれしかったです。
版画だけでなく、おそらくは版画の原画となった水彩画も多数紹介されていました。
そして何よりの収穫は、巻末に加賀が書いた蘭花譜の序文(日本語)が16ページ全て掲載されていたことです。
かなり小さく縮尺されていましたが何とか読めました。
見出しは次の通り。
 大山崎山荘
 現在の状況
 蘭花譜の編集に就て
 下絵
 蘭花譜刊行に就て最初の計画
 蘭花譜発表の動機

制作にあたり尽力してくれた後藤兼吉、池田瑞月、中村清太郎、大倉半兵衛、大岩雅堂への感謝の言葉。
第一集を300部限定で制作し、100部を世界各国の大学に寄贈、残りの200部を市販。
その売上を第二集制作の資にあて、第二集の売上を第三集制作の資にあて・・・と長く継続発展させる計画。
「300部」を木版のコンディションが最良を維持できる限度とみなした。
ところが最後には「第二集以降の出版は当分不可能」というあきらめの言葉。
昭和21年、まさに終戦直後の混乱の中、温室を維持する薪も、木版画を刷る紙も入手できず、途方に暮れる加賀の悲しい背中が見えるようです。
熱帯地域の蘭を多数そろえ、ハイブリッドを開発し続ける夢が途切れたのでした。
失意の加賀に、彼の憧れであるキュー王立植物園が蘭花譜を高く評価する日がくることを教えてあげたいと思いました。







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お気に入りその1932~さだまさし2

2020-05-22 12:43:22 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、さだまさし2です。

さだまさしのエッセイ集「酒の渚」です。
内容紹介を引用します。
=====
震災から再興したばかりの蔵から届いた“灘一”。
山本直純さんが豪快にふるまった“マグナム・レミー”。
永六輔さんの忘れられない誕生会。
先斗町『鳩』のお母さんが褒めてくれた「関白宣言」。
十津川村で呑み干した“アマゴ酒”。
大阪『ホテル・プラザ』の『マルコポーロバー』最後の夜…。
名酒と名酒場と粋人たちとの思い出を綴る、名エッセイ。
=====

〇松竹梅酒造 「灘一 上撰原酒」
大阪朝日新聞の記者が連れて行ってくれたある居酒屋。
そこの酒は主人が蔵元まで仕入れに行くという惚れこみぶり。
そんな酒が旨いのは当たり前。
ぜひ味わいたかったのですが、ネット上ではどこも売り切れ。
残念。
神戸の震災で被災して再建を諦めていたが、さだが「灘一」を褒めたたえた一文を目にして蔵元が奮起。
再興したての一本をさだにプレゼントした、とはなんとも感動的。
1作目からジーンとさせられました。
さすがはさださん。

〇森内酒店とスターレーン・ヴィンヤード 「アストラル」


〇マルコポーロバー1―直純さんのレミーマルタン 「ダブル・マグナムボトル」
幼い頃に豪快に笑うおじさんとしか知らなかった山本直純さんが天才指揮者だったとは驚き。
専用の道具無しには酒を注ぐことができない巨大ボトル「ダブル・マグナムボトル」をボトルキープにしていたとはまさに豪快。

〇タローちゃんとバーボン 「オールドグランダッド114」
俺以上にさだを理解している奴はいない、と豪語したタローちゃんの突然の死。
当時さださんが毎日泥酔するまで飲んでいた気持ち、分かります。

〇先斗町『鳩』のお母さん1―プーさんと「親父」 「ルボアジェX.O.」
ぽんとちょうって読むんですね。
そして「プーさん」はエルビス・プレスリーのこと。
京都のお母さんらしいはんなりとした呼び方がいいですね。

〇黒龍1―石田屋
〇黒龍2―妖精の酒
この作品にも「灘一」のときと同じ大阪朝日新聞の記者が登場します。
蔵付き酵母が醸す酒の旨さを「妖精が舞い降りたようだ」と表現した記者はもういません。
寂しさを黒龍で紛らわすさだ。
灘一は買えませんでしたが、黒龍は純米吟醸が買えました。
吟醸香が弱く、酸味がやや強めですが、飲み飽きない美味い酒です。
晩酌で堪能しています。
日本酒好きの息子や娘にもプレゼントしました。

〇マルコポーロバー2 「バカルディ・カクテル“モモエ”」
山口百恵の名曲「秋桜」。
提供されたときは「小春日和」というタイトルだったのですね。
当時は「コスモス」の和名が「秋桜」だということは知られていなかったそう。
今では「こすもす」は「コスモス」「秋桜」という順で当たり前のように変換されます。
これはさださんと百恵ちゃんの手柄です。

〇今里広記さん―かねたなか
〇マルコポーロバー3―中村八大先生


〇誕生会 哀悼、永六輔さん
永さんの全盛期を知らないことが残念。
その天才ぶりを改めて知りました。

〇先斗町『鳩』のお母さん2―昔の女
〇オールドバー
〇マルコポーロバー4―「マッサン」カクテルコンペ


〇新潟のオヤジ1
〇新潟のオヤジ2―オヤジの犯罪
〇新潟のオヤジ3―帰還
さださんは“新潟のオヤジ”に随分お世話になっていました。
そんなオヤジの会社が倒産した上、オヤジが刑務所に入ることになりました。
身内の罪をかぶって収監されるその日、オヤジは自ら漬けた魚をさだにプレゼントしました。
その話にいたく感激したさだ父は面識がないにもかかわらず「面会に行く」と言い出したそうです。
4年の刑期の半分が過ぎたころ、模範囚だったオヤジは釈放されました。
オヤジの帰還に多くの人が涙しました。
そんな格好良いオヤジと親しくしているさださんがうらやましい!
そのオヤジが70歳を過ぎたころから病魔に侵されます。
大腸、胃、膵臓を摘出、肝臓にも癌が見つかります。
この先を読むのは辛かったのですが、目が離せません。
最後の最後に「オヤジは今年93歳。僕より酒を飲む」と書かれていました。
やっぱりこのオヤジは格好良い!

〇先斗町『鳩』のお母さん3―還暦パーティー
〇先斗町『鳩』のお母さん4―ハートブレイク・ホテル
〇iichikoグランシアタ
〇ぷれいやぁず1―博打の横顔
〇ぷれいやぁず2―お祝いの酒


〇十津川村のアマゴ酒
十津川村は水害の多い所のようです。
北海道の新十津川町は十津川村での再起を諦めた人々が入植した町です。
神戸の震災があったとき、十津川村の人々はたくさんの木材を神戸に寄贈したそうです。
以前の水害でお世話になったお礼だそうです。
こういう話は日本中にあります。
その度に感動します。

〇さようならホテルプラザ―『マルコポーロバー』最後の夜
朝日放送の子会社「ホテルプラザ」は24時間フルサービスを日本で最初に実施したホテル。
ホテル閉館にともなう素敵なスタッフたちとの別れを感動的に書いています。

さださんの書いたものは小説、エッセイを問わずいいですね。
もう一冊くらい読んでみようかな。




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お気に入りその1931~さだまさし

2020-05-20 12:35:20 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、さだまさしです。

さだまさしの小説が好きです。
特に「風に立つライオン」や「アントキノイノチ」は絶品でした。

また、さだまさしの語りも好きで「噺歌集」というコンサートの語りだけを収録したアルバムをドライブのおともにしていたこともありました。

先日新聞広告で「酒の渚」というエッセイ集を出したことを知りました。
AMOZONで調べると「一時的に在庫が無いがすぐに入荷します」というような表示。
 ※今は普通に注文できます。
すぐに注文できないんだ、と思いつつ、他の作品に目を通しました。
すると「かすてぃら ~ 僕とおやじの一番長い日」というのが目に入りました。
サブタイトルが、名曲「おやじの一番長い日」の感動的な歌詞を連想させます。
2012年に発行されていたそうですが、今まで見逃してました。

どんな内容か、AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
若き父の記憶は、カステラの香りとともに、故郷の風景を連れてやってくる―。
作家・さだまさし、初の自伝的実名小説。
=====

早速読んでみました。
これまでの小説と随分違います。
自らのことを書いているため、照れがあるのかもしれません。
過剰なくらいにオチをつけて笑いをとろうとしています。
さらに文章がこれまでのものに比べ、粗いような気がします。
じっくり読ませようという気が無いのか、冷静に書けないのか。

おやじの若い頃から死までを息子の目を通して書いた文章は、私にとってとてもタイムリー。
数か月前に父を亡くし、いろいろな方のお話を聞く中で、改めて父の生涯を振り返ったばかりだったもののですから。
本書を読みながら、ついついわが身に重ね合わすことの多かったこと。
ただ、さださんのご家族や親しくしている方に個性的というか大物が多いため、重なるのはごくごく小さな部分だけでした。

本書にはいろいろな方が実名で登場します。
映画「まぼろしの邪馬台国」のモデルになった宮崎康平。
映画「風に立つライオン」のモデルになった医師・柴田紘一郎。
大陸でロシアや中国を相手に諜報員として活躍したさださんのお爺ちゃん。
ウラジオストクで日本料理屋を経営していた拳銃の名手、さださんのお婆ちゃん。
そして警官や不動産屋、果てはヤクザまで相手に大人げなく大掛かりな報復をしていたお父さん。

並べるだけで個性が強烈すぎます。
誰を主人公にしても立派な本が出来上がります。
今回はこの中からお父さんを主人公に選んだということ。
父親って息子にとって特別な存在ですから。

本書は出だしこそギクシャクしていましたが、1/3を過ぎると勢いが出てきてラストまで一気呵成に読ませました。
見事なもの。
そう、これこそさだまさし作品!
ああ面白かった!

台風被害で材木を流されてから不遇な時代を過ごしたさださんのお父さんですが、息子の活躍を喜び、また本書によってその生涯を知られるところとなり、幸せだったといえるのではないでしょうか。
さださん本人も大好きなお父さんのことを書き残すことができて幸せだったと思います。

さて当初の目的だった「酒の渚」が届きました。
続けて読むことにします。

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お気に入りその1930~彼方のアストラ

2020-05-18 12:49:32 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、彼方のアストラです。

マンガ大賞2019年で1位を獲得した「彼方のアストラ」がスゴイと聞き早速読みました。
休日の一日で読み切りました。
確かにこれは素晴らしい作品です。
SF、サバイバル、淡い恋愛、ユーモア・・・全てを兼ね備えています。
新たな視点に立つ世界観とサスペンス、推理小説の要素も加わったことで分厚い作品に仕上がっています。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
宇宙への往来が当たり前になった近未来。
高校生のカナタ、アリエスら9名は“惑星キャンプ”に旅立つ。
未体験の宇宙旅行に胸を躍らせながら惑星に降り立った彼らを待ち受ける、予想外の事態とは!? 
=====

未読の方の楽しみを奪うわけにはいきませんので、詳しく書けないのが残念です。
よくもまあこんなに掘り下げたストーリーを考えたものです。
細かい矛盾点もありますが、片目をつぶるだけで思い切り楽しめます。

物語の中で9人の背景が徐々に明らかにされていき、やがて9つの点がひとつに結びつく場面は鳥肌ものです。
そして彼らは新たな家族として、それぞれが新たな人生を歩んでいくことになります。
本書はごく普通の高校生たちがたくましく成長していく記録でもあります。

大団円の7年後を描いた最終章がこれまた素晴らしい。
特に他の8人を裏切っていた刺客の環境変化が凄まじいです。

未読の方にはぜひ読んでもらいたい素晴らしい作品です。

以前「陽だまりの彼女」という小説を読んだときに、ラストで“彼女”の意外な正体を知り、すぐに最初から読み返して、同じ物語を違う視点で味わい直すという素晴らしい体験をしたことがあります。
本作品も同様。
彼らの秘密を知った上で読み返してみました。
彼らの心の内を知りながら読むので、同じ物語なのに違う視点で味わい直すことができました。
この読み方もぜひおすすめです。

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お気に入りその1929~珪藻美術館

2020-05-15 12:44:11 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、珪藻美術館です。

「たくさんのふしぎ 珪藻美術館 ~ ちいさなちいさなガラスの世界」という絵本を読みました。

この絵本を紹介する前に「珪藻観察図鑑」という本に少し触れます。
「珪藻観察図鑑」は、新聞か何かで紹介されており、サブタイトルが気に入って読むことにしました。
“ガラスの体を持つ不思議な微生物「珪藻」の、生育環境でわかる分類と特徴”
毎日風呂上がりに珪藻土バスマットの驚くべき吸水力のおかげで快適に過ごしているのに、珪藻について何にも知らなかったことに気づきました。
そうか珪藻って「ガラスの体を持つ不思議な微生物」なんだ、と妙に感心して図鑑を読むことにしたのですが、実際に読んでみると学者が書いているだけに専門的過ぎ。
ところどころにあるコラムが救いですが、それさえも面白みに欠けます。
あくまで数万種もいる珪藻の見分け方を伝授することに集中しています。
これでは素人が面白いわけがありません。
いかに珪藻が美しいか、魅力的なデザインをしているか、面白い生態をしているかが知りたいだけだったのに・・・。
期待した写真も、一般的な水中微生物の顕微鏡写真がどれも半透明なため、珪藻から取り立ててガラスを感じませんでした。
文章も写真も期待外れでがっかりしました。
著者とは求めているものが違ったようです。

愚痴はここまで。
ガラスでできている珪藻の美しさを何とか鑑賞できる本はないか?
しかも専門的過ぎない解説も欲しい!
という願いを満足してくれる本がありました。
それが今回ご紹介する絵本「たくさんのふしぎ 珪藻美術館」です。

ところがこの絵本、古書の価格が高値に吊り上がっていて手が出ませんでした。
きっと珪藻の美しさを鑑賞しつつ、専門的過ぎない解説を読む、という点において優れているからなのでしょう。
ヤフオクに出品されると通知がくるようにセットして待つこと数週間。
ようやく予算の範囲で入手することができました。

さて絵本の感想は・・・。

数万種の内のごく一部、比較的大きなものを紹介していました。

ミツカドケイソウ、ヨツカドケイソウ、ミスミケイソウ、ギョロメケイソウ、
コバンモドキケイソウ、サンカクガサネケイソウ、メガネケイソウ、クチビルケイソウ、
ジュウジケイソウ、ザラメケイソウ、クモノスケイソウ、タテゴトケイソウ、
マユケイソウ、コアミケイソウ、カザグルマケイソウ

これらを並べて絵画を描いている。
バックが黒い暗視野照明とバックが白い明視野照明の見え方による違い。
同じ暗視野照明でも3種類の光の当て方による違い。
マユゲ・マツゲがケイソウを並べるのに一番使いやすい道具。
ケイソウを扱う時はホコリが一番の大敵のため万全の準備が必要。
ケイソウで絵を描く人は世界で数人しかいないそう。
メガネケイソウの名前は、このケイソウの網目が見えるがどうかで顕微鏡の精度を確認したことに由来する。

なるほど勉強になりました。
これでケイソウの基本は身に付いたということで、再び「珪藻観察図鑑」にチャレンジしてみましたが、やっぱり馴染めませんでした。
その理由が判りました。
ひとつひとつのケイソウの名前が〇〇ケイソウという日本名ではなく、横文字の正式名称なのです。
これでは名前をひとつも覚えられません。
せめて「ミツカドケイソウの一種で正式名称は〇〇」という書き方にして覚えやすくして欲しかったです。
相手を身近に感じる第一歩は相手の名前を知ることから始まると思います。




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お気に入りその1928~土に贖う

2020-05-13 12:38:23 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「土に贖(あなが)う」です。

著者・河崎秋子さんは北海道の別海で羊飼いをしながら小説を書いていた方で、つい先日羊たちの世話をやめて小説家に専念したというニュースが流れました。
やはりご当地作家の桜木紫乃の作品をたくさん読んだので、河崎秋子も読んでみることにしました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
明治時代の札幌で蚕が桑を食べる音を子守唄に育った少女が見つめる父の姿。
「未来なんて全て鉈で刻んでしまえればいいのに」(「蛹の家」)。
昭和35年、江別市。
蹄鉄屋の父を持つ雄一は、自身の通う小学校の畑が馬によって耕される様子を固唾を飲んで見つめていた。木が折れるような不吉な音を立てて、馬が倒れ、もがき、死んでいくまでをも。
「俺ら人間はみな阿呆です。馬ばかりが偉えんです」(「うまねむる」)。
昭和26年、レンガ工場で最年少の頭目である吉正が担当している下方のひとり、渡が急死した。
「人の旦那、殺しといてこれか」(「土に贖う」)など北海道を舞台に描かれた全7編。
=====

明治から昭和にかけての北海道を舞台にした短編集です。
生まれ育った地が舞台の上、それなりに年を食っているので、自分の記憶と重なる部分が多かったです。
今回は本の感想よりも自分の記憶に残る風景を書き留めたいと思います。

「蛹の家」(養蚕業者)
物語は明治時代の札幌・桑園地区が舞台。
私と妹が桑園で生まれたことや、父の実家が山形で養蚕をしていたため、興味深く読みました。
50年も前になりますが、小学生だった私は昆虫少年でした。
たくさんのカイコガの幼虫がクワの葉をモリモリ食べる姿をワクワクしながら見たことを鮮明に覚えています。
兄弟が多かった父は幼いころ倉庫のカイコ棚の脇が寝床で、夜通しサクサクと葉をはむ音が聞こえていたといいます。
そんなことを思い出しつつ読んだ北海道の養蚕業の栄枯盛衰物語は、まさに目に見える様、耳に聞こえる様でした。

「頸、冷える」(ミンク飼育業者)
学生時代にサイクリング部だったこともあり、札幌に戻ってからも自転車であちこちに行きました。
石狩市生振を走っていたときに目の前の草むらから黒い獣が顔を出しました。
上半身まで出てきたあたりで私に気づき、しばしの間にらめっこをしてUターンしていきました。
小柄で細長くしなやかな獣。
おそらくあれがミンク。
むかし飼育されていて野生化したのでしょう。
この作品もそんなことを思い出しつつ読みました。

「翠に蔓延る」(ハッカ栽培農家)
北見のハッカが産出量で世界一だったことは知りませんでした。
戦後ブラジルにシェアを奪われ、さらに合成品で代用されるようになり、一気に衰退したことも知りませんでした。
今はハッカあめなどが北見名物として細々と続いているだけ。
まさに栄枯盛衰物語です。

「南北海鳥異聞」(海鳥採取)
伊豆諸島の鳥島でアホウドリ採取に明け暮れた男。
体が重いアホウドリはすぐに飛び立つことができないため棒で叩くだけで大量に採取できました。
男の屈折した心は鳥をたたき殺すことで満たされていました。
美しい羽根が西洋の貴婦人に珍重されたことから事業化され、アホウドリが絶滅する直前まで続いたとは何とも残酷な話です。
各地を流転した男はやがて根室に入り、白鳥採取にむかしを重ねます。
まさか白鳥たちの強力な翼、脚、くちばしによる逆襲で落命するとは思ってもいなかったことでしょう。

「うまねむる」(蹄鉄屋)
かつて馬は農家の貴重な労働力でした。
腕の良い蹄鉄屋に遠くから馬を連れて男たちが訪れたと、本書には書かれていました。
私の生まれ育った辺りが住宅地だったことと、すでに機械化が進んでいたため、働く馬を見たことはほとんどありません。
一度だけワラを山のように積んだ馬車がゆっくりと進んでいくのを見かけたことがあるくらいです。
この作品で馬は畑を耕す途中で脚の骨が折れて薬殺されます。
その後の埋葬や葬儀の中で語られていた言葉が印象的でした。
「馬たちはあちこちに故障を抱えながらも懸命に働き、やがて力尽きて死んでいく」
農家の人々は故障を知りながらも馬を働かせ続けたのですね。
農家が供養碑として馬頭観音を建て、懇ろに葬った気持ちが少しだけわかった気がしました。

「土に贖う」(レンガ工場)
札幌にほど近い江別の野幌丘陵には3mもの厚さがある良質な粘土層があったことからレンガ工場が林立したそう。
需要の増大に応えるべく過重労働を続ける労働者たちが描かれています。
レンガがこれほどもてはやされた時代があったことは、この作品を読むまで知りませんでした。
札幌の古い建物といえば、レンガ造りの建物より札幌軟石造りの建物の方が多いように思います。
当時のレンガ工場の繁栄ぶりを知ると、レンガ造りの建物はたくさん建てられたけれど、解体されて後まで残らなかっただけなのかも、と想像をめぐらしました。
ここまで書いてもしや?と思いついたことがあります。
それは石狩市や札幌市北区で見かける古い古いブロック住宅のこと。
戸建、二戸建の住宅群が団地として大造成され、その多くが今も残っています。
あの大量のブロックはもしかしたら江別のレンガ工場で作られたものだったのでしょうか?

「温む骨」(陶芸家)
発表当初は「土に贖う」と一体の作品でしたが、書籍化するにあたり、独立した作品に改めたそうです。
こちらは「土に贖う」の主人公の息子が主人公。
北海道拓殖銀行で働いていたが、銀行破綻後陶芸家に転身して、やがて野幌の粘土で独自の作風に目覚めるまでを描いています。
「土に贖う」の焦点をはっきりさせるためには、「温む骨」は分離して良かったと思います。
さらにいえば「温む骨」はこの短編集に載せない方が良かったとも思います。
本書の他の作品は北海道を舞台にした栄枯盛衰物語であり、「温む骨」は主題から大きく外れています。
この作品を削って全6篇とするか、全く別の作品に差し替えた方が良かったと思います。

改めて書きますが、本書は北海道を舞台にした栄枯盛衰物語です。
懐かしい話、初めて知る話、いろいろありました。
こういう話を丁寧に取材して小説にしてくれた著者に感謝を申し上げます。
時代の変化に翻弄される人々の人生ドラマをとても興味深く読むことができましたし、ぐいぐいと読ませる筆力は見事でした。
牧畜というまさに北海道から始まった仕事に就いていた著者だからこそ、当事者たちを深いところまで理解し表現することができたのではないでしょうか。

むかし父の友人から聞いた話です。
「鴻ノ舞金山からススキノに遊びに来る男たちはリュックサックを札束で一杯にして来たものだ」
あの話も栄枯盛衰物語でした。
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お気に入りその1927~風神雷神2

2020-05-11 16:21:55 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、風神雷神2です。

原田マハのアート小説「風神雷神」の下巻。

上巻の感想で、いくら何でも史実に反し過ぎだろう!と本に文句を言いつつも、次の展開が楽しみで仕方がありません、と書きました。

前回ネタバレを心配して具体的な流れについて触れませんでしたが、改めてAMAZONの内容紹介を読んでびっくり。
ほとんどの展開が書かれているではありませんか!
これなら遠慮なく書けます。

天正少年使節団に同行してヴァチカンに赴いた俵屋宗達は、ダビンチの「最後の晩餐」やミケランジェロの「天地創造」に感激した後、少年カラヴァッジョと出会います。
時代が違いすぎてダビンチやミケランジェロと直接会えなかったのは残念ですが、作品を通して彼らの天才ぶりを知るあたりはさすがにアート小説。
そしてカラヴァッジョとの運命的な出会い。
その後一団は日本への長い帰路につくところで物語は終わります。

著者は何を目指してこの作品を書いたのでしょうか?
宗達の代表作・風神雷神図屏風に登場する風神と雷神に相当する神が西洋にもいた、というたったひとつの事実から構想を練り上げたのかもしれません。
 ※サブタイトルにあったユピテルとアイオロスがそれ。

もし本当に宗達がダビンチやミケランジェロの作品を目にした上、油彩を習っていたら、帰国後の作品に大きく影響したことでしょう。
琳派の台頭どころか、日本画の枠を超えた作品を残したはず。

あまりに奇をてらい過ぎて収拾が付かなくなった感があります。
物語の最後に、ダビンチやミケランジェロの作品を宗達がどう消化し、作品に生かしたかを著者なりの視点で書き加えると違った物語になったかもしれませんが、かなり無理があります。
著者のファンとして、久しぶりに満足できない作品でした。
残念。

ちなみに物語に登場したカラヴァッジョはまだ画家見習いのため、その後の代表作は紹介されませんでした。
昨年偶然にもカラヴァッジョの特別展を観に行っていたため、彼の作品の数々と、彼の数奇な生涯を思い出しながら、物語で描かれている以上に感慨を持って読むことができました。

最後に本書を読んで勉強になったことを書きます。
天正少年使節団がバチカンを訪問する旅がどんなものだったのかを実感することができました。
蒸気機関さえない風のみが頼りの帆船での旅というのは、何か月も季節風を待って次の港に移動するということを繰り返したのです。
そんな気の遠くなるような旅だったとは知りませんでした。
逆を言うとイエズス会の宣教師たちもそういう大変な旅の末に日本に赴いたのです。
天正少年使節団は、長崎からマカオ、インドのゴア、大西洋に浮かぶ島セント・ヘレナを経て、ようやくポルトガルのリスボンに到着。
ここからは陸路でスペインまで行き、地中海を船でイタリアまで移動。
そしてようやくヴァチカンにたどり着きました。
出発から3年もかかったそうです。
往復で6年ですか。
帆船での旅ってこういう時間的スケールの旅だったのですね。
まさに命がけ、身内とは今生の別れとなったことでしょう。
この時間的スケールと他力に頼った航法は現代の宇宙の旅に似ています。
はやぶさなどの宇宙探査機は、惑星の重力を利用するスイングバイという航法を屈指することにより自らのエネルギーを使わずに速度を増減させながら航行しています。
はやぶさがイトカワのサンプルを持ち帰るのに要したのは7年でした。
当時の旅を知ると、数年がかりの有人惑星間航行なんてごく当たり前に実現するように思えてなりません。



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お気に入りその1926~エアコン工事

2020-05-08 12:28:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、エアコン工事です。

今年のGWはゴールデンウィークではなく“がまんウィーク”。
どこにも行けないので、自宅のエアコン新設工事をしました。
エアコン本体と諸々の部材を買いそろえ、ホールソウやドリルなどを借りて当日をむかえました。
万全の準備をしたつもりでしたが、素人工事の悲しさ。
誤算続きで半日どころか丸一日かかる大工事となってしまいました。

まずはエアコン設置位置の誤算。
妻が希望した位置付近の下地を調べてエアコン取付板をがっちり固定しました。
ところが配管を外に出すための壁穴を開ける前に長いドライバーで壁の中を探ると、ボードから50ミリほど向こうに筋交いが入っていることが判明。
耐震強度を落とす訳にはいきませんから設置位置を数10センチ移動して切り抜けました。

次はコンセント増設工事の誤算。
既存コンセントの真上、エアコン付近に埋込型コンセントを増設する予定でした。
四半世紀前の建築図面では間柱にコンセントが固定されており、その上方には障害物がないはずでした。
ところが既存コンセントを外して驚き。
ボードにはさみ金具で固定しています。
なぜ間柱に固定していないの?
数年前のリフォームでベランダ窓を大きくしたことを思い出しました。
間柱とコンセントは移設されていたのです。
悪い予感がしましたが、コンセントの予定位置に穴をあけて配線を壁の中に通すため、番線を下ろしました。
いろいろな角度から通してみましたがちょうど真ん中あたりで障害物に当たり進めません。
下から通しても同じ。
リフォームの時に下地を確認しなかったことが悔やまれます。
結局埋め込みを諦めて露出型コンセントを設置しました。
部材を買いに行ったりで大きく時間をロスしました。

最後はエアコン本体の固定の誤算。
エアコン左側に配管穴をあけて配管を通し、エアコンを取付板に固定して完了するはずが、配管が邪魔して固定できません。
工事説明書を読み直し、ドレンホースを左に差し替えるのを忘れたことに気づくまで1時間以上も悪戦苦闘。
まさに素人の悲しさ。
こんな簡単なことでつまづいていたなんて恥ずかしい・・・。
脚立の上に乗り、エアコン本体を支えながら、妻に手伝ってもらう作業を続け、体力をすっかり消耗。
危なくふくらはぎがつるところでした。

でも誤算はここまで。
この後の屋外工事はすべて順調でした。
室外機を設置して配管・配線を接続し、配管カバーを取り付ける作業は、あっという間に終わりました。

日頃の運動不足がたたり、その後の2日間は筋肉痛に苦しめられました。
がまんウィークのため、家でゴロゴロしながら過ごすことができたので助かりました。

長年にわたり北海道の住宅にエアコンはいらない!と主張していた私ですが、妻の願いを聞き入れ、体力の限界まで消耗しつつ自らの手でエアコンを設置したことで、少しは株が上がったかな?


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