鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその972~かたづの!

2014-10-31 12:38:53 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「かたづの!」です。

中島京子著「かたづの!」を読みました。
著者の作品は初めてです。
著者の直木賞受賞作「小さいおうち」は映画でも話題になりました。

本書に興味を持った理由は、AMAZONの内容紹介を引用した後で書きます。

=====
慶長五年(1600年)、角を一本しか持たない羚羊(かもしか)が、八戸南部氏20代当主である直政の妻・袮々と出会う。
羚羊は彼女に惹かれ、両者は友情を育む。
やがて羚羊は寿命で息を引き取ったものの意識は残り、祢々を手助けする一本の角――南部の秘宝・片角となる。
平穏な生活を襲った、城主である夫と幼い嫡男の不審死。
その影には、叔父である 南部藩主・利直の謀略が絡んでいた――。
東北の地で女性ながら領主となった彼女は、数々の困難にどう立ち向かったのか。
けっして「戦」をせずに家臣と領民を守り抜いた、江戸時代唯一の女大名の一代記 。
著者初の歴史小説にして新たな代表作。
=====

へー、女の大名がいたんだ!というのが第一の驚き。
数々の謀略に対し非戦を貫いたというのが第二の驚き。
さらに題名の「かたづの!」が角が1本のカモシカのことだというのが第三の驚き。
早速読むことにしました。

主人公の袮々は南部藩主の叔父に夫や息子を謀殺され、娘までも死に追いやられます。
さらに先祖伝来の豊かな地・八戸を取り上げられ、人心が荒れた遠野に追いやられます。
何度も家臣たちの堪忍袋の緒は切れそうになります。
女主人・袮々は、
「出来うる限り戦をしてはならない」
という兵法を座右の銘にしています。
それこそが家臣や領民を守る最も有効な策だと信じています。
男たちのように名誉のために死を選ぶことを良しとしません。
男たちの名誉の死のかげには、女子ども、領民の大きな犠牲が必ず付きまとうことを繰り返し訴え、家臣たちの蜂起を思いとどまらせます。
例え身内を殺されようが、先祖伝来の領地を奪われようが、その時々の最も有効な策で家臣や領民を守り通します。
トップが真に守るべきものは何か、を教えられました。
歴史上でもっと広く知られるべき人物がここにもいたことを知りました。

本書は実話を元にした歴史小説ながら、ファンタジーの要素も十分です。
 ・角だけになったカモシカが人に憑依しお告げをする。
 ・カッパの首領が袮々に恋し、遠野に移り住む。
 ・死した重臣の霊が吹雪に迷う袮々たち一行を誘導する。
 ・蝦夷の将の霊が恨み言をいいに現れる。 

歴史小説としてだけでも十分魅力的なのに、秘宝・片角(かたづの)に代表される不思議話が良いスパイスになって味わい深い作品に仕上がっています。

著者は3.11の大震災後に東北の人々を勇気づけたいと願っている中、「八戸に女大名がいた」という新聞記事を目にしたことから調べ上げ書き上げた壮大な物語。
著者の志の高さが物語全体を明るく照らしているように感じました。


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お気に入りその971~竹鶴政孝パート234

2014-10-29 12:37:18 | 竹鶴
今回のお気に入りは竹鶴政孝パート234、ボトル紹介①です。

朝ドラ「マッサン」に関連したボトルをご紹介します。(写真左から①②③)

マッサンはスコットランド留学中の2年間に複数の蒸溜所で修業しました。
今回はそれらの蒸溜所で販売しているボトルと若干の逸話をご紹介します。

①ロングモーン15年(ミニチュア、非売品)
マッサンがスコットランドで初めて研修を受け入れてもらったのはロングモーン・グレンリベット蒸溜所です。
彼はここで1週間学びました。
ドラマでは、断られても断られても頼み込むマッサンを受け入れ、ポットスチルを叩いて蒸溜過程を確認することを学ぶシーンがありました。
今や世界でも余市蒸溜所だけといわれる石炭直火蒸溜。
余市の蒸溜方式は、ロングモーン・グレンリベット蒸溜所に倣ったものだそうです。

②ヘーゼルバーン8年
ドラマに、マッサンがスコットランド修業中に眠たい目をこすりながら実習ノートを書いているシーンが出てきました。
そして日本に帰ってきてからもこのノートを片手にウイスキー作りの実現に向けて熱弁をふるうシーンも。
そのノートこそがジャパニーズウイスキー誕生の決め手となった「竹鶴ノート」です。
竹鶴ノートの舞台となったのが、マッサン最後の研修先であるヘーゼルバーン蒸溜所です。
新婚のリタを伴い、2~3か月もの長期間研修に励んだそうです。
この蒸溜所は長く閉鎖されていましたが近年再開されました。
そのため、今入手できるのは写真のような若いウイスキーばかりです。

③ザ・グレンリベット12年
このウイスキーを製造しているグレンリベット蒸溜所はグレンリベットの名が共通ですが、①の蒸溜所やマッサンとは関係がありません。
グレンリベットを名乗る蒸溜所が増えたため、裁判でここだけが製品名の冠に「ザ」を付けることが認められたという逸話が面白いのでオマケで載せました。


最後に。
新聞やTVで「マッサン」の北海道ロケを行っていることは知っていました。
余市での撮影風景が紹介されていましたので、当然撮影は余市だけと思っていました。
ところが先週末に札幌の前田森林公園で撮影していたと知りました。
そんなに身近なところで?
考えてみると札幌は余市と千歳空港の中間にあり、スタッフの移動時間にロスは出ません。
また中心部を少し外れると広々とした北海道らしい風景が広がります。
確かにマッサンが北海道に来たばかりのシーンや、スコットランドでのシーンを撮影するのにぴったりです。
地元の見慣れた風景が、どんなシーンに使われるのか、楽しみがひとつ増えました。

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お気に入りその970~日本晴れヨーグルト

2014-10-27 12:41:22 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、日本晴れヨーグルトです。

カネダイという会社の手作り味噌セットにオマケとして付いてきたヨーグルトです。
これはヨーグルトと甘酒、酒粕、豆乳を原料とした濃縮原液だそうです。
牛乳を入れて発酵させると飲むヨーグルトができると書いてありました。

我が家では朝食を食べるのは私だけ。
いつもパンと牛乳とフルーツなどを食べています。
このヨーグルト原液が届いてからは、朝は飲むヨーグルトに変わりました。

毎朝、ヨーグルトをよくかき混ぜてからコップに注ぎ、飲んでいます。
発酵中なので微炭酸が効いている分、酸味を強く感じます。
たいがいはストレートで飲んでいますが、たまには蜂蜜やシロップなどで味付けもします。
飲んで減った分は牛乳を入れてよくかき混ぜ、室温で発酵させます。
夜、仕事から帰ったら発酵具合をチェック。
十分発酵していたら冷蔵庫に入れます。
もう少し発酵させたい場合は翌朝まで室温に置きます。
そのとき、よく撹拌して善玉菌に酸素をプレゼントし、発酵を促進します。

毎日朝晩にヨーグルトの発酵具合を確認していると、生き物なんだなと改めて実感します。
そして自分の腸内環境も良くなったことを実感します。
これまでも快便でしたが、さらに良くなりました。

日本晴れヨーグルトはたまたまオマケで付いてきたのを試しただけ。
もっと美味しい、腸内環境の改善に適したヨーグルトがあるかもしれません。
ただ言えるのは、腸内環境で悩んでいる方は、下手な薬を飲むくらいならこういう方法を試してはどうですか?ということ。

このヨーグルトの広告に「生きた善玉菌を腸に届ける」と書いてありますが、それが誇大広告でないことは体験済みで保証できます。
ただしこのヨーグルトがこの先もずーっと発酵を続けてくれるのかはまだ不明ですが・・・。

最後に。
カネダイの手作り味噌セットについて。
我が家では大豆味噌と麦味噌の2種類を買っています。
最初に50度の湯冷ましを作ります。
樽に蒸煮スリ大豆(または麦)と乾燥こうじを入れ、湯冷ましを入れます。
よく混ぜて、空気を抜き、表面をサラシでカバーし焼酎を湿るだけふります。
あとは樽のふたをして発酵を待ちます。
3か月ほどで手作り味噌の出来上がり。
大豆を蒸し煮してすりつぶすという手間のかかる作業が済んでいる半製品なのでとっても簡単。
誰でもわずかの時間で失敗なく手作り味噌が作れるんですよ。
しかも標準の10㎏セットの他に半分の5kgセットまであります。
味噌の方は10年くらい続けているので、ヨーグルトと違い間違いなくお勧めできます。
手作りにちょっと興味のある方は試してみてはいかがですか?

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お気に入りその969~竹鶴政孝パート233

2014-10-24 12:48:33 | 竹鶴
今回のお気に入りは竹鶴政孝パート233、「蘭花譜」です。

先日、高視聴率番組「開運なんでも鑑定団」に加賀正太郎の「蘭花譜」が登場しました。
蘭作りに熱中している方が、5年ほどかけてオークションなどですべて揃えたそうです。
スタジオ狭しと並べられた花譜は、実に壮観でした。
あちこちクローズアップしながらの紹介に、思わずTVに近寄って鑑賞しました。
これまで「蘭花譜」は画集で鑑賞しただけで実物を見たことがありませんでした。
TV画面を通してではありますが、その大きさにまず驚き、そしてその美しさにあらためて感嘆しました。

版画、油絵、モノクロ写真、解説書のすべてが揃っていたこともあり、その評価額は何と350万円!
ご本人は満足げでしたが、蒐集にはもっとかかったのでは?と推察します。

朝ドラ「マッサン」が世に引き出してくれた名品紹介でした。
さて次はどんな「マッサン」効果があるのかな?

今回、加賀正太郎とマッサンの関係には触れずに筆を置きます。
昨年2月に、当ブログで詳しく書いたものですから・・・。
その記事をおまけで付けます。
ご興味がありましたらお読みください。

=====

前回「彌谷さんと私」をご紹介しましたが、今回は加賀正太郎著「蘭花譜~天王山大山崎山荘」です。

首を長くして待っていた「蘭花譜」がやっと届きました。
早速ページをめくると、期待以上の美しい蘭の花譜が目に飛び込んできました。
次のページも、そのまた次のページも・・・。
とても贅沢な気分になりました。
加賀があえて採用した、浮世絵の技術を生かした手刷り木版画の見事なこと。
最近は博物図譜を鑑賞するのがマイブームで西洋の代表的な植物図譜をよく目にしていますが、それらと甲乙つけがたい素晴らしい仕上がりです。

本書は、海外の研究機関にも送られたという第1集に掲載された104点すべてを収録した上、未発表に終わった第2集用に描かれたであろう原画60点も収録していました。
そして加賀本人による熱い序文。

まさか未発表の原画まで収録されているとは思いませんでしたので驚きました。
本書が絶版とはなんとも惜しい!
30年もの長きにわたり蘭の新種つくりに情熱をそそぎ、そしてそれを日本伝統の木版画に仕上げ、世界に発信した日本人がいたことを、もっと多くの日本人に知って欲しいと思います。
復刻されることを願います。 

ちなみにこの「蘭花譜」を制作した加賀正太郎の本業・・・。
彼はニッカウヰスキーの前身、大日本果汁の設立に尽力した実業家で、初代の筆頭株主でした。
当時の余市では、加賀を旦那様、竹鶴を専務と呼んでいたそうです。
彼のおかげでニッカは創業し、ウイスキーを寝かせるばかりで販売できない苦しい時期を乗り切ることができました。
加賀は竹鶴にウイスキー作りの理想郷余市で腕を振るうチャンスを与え、竹鶴は「品質のニッカ」と世間に認めさせたことでその恩に報いました。
加賀がもし今も生きていたら、本場のスコッチを圧倒し、世界一の品質と評価されていることをどれほど喜んだことでしょう。

そんな彼のもう一つの顔が蘭栽培家。
こちらの方は趣味でしたが、それでもさすが実業家。
「日本有数の」という形容詞がつくほどの大栽培家だったそうです。
その彼が戦争の陰が忍び寄る中、30年にもわたった蘭研究の成果を失うことを恐れ、何とか後世に伝えたい思い制作したのが「蘭花譜」でした。
100部を海外を含めた学術・研究機関に寄付し、残る200部を国内で販売したそうです。
その際、植物図譜として一般的な銅版画や石版画ではなく、浮世絵の技術を生かした手刷り木版画を採用しました。
当時の印刷技術をいろいろ試した結果、木版画を採用したというエピソードは日本人として誇らしかったです。
蘭1140種の中から優良種104種を選び、1作品あたり10~20枚もの版木を使い、100回も刷らせるというこだわりようだったそうです。
ちなみに版木枚数、刷り回数は、ともに浮世絵の2~3倍の細密さ。
そのこだわりのおかげで、彼が伝えたかった蘭の繊細な美しさは、印刷を通しても十分伝わってきます。

最後に加賀の序文から伝わった戦争の怖さについてのエピソードをいくつかご紹介します。

・薪が入手できず温室の維持が困難になった。貴重な蘭の枯死は無念。
・製本用の台紙が入手できず、花譜をバラバラの状態で完成とするしかなかった。
・刷師が空襲で行方不明になった。
・絵師が蘭花譜の完成を待たずに他界した。(医師・薬品・栄養の不足?)

実業家の彼でさえ、こんな状況に追い込まれたのですね。
あらためて戦争反対!

=====
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お気に入りその968~竹鶴政孝パート232

2014-10-22 06:47:41 | 竹鶴
今回のお気に入りは竹鶴政孝パート232、スペシャルブレンドウイスキーです。

ニッカウヰスキーのホームページに80周年を記念して歴代の代表的なボトルが紹介されています。
その中に「スペシャルブレンドウイスキー」として見覚えのあるボトル写真が掲載されていました。
それは以前、柴川ビルのHPで見かけたタテ縞模様が刻まれたボトルでした。
2008年に大阪の芝川ビル地下の金庫室で木箱に入ったウイスキーが発見された、そのときのボトルです。
この芝川ビルを建てたのは柴川又四郎。
マッサンこと竹鶴政孝ととても縁の深い人物です。
彼は竹鶴政孝・リタ夫婦の大阪在住時代の大家さんです。
また当時彼の娘さんはリタ夫人から英会話を習っていました。
それがきっかけになったのか、大日本果汁(株)設立時の出資者のひとりになりました。
2008年に発見されたウイスキーは、昭和25年以降に出資配当かお歳暮として贈られたものでしょう。

愛読している「ニッカウヰスキーwikipedia」では、スペシャルブレンドウイスキーのボトル写真をこれまで詳細不明としてきましたが、ニッカウヰスキーのHPに掲載されたことでその写真を採用しました。
スペシャルブレンドウイスキーについてwikiに書かれていたコメントが簡潔かつ的を射ていたので引用します。
=====
竹鶴政孝の伝記で欠かせない「泣く泣く出した3級ウイスキー」のフルボトル版。
余市にも宮城峡にも展示されていないが、ニッカウヰスキー80周年ヒストリーの年表にひそかに紹介されていた。
=====

「泣く泣く出した3級ウイスキー」の逸話とは?
ご存じない方にご紹介します。
原酒が入っていなくても3級ウイスキーと認められていた昭和25年。
そんなイミテーションウイスキーが飛ぶように売れていました。
あれはウイスキーではない!と抵抗を続けながらも経営危機からやむを得ず3級ウイスキーの販売を決意する政孝。
工場の広場に全従業員を集め、泣く泣く3級ウイスキー作りを宣言すると発表した政孝に従業員も涙したそう。
そして3級の上限ぎりぎりである5%の原酒を入れて発売したのがスペシャルブレンドウイスキーでした。
このウイスキーは「日本のウイスキーの父」「品質のニッカ」が経営を続けるためにプライドを捨て泣く泣く譲歩したウイスキーだったのです。

まさに政孝を語る上でなくてはならない逸話。
ニッカウヰスキーのオールドボトルを蒐集している者としては欠かせないボトルです。
いつかは入手したいと願っていますが、これまでネットオークションで見かけたことがありません。
フルボトルには角壜と丸壜がありますが、オークションに出たら相当な高値が付くことでしょうね。

なおスペシャルブレンドウイスキーにはポケット壜があり、これまでオークションにも出ています。
昭和25年当時はポケット壜がよく売れていたそうなので、数が残っているのでしょう。
私の手元にも偶然とはいえ、スペシャルブレンドウイスキーのポケット壜があります。
さらに当時の販促ポスターも。
どちらもスペシャルブレンドウイスキーだとは知らずに入手しましたが、今となっては「泣く泣く出した3級ウイスキー」の逸話と直接結びつく大切なコレクションです。
これまで以上に愛着が深まりました。





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お気に入りその967~守り人シリーズ⑦

2014-10-20 13:05:27 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、守り人シリーズ⑦です。

今回で守り人シリーズについて書くのは最後にします。
まずは「天と地の守り人」の3部作について。

 第8巻「天と地の守り人 第一部 ロタ王国編」
 第9巻「天と地の守り人 第二部 カンバル王国編」
 第10巻「天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編」

3部作は皇子チャグムがあれだけ「なりたくない」といっていた王になるまでが描かれています。
大国タルシュ帝国の枝国になる道を選ぶか否か?
枝国に自由はない、ロタ王国やカンバル王国と同盟し対抗する道を選ぶべき。
ヨゴ枝国出身のヒュウゴの提案は、成功する可能性が限りなくゼロに近い策。
それでも民の幸福を願えばこそ命を懸けて臨むチャグム。
泥と血にまみれ、深い手傷を負い、それでも突き進みます。
タルシュの軍勢が圧倒的な武器と戦法で新ヨゴの都に迫るそのときに、ロタとカンバルの兵を率いたチャグムが登場し、タルシュ軍を撃退します。
こうして新ヨゴ皇国だけではなくその周辺国はタルシュ帝国の脅威から解放され、平和が訪れます。
めでたし、めでたし。

見事に大団円を迎えた異世界大河小説にまずは拍手を送ります。
それぞれの国や人に事情があることを丁寧に描いた物語は、勧善懲悪を否定しています。
まさに現実世界の国際情勢や人間関係が重なります。
これを読んだ子ども達は、国際紛争や人々の争いの裏にはそれぞれの事情があり、簡単に解決できないことを学んだと思います。
また物語の前半部では、支配する者と支配される者、差別する者と差別される者が繰り返し描かれており、人種や文化がすべて平等に尊ばれるべきことが訴えられています。
世界平和、差別の撲滅などを世界の子ども達に強く訴えた守り人シリーズ。
国際アンデルセン賞の受賞は、世界中の人々の願いがもたらしたことがわかりました。

また教訓モノとして読むのではなく、単に物語として楽しむこともできるシリーズでした。

バルサが“つれそい”であるタンダを捜しあて、命を救う場面は感動的でした。
壊疽した腕を切り落とし、動脈を歯でおさえながら縛り上げ、切断面を焼いた剣で消毒する、という荒治療を眉も動かさずにやり遂げる、というシーンです。
少しずつ回復するタンダと付き添うバルサの静かな時間も素敵に描かれていました。

新ヨゴ皇国がロタとカンバルの兵に救われたその時に、偉業を成し遂げたチャグム自身は深い手傷のため、意識もなく横たわっていた、というラストシーンも感動的でした。

素晴らしいエピソードに満ちたこの物語は、明るい未来に向けて続いていくことを予感させて幕を閉じます。
こんな素敵な物語を読み終わってしまったことはとても残念ですが、登場人物たちに幸せが、すべての国々に平和が訪れることへの確信は読者をも幸せにします。
満足感に浸って本を閉じることができる見事な大河小説でした。
まだお読みになっていない方は幸せですね。

最後におまけの2冊をご紹介します。
「守り人短編集 流れ行く者」
バルサが11歳のときと13歳のときのエピソードを描いた短編集です。
バルサの人間形成をたどれます。

「バルサの食卓」
南極料理人を中心とするチーム北海道が、物語に登場した食事を再現。
料理の登場シーンや著者のコメントもついていて面白く読みました。


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お気に入りその966~ultra-actウルトラマン

2014-10-18 10:25:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ultra-actウルトラマンです。

先日ultra-act初代ウルトラマンver.2が届きました。
2010年にver.1が発売されて話題になり、今回はその第2弾だそうです。
本とウイスキーに小遣いのほとんどをつぎ込んでいる身としては、興味はあっても近づきがたい世界でした。
ウルトラマンのいろいろなポーズがかなり精巧に再現できる完成モデルが、千円札数枚で販売されていることを偶然知り、購入しました。

到着後は、懐かしい決めポーズをいろいろ試しました。
関節の可動域の広さがそのほとんどを実現させてくれました。
ver.2だけあって完成度が高いですね。

面白いのは朝起きるとポーズが変わっていること。
娘がポーズ模型として楽しんでいるのです。
今朝もヨガのようなかなりきびしいポーズをさせられていました。
という訳で、ウルトラマンには右のようなリラックスポーズでくつろいでもらいました。

amazonのレビューに「猫背が再現できる希少なポーズ模型」というおもしろい評価が載っていました。
しばらくの間は、ウルトラマンのいろいろなシーンを思い出しつつ、ポーズの限界を試したいと思います。
そして一番お気に入りのポーズが見つかったらケースに入ってもらおうと思います。


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お気に入りその965~守り人シリーズ⑥

2014-10-16 12:49:47 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、守り人シリーズ⑥です。

守り人シリーズの第7巻は「蒼路の旅人」でした。

南の大国 タルシュ帝国が海洋国家サンガル王国をあっという間に陥落させ、新ヨゴ皇国に迫ります。
そんな中、チャグム皇子は人質となってタルシュ帝国に連れ去られてしまいます。
まわりには頼れる仲間が一人もいません。
チャグムは自分の才覚で乗り切るしかない状況に追い込まれます。
まさに絶体絶命のピンチ!
彼はどうやって乗り切るのでしょうか?

今回は、まわりの国々を次々飲み込み巨大化した強大国タルシュ帝国と、神を信奉し他国との争いを避けてきた小国新ヨゴ皇国の2人の皇子の駆け引きの場面が見どころです。
チャグムには国民を幸せにしたい、まわりの国々に迷惑をかけたくない、という真っ直ぐな願いがあります。
しかし大国の力の前に、その願いは叶えられそうにありません。
折れそうになる心・・・。

大国の枝国(属国)となることで戦わずに生き残る道を選ぶのか?
力の差を知りつつあえて戦う道を選ぶのか?

まさに究極の選択。
「寄らば大樹の陰」「太いものには巻かれよ」という言葉がよぎります。
自分なら安易な選択に走るだろうな。

チャグムはあえて茨の道を選ぶことを決意し海に飛び込むところでこの巻は終わります。
若者らしい真っ直ぐな心、といえば聞こえは良いですが、なかなか真似のできることではありません。
民の幸せを考えて選んだ茨の選択。
彼の勇気に拍手を送り、彼の行く道に幸運が待っていることを願わずにはいられません。

この後は「天と地の守り人」3部作に突入です。
チャグムの無事を、そして新ヨゴ皇国をはじめとした大国に飲み込まれようとしている国々の無事を願いつつ読みたいと思います。

あとがきにこのシリーズは大河小説だと書いていました。
なるほど、同感です。

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お気に入りその964~守り人シリーズ⑤

2014-10-14 20:15:51 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、守り人シリーズ⑤です。

上橋菜穂子の守り人シリーズの第5巻・第6巻「神の守り人」(上下巻)を読みました。

今度の舞台は南部が富み、北部が疲弊した領土を持つロタ王国。
南部だけを増税しようとする王に反発する南部の諸侯。
地域の主張は平行線をたどります。
そこへ言葉巧みに近寄る南の大国。
王は名君とたたえられながらも危機的な状況に悩みます。
そこに神の牙を召喚できる被差別民の少女が現れ、状況は動き始めます。
神の見えない牙は、少女が憎む人々や狼の群れ、そして岩までも切り裂きます。
今回ばかりはいくら強いバルサでも戦いようがありません。
さらに王様直属の呪術師が敵味方に分かれて登場し・・・。
ひょんなことから少女の命を守ることになったバルサとタンダの活躍やいかに。

あらすじはざっとこんなところ。
今度は少女に憑依した神様が相手。
これまでもハラハラドキドキの冒険活劇を楽しんできましたが、今回は別格。
タンダはこれまで呪術で異界の魔物や夢の世界の花守などと対抗してきましたが、今回は神様が相手。
格が違いすぎて冒頭から対抗するのを諦めます。
こんな相手といったいどうやって戦うのか?
わずかに残る希望は少女の兄が残虐な神様に不審を抱いていることと、兄の言葉に揺れる少女の気持ち。
人を殺したことを生涯悔い続けるバルサは少女を救いたいと強く願います。
その哀しい思いをタンダも理解し、少女を第2のバルサにしないため全力を尽くします。

今回は上下巻でこれまでで最長の作品でした。
けれども長さをまったく感じず、これまでで一番好きだった第1巻と並ぶお気に入りとなりました。
戦いようがない相手にもくじけずに立ち向かう彼らの心の強さに感動し、何より破壊神の悪魔の誘惑を最後には断ち切った少女の勇気に感動しました。
少女の目覚めが近いことを匂わせて筆をおく見事なラストシーンにも拍手を送ります。

弓矢や剣、槍しか武器がない世界で岩をも切り裂く破壊神の牙は、私たちの世界では核兵器のような存在でしょう。
必勝必殺の兵器を持つことの魅力や、そういう兵器を理想の国を実現するために手に入れ、利用しようとする者たちの考え方。
それらは人殺しという生涯消えない苦しみ・悲しみと表裏一体です。
とても重たいテーマですが、必勝必殺の兵器を持たないことが平和につながることだと、きっと世界中の子ども達に伝わったことでしょう。

さて本書の文庫版には思いもよらぬ素敵なオマケが付いていました。
解説の執筆者が、何と児玉清だったのです。
彼の読書好きが伝わる素敵な解説を読むことができるなんて実に幸せでした。
著者・上橋菜穂子があとがきで、週刊ブックレビューに出演して以来、児玉のファンになり、彼に解説を書いてもらったことは光栄だったと書いていましたが気持ちはよくわかります。
解説の冒頭には児玉が実はSF嫌いで、その理由が登場人物たちの存在感のなさにある、と書いています。
ところが事情により仕方なく読んだ上橋作品に登場する人物たちが実に生き生きと存在感たっぷりに動き回る様に魅了されたとのこと。
彼にそこまで称賛されたことは著者の誇りでしょう。
いつか児玉が初めて読んで絶賛した「獣の奏者」シリーズも読みたいと思いました。

その前に、もうしばらくは「守り人」シリーズの世界を満喫をしたいと思います。


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お気に入りその963~TRAD

2014-10-10 12:51:48 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「TRAD」です。

竹内まりやのオリジナルアルバム「TRAD」は発売から1か月が経ち、その話題もかなりおちついてきました。
このアルバムは女性アーティスト最年長記録を更新したそう。
さらに1980年代、1990年代、2000年代、2010年代の4つの時代のすべてでアルバム第1位を獲得したのは竹内まりやが初だそう。
まさに記録づくめ。
凄いですね。
こんなに長い間 多くの方に評価されてきたなんて!
長年のファンとしてうれしい限り。

マンネリという声も聞こえますが、35年間も創作活動を続けてくると、確かにそう聴こえる曲もあると思います。
それでも前作「デニム」ではないですが年齢を重ねるごとに味わいが増していることも確か。
その辺りを楽しむようにしています。

AMAZONで予約して発売と同時に届いてすぐに鑑賞。
その後は同梱の豪華なリーフレットにそれぞれの曲をめぐる竹内まりやのコメントが書いてあるので、それを読みながらまたゆっくり鑑賞。
そして最後に附属DVDを鑑賞。
最近はドライブ時に繰り返し流しています。

以前「Expressions」の店頭演奏用DVDを入手しサラウンド再生したら面白い発見がありました。(当ブログその374参照)
さて今回のDVDにはどんな遊び心が入っているのかな?と思ってサラウンド再生するも空振り。
何事もないごく普通のDVDでした。
WIKIPEDIAによるとDVDのデジタル処理が遅れ発売が1週間遅れたそうで、さしもの山下達郎も遊び心を注入するゆとりがなかったようです。

さて収録されている曲の中で一番好きなのは何といっても「静かな伝説」。
この曲はTV番組のエンディングテーマに採用され、以前から聴いていました。
その頃からいい曲だと思っていましたが、リーフレットを読んでから全く印象が変わりました。
ソチ・オリンピックで観た浅田真央のあの感動を曲にしたのが「静かな伝説」だとのこと。
それを知った上でこの曲を聴くと、浅田真央がフリーの演技を終えた瞬間のあの感動が脳裏に蘇りました。
歌詞のあちこちがあの時のいろいろな場面と結びつきくよいになりました。
楽曲制作の裏側を知ったことでこんなに受け取り方が変わるとは思ってもいませんでしたので、自分でも驚きました。

北海道のFMラジオ ノースウエーブでは「アロハ式恋愛指南」が毎日のようにかかっています。
リクエストなのか局の一押しなのかは不明です。
この曲は軽やかでいいですね。
毎日聴いても飽きません。

最後に。
時代に即してDVDを出すことも考えている、という本人の弁。
滅多にないコンサートなのに行けない身としてはDVDでもいいので雰囲気を楽しみたい!
実現することを願っています。

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