今回のお気に入りは、向井潤吉です。
かやぶき屋根の古民家を描き続けた画家がいたことは知っていましたが、名前を知りませんでした。
トタン屋根だらけの町で生まれ育ったため、瓦屋根に違和感を感じ、ましてやかやぶき屋根など別世界。
そこに郷愁を感じる人の気持ちを理解できませんでした。
ところが、あるTV番組を観て考えが変わりました。
それは少子高齢化や過疎化により限界集落となった地域を支える老人たちを取材した番組です。
先祖代々大切に守り続けてきた家々もいずれは無人になり廃墟となるのでしょう。
生まれ育った風景と違っていたとしても同じ日本人。
住民たちの哀愁は痛いほど伝わります。
その番組を観ながら脳裏に浮かんだのは古民家を描き続けた画家のことでした。
趣味で描いたというよりももっと重たい、失われていく大切な風景をせめて絵の中に残したいという使命感にも似た気持ちに背をおされ、描きつづけたのではないだろうか?
そう思い至った瞬間、名を知らぬ画家の画集を鑑賞したくなりました。
画家の名前は「古民家」「画家」というキーワードですぐに分かりました。
向井潤吉(1901-1995)というそうです。
鑑賞する画集は「米寿記念向井潤吉展」(1990年 朝日新聞社刊)を選びました。
「ごあいさつ」から抜粋します。
=====
1927~1930年にルーブル美術館で名画を模写
写実性豊かな絵画表現を会得
1945年から失われていく日本の民家の作品
北海道から鹿児島まで1500を超える家々を記録
人々の心の故郷を残し続けた
=====
日本にそれがあるかぎり、命のつづくかぎり、私は民家の四季の詩をかきつづけるつもりだ
=====
初期作品から模写、民家へと続く130点を超える画業の歴史をたっぷり味わいました。
民家の舞台は、地元京都を中心に全国にわたっています。
時々地域特有と思われる屋根がありますが、ほとんどは似たり寄ったりで題名を読まない限り地域の特定ができませんでした。
それほど故郷といえる風景が似かよっているということでしょう。
たくさんの作品を鑑賞していて気付いたのは画家の腕の確かさ。
当たり前ですが上手いですね。
描かれた木々や山々の美しさに何度も目を奪われました。
そして模写の上手いこと。
ミレー、クールベ、ルーベンス、デューラー、アングル、ルノアール。
特にミレーとアングルは絶品だと思います。
他にレンブラントやドラクロワも模写したそうなので画集に収録して欲しかったです。
「人には無限の可能性がある」という言葉を良く聞きます。
画家にも多種多様な作品を描く可能性がありました。
その中から古民家を選び、生涯描き続けることになるとは画家自身も予想していなかったことでしょう。
今回は人を導く運命の不思議に思いを巡らせた画集鑑賞となりました。
。
かやぶき屋根の古民家を描き続けた画家がいたことは知っていましたが、名前を知りませんでした。
トタン屋根だらけの町で生まれ育ったため、瓦屋根に違和感を感じ、ましてやかやぶき屋根など別世界。
そこに郷愁を感じる人の気持ちを理解できませんでした。
ところが、あるTV番組を観て考えが変わりました。
それは少子高齢化や過疎化により限界集落となった地域を支える老人たちを取材した番組です。
先祖代々大切に守り続けてきた家々もいずれは無人になり廃墟となるのでしょう。
生まれ育った風景と違っていたとしても同じ日本人。
住民たちの哀愁は痛いほど伝わります。
その番組を観ながら脳裏に浮かんだのは古民家を描き続けた画家のことでした。
趣味で描いたというよりももっと重たい、失われていく大切な風景をせめて絵の中に残したいという使命感にも似た気持ちに背をおされ、描きつづけたのではないだろうか?
そう思い至った瞬間、名を知らぬ画家の画集を鑑賞したくなりました。
画家の名前は「古民家」「画家」というキーワードですぐに分かりました。
向井潤吉(1901-1995)というそうです。
鑑賞する画集は「米寿記念向井潤吉展」(1990年 朝日新聞社刊)を選びました。
「ごあいさつ」から抜粋します。
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1927~1930年にルーブル美術館で名画を模写
写実性豊かな絵画表現を会得
1945年から失われていく日本の民家の作品
北海道から鹿児島まで1500を超える家々を記録
人々の心の故郷を残し続けた
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日本にそれがあるかぎり、命のつづくかぎり、私は民家の四季の詩をかきつづけるつもりだ
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初期作品から模写、民家へと続く130点を超える画業の歴史をたっぷり味わいました。
民家の舞台は、地元京都を中心に全国にわたっています。
時々地域特有と思われる屋根がありますが、ほとんどは似たり寄ったりで題名を読まない限り地域の特定ができませんでした。
それほど故郷といえる風景が似かよっているということでしょう。
たくさんの作品を鑑賞していて気付いたのは画家の腕の確かさ。
当たり前ですが上手いですね。
描かれた木々や山々の美しさに何度も目を奪われました。
そして模写の上手いこと。
ミレー、クールベ、ルーベンス、デューラー、アングル、ルノアール。
特にミレーとアングルは絶品だと思います。
他にレンブラントやドラクロワも模写したそうなので画集に収録して欲しかったです。
「人には無限の可能性がある」という言葉を良く聞きます。
画家にも多種多様な作品を描く可能性がありました。
その中から古民家を選び、生涯描き続けることになるとは画家自身も予想していなかったことでしょう。
今回は人を導く運命の不思議に思いを巡らせた画集鑑賞となりました。
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