鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1356~魂魄巡礼

2017-04-28 12:25:57 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入り(?)は、魂魄巡礼です。

北海道新聞で紹介されていて気になったので読みましたが、何とも不思議な漫画でした。

出版社の内容紹介を引用します。
=====
惑いの時代を生かされている、わたしたち日本人の、根底にふれる〝たましい〟の物語
<収録作品>
「善光寺巡礼記(ビリーバー 信者)」「犬童平介裏暦絵日記」「犬童平介裏暦絵(ダキニ編)」「クモマッカシッケ」「インスティゲイター(教唆者」
<付記>
「十干十二支」「旧暦」「九星占い」「山内丸山」
=====

作品としては「善光寺巡礼記」だけが面白かったです。

まず、初めて知った善光寺のいわれが興味深かったです。
信州から京都に工事人足としてかり出されていた善光という人が主人公。
池のほとりを歩いていると、水の中から仏像が飛び出して善光の背中に乗りました。
善光は、そのまま信州に帰り、寺を建立して仏像を安置しました。
その後、京都から愛知を経由して長野に帰るまでの道筋に寺を建立し、巡礼の道としました。
善光寺には「戒壇めぐり」という床下の回廊があり、死後の世界を体験し、この世に再生する儀式を行っています。
漫画の登場人物は、幼くして亡くした我が子を、善光寺の巡礼により、行き返らせた経験があります。
我が子に再び命の危機が訪れたとき、母は再び善光寺の巡礼を始めます。

これは面白いことを知りました。
以前、爆笑問題の番組で見たような気がしますが、定かではありません。
お寺には興味がありませんが、「戒壇めぐり」は一度体験してみたいです。

この作品の他は趣味ではありませんでした。
ただ漫画やコラムで紹介されているエピソードにいくつか興味深いものがありました。

・干支(えと)とは十二支だけではなく、十干を含めた十二支十干のことをいう。
 それらを組み合わせ60年で1回りする。
・天孫降臨は、なぜ神の孫なのか?
・縄文時代に広大な定住地として存在した三内丸山の謎。

などは、これらをもっと掘り下げて使うことで、面白い作品が作れそうですが。
切り口だけお見事!で逆に残念でした。

それにしてもAMAZONに内容紹介されていない本ってあるんですね。
もしかしたら出版社が掲載料を払っている本だけが、内容紹介されているのかな?
これってピンポーンかも。


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お気に入りその1355~ねじとねじ回し

2017-04-26 12:29:26 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「ねじとねじ回し」です。

児玉清氏がおすすめしていた本、「ねじとねじ回し」を読みました。
ヴィトルト・リプチンスキというサイエンス・ライターが西暦2000年を祝うミレニアム企画として書いたそうです。
「この1000年間に発明された最も優れた道具は何か?」を探す、という思考の旅のレポートです。
図書館で古い本の記述と図版を探しまくります。
AMAZONの内容紹介を読むだけでも、その面白さが伝わります。
まずは引用。
=====
1999年にニューヨークタイムズマガジンの編集者が、著名な建築と都市計画の研究者であるヴィトルト・リプチンスキに、この千年間で最も優れた、利用価値の高い道具についての短いエッセイを書くことを提案した。
この提案をリプチンスキは受け入れ、仕事場にある道具―― 金づち、鋸(のこぎり)、水準器、鉋(かんな) ――の歴史を調べていったのだが、そうしたものの系統をたどってみると、ほとんどははるか大昔に端を発したものなのだった。
これはもうダメだと思った彼は、妻に意見を求めた。
彼女の答えは刺激的なものだった。
「あなたが何かしようとする時には、たいていねじ回しが必要でしょう」と。
確かにそうだった。
ねじ回しは、人類の道具箱の仲間としては比較的新しいものであることをリプチンスキは発見した。
それは中世ヨーロッパ時代の発明で、中国の影響を受けていない発明品なのだ。
もちろん、他の多くのこと同様、レオナルド・ダ・ヴィンチはごく早い時期にねじ回しのアイデアを思いついており、交換可能なギア付きのいろいろな種類のねじ切り機を設計している。
それでもなお、ねじ(および、ねじ回しと旋盤)が一般的に使われるようになるまでには何世代もかかり、マイナスドライバーやソケットなどのねじが登場したのは最近になってからだ。
ねじの発展を1冊の本にまとめ上げたリプチンスキの探求は、とてもおもしろく、読者が日用品の起源に興味を抱くようになるのは確実だ。(Gregory McNamee, Amazon.com)
=====
水道の蛇口から携帯電話まで、日常空間のそこここに顔を出すねじ。
この小さな道具こそ、千年間で最大の発明だと著者は言う。
なぜなら、これを欠いて科学の精密化も新興国の経済発展もありえなかったからだ。
中世の甲冑や火縄銃に始まり、旋盤に改良を凝らした近代の職人たちの才気、果ては古代ギリシアのねじの原形にまでさかのぼり、ありふれた日用品に宿る人類の叡知を鮮やかに解き明かす軽快な歴史物語。
=====

中世の家庭用粉砕機(小麦粉を作る機械?)や火縄銃の引き金の図版にネジがしっかり描かれています。
ネジの頭は、団子状に盛り上がり、ヨコ一本の深い溝が刻まれています。
機械の四隅を留めるネジの溝の向きが一本一本違うことや、その内の一本だけを途中までゆるめて、らせんの溝まで丁寧に見せています。
これならネジがどういうものかが理解できます。
私ならネジの上に、回転方向を表す矢印を追加しますが、中世の人に意味が伝わるかな?

中世のネジはマイナスネジだったのですね。
確かにこれなら、ネジやドライバーを手作りできたでしょう。

著者の調査によると、1480年くらいまで記録を遡ることができたそうです。

ところで、古いネジはマイナスが多かったのに、最近は見かけません。
その疑問の答えが書いていました。
横一本の溝のネジ(マイナスねじ)は、ドライバーがはずれるため、片手で締めることができないという欠点がありました。
そこで現在主流の十字の溝のネジ(プラスねじ)に落ち着きました。
このネジが開発されたのは1936年で、フィリップねじといいます。

ちなみにプラスねじの前に四角い溝のネジ(ロバートソンねじ)が1907年に開発されましたが、主流にはなれませんでした。

また精度が高いネジを大量生産する方法を編み出した技術者も紹介されていました。
それを契機に細密機械が次々生み出されたため、この完璧なネジは、「すべての精密機械の母」と呼ばれているそうです。

たかがネジと思っていましたが、想像以上に奥深い世界を知ることができました。
現代文明が多くの人々の知恵の集積により成り立っていることを、改めて知りました。



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お気に入りその1354~北海道絵本

2017-04-24 12:21:59 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、北海道絵本です。

更科源蔵・文、川上澄生・画の「北海道絵本」を読みました。

1955年発行の古い本です。
ソフトカバーというには余りに薄くて弱々しい表紙。
それとバランスを取るように、中にも薄い紙が使われています。
これだけ腰のない本なのに、60年以上も傷みがない状態で保管されてきたことに驚き。
とても大切にしてきたということでしょうか?

本書は1949年が初版らしく、書かれている内容は70年近く前の北海道の状況です。
変わらないこと、すっかり変わってしまったこと。
いろいろでした。

面白かった内容をいくつかピックアップします。

=====

「シバレる」は、マイナス20度を下回ることで、札幌は入らない、と言い切っている。
札幌在住のドサンコとしては納得しがたい・・・。

ポプラは木材としてほとんど利用価値がない。
強度が低いため、マッチの軸にも使えず、安いゲタくらいしか使い道がない。
防風の目的だけで植えられたそう。

札幌では2月に金魚売が歩く風習があったそう。
まったく知らなかった。

春が近づき堅雪の上を子どもや犬が走り回る、という描写がある。
堅雪って何?
思い出した!
降雪がなく寒暖だけを繰り返すと表面が硬くなり、雪の上に乗れるようになる。
そうなると雪深い原っぱが、自由に走り回れる広場に変わり、遊んだものだ。

アイヌの伝説からもいくつか。

神の国から柳の葉が一枚、地上に落ちた。
神はその葉が川の流れの中で朽ちていくのを憐れんで魚に変えた。
魚の名は柳葉魚(ししゃも)。
アイヌは、ししゃもを神がアイヌを飢えから救うための贈り物と考えた。
何と素敵な伝説だろう。

アイヌは、ヒグマを神として崇めたのに対し、えぞ鹿を神からの贈り物と考えたる。
これは獲りきれないだけの頭数がいたから。

クマゲラは神が落とした手袋だった。
アイヌはクマゲラに丸木舟の作り方を教わった。

=====

簡潔明瞭な文章でとても読みやすかったです。
もっと読みたかったなぁ。
続編があるかもと思い調べたら、過去のネットオークションがヒットしました。

「北海道絵本 全3冊」
北海道絵本 文 更科源蔵 画刻 川上澄生 昭和52年8月14日 第2刷
続 北海道絵本 文 更科源蔵 画刻 大本 靖 昭和51年6月25日 初版
続々 北海道絵本 文 更科源蔵 画刻 松見八百造 昭和53年4月25日 初版

へー、全3冊なんだ。
そのうちに続きを読みたいと思います。


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お気に入りその1353~JBL

2017-04-21 12:10:06 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、JBLです。

テレビっ子の妻が出かた時は、DVDを観たり、音楽を聴いたりしています。

DVDは、昨年のリフォームで5.1chサラウンド用スピーカーの設置場所が無くなり、やむを得ずテレビの内蔵スピーカーで聴いていますが、音声は思っていたより悪くないです。

音楽は、同様の理由で重低音対応CDラジカセの置き場所が無くなり、やむを得ずPC内蔵スピーカーで聴いていました。
こちらの方は取りあえず聴こえる、という残念なレベルでした。

最近、ジャズやクラシックを聴くことが多くなり、耐えられなくなってきました。
そこでPC用スピーカーを検討しました。
比較サイトのおすすめスペックは次の通りでした。
・10W以上
・USB音源
・100V電源
・音響メーカー

探した結果、予算1万円以内でBESTな製品を見つけることはできませんでしたが、BETTERな製品を見つけることはできました。

「JBL Pebbles」です。

2.5W、USB音源兼電源というのは、おすすめスペックからはずれますが、とても高く評価されています。
AMAZONのカスタマーレビューが凄いことになっています。
1038人もの人が書き込んでいて星5つが7割近く。
星4つを加えると9割に達しています。
ただし、数か月で壊れたとか、再起動後に認識されないなどというトラブル報告も2%ほどあります。

さすがは世界を代表する音響メーカーJBL製といったレビューでした。
さっそく購入し、音を確認しました。

梱包を開き、USBに差し、プレイヤーをスタートさせるだけで、簡単に奥行きのある音を楽しむことができました。
PC内蔵スピーカーは問題外として、マイカー搭載のそこそこのカーコンポよりも上と感じました。

たった5000円でこれほど劇的に変わるなんて!
これまで我慢してきて損をした気分です。
これからは音楽をたっぷり楽しみたいと思います。

あとはカスタマーレビューに載っていたマイナス評価の事例が発生しないことを祈るのみ・・・。
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お気に入りその1352~ルーペ

2017-04-19 12:11:16 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ルーペです。

以前「苔とあるく」を読み、春になったら苔を観察しようと思っていました。
札幌の桜の開花は、今月末から5月始めころとのこと。
苔はもう楽しめそうです。

ということで今回、苔の観察の必需品であるルーペを買いました。

①Vixen ルーペ メタルホルダー M20S 4309-01 1,629円
・サイズ:高さ50×幅25×厚さ11mm
・本体重量:39g
・材質:真鍮、ガラスレンズ (二枚レンズ)
・倍率:10倍
・レンズ径:20mm
・生産国:日本
・収納式メタルケース

②Vixen ルーペ ポケットルーペ ポケットリーディングルーペ P45N 41361-4 495円
・サイズ:高さ120×幅55mm
・本体重量:30g
・材質:ビニール、ガラスレンズ
・倍率:3.5倍
・レンズ径:45mm
・生産国:日本

本当は①のメタルケース式のルーペだけのつもりだったのですが、2,000円以下だと送料が500円かかるそうなので、②を追加しました。
合わせて2,124円なり。
①だけなら2,129円(1,629円+500円)だったので、逆に安くなりました。
何だか不思議。

「苔とあるく」には、②のルーペも紹介されていたので、一挙に両方が揃ってラッキーでした。

さて同書にもルーペの使い方が紹介されていましたが、ここではwikibooksの記事を引用します。
=====
中学校理科 第2分野/身近な生物の観察
ルーペの使い方
ルーペを目の近くに近づけたら(眼鏡ぐらいの位置)、ルーペは動かさない。
ピントがあわない場合などは、観察物を動かせる場合は対象物を動かす。
観察物を動かせない場合には自分(観察者)が移動する。
=====

そうそう「苔とあるく」にも、そう書いていました。
石垣の苔を観察するため、石垣にへばり付くように立ち、じっと観察していると、猫が不思議そうに寄ってきた、なんて書いていました。

とりあえず今は、石版画や銅版画で描かれた博物図版を観察して練習しています。
顔にルーペを寄せて固定してから、対象物を動かして焦点を合わせる、というのは簡単なようで難しいものです。
逆に、対象物を固定して、顔とルーペをセットで動かして焦点を合わせるのは、もっと難しいです。
屋外で使うときは、難易度がさらに増すことでしょう。
練習しておいて良かった。

それにしても、この歳になるまでルーペの正しい使い方を知らなかったなんて、自分でも不思議。
新しい世界が広がったようで、子どもみたいにウキウキしています。


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お気に入りその1351~アンモナイト

2017-04-17 12:52:07 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、アンモナイト化石です。

先日、ネットオークションで、実に美しい光を放つアンモナイト化石が、たくさん出品されていることを知りました。
「希少 アンモナイト化石 オパール化 鉱物標本」という商品名でした。
写真の美しい輝きと「オパール化」という言葉に惹かれました。

商品説明は次の通り。

 産 地 ~ マダガスカル、マハジャンガ州
 時 代 ~ 中生代白亜紀(キンメリッジ期)
 種 類 ~ クレオセラス べサイリェイ種
 サイズ ~ 51ミリ×38ミリ×14ミリ
 重 さ ~ 35グラム

オパールなのに数百円から数千円という安値で出品されているのはなぜ?と思い、調べてみました。
本物のオパール以上に虹彩を放っていますが、オパール化している訳ではないそうです。
真珠層が変質して虹彩を放つようになっただけですって。

オパールだから魅力を感じたのではなく、アンモナイトの美しさに魅力を感じただけなので、オパール化でないことなど、気になりません。
太古からの美しい贈り物をインテリアにしたくてひとつ買いました。
今は島牧で拾ったメノウ、鹿児島で拾ったサンゴなどと一緒に、本棚に飾られています。

そういえば、子どもの頃は、珍しい石を随分集めていました。
直径10cmほどの十勝石、断面がにぶい金属光沢でずっしりと重い石、貝の化石、黄鉄鉱か黄銅鉱など。
あの頃住んでいた家から引っ越したときに、捨ててしまったんだろうな・・・。

それにしても、光の加減で赤や緑の光を放つアンモナイト化石があるとは・・・。
自然界には不思議なものがあるんですね。

<おまけ>
天然石卸販売の「パーフェクトストーン」さんのHPで、この化石のことを正確に説明していたので引用します。
=====
レインボー・アンモナイト(アラゴナイト化・化石)

古代貝のアンモナイトが化石化する過程で、表面にアラゴナイト層(真珠貝の内側の層と同様)が皮膜化したものです。
オパールのような遊色効果やイリデッセンス(虹色の干渉効果)が見られます。
*カナダの「アンモライト」は2種類のアンモナイトのアラゴナイト化に限定したものです。
=====

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お気に入りその1350~串田孫一

2017-04-14 12:17:30 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、串田孫一です。

自然を愛し、生き物を愛する著者のエッセイがお気に入りです。
決して知識を追求することなく、思考を楽しむ大人のエッセイは、なぜか定期的に読みたくなります。
前回読んだのは昨年の10月、「緑の色鉛筆」でした。
今回は、1963年発行の写真文集を選びました。

串田孫一・文、木村元芳・写真の「カメラ日本空の縦断」。
全234ページの内、半分以上はモノクロ大判の航空写真でした。

本書は、どういう意図で制作されたのか一切の説明がないままに、冒頭から何ページもの航空写真で始まります。
そして写真ページの合間に、雲・山・谷・湖・川・道・街・岬・海・島というテーマのエッセイが挟まっている、という構成でした。

若い頃にたくさん山登りをした著者は、すでに航空写真に近い景色を経験済でした。
雲や山を目線や目下に眺めることや、谷や湖、川などのはるかなる眺望などに目新しさは無かったでしょう。
ただし、移動スピードの違いによる景色の移り変わりや、真下に景色が広がることは、大きく異なったと思います。

当初、著者は写真家と同乗した上で、文章を書いたと思っていました。
ところが実際は著者と写真家は別々に飛行して作品を制作し、編集者がそれらをまとめたようです。
ギリギリ10個のテーマでつながっているだけという、あやうさを感じました。

本書を手にする人は、1960年代のモノクロ大判の写真集を鑑賞したい人と串田孫一のエッセイを読みたい人に分かれたことでしょう。
・・・50年以上前の写真文集にケチをつけて、どうなるものでもありませんね。

写真で気に入ったのは2枚。
まずは札幌中心部の写真。
54年前の大通公園やテレビ塔などの景色です。
ビルがほとんど無く、小さな建物が並んでいて、興味深かったです。
もう1枚は宮崎県青島海岸の写真。
鬼の洗濯板といわれる長い直線が、数えきれないほど整然と並んでいます。
航空写真であれほどの広がりがあるのですから、地上では見渡す限りすべて!という迫力でしょう。

そして期待のエッセイ。
残念ながら最後まで著者は消化不良気味だったようです。
空から見た景色をエッセイにする、という新たな試みに挑戦したものの、飛行中に書く訳ではありません。
その経験が自分の中で熟成されて新たなイメージが生まれて、初めて満足いくエッセイとなります。
その時間の猶予が無いと嘆いている場面もありました。

取りあえず印象に残ったものを拾いました。
「湖」では、本来流れることが役目である水がその歩みを止めざるを得ず、佇んでいる状態は可哀そうというのは面白い感覚と思いました。
「谷」では、水が流れたから谷ができたのか、谷があるから水が流れたのかと、禅問答風の思考をしていました。
「島」では、これまで島の最高峰から全周を眺めたり、海岸縁を一周したりして、島を感じていたが、空から観ると一目瞭然で新鮮な驚きを持ったようでした。
島を空から観たときに、海はただの平面となり、深みを感じない、というのは面白い感覚だと思いました。

最後に、空を舞うトンビをながめ、鳥が地上を見る景色がわかるようになった、との言葉が印象的でした。

なお、本書の外観写真を写していなかったので、ネットオークションに出品されている写真を拝借しました。
出品者の方、申し訳ございませんでした。

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お気に入りその1349~甲斐伸枝

2017-04-12 12:16:54 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、甲斐信枝です。

1月にご紹介した絵本「雑草のくらし」の作者・甲斐信枝が、NHKドキュメント番組で紹介されていました。
「足元の小宇宙Ⅱ~絵本作家と見つける生命のドラマ~」という題名でした。

足元の小宇宙?
以前「足元の小宇宙~生命を見つめる植物写真家~」というNHKドキュメント番組があり、植物写真家の埴沙萌(はにしゃぼう)さんが紹介されていました。
あの時も、埴沙萠・著「植物記(写真記シリーズ)」を鑑賞したばかりでした。
どちらも絶妙なタイミング。
相乗効果で楽しむことができました。

この「足元の小宇宙」は今回第2段であり、シリーズ化されることが期待されます。
次は「苔とあるく」の田中美穂か、昆虫写真家の栗林彗、キノコ仙人の小林路子あたりで制作してほしいな!
NHKさん、よろしくお願いしまーす!

さて、初めて見た甲斐信枝さんは、85歳の元気なお婆ちゃんでした。
彼女はスケッチ道具一式を抱えて、ナワバリを巡回します。
あちこちで雑草に「あらあらこの子は」などと話しかけながら。
大繁殖していた雑草が刈り取られた跡地に出くわすと、すかさず枯草をかき分け、別の雑草を探します。
「やっぱり、いたいた」
彼らは長年日差しが入るのを待っていた雑草たち。
「雑草のくらし」でも紹介されていた場面です。

感動するシーンに出くわすと「ひとり占めしてはもったいない」といって、周りの人に教えます。
撮影スタッフは、朝露が七色に輝くキャベツ畑に導かれました。

あぜ道いっぱいに咲くヒガンバナの中から「今年一番の花」を選びだし、スケッチをするシーンがありました。
描きながら、失敗したと悔しがる姿もまた素敵でした。
「ごめんね、下手で」「来年こそ!」

彼女の感情溢れる生き様に、感動しました。
経験を積み、知識が増えても、好奇心を失わずに生きていきたいものです。

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お気に入りその1348~児玉清

2017-04-10 12:23:31 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、児玉清です。

ミスターブックレビュー児玉清氏に本の紹介をして欲しくて、「すべては今日から」を読みました。
案の定、熱のこもった紹介が次から次へと。
その内から何冊か選んで購入しました。
どんな本を選んだかは後にして、まずは本書の感想を少々。

1行目から、著者の穏やかでありながら熱い人柄が伝わってきました。
本を紹介しながら、生い立ちと近況を流れるように語っています。

幼き日、厳格だった父との距離を縮めてくれたのが本だった。
翻訳を待ちきれないため、原書で読めるようになりたいとドイツ語科に進学した。
クイズダービーで有名な篠沢教授(当時、学生)から頼まれてフランス語劇に出演した。
母の死により、急に就職することになり、やむなく映画会社に俳優として就職した。
読んだ本をすべて手元に残しておくため、膨大な蔵書の保管に苦労している。
休みの日は、散歩がてら書店に行き、原書を買って帰る。
横になって、うつらうつらしながら読むのが至福のひととき。
格好いい主人公に憧れ、魅力的なヒロインに惹かれ、感動的なストーリーに涙している。

ナルホドねえ。
著者が醸し出していた知性的な雰囲気は、風貌だけではなく、内側から溢れ出ていたのですね。
キムタク主演の「HERO」で、主人公の型破りな行動を優しく見守る次席検事の役はピッタリでした。

氏の人生は、大好きな本を読むためにドイツ語や英語を学んだり、命の危険さえ感じるほどの蔵書量により住宅を改造したりと、まさに読書が中心を占めていました。
本書を読んで、ここまで徹底していたことを知り、驚きました。
まさにミスター・ブックレビュー!

その後は洋書の紹介、和書の紹介が続き、最後は「日本人よ大人たれ」というエールが書かれていました。

その中で、名言や人生訓をいくつか紹介しており、一番心に残った一句をご紹介します。
=====
「このくれも 又くり返し 同じ事」 杉山杉風(さんぷう)
何事もなかったことの喜びと、変化もなかったことへの物足りなさ、そんな気持ちが微妙に交叉する様を見事に掬(すく)った忘れ得ぬ一句。
=====
本当はもっとしっかりした人生訓をたくさん紹介していたのに、なぜこれが一番?
我ながら不思議です。

さて、著者が紹介してくれた膨大な本の中から、今回選んだのは次の通り。

①吉田洋一の「零の発見 ~数学の生い立ち」
 児玉の学生時代、数学の成績の落ちっぷりを心配した教師が、本書を薦めてくれたました。
 児玉は文系だったにもかかわらず、読後、本気で数学科に進もうと思ったそうです。
 そんなに面白いのなら、理系人間としては、ぜひ読まねばなるまい。

②ヴィトルト・リプチンスキの「ねじとねじ回し」
 大変面白かったそうです。
 ネジについてなんて、改めて考えたことはありませんでした。
 言われてみると、確かに機械文明の土台を支える貴重な発明です。
 数学におけるゼロと同じかも・・・。
 これも楽しみです。

③アリス・シーボルトの「ラブリー・ボーン」
 確か映画化されたときに、話題になったはず。
 大切な人の死を受け止めるために読むといいよ、とのオススメに従いました。

④北原亞以子の「恋忘れ草」
 旅行に持っていくたくさんの本の中に、藤沢周平と北原の作品があるそう。
 北原の作品は読んだことがなかったので、とりあえず直木賞受賞作を選びました。

児玉さん、最後の「ブックレビュー」をありがとうございました!

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お気に入りその1347~生物から見た世界

2017-04-07 12:39:44 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「生物から見た世界」です。

以前、日高敏隆が著書の中で紹介していた、ユクスキュル著「生物から見た世界」。
「臭いと体温だけを頼りに獲物に獲りつくダニから見た世界は、人間から見た世界とまるで違う」
というようなことが書かれていて、興味を持ちました。
それから1年が経ち、ついにきちんと読むことにしました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
甲虫の羽音とチョウの舞う、花咲く野原へ出かけよう。
生物たちが独自の知覚と行動でつくりだす“環世界”の多様さ。
この本は動物の感覚から知覚へ、行動への作用を探り、生き物の世界像を知る旅にいざなう。
行動は刺激に対する物理反応ではなく、環世界あってのものだと唱えた最初の人ユクスキュルの、今なお新鮮な科学の古典。
=====
かつて「新しい生物学の開拓者」と呼ばれたユクスキュルの古典的名著。
昆虫や動物など、生物たちが持つそれぞれ独自の環境世界の驚くべき眺めを紹介。
彼らが何を考え、行動しているのかを解明。
=====

著者・ユクスキュルって、その筋では有名な人らしいけれど、どんな人?と思ってwikiで調べました。
=====
1864年9月8日生~1944年7月25日没。
「環世界(環境世界)」という生物学の概念を提唱した。
すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考え。
事例をひとつ。
マダニというダニの一種には視覚・聴覚が存在しないが嗅覚、触覚、温度感覚がすぐれている。
この生き物は森や茂みで血を吸う相手が通りかかるのを待ち構える。
相手の接近は、哺乳動物が発する酪酸の匂いによって感知される。
そして鋭敏な温度感覚によって動物の体温を感じ取り、温度の方向に身を投じる。
うまく相手の体表に着地できたら手探りで毛の少ない皮膚を探り当て、生き血というごちそうにありつく。
この生き物にとっての世界は見えるものでも聞こえるものでもなく、温度と匂いと触った感じでできているわけである。
しかし血を提供する動物は、ダニの下をそう頻繁に通りがかるわけではない。
マダニは長期にわたって絶食したままエサを待ち続ける必要がある。
ある研究所ではダニが18年間絶食しながら生きていたという記録がある。
=====

そうそう、1年前にこのマダニの事例を読んで、興味を持ったのでした。
マダニにとっての世界と、人間にとっての世界は大きく違います。
イヌやカラスにとっての世界、ハエやクモ、モグラにとっての世界。
事例をたくさん紹介していて、雰囲気は伝わるのですが、専門用語が多くて・・・。
とても薄い本なのに、読むのにずいぶん時間がかかりました。

現実(=真実)はひとつなのでしょうが、我々人間でさえ主観的現実の影響からは逃れ得ない、ということを再認識しました。

本書には何度か、動物行動学で有名なコンラート・ローレンツが登場しました。
ある動物の行動を理解するには、その動物の主観的世界が深く関わることを考慮することが大切だからです。
ふたりの研究テーマが重なっていることは、その理論が真理に近いことを物語っているのではないかと思いました。

本書に載っていた興味深いエピソードをご紹介します。
著者が重いチフスから回復し、初めて外出したときに体験した「最遠平面」にまつわるエピソードです。
=====
20m先に色つきの壁紙のような最遠平面が下がっていた。
20mより向こうは、遠い近いもなく、小さなものと大きなものがあるだけ。
傍らを通り過ぎた車は、最遠平面に到達するやいなや、それ以上遠ざかるのではなく、ただ小さくなっていくだけだった。
=====

こんなことってあるの?と思いましたが、その後の解説を読んで納得しました。
=====
人間は、眼球レンズによるピント調整だけではそれほど遠くまで認識できない。
「最遠平面」として認識する距離は、経験により遠方へと伸びていき、最終的に7~8kmに達する。
=====

最後のあたりに結論めいたことが書かれていました。
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いずれの主体も主観的現実だけが存在する世界に生きており、環世界自体が主観的現実に他ならない、という結論になる。
主観的現実の存在を否定する者は、自分自身の環世界の基盤を見抜いていないのである。
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本書のテーマは、学問的には、国家間や人種間、個人間の環境世界の違いから生じる主観的現実を深く理解して、争いのない社会を作るために深く研究されるべきでしょう。
心理学を応用した犯罪捜査の手法、プロファイリングは、本書の応用ではないかと思います。

学者ではないので深く理解することはできませんでしたが、面白い思考実験(頭の体操)をすることができました。
たまにはこういう本を読んでみるのも良いものです。







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