お気に入りその148～鬼平犯科帳38

今回のお気に入りは、鬼平犯科帳パート38、「泥亀」です。

「泥亀（すっぽん）」では名古屋章が元盗賊の一味だった実直な男を演じています。
歩行が困難なほどの身体にもかかわらず、昔お世話になったお頭のおかみさんと娘さんの窮地を知ると救い金を作るために痛む身体を引きずるようにして一人働きの押し込み先を探し回ります。
盗人宿の番人をしていただけの不器用な男である上、この身体では一人働きなどできようはずがありません。
尾行するおまさと彦十はその痛々しいまでの実直さを平蔵に報告します。

こうして始まる「泥亀」はまるで名古屋章のために創作されたかのようなハマリようです。
鬼平犯科帳では盗賊は第二の主役といえるほどの重要な位置を占めており、それだけに見事なキャスティングが光る作品が多くみられます。
この「泥亀」もそのひとつで、名脇役名古屋章を生かすのは「これしかない！」とまで言い切れる作品だったのではないでしょうか。

名古屋章が亡くなってから数年経ちますが、この役を今誰か別の役者にキャスティングするとしたら・・・と考えた時、いかに強烈な個性だったかを改めて思い知らされます。