鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその2066~甲斐信枝

2022-04-06 12:56:05 | 鬼平
今回のお気に入りは、甲斐信枝です。

コロナ禍3年目。
ススキノに行くことが無くなり、ニッカウヰスキーのオールドボトル蒐集にも区切りがついて、今は支出のほとんどが書籍購入です。
高価な図鑑や図録を購入することもありますが、購入数で一番多いのは絵本です。
今回はお気に入りの甲斐信枝さんの絵本について久しぶりに書きます。
彼女の絵本は、絵が抜群に上手いという訳ではありませんが、じっくりと腰を据えて観察したことから見えた自然の営みの素晴らしさが読者に伝わります。
私はそういう著者の実体験をベースにしたものが大好きでこれまでいろいろ読んできました。
その中でも名作だと思ったのは、甲斐さんの「雑草のくらし」でした。
空地の雑草を5年も観察し続けた素晴らしい作品でした。
大人子どもどちらにもおススメできる絵本です。

今回ご紹介する絵本は3冊とも40年以上前に発行されたものですが、名作「雑草のくらし」同様に素晴らしい観察記となっており、おススメです。

①あしながばち (かがくのとも特製版1975/6、1987)

出版社の内容紹介を引用します。
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あしながばちの母親の目を通して、その巣作りから始まって、幼虫の子育て、えさやり、暑さ対策など、その生態にせまります。
天敵のスズメバチの登場や幼虫が繭となり働き蜂へと育っていく様、母親蜂の死と子どもたちの巣立ちまで、一年間を通したあしながばちの姿を知ることのできる絵本です。
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作者の細やかな観察眼が光る作品です。
アシナガバチの一年は次の通り。
・母蜂は牙をカチカチいわせながら棒杭を薄く削り唾液と混ぜて黒い塊を作ります。
・それを材料にして徐々に巣を大きくしていきます。
・小部屋ができるごとに卵を産み付けるため、中央の幼虫はすでに大きく育っています。
・母蜂はイモムシを背中から食い破り大きな肉ダンゴにして運び、少しずつ切り分けて子どもたちに与えます。
・暑い日は口に含んだ水滴を小部屋ひとつひとつにつけて羽であおいで幼虫を涼ませます。
・雨の日は巣の補修をします。
・幼虫がさなぎになるため糸を吐いて小部屋に蓋をすると、母蜂はその脇に次の卵を産み付けます。
・働き蜂が次々誕生してエサ運びを手伝います。
・やがて働きづめだった母蜂が死に、新しい女王蜂とオス蜂が生まれ旅立っていきます。
・お腹にたくさんの卵を抱えた女王蜂は、たった一匹、木の洞で春を待ちます。
いかがですか?
細かいところまでよく観察していることがよくわかるでしょう。
母蜂の頑張りを毎日観察する作者の姿が目に浮かぶようです。

②みのむし ちゃみのがのくらし (かがくのとも1979/2)

出版社の内容紹介を引用します。
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みのむしは枝にぶら下がっているのを見つけることができても、虫としての動きは容易にわかりません。
それくらい地味なチャミノガの幼虫なんですが、メスは成虫になってもミノの中で一生を過ごすのです。
どうしてこのような生態をもつに至ったのか。
身近な自然の驚異です。
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桜の木に棲むチャミノガたちの一生を丁寧に観察した記録です。
春、花芽が膨らんでくるとチャミノガがミノごと移動を始め、花芽にたどり着くとモリモリ食べ始めます。
やがて花が咲き、葉が茂り、幼虫は食べ物が増えていきます。
幼虫は何度か脱皮して終齢になると小枝をかじり切ってミノを補強し、サナギになります。
オスは細いサナギ、メスは丸まるしたサナギになります。
やがて羽化したオスは桜の周りを飛び回り、メスを探します。
メスは羽化しても羽根や脚が無い丸まるした姿でミノから頭を出すのがやっとです。
オスはメスを見つけると隙間に腹を入れて交尾します。
その後メスは同じ姿勢のまま産卵をし始め、数千個の卵を産み終えた時には体がとても小さくなります。
卵が孵化すると幼虫たちはミノを出て糸を吐き、四方八方に散らばっていきます。
幼虫たちは次の場所の着くや否やミノを作って身を隠します。
その場所で風に飛ばされたり、くっついた葉ごと飛ばされたり、虫や鳥に食べられたり、寄生バチに寄生されたりしてどんどん兄弟たちは減っていきます。
冬が来たときには、わずかしか残っていません。
これが自然の掟、厳しいものです。
付録には著者の観察現場を訪れた編集者がミノガを見つけられなくて観察の難しさを知ったことや、昆虫学者による他種のミノガの特徴解説がありました。
真っ直ぐな目でひたすら観察し記録した本書のような絵本は、子どもたちだけにでなく、自然を愛する人々にとっても宝物だと思います。

③こがねぐも (かがくのとも1982/9)

出版社の内容紹介を引用します。
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実際にこがねぐもを飼って、その生態を観察した絵本です。
まずは、巣のはり方、えさのやり方の観察です。
まず最初に何をえさにあげたのでしょうか。
くものあみの不思議な性質、脱皮、こうび、そして、卵を産む様子が描かれます。
秋になると、その卵から生まれた小さなこがねぐもが、かわいいあみをおるのです。
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表紙に「八木沼健夫:監修」とあります。
八木沼さんは日本を代表するクモ博士で、以前彼の図鑑を鑑賞したときに、掲載されたクモ画が全て奥さんの手によるものだったことを懐かしく思い出しました。

さて本書では著者がコガネグモを自宅に連れ帰りじっくり観察しており、その詳しい描写はクモが苦手な方でも十分楽しめる内容になっています。
クモは生きたエサしか食べないと言われているのに刺身の切れ端を与えたらすぐに食べたのには驚きました。
包帯のような糸でぐるぐる巻きにすると消化液を注入して食べ始め、お腹がパンパンに膨らんでいきます。
何回かに分けて食べ、干からびた残滓は巣の下に捨てます。
刺身を繰り返して与えていると相手が抵抗しないことを学習し、だんだん糸巻きが雑になったのには笑いました。
またある程度栄養を蓄えたら食事を中止して卵つくりに入り、お腹の卵が成熟すると敷布団のような糸の塊に産み付け、掛布団のような糸の塊をかけます。
2000もの卵から子グモが生まれると長い糸を出し風に乗って次々旅立ちました。
野生のクモは2回しか産卵しませんが、著者のクモは栄養状態が良いせいか10回も産卵したそうです。


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