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ギリシャ神話あれこれ:永劫受難のタルタロス

 
 地獄というのは概ね、天国よりも想像力豊かな情景。

 タルタロスは、大地ガイアとともに、混沌カオスから生まれた。奈落の神で、奈落そのものでもある(原初神なので)。
 タルタロスは冥界のはるか奥底にある。地底の最奥に位置する、朧に澱んだ暗黒の空間だという。天空と大地とのあいだがほとんど無限に隔たっているのと同じだけ、大地とタルタロスとのあいだもほとんど無限に隔たっている。

 このタルタロスが嫌忌されるのは、そこが、神々に反逆した罪神や神々を冒涜した罪人が送り込まれ、永劫の罰を受けなければならない牢獄だから。平たく言えば地獄。
 周囲は青銅の壁で覆われ、唯一の出入り口である青銅の門も固く閉ざされて、百腕巨人ヘカトンケイルのコットス(怒り)、ブリアレオス(活力)、ギュゲス(多くの手足)たちに厳重に見張られている。復讐の女神たちの住処でもある。

 で、タルタロスの囚人たちの面々は……

 まず、ゼウスらに敗れて幽閉された、クロノス以下ティタン神族。

 次に、ティテュオスという巨人。彼はゼウスの子で、アポロンとアルテミスの母神レトに欲情し、陵辱しようとしたところを、アポロン(とアルテミス)の弓によって射殺された。
 で、彼はタルタロスの地底に固く縛められ、2羽の禿鷹に両側から、日々、肝臓を食い破られている(かのプロメテウスと同じ罰)。

 さらに、タンタロス。彼は神寵に傲って、神々の知を試そうと、我が子を殺してその肉を食事に供した。
 で、彼は沼に立たされ水に浸ることに。沼の水は顎まで満ちているが、彼が水を飲もうとすると、水はさっと引き下がる。頭上には果樹が枝を広げているが、彼が果実をもぎ取ろうとすると、風が枝を舞い上げる。で、果てしない飢えと渇きに苦しめられている。

 さらに、シシュポス。狡猾な彼は、ゼウスの秘事を暴いたことからタルタロス送りとなったが、タナトスやハデスを上手いこと騙して、死をちゃっかり逃れようとした。
 で、彼は、絶えず転がり落ちる巨岩を岩山の頂上まで押し上げるよう命じられる。ようやく山頂に達しようとすると、岩はたちまち底まで転がり落ち、彼は永久に徒労に苦しめられている。

 さらに、イクシオン。彼はゼウスの寵遇に傲って、ヘラを誘惑し、ゼウスがヘラの姿を真似て作った雲を、ヘラだと思って陵辱した。
 で、彼は散々に鞭打たれ、タルタロスの燃えさかる車輪に手足を磔にされて、火炎に身を焼かれながら、恐ろしい速さで永遠に空中を回転させられている。

 それから、ダナイデス。彼女らはダナオスの50人の娘たちで、夫となるアイギュプトスの50人の息子たちを新婚初夜に暗殺した。
 で、彼女らは、穴の無数に空いた壺で永遠に水を汲まされている。

 あと、浪費家の妻を持つ勤勉家オクノス(臆病)。どういう罪でか知らないが、彼はタルタロスで網を編んでいる。が、編んだ先から、後ろにいる牝ロバがその網を食べてしまうので、彼は永遠に網を編み続けなければならない。

 画像は、ティツィアーノ「ティテュオス」。
  ティツィアーノ(Titian, ca.1485-1576, Italian)

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