
翌夕、オデュッセウスは一同に挨拶し、王の用意した、贈り物を山と積んだ船へと乗り込む。彼が眠っているあいだに、漕ぎ手らは、飛ぶ鳥もかなわぬ速さで船を漕ぎ進める。
そして夜が明ける頃、イタケの入り江に船を乗り入れ、眠るオデュッセウスと贈り物とを砂浜へ降ろして、パイアケスへと帰っていった。
オデュッセウスはようやく故郷イタケに帰還した。トロイアへ出征して、実に二十年が経過していた。
さて、この短い航海の一部始終を見ていたポセイドンは、腹の虫が治まらない。ゼウスに不平をぶちかます。
パイアケス人め、不敬にもほどがある。あんなに簡単にオデュッセウスをイタケへと送ってしまいおって。奴はもっと苦労して帰るべきだったところを、忌々しい!
不敬についてなら、お前は神なのだから、懲らしめればよかろう、と答えるゼウス。よし! とポセイドンはパイアケスの国へと向かい、船が帰ってきたところを待って石に変え、海底に打ちつけてしまった。
パイアケスの人々は、眼前の海で船が忽然と消えてしまったことに驚愕する。が、一人、アルキノオス王だけは、その昔、父王から聞かされた予言の言葉を思い出して、合点する。
いずれポセイドン神が、パイアケスを訪れた人間を送るパイアケス人の行為に立腹し、船を沈め町を巌で囲むだろう。……父のあの予言は、このことだったのだ。なんというとばっちり。
To be continued...
画像は、アイエツ「アルキノオスの宮殿でのオデュッセウス」。
フランチェスコ・アイエツ(Francesco Hayez, 1791-1882, Italian)
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