ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウス帰還-トリナキエ島(続)

 
 ところが嵐は一向に静まる気配を見せない。結局一行は一ヶ月ものあいだ、島に足止めされることになった。食料は底を突き始め、一行は魚や鳥を獲って飢えをしのいでいたが、とうとう、起こるべくして事は起こる。

 あるときオデュッセウスは、帰国を祈願すべく島の奥へと入り、そのままうとうとと寝入ってしまう。で、彼が船を留守にしている隙に、またしてもエウリュロコスが一同をそそのかす。
 なあ、みんな、死んでしまえば帰国も何もあるもんか。このまま惨めに飢え死にするよりも、最後に腹いっぱい食って、万が一の将来、神罰が当たって一思いに溺れ死ぬほうが、いくらかましというもんじゃないか?

 さて、眼を醒ましたオデュッセウスが船へと戻ってみると、一同はヘリオス神の牛を殺して肉を焼き、むしゃむしゃと食っている最中だった。
 家畜を世話しているヘリオスの娘たち、ランペティエとパエトゥーサは、この所業をすぐに父神に知らせる。で、ヘリオスは怒り心頭、すぐさまゼウスに訴える。

 一度悪行に手を出せば、後は平気で何度も繰り返す。その後6日間、一同はみだりにヘリオスの牛を殺して食い続けた。ヘリオスの家畜は仔を産まない代わりに死ぬこともない。剥いだ皮も、串に刺して炙った肉も、生きていた頃と同じように動いたり鳴いたりする。
 7日目にようやく嵐が治まって、一行は出帆する。が……

 To be continued...

 画像は、ドレイパー「カリュプソの島」。
  ハーバート・ドレイパー(Herbert Draper, 1863-1920, British)

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