ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウス帰還-トリナキエ島(続々)

 
 トリナキエ島を離れ、見渡す限り一面の海となったとき、俄かに暗雲が空一面を覆うかと思うと、大嵐が船を襲う。もちろんこれはゼウス神が起こしたもの。
 見る間に帆綱が裂け、帆柱が倒れる。何とか波にさらわれまいと必死に船にしがみつく人間どもを皆殺しにすべく、ゼウスが船めがけて雷を撃つと、船は木っ端微塵に砕け散る。一同は海へと投げ出され、一人また一人と波に飲まれていった。

 こうしてイタケ勢は全滅する。ただ一人、オデュッセウスを除いて……

 オデュッセウスはと言えば、帆柱と竜骨を帆綱で結わえてそれに乗り、波間を漂っていた。が、流されていった先は、あの大渦を巻き起こすカリュブディスの岩礁。カリュブディスが海水を飲み込もうとしたとき……
 オデュッセウスは頭上に根を差し伸べていた、岩礁のてっぺんのイチジクの巨木の根に取りすがる。見る間に海面が渦を巻いて下がり、海底の岩礁が顔を出す。その光景を足許の遥か下に覗きながら、オデュッセウスは不屈にぶら下がる。やがてカリュブディスが再び海水を吐き出し、海面がゴオーッと盛り上がってくる。帆柱と竜骨が吐き出されるのを待って、またもやぴょんと飛び乗ると、両手を櫂に遮二無二、海水を掻く、掻く、ひたすら掻く。

 こうして九死に一生を得たオデュッセウスは、その後9日間海を漂い、ニンフ、カリュプソの住まうオギュギエ島に流れ着く。

 To be continued...

 画像は、ベックマン「オデュッセウスとカリュプソ」。
  マックス・ベックマン(Max Beckmann, 1884-1950, German)

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