ボーデン湖畔にて(続々)

 
 荷物を置いて一息吐いてから、受付の男の子が教えてくれたとおり、ユースの裏から階段を下りて、トンネルを抜け、湖岸に出る。

 このトンネルの壁面もそうだったが、ドイツではどの町でも、駅や道路などの公共の壁面は、スプレー塗料で描かれたグラフィティ・アートで埋め尽くされている。よく見ると、ナチスのシンボルだったハーケンクロイツ(鉤十字)なんかもある。
 やっぱりグラフィティは、世界共通の文化であるみたい。
 
 グラフィティはいわゆるヴァンダリズム(=公共物破壊・汚染行為)だが、ドイツではそれが黙認されている壁面があるらしい。そうした壁面にだけ、こぞって限られた色味で、キャラクター付きのバブル文字がセンスよく描き殴られている。
 ドイツの町はゴミや煙草の吸殻だらけなのだが、町並み自体が統一されているため、そうしたゴミや吸殻がさほど気にならない。それと同様、このグラフィティも、全体としての景観を損ねない領域で描かれているため、さほど気にならない。

 ただし私は、こうしたヴァンダリズム文化の溜まり場について、それを好む人々が集まる(あるいはかつて集まった)溜まり場、というイメージを持っているので、ちと怖い。なので、グラフィティ・アートの壁面のトンネルは、足早に通り抜けた。 

 ちなみにヴァンダリズムというのは、広義では、美しい景観を損なう行為全般を意味する。ので、見苦しい建造物を建てる行為も含まれてくる。
 だから、楳図かずおの赤白ストライプの“まことちゃんハウス”も、もちろんヴァンダリズムだし、その定義から言えば、土建屋国家ニッポンがそもそもヴァンダリズム国家なわけだ。
 
 To be continued...

 画像は、ユーバーリンゲン、ボーデン湖へ漕ぎ行く人々。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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