異境のアルメニア人

 
 マリグ・オアニアン「異境のアルメニア人」を読んだ。ロシア絵画をよく扱っているあるサイトで、「良い映画を観たような読後感の本」とお勧めの言葉があったので、探していた本。
 なんか最近、知的なことと言ったら本を読むことだけ。もっと他のこともやらねば、脳味噌がたるむ……

 日本では概ね関心が薄いが、主に第一次大戦時の、トルコ(オスマン帝国)におけるアルメニア人虐殺は、歴史的事実として認知されている。犠牲者の数は100万人を超えると言われ(ソ連邦崩壊によって独立したアルメニア国家の人口が、これとほぼ同数という)、生き残ったアルメニア人たちは難民となり、ヨーロッパやアメリカ、中東へと離散していった。画家ゴーキーなどもその一人。
 これだけ大規模な虐殺は、普通に考えれば、国家の意図による組織的な行動なしにはあり得ないが、現トルコ政府は依然、国家に対する責任の所在を否認しているという。

 この本は、こうした受難の時代における、著者の父アルチオンを中心とするアルメニア人一家(というか一族)の行方を追っている。虐殺を逃れたアルメニア人たちがその後、どのように生き抜いていったのか、その歴史的証言が、小説の形で描かれている。
 一家は大家族の連帯感で結ばれているが、登場人物として意味があるのは、父ネルセスと母マリーを早くに亡くした、主人公アルチオン、姉ヴィクトリア、弟ヴァンとシモン、大虐殺を逃れ、一家を呼び寄せるべくにフランスに渡る叔父アラム、運転手を務める汽車で、一家を一人ずつアンカラから脱出させる叔父イェルヴァント、といったところ。

 To be continued...

 画像は、F.A.ブリッジマン「アルメニアの女」。
  フレデリック・アーサー・ブリッジマン
   (Frederick Arthur Bridgman, 1847-1928, American)


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