goo blog サービス終了のお知らせ 

魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-

 世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記

ギリシャ神話あれこれ:天翔けるベレロポン(続々々々)

2014-04-01 | 僕は王様
 
 こうしてめでたくリュキアの王となったベレロポンは、あるとき、自分を陥れたアルゴス王妃アンテイアへの復讐を思い立つ。彼は威風堂々、王妃を訪れて、誘惑する。未練がましい王妃は、ベレロポンの胸に飛び込み、二人して駆け落ちすべく、いそいそとペガソスの背に乗る。
 が、ベガソスがはるか上空まで来ると、ベレロポンは王妃をペガサスの背から突き落とし、殺してしまった。
 
 神に愛されたベレロポンだったが、次第に慢心し、やがて、神々の列に名を連ねるべく、天界へ昇ることを思い立つ。ペガソスを駆って、天へ、天へと翔け昇るベレロポン。
 人間は決して神になろうとしてはいけない。自分を神と同列に置いてはいけない。自分を神より下位の存在としてわきまえなければいけない。
 オリュンポス目指してやって来るベレロポンに、ゼウス神は虻を放つ。虻はペガソスのお尻をプチッと刺した。

 ブヒーッ! お馬はみんな虻が大嫌い。暴れだしたペガソスはベレロポンを振り落とし、そのまま天へと駆け去っていった。一方ベレロポンのほうは、真っ逆さまにアレイオンの野へと墜落する。
 地上に叩きつけられても、さすがは英雄、ベレロポンは死ななかった。が、跛になったとも、盲目になったとも、発狂したともいい、放浪の末に、栄光とは無縁の死を迎えた。

 画像は、マルチェフスキ「詩人とキマイラ」。
  ヤチェク・マルチェフスキ(Jacek Malczewski, 1854-1929, Polish)

     Previous

     Bear's Paw -ギリシャ神話あれこれ-

ギリシャ神話あれこれ:天翔けるベレロポン(続々々)

2014-03-31 | 僕は王様
 
 やがてベレロポンは、コリントス城砦にあるペイレネの泉で、水を飲んでいるペガソスに遭遇。彼は飛び去ろうとしたペガソスを捕らえて、黄金の轡と手綱で御することに成功する。

 いざ、キマイラ退治へ! ベレロポンはペガソスに乗って空を翔け、炎の届かない上空からキマイラに矢を射かける。さらに、キマイラが弱ってきたところで、その口のなかに鉛を放り込む。
 ボッ! キマイラが得意の炎を吐くと、鉛が溶けて体内へと流れ込む。キマイラは体の内部から鉛に焼かれて、息絶えた。

 さて、ベレロポンが首尾よくキマイラを退治したのに驚いたイオバテス王は、今度は、凶暴なソリュモイ族の、さらにアマゾン女族の討伐を命ずる。が、ベレロポンはペガソスを御して、王の課す難題を事もなく次々にやってのける。
 ついに王は、凱旋するベレロポンを闇討ちすべくリュキア兵らを待ち伏せさせる、姑息な手段に出るが、ベレロポンは、これらすべてを殺して帰還する。

 こうなっては王も、ベレロポンの猛勇と神の守護とを見直すしかない。もともと王自身、ベレロポンに恨みがあったわけでもなく、一転して彼を歓待、末娘を与えてリュキアに迎える。

 To be continued...

 画像は、モロー「キマイラ」。
  ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau, 1826-1898, French)

     Previous / Next

     Bear's Paw -ギリシャ神話あれこれ-

ギリシャ神話あれこれ:天翔けるベレロポン(続々)

2014-03-30 | 僕は王様
 
 愛憎が絡むとどうも人間は公平な判断をしない。激昂するプロイトス王。だが相手は客人であり、腕に憶えある勇者でもあるベレロポン。王は思案し、怪しい文字で書いた手紙を、舅であるリュキアの王イオバテスに手渡すよう、ベレロポンにことづける。
 ベレロポンは、王妃から逃れられることにむしろ安堵しながら、何の疑念も抱かずにリュキアへと赴く。が、王の手紙に書かれていたのは、何とかしてこの使いの男を殺してしまうように、という暗殺依頼……

 手紙を受け取ったイオバテス王は思案し、この暗殺を、自らの手も名誉も汚すことなく遂行する妙案を思いつく。王は言う。この頃、火山から人里に下りてきては人畜を荒らしていた怪物、キマイラを、退治してはくれまいか。
 キマイラ(キメラ)というのは、山羊の胴と角、大蛇(あるいは竜)の尾を持つ牝獅子で、口からは火炎を吐くという怪獣。怪物たちの出生の例にたがわず、テュポンとエキドナの子とされる。

 これは弱ったベレロポン。予言者ポリュイドスに助言を求めたところ、英雄の守護神アテナの加護を得よ、という返事。
 で、ベレロポンはアテナ神に祈る。やがて眠り込んでしまった彼の夢にアテナ神が現われ、天馬ペガソスを手に入れよ、と告げる。眼を覚ました彼のそばには、黄金の手綱と轡があった。
 よし! 早速ベレロポンは、ペガソスを探す旅に出る。

 To be continued...

 画像は、画像は、モロー「キマイラ」。
  ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau, 1826-1898, French)

     Previous / Next

     Bear's Paw -ギリシャ神話あれこれ-

ギリシャ神話あれこれ:天翔けるベレロポン(続)

2014-03-29 | 僕は王様
 
 ちなみに、この父王グラウコスは、飼っていた牝馬を頑丈な駿馬にするために、人肉を餌に与えていたという馬狂い。グラウコスは、イオルコスの王ペリアス(英雄イアソンの愛人メデイアの奸計で暗殺された)の葬礼競技に参列した際、餌である人肉を与えることができなかったために、空腹の牝馬によって、御しているところを八つ裂きにされて貪り喰われてしまった。
 そんなグラウコスは、死後、馬たちを脅す悪霊タラクシッポスになったという。

 ……ベレロポンの馬との因縁は、父王から受け継いだ血なのかも知れない。

 さて、ベレロポンはもともとヒッポノオスという名だった。容姿端麗で、武芸の腕も抜群。なのに、あるとき競技の際に、兄ベレロスを誤って殺してしまう。
 以来、彼はベレロポン(ベレロスを殺した者)と呼ばれるようになる。

 ベレロポンはコリントスを逃れて、アルゴスの王プロイトスのもとで罪を清めてもらう。
 このとき、王妃アンテイア(あるいはステネボイア)が、惚れ惚れする男振りのベレロポンに恋をしてしまう。あれやこれやと誘惑する王妃を、だが、誇り高いベレロポンは手厳しく拒絶する。
 こうなっては憎さ百倍、アンテイアは夫プロイトスに、ベレロポンに陵辱された、あんな男を厚遇するからよ! と虚偽を訴える。

 To be continued...

 画像は、W.クレイン「キマイラと戦うベレロポン」。
  ウォルター・クレイン(Walter Crane, 1845-1915, British)

     Previous / Next

     Bear's Paw -ギリシャ神話あれこれ-

ギリシャ神話あれこれ:天翔けるベレロポン

2014-03-28 | 僕は王様
 
 小学校の頃、おませで品の好い、お嬢グループのお喋りに引っ張り込まれて、「いくら欲しくても、欲しい気持ちだけでは手に入らない類のもので、一番欲しいものは何?」というお題に参加した。お嬢たちはキャッキャッとはしゃぎながら、「世界一の美貌」、「お姫さまという位」、「片想いの男の子のハート」など、お嬢らしい答えをするのだった。
 で、私の番が来て、私は、「んー……ペガサスかな」と答えた。
 一瞬、お嬢たちはきょとんとして顔を見合わせ、それから再びキャイキャイと、「美人だったら、美しさに惹かれてペガサスが舞い降りて……」「もしお姫さまになったら、お城にペガサスを飼って……」「恋の相手がペガサスに乗って迎えにきて……」と、自分たちの憧れのイメージのなかに、早速ペガサスを取り入れた。
 でも、ペガサスって一頭しかいないんだよ。私は美も王位も要らないから、ペガサスが欲しいよ。
 ……

 ペガソス(ペガサス)は翼を持つ馬で、見たものを石に変える蛇髪の怪女メドゥーサの血から生まれたという。父親は海神ポセイドン。馬というと大抵、ポセイドンが絡んでくる。
 ペガソスは、英雄ベレロポンのエピソードに登場する。ベレロポンは、シシュポスを祖父、グラウコスを父とする、コリントスの王子。

 To be continued...

 画像は、画像は、ファン・テュルデン「ペガソスとアテナ」。
  テオドール・ファン・テュルデン
   (Theodoor van Thulden, 1606-1669, Flemish)


     Next

     Bear's Paw -ギリシャ神話あれこれ-