元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シービスケット」

2010-07-12 06:37:33 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Seabiscuit)2003年作品。1930年代、大恐慌で苦しむ人々に希望の光を灯した競走馬とそれにまつわる3人の男たちを描く、ゲイリー・ロス監督による実録ドラマ。その年のアカデミー作品賞の候補にもなっていたが、大して面白くない映画だ。

 私のように競馬に全く興味がない観客をも取り込むためには、競馬の持つ魔力と“色気”をあざといまでに前面に出し、それを普遍的な映画的興趣に昇華していかなければならないはずだが、ここで描かれる競馬は“単なるスポーツ”あるいは“単なる娯楽”でしかない。

 競争シーンは迫力はあるものの、よく見ればスタート時の駆け引きとかゴール寸前のデッドヒートとかいう大事な場面は全然描かれていない。ただ“馬が走っているところを写しました”というだけで、そこには映画的スペクタクルのカケラもないのだ。

 それは競走馬を取り巻く3人の男達の描写についても同様で、馬に取り憑かれた狂気を浮き彫りにしなければならないはずが、最初に“彼らは馬が好きでした”という説明的シークエンスが提示されるだけで、あとは“史実”を何の工夫もなく積み上げるのみ。しかも、ソープ・オペラみたいな御都合主義的展開を大仰に繰り返すあたりは気色が悪い。これが2時間半も続くのだから疲れてくる。

 トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパーといった面々も“ただ出ているだけ”といった感じで特筆すべきものはない。テレビのミニ・シリーズで扱うのが丁度いいような出来だ。
コメント
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