元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ロストクライム 閃光」

2010-07-11 06:37:35 | 映画の感想(ら行)

 いつの映画を観ているのかという気分になった。感覚としては30年は古い。ひょっとしてこれは冗談でやっているのだろうか。もしも本気で製作しているのならば、伊藤俊也監督はじめとするスタッフの頭の中が“化石状態”になっているとしか言いようがない。

 ラーメン屋の店主の他殺体が東京湾に浮かぶ。定年間近のベテラン刑事は、この事件が時効により迷宮入りしてしまった3億円強奪事件と関係があることに気付き、血気にはやる若い刑事と共に真相を追う。ところが、警察上層部は二人の捜査を妨害。やがて戦後最大の謎といわれる事件と警察当局との黒い繋がりが炙り出される・・・・という筋書きだ。

 構想自体はスケール感たっぷりだが、中身は実にショボい。前半を観ていれば誰でも予想が付くように、3億円事件の犯人が当時の警察関係者の身内だったというプロットが中盤以降に提示されるのだが、その程度で観客が満足すると思っているのだろうか。あの事件が起こった当時、どうして普通の家庭に育った若者達が狼藉沙汰に及んだのか、そっちの方を追求すべきだ。この映画では単に“全共闘の時代だったから”という一言で片付けてしまっているようだが、その程度の浅い認識でデカい題材を選んでもらっては困るのである。

 話の進め方は行き当たりばったりで、若い方の刑事(渡辺大)が同じ署の仲間にいきなり拉致されたり、退職した刑事の話を思わせぶりに流したり、内実を知る雑誌記者がうろついたりと、視点があっちこっちに飛んでまるで要領を得ない。さらに若い刑事の同棲相手が元ヘルス嬢だったという扇情的なモチーフが挿入されるに及び、思わず失笑してしまった。

 奥田瑛二や武田真治、かたせ梨乃、原田芳雄といった多彩なキャストを擁していながら、全員が激しくデクノボーにしか見えない。画面の切り取り方なんか凡庸そのもので、最近はテレビの2時間サスペンス劇場でもあまりやらないような(とは言っても私もあまり見たことはないのだが ^^;)説明的な映像の羅列など、何かのジョークとしか思えない体たらくだ。終盤の展開なんか脱力そのもの。尻切れトンボみたいなラストも含めて、収拾がつかなくなり映画そのものを放り出したとしか思えない。

 それにしても、次々と殺人に手を染める犯人は一体どこで拳銃を手に入れたのだろうか。さらに、脱ぎそうでなかなか脱がない(元風俗嬢役の)川村ゆきえの存在価値は、果たしてどこにあるのだろうか(激爆)。とにかく、観ていてストレスばかりが溜まる一編である。
コメント
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