気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

具体 たなかみち 角川学芸出版

2019-12-09 23:43:37 | つれづれ
ああ君も短歌びと的嘆きをす自分探しに疲れただなんて

あけぼののほのか紅さす海岸に白き紐なる波もつれをり

竹串に刺さるる一瞬活海老がおのが命を振り払ひたり

駅までは役に立ちたる具体として捨て置かれたる傘がびしよ濡れ

愛恋に夕暮れは来てあをによし奈良漬色の中年後期

秋の夜はアフガン編みの固き目の行きて戻りてほうふくほうふく

十日前死にたる人のシェーバーに砂鉄のやうな髭が付着す

乳欲しと五体に泣けるみどりごの青水無月の闇のまん中

舞ふごとき納棺師の手に母の死が意匠されゆく違和となるまで

ベンチにて俯きをりし老いびとがつひに合点を得しごとく去る

(たなかみち 具体 角川学芸出版)

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