気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

古今さらさら 河野多香子 不識書院

2018-05-31 00:53:35 | つれづれ
黙祷はまだしたくないこの国の揺れて揺られて漂う姿

木洩れ日をつかまえようと手を伸ばすおさなの指から夏の鳥飛ぶ

野良猫と呼ばれるほどの魂をもつ猫おらずビルの町には

飛び立とう冬が近づく身の内の水の部分は君に預けて

残された父の日記に細々と戦争当時の食べ物の値段

武蔵野の父が愛せる槻の木のいま春が来て新芽を降らす

紙風船 折ってたたんで息吹いて母が呟くあのころの恋

こんな夜は三匹が揃って嘲笑うドイツワインのラベルの猫が

夜更けには月が窓辺を訪れて古き歌集の吐息をのぞく

嘘つきな女がほそい指で折る造花のような夜の東京

(河野多香子 古今さらさら 不識書院)

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