気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人12月号 同人のうた その3

2013-12-25 01:09:07 | 短歌人同人のうた
手のひらに水かきが生え月明かり満ちた夜空を子らは泳ぎぬ
(村田馨)

務さん逝きて過ぎゆく歳月をなぐさめ顔のおつきさまのぞく
(岡田経子)

老年の始まりはいつ曼珠沙華が切り取っている真昼のひかり
(守谷茂泰)

「雨のにほひがする」と人の言ひしのちしづかに雨の降りはじめたり
(山寺修象)

カサブランカの大きくひらく花束はコンクリートの電柱のそば
(三井ゆき)

柿とどく雨の玄関入りきれぬほどの雨の匂いとともに
(川田由布子)

カナブンの青と緑と金の色かがやきながら秋の陽をあぶ
(神代勝敏)

干してゐる傘にしづかに触れてゆくべつかういろの蜻蛉の翅は
(渡英子)

芥川自死せる家の跡を見て金木犀の匂う裏道
(藤原龍一郎)

小宮さんありしゆゑ今の「短歌人」あるを書きおくはわが最後の使命
(蒔田さくら子)

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短歌人12月号、同人1欄より。