気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-12-23 20:06:52 | 朝日歌壇
両替の紙幣確かめ深々と機に礼をして媼は去りぬ
(福岡県 住野澄子)

廃線の鉄路踏まえて親しげな羚羊の瞳に今朝もまた会ふ
(気仙沼市 千葉迅太)

胸元を沢村貞子のように着て祖母は火鉢のはたにすわり居き
(枚方市 小川洋子)

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一首目。ATMのことだろう。機械なのに、両替してもらったことを人間に対するように礼をするおばあさん。律義さがわかる。事実だけを述べて媼の人柄を伝える。
二首目。廃線と羚羊の取り合わせがいい。廃線を詠むとたいてい魅力のある歌になる気がするが・・。佐佐木幸綱氏の評を読んで、大船渡線の気仙沼駅・盛駅間の不通のことを知った。
三首目。沢村貞子という固有名詞になつかしさを感じた。昭和の働き者で品のいいお母さんという役をよくされた女優さん。エッセイも何冊も書いてられたはず。着物の胸元はきちんと合わさっているのだろう。結句、すわり居きの「居」の漢字に存在感がある。