おはやうと軽く声かける人をらず猫をらずネコジャラシ揺れてゐる
並びたるケヤキ背にして二宮尊徳(そんとく)の胸像の佇つ府立図書館
ひと文字のために二行となる歌をかなしみ読めり二行目の「り」を
いくつもの孤独寄りきて本ひらく閲覧室にひぐらしの声
類語辞典に「昇天」引けば液晶の面にさまざまな死が現れる
廃駅と書き疒(やまひだれ)でなきことにはつか安らぐ インクはブルー
しかすがに衰へしるきサルスベリうするる紅をいとしみて見つ
(近藤かすみ 現代短歌11月号 特集・六十歳の歌人)
***************************************
私が生まれた昭和二八年は、テレビ放送が始まった年。新し物好きの父は14インチを早々と買った。母の縫った別珍のカバーが掛けられたり、目を護るための樹脂カバーが取り付けられたりした。ひょっこりひょうたん島、時間ですよ、ナポレオン・ソロなど、見たい番組に合わせて暮らしていた気がする。新日本紀行というのもあった。あのテーマ音楽が怖くて、蒲団に潜り込んだものだ。同年の女優さんに、竹下景子、仁科亜希子がいる
並びたるケヤキ背にして二宮尊徳(そんとく)の胸像の佇つ府立図書館
ひと文字のために二行となる歌をかなしみ読めり二行目の「り」を
いくつもの孤独寄りきて本ひらく閲覧室にひぐらしの声
類語辞典に「昇天」引けば液晶の面にさまざまな死が現れる
廃駅と書き疒(やまひだれ)でなきことにはつか安らぐ インクはブルー
しかすがに衰へしるきサルスベリうするる紅をいとしみて見つ
(近藤かすみ 現代短歌11月号 特集・六十歳の歌人)
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私が生まれた昭和二八年は、テレビ放送が始まった年。新し物好きの父は14インチを早々と買った。母の縫った別珍のカバーが掛けられたり、目を護るための樹脂カバーが取り付けられたりした。ひょっこりひょうたん島、時間ですよ、ナポレオン・ソロなど、見たい番組に合わせて暮らしていた気がする。新日本紀行というのもあった。あのテーマ音楽が怖くて、蒲団に潜り込んだものだ。同年の女優さんに、竹下景子、仁科亜希子がいる