気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人12月号 同人のうた

2013-12-14 19:35:17 | 短歌人同人のうた
肘すらりと空に伸べたる少年のなほ在り川本浩美在らず
(酒井佑子)

この先は海につづけり砂の泣く声を聞きしはわが空耳(そらみみ)か
(関谷啓子)

あさがほの青よりあをき夜のそこひ漂ひゐたりみじかきゆめに
(佐々木通代)

左は死、右は生なるやもしれず ふたつを分けて咲く曼珠沙華
(原田千万)

食べをへてとなりの皿よりひよいと桃ひと切れぬすむ男かはゆし
(紺野裕子)

たれからも要なしとされているやうで雑巾かたくもう一度しぼる
(杉山春代)

筆柿を深夜に剝いている手より一語一語のように皮落つ
(岩下静香)

栗きんとんほこりと口に崩れたり晴れては曇る午後のつかのま
(春畑茜)

十五夜の月見泥棒来ぬ夜半の母に教へるダブルクリック
(澤志帆)

水面に擬宝珠の影を映しつつ月光は橋を渡りゆきたり
(平野久美子)

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短歌人12月号、同人1欄より。
酒井佑子さんの歌。初句を読んだだけで、川本浩美のことを思ってしまった。これ以上言わなくても、みな同じ気持ちだ。