気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人10月号 同人のうた その2

2013-10-05 01:21:49 | 短歌人同人のうた
蓮田市の花はなみづきマンホールの蓋に彫られて夏闌(た)けにけり
(小池光)

浴衣の女男(めを)ゆき交ふかたへ原発被害相談所ありてわれは過客(たびびと)
(渡英子)

鎮痛の錠剤闇に飲み下し遠景にして非在の人よ
(藤原龍一郎)

油蟬も啼かぬ猛暑日生きていることの証しと印鑑を押す
(川田由布子)

『南方熊楠菌類図譜』に並びたる百の茸をおもひて眠れ
(高田流子)

猛き葉のあひまあひまにうすももの合歓の花咲くこの世のひととき
(大和類子)

伏し目がちに歩みくるなりわれに似てわれにあらざる若き分身
(染宮千鶴子)

居るだけでほんのり楽しい人がいいオクラの花をのぼりゆく蟻
(木曽陽子)

昼暗き室を統べるやテーブルの大き器のうす紅の蓮
(高山美子)

いちどだけ道を外れてみることのかそけき甘さミルク塩飴
(大越泉)

***************************************

短歌人10月号、同人1欄より。

三首目。先ごろ亡くなった川本浩美の「バファリンを四錠吞みて寝ねむとす五錠目まではいまだ呑まずき」という『起伏と遠景』の帯の歌を思わせる。師であった藤原龍一郎からのオマージュ。