気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

エフライムの岸  真中朋久  

2013-07-28 09:30:45 | つれづれ
夏至ちかき長きゆふぐれきんいろの水面を切つて渡船が戻る

いかにせむいかにせむとぞ思ひゐしわが足のめぐり鳩が首ふる

ひらめきて子を叱るときはつかなれど官能のごときもののきざせる

首のべて啼かんとしつつ声をしぼる鴉ありこゑをたのしむごとし

父母の蒲団にきつねのぬひぐるみを入れに来る子よなんのつもりか

坂のなかばに歩みをとめてふりかへる師弟食堂のありたるあたり

あくびするごときこゑして停まりたる装置はそののちを動かず

火をおこして火と向きあひてひとを待つ寒の夕暮れさびしくはあらず

犯行の一部始終に言ひおよび眉ひそめあふは喜悦のごとし

みづしごと終へて換気を止めしとき階下の池に鯉は跳ねたり

(真中朋久 エフライムの岸 青磁社)

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真中朋久の第四歌集『エフライムの岸』を読む。
2006年から2010年までに発表した作品から、552首を選んだということで、しっかりと読み応えがある。
おかしな言い方かもしれないが、真中さんの歌には「どや顔」の歌がない。目立つ言葉で、読者を捉えようとする歌がないので、するする読んでしまう。文体はけっこうゴツゴツしているのに。「師弟食堂」は珍しく言葉の魅力にひかれた。そして、あとになって、気になって読み返す。十首選をしようと思って付箋を貼っていくと、半分くらいで、十首になってしまった。実は、もっと貼っていて、厳選してここまで減らしたのだが・・・。
人のよって、好みの歌は違ってくる気がする。また、続きも書きます。

書影を縦に撮って、縦に載せたつもりが横に。クリックすると縦になります。いろいろな意味で手ごたえのある歌集。