気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-07-22 19:42:25 | 朝日歌壇
家事いくつすませて来たる図書館に座れり森にひとりゐるごと
(三鷹市 増田テルヨ)

をりをりの運動会や卒業式妻と子だけの写真の並ぶ
(下野市 石田信二)

阿蘇の野をゆつくり歩く馬の背に揺れて聞きをり馬の足音
(熊本市 徳丸征子)

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一首目。家事をすませて、やっと来ることの出来る図書館。そこは森のように静かで寛ぐことのできる空間だ。家にいて家族がいると、ざわざわして落ち着かなくて、とても本など読む気にならないだろう。テレビの音がうるさいかもしれない。森は、木の集まるところである。木は紙の原料で、本は紙からできている。森という比喩は納得のいくところだ。
二首目。ちゃんとアルバムを整理していると、こういう光景に会うことになる。作者は男性だから、おそらく仕事で忙しくて、子供の学校行事などには出られなかったのだろう。ふだんは、仕事で子育てに参加しないのに、入学式や卒業式など目立つところだけ登場する父親もいる。これはこれで、けっこう腹の立つ存在だ。
三首目。「ゆつくり」は言わずもがなの言葉かと思うが、これが効いている。馬が二度出て来るのも、ちゃんと意味がある。単純に詠んでいるようで、工夫の感じられる一首。