気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

渦のとびら  山本枝里子

2013-07-20 11:45:09 | つれづれ
きららかに春のひかりを照りかへし内部の渦をみせぬ海峡

ひとたびは地に落ちてゐしはなびらが風におされて舞ひのぼりゆく

直列は並列よりもさびしいか充電式の電池取り出す

四国とは詩国すなはち志国なり誰もだれも死国といふな

昔からずつと夢みてきたやうな 玩具売り場に立ちすくむなり

どこからが坂かわからぬ坂道の果て昼月のやうな日輪

風を吸ひ雨を吸ひこむ木々たちが人を吸ひこみたい夜である

寂しくない人間なんてゐないよと今朝は豆腐に教へてやれり

そよぎゐるシマトネリコよわたしまだ木にはならない女でゐたい

夜更けまで手を握りをり離したらあの世へいつてしまひさうな父

(山本枝里子 渦のとびら ながらみ書房)  

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心の花所属の山本枝里子の第二歌集『渦のとびら』を読む。
山本さんとは面識はないが、縁あって八年前に出た第一歌集も読んでいた。故郷が徳島県なので、ご両親のおられる故郷に帰り、働きながら歌を続けておられる。渦のとびらという集題は、鳴門の渦潮にちなむのだろう。個人的好みでは、三首目の「直列は並列よりもさびしいか・・・」の歌に惹かれる。自分にも当てはまることなのだが、歌を詠むことで、寂しさや悲しみを慰めながら生きていく姿勢が見える。どの歌もわかりやすく、胸に響いてくる。九首目の下句は、ちょっと生な感情が出すぎている気がするが、上句の具体で中和されている。
ますますのご活躍をお祈りします。