気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-07-15 19:53:04 | 朝日歌壇
潤一郎と平八郎が並びゐる法然院の静かなる雨
(茨木市 瀬川幸子)

富士山は恥ずかしいからかくれてた新幹線から娘のメール
(水戸市 木沢美千子)

母の見る最後の景となるだろうベッドに起こし夕映えを見る
(横浜市 鈴木一俊)

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一首目。法然院には谷崎潤一郎夫妻の墓、日本画家の福田平八郎の墓がある。そのほかにも哲学者の九鬼周造、経済学者の河上肇の墓があり、その一角を見るのはなかなか面白い。結句の「静かなる雨」でうまい一首に仕上がった。
私も、一時期谷崎潤一郎の小説にはまって、お墓まいりをしている。
二首目。世界遺産にも認定された富士山を見て、恥ずかしいと思う感性。ものすごくよくわかる。いかにも立派で有名なものを見に入ったり、写真を撮ったりするのが恥ずかしいのだ。だからかくれるけど見てしまう。あなたの隣にこんな人いませんか?
三首目。何の説明も要らない直球の歌。窓際の景色の見えるベッドで良かったですね、と声をかけてみたくなる。一緒にいることが最後の親孝行だ。