気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人6月号 同人のうた その2

2013-06-10 19:14:51 | 短歌人同人のうた
この年にならねばわからぬことありと老いて知るまで生きたまへ君
(蒔田さくら子)

帽子屋で帽子買う夢大正の御世に行きたきわれなればこそ
(藤原龍一郎)

この枝にまたこの枝に咲きましたよりんごの花が亡き父さんよ
(神代勝敏)

無人なる隣の庭に木付子(きぶし)咲きひつそり春は佇みてゐる
(大和類子)

定型よりはみだす言葉をなだめつつ矯正してをり電車の中で
(明石雅子)

花水木見上げる夕べまっしろな波打際となるわが思い
(守谷茂泰)

たましひはきりきり舞ひの三年にベルトの穴のひとつがふえる
(染宮千鶴子)

まなかひを光ひきつつ幾千のさくらはなびら風を追ひかく
(庭野摩里)

まだうまく歩けぬ母を諌めれば湯呑みの番茶ときおりゆれる
(岡田悠束)

春愁の間(あわい)を埋める菜の花に苦しきまでの黄(きい)あふれたり
(岩下静香)

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短歌人6月号、同人1欄より。

しろがねの鍵さし入れて三月の闇に抱かれむ水仙にほふ
(近藤かすみ)

きのうの朝日歌壇

2013-06-10 00:07:17 | 朝日歌壇
ほんとうは知っているかも何もかも日なたぼこする母の横顔
(仙台市 村岡美知子)

夏服の女子高生の眩しさよ炭酸水のはじけるごとく
(姫路市 岩下玲子)

六十年まえの給与の明細書などある姉の遺品整理する
(竹田市 飯田博和)

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一首目。作者のお母様はご高齢なのか認知症なのか、そこまではわからないが、日常の会話などできなくなっているようだ。不思議なものを見るような眼で、母親の横顔を見る気持ちはどんなものだろう。芯には温かいものが流れていて、好感の持てる歌だと思う。
二首目。夏らしい眩しさの象徴として、夏服の女子高生と炭酸水の直球勝負の歌。炭酸飲料のCMのようでもあるが。。。
三首目。亡くなったお姉さまにとっては大切なものであっても、もう整理するしかない。六十年前の女性のお給料がどのくらいだったのか、知りたい気もするが、短歌という小さい器にはそこまでは入らない。入らなくてよかったと思う。